Q-403:接遇に関する研修を何度も行っていますが、いつの間にか元の状態に戻ってしまいます。どうすればいいのでしょうか? <前編;case-side>
介護現場で働く方から御質問をいただきました。ありがとうございます。
その一部について、前編(case-side)と後編(plan-side)の2回に分けて回答いたします。
Q:接遇に関する研修を何度も行っていますが、いつの間にか元の状態に戻ってしまいます。どうすればいいのでしょうか?
A1:最初に本質的な原因(case-side)と解決(plan-side)をお伝えします。
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「いつの間にか元の状態に戻る」理由は…
人の場合、情報空間にホメオスタシスが拡張している
…から。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516539.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654230.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654316.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4831442.html
よって、「どうすればいい?」に対する答えは…
1)ゴール設定により新しいイメージを生みだし、
2)その新たなイメージにホメオスタシスを働かせる
…です。
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職場でのマネジメントとしていうなら、「1)新しいイメージをしっかり共有し、3)そのイメージの臨場感を高め合う」という感じ。
PMⅠ-06-17:仮説12)リーダー、マネジメント、コーチの役割と抽象度の関係
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具体的な「どうすれば?」はケース・バイ・ケースです。答えは1つではないし、最適解は常に更新されていきます。すべてがダイナミックに変化しており、無常だからです。
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問題を見つけることも、見つけた問題を解決することも、その鍵は「スコトーマ」にあります。スコトーマを生みだす/外すポイントは 1)知識、2)重要性、3)役割(責任)の3つ。
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知識がなければ、そもそも認識することができません。
その一方で、知識が新たな認識を妨げてしまいます↓
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だから、「自分の知識や常識として受け入れているものを、入念に吟味し続ける」ことが重要。少しでも違和感を感じるなら、その違和感は徹底的に掘り下げるべきです。
どこに違和感を感じるのか?
どれくらい感じるのか?
なぜ感じるのか?
等々
…違和感を徹底的に掘り下げることによって、知識は新しいものに書き換わっていきます。これまでのゲシュタルトが、より大きなゲシュタルトへと再構築されていきながら。
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じつは、コーチングにおいて、このプロセス(ゲシュタルト再構築)はとても重要です。なぜだと思いますか?
(私の答えは次回に)
では、あらためて「いつの間にか元の状態に戻る」理由について確認しましょう。鍵は「ホメオスタシス(Homeostasis)」です。
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https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4971818.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4971956.html
今回は、苫米地博士の著書「残り97%の脳の使い方」(フォレスト出版、p91)より3回に分けて引用(青字)しながら、「ホメオスタシス」について掘り下げます。
ホメオスタシス
最後にホメオスタシスについて説明します。
ホメオスタシスとは恒常性維持機能のことをいいます。これは、生体をより長く生きながらえさせるために、生体の安定的な状態を維持しようとする傾向のことです。
人間は生きていく上で、無意識レベルで体内のさまざまな機能が安定的に活動しています。体に負荷がかからないように、呼吸や心拍が一定のリズムで保たれているのもホメオスタシスが働いているためです。
また、ホメオスタシスは外的な要因にも反応します。
たとえば、外が暑ければ、体はあわてて汗をかかなければなりません。内部表現の中に「外は暑い」という情報の書き込みがあったからです。
もう少し詳しく説明すると、人間は気温が上昇すると、その情報が全身の神経を通じて脳に伝えられます。すると、脳からは「発汗せよ」という指令が出て、皮膚から汗が出てきます。
これは、脳内で「気温が上がった」という内部表現の書き換えがあり、それに合わせて生体の安定的な状態を維持しようとするホメオスタシスが働いて発汗したと説明できます。
引用終わり
…苫米地博士は、まず「体内のさまざまな機能」を安定的にする働きとしてのホメオスタシスに言及され、次いで「外的な要因」への反応(例:発汗)について述べられています。一般向けに。
ここで注意しないといけないのは、「外も内である」という事実。
我々はつい「外部世界(現実世界)」と「内部表現(心の世界)」を分別してしまいますが、そもそも外部世界というものはありません。それを一言でいうと「空(くう)」。
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各自が認識している「外部世界(現実宇宙)」は、それぞれの記憶が織りなす世界。だから、すべてが「内部表現(心の世界)」であり、「一人一宇宙」…です。
Q-235:「財布を娘に盗られた」といった… <vol.6:記憶が織りなす「一人一宇宙」>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/27981625.html
よって、内部表現とは、「人が認識している世界そのもの」だといえます。脳のレベルでいうと、「RAS(Reticular Activating System)と呼ばれるフィルターを通して映しだされる世界」です。
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その内部表現(Internal Representation、IR)には、物理次元の情報だけではなく、概念や感情といった心理レベルの情報も含まれています。それらが一体となって「一人一宇宙」を作りあげています。ダイナミックに。
L-067:2020年11月シークレット… -02;思考の3つの軸(Three Dimensions of Thought)
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/28959379.html
●ホメオスタシスは情報空間にまで広がっている
さらに人間のすごいところは、情報空間にまでホメオスタシスが広がっているということです。
内部表現が仮想世界にも適応するのと同じように、ホメオスタシスも仮想世界に適応するのです。
たとえば、「小説を読んで泣く」というのは、内部表現に描かれた世界にホメオスタシスが反応しているからです。小説の世界は、仮想世界であり、情報空間です。
ホラー映画を見て、鳥肌が立つというのも同じです。あくまでも映画の中でつくられたストーリーですから、どんなに怖かったとしても生体が危険にさらされているわけではありません。ですが、ホラー映画から受け取った情報に脳が反応して、生体に変化を引き起こすわけです。
このように、人間のホメオスタシスは、物理的な環境の変化に対してだけでなく、進化の過程で「環境」を物理空間から情報空間にまで広げることに成功したのです。
引用終わり
…ここで博士が述べられているのは、人の場合「仮想世界においても、内部表現が適応される」ということ。
その理由が「ホメオスタシス」。
そして、「ホメオスタシスが働いている」という感覚が「臨場感」です。
F-304~6:映画のおもしろさって何だろう?
~「Indy 5」の… <vol.1~3;臨場感>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32129073.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32179090.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32229850.html
コーチングとは、関数pの再定義を促すことではなく、可能世界w1から別のw2への移行を促すこと。
(「関数p」とは自我のことです。詳しくはこちらでどうぞ↓)
F-222:コーチングの基本概念を習熟して、エフィカシーをブーストしよう!
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/27832570.html
「小説の世界」と同様に、目の前にひろがる「外部世界(現実世界)」も、「仮想世界」であり、「情報空間」です。そして、それは無限に等しい「可能世界」のひとつであり、「内部表現(心の世界)」そのもの。
そんなたくさんの可能性(可能世界)の中から、自由意思で選択したonly oneの可能世界へと移動するための“特別な魔法”が「臨場感」だといえます。
F-244:「ゴール」と「現状の自我」の間に臨場感という橋を架ける <vol.1;臨場感>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/28857122.html
●ホメオスタシスは同調する
さらにホメオスタシスがすごいのは、他人に同調するという特徴があることです。
たとえば、2人の人間が長い間一緒にいると、呼吸や心拍のリズムが同じになります。これは、自然とホメオスタシスが同調していることを示しています。前述しましたが、女性同士の場合は、生理周期が一致することが知られています。
ということは、自分自身のイメージさえ自由にコントロールすることができれば、何もしなくても相手の世界に割り込み、影響を与えることができることになります。
洗脳は、術者がつくり上げた内部表現をホメオスタシスの同調を利用して、他人に移植しているのです。
引用終わり
…「洗脳は、術者がつくり上げた内部表現をホメオスタシスの同調を利用して、他人に移植している」の鍵も「臨場感」。
術者が作りあげたイメージの世界に相手が強烈な臨場感を持つようになると、強いラポール(rapport)が形成され、その圧倒的信頼感により相手の内部表現が書き換わっていきます。
F-206:マトリックス/Matrix -01<ストックホルム症候群>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/26952285.html
だからコーチは、クライアントの「w1→w2」という方向性には関わりますが、「w1」「w2」そのものには関わりません。もちろん「w」を生みだす「関数p」(=自我)にも。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353425.html
コーチがクライアントのコンテンツに関わった瞬間に、コーチングは洗脳に変わります。“自由”を追求するはずのコーチングが、“奴隷”を生みだす洗脳に変貌してしまうのです。
Q-376:バランスホイールはクライアントが書き込んでコーチに見せるものなのですか。バランスホイールの内容について、コーチはどこまで口を出していいものなのでしょうか?
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(Q-404につづく)
苫米地式コーチング認定コーチ
苫米地式認定マスターヒーラー
CoacH T(タケハラクニオ)
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今年度のオンラインセミナーは、コーチング募集開始前の「コーチング説明会」として開催します。次回は2025年2月下旬開催の予定です。約1ヶ月前にこのブログで御案内いたします。
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クラブ活動をはじめました。その名は「コーチング・デ・コンパッションクラブ」。
一緒に楽しみましょう!
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_418055.html
-関連記事-
L-090:2021年7月シークレットレクチャー -02;臨場感世界の現実化(realized virtuality)
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Q-196:未来の抽象度の高いイメージ(I)を臨場感高く想像すれば(V)実現する(R)と考えていました
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Q-265~:臨場感世界をまったく同じように感じることが可能なのでしょうか?
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Q-329:最近「記憶が抜ける」ようなことが続いています <vol.4;自己イメージと臨場感世界は双方向性を持った縁起>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31941786.html
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