F-159:無我夢中 <後編>
「無我夢中」という言葉を聞いたら、どんなイメージが浮かびますか?
前々回(F-157)、自分の死に自ら意味を見いだしたことで情報(心)を書き換え、その写像である物理(体)を書き換えていった高齢女性の例を御紹介しました。
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その様子はまさに“無我夢中”
…私が「指一本でも役に立ちたい」と願う患者さんに感じた“無我夢中”は、「冷静さを欠いている」「視野が狭くなっている」というネガティブなニュアンスの「無我夢中」ではありません(詳しくは前編で↓)。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/23944294.html
…「指一本でも役に立ちたい」と願う高齢女性は、子どもたちからも「お人好し」と評価されていました。それは一生かけて作り上げてきたブリーフシステムといえます。
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しかし、その「お人好し」ゆえに家族とは疎遠になっていました。誰彼かまわずお金を貸してしまうため(O:義務感)、子どもたちとの間で喧嘩が絶えなかったようです。結局は踏み倒されることを繰り返したため、いつしか本人もお金に困るようなったそう(F:不安・恐怖)。後悔とともに感じる子どもたちへの罪悪感(G)が、さらに患者さんを苦しめたに違いありません。
きっと霧(FOG)の中をさまよっているように感じていたはずです。
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その状況をコーチの視点で分析すると、「バランスを見失っている状態」といえます。つまり、「冷静さを欠いている」「視野が狭くなっている」という意味での「無我夢中」です。
ゴールは人生のあらゆる領域に設定するものです。そして、そのバランスに留意しながら達成していきます。「仕事は大成功したけれど、家庭は崩壊した」も、「お金持ちになったけれど、体が壊れた」もNGです。仕事も、家庭も、ファイナンスも、健康も…etc、同時に達成していくことをバランスホイールといいます。
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人生のあらゆる領域を同時に観るというのは「抽象度を上げる」訓練にもなります。高い視点から俯瞰(ふかん)することができるほど、さらにゴールを達成しやすくなります。
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だから私は、ゴールのバランスホイールをとても重要視しています。それは「天秤にかけバランスをとる」ということではなく、「高い抽象度ではひとつのものを(全体)、抽象度を下げた次元においてバランスよく配分する(部分)」という感覚。ゲシュタルトです。
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蛇足ですが、バランスホイールはセルフヒーリング&セルフコーチングの秘訣でもあります(…と私は思っています)。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/14524490.html
…話を高齢患者さんに戻します。
「お人好し」であるがゆえに経済的な不安を抱え(社会的苦痛)、後悔と罪悪感に苛まれる患者さんに(心理・精神的苦痛)、感染症が襲いかかりました(身体的苦痛)。医学的に「せん妄」と呼ばれる不穏状態に陥ったとき、ひょっとしたらスピリチュアルペインに苦しんでいたのかもしれません。
それら4つの苦しみを、医療の現場では「全人的苦痛」「トータルペイン」と表現します。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/8293317.html
四重苦に陥った患者さんは、死を目前にしても「お人好し」を貫きました。ずっと意識下(無意識)にあった「死後も社会に貢献したい」はいつしかゴールとなり、「献体」というエンドステートになって意識に上がりました。その間に自然に発した言葉(セルフトーク)が「指一本でも役に立ちたい」です。
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「献体」という行為で完遂する患者さんのゴールは、最初は完全に“現状の外”でした。死後の自分の体の取り扱いは自身ではどうすることもできず、肝心の家族が強固に反対していたからです。
それまで子どもたちと対立してきた患者さんは、自身の態度を改めました。どうしても成し遂げたい本物のゴールがあり、かつエフィカシーが高かったから(覚悟を決めていた)。
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https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/19033189.html
結果、患者さんの中で自我が拡大しました。死後に体を預けることになる子どもたち(家族)まで含めて“私”というように。
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ゴールを共有したとき、“自我の拡大”は患者さんの家族にも起こったはずです。苦笑いしながら「母らしい」とつぶやいたときの息子さんの目には、それまでとは全く違う優しい光が宿っていました。
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その時、私は、ネガティブなニュアンスの「無我夢中」が、「抽象度が上がる(上げる)」方向性での“無我夢中”に変わったと確信しました。
この場合の“無我”は「“私(我)”の定義を拡張する」という意味です。
“私”の抽象度を上げていくと
→家族→チーム(組織)→地域→国→地球→太陽系→と空間的に広がっていきます。更に時間も含めると→10年後→100年→…→138億年+未来→と拡張していきます。…ここまでが物理空間の話。
物理空間は情報空間の写像ですので、物理空間での拡張は、抽象度が上がったことの投影といえます。その感覚を表現した言葉が「俯瞰」や「克己」です。
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抽象度が上がるほど、情報的に大きな存在になることができます。情報的に大きな存在になるほど、未来志向で優しく書き換えることができるようになります。本当は“私”である他人も。もちろん、“私”自身の心身も。
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実際に、「死後も役に立てる」という希望を抱いた患者さんは、「うれしい~」という言葉とともにどんどん回復していきました。まるで“奇跡”のように。
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私たちは自由意思でゴールを設定することで、ゴールに向かう日々を“夢中”に生きることができます。
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ゴール側のコンフォートゾーン(I)に臨場感を感じるほど(V)、そのゴールは実現に近づいていき(R)、その過程で新たな可能性(I´)を見つけだします。
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https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6542364.html
そして、リミッターをはずしながら新たな可能性(I´)に向かい、その過程でさらなる可能性(I∞)を見つけ…
…その過程で無限に近いような潜在的能力をどんどん発揮していきます(ロック解除)。
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「モチベーションの違いで756倍の差が…」というデータ(事実)は、その一つにすぎません。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/12340209.html
私たちは自由な心でゴールを設定することができます
“夢中”を体現しながら、日々の課題に挑戦することができます
人生のあらゆる領域に存在しているゴールを俯瞰しながら、それぞれを再設定して挑み続けていると、“無我”はやがて“空我”へ書き換わっていきます。
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空我夢中
…それは無としての自我、すなわち部分関数が宇宙サイズに拡大していくプロセスでもあります。アブラハム・マズローは、それが「人間形成」だと喝破しました。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/9963845.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/9966391.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/10116950.html
その人間形成の過程で「我を忘れている」という意味での「無我」は、「宇宙と自分を切り分けることができない」という意味の“無我(=空我)”となります。
たとえそこまでたどり着けなかったとしても、「人間形成」の階梯を駆け上がるプロセス自体にホメオスタシスが働いている状態は、とても自然で心地のよい“無我夢中”です。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4831660.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4971818.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4971956.html
苫米地博士が語るコーチの基本条件は「いい人である」こと。死さえ希望に書き換えた老婆との縁で、私はその意味を体感した気がしました。
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苫米地式認定コーチ
苫米地式認定マスターヒーラー
CoacH T(タケハラクニオ)
-追記-
キーワードは「社会性」「利他(unselfishness)」。
(その上で)重要なのは行動することではなく、ゴールを設定し、ブリーフシステムを書き換えて、その結果として行動につなげること(つながること)。
その過程で人は“若さ”を取り戻します。次回から(F-160~)はそんなテーマで。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_268333.html
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