F-229:ゼロトラスト 中編;「ゼロトラスト」はマネジメントの心がまえ
今回のテーマは「ゼロトラスト」。
「ゼロ」は「0」、「トラスト」は信頼を意味する「trust」で、「完全に守ることは不可能という認識」のこと。「過信しない」というレジリエンスの大原則です。
F-142:不要不急 vol.3;レジリエンス <ワーク付き>
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リスクマネジメントをテーマとした研修や講演等で「ゼロトラスト」の話をすると、「信用がないとチームは機能しない(=ディスアドバンテージ)」「お互いに信頼するから困難を乗り越えられる(=ソルベンシー)」といった反対意見をいただくことがあります。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/12935916.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/12935992.html
「ゼロトラスト」、すなわち「過信しない」というレジリエンスの大原則と、「信用・信頼が大切」という現場の認識は矛盾していません。教育の重要なポイントである「ベーシックトラスト」とも矛盾しません。その理由は?
さらに、その理解と実践はコーチングの成否に大きく関係します。なぜでしょうか?
前編;民無信不立
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/28170711.html
中編;「ゼロトラスト」はマネジメントの心がまえ
…鍵となるのは「抽象度」。
抽象度とは、情報空間における視点の高さを表すもので、分析哲学の中の存在論における「Levels of Abstraction」の日本語訳です。
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https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4449018.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516484.html
*情報空間はこちら↓
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516539.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654230.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654316.html
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「抽象度」の名づけの親は認知科学者 苫米地英人博士。その苫米地博士が「バラいろダンディ」(TOKYO MX、2022年1月24日放送)で、とてもわかりやすく「抽象度」を解説されています。ぜひご覧ください(19分間です)↓
Dr.苫米地 2022年の飛躍に苫米地用語「抽象度」を習得しよう
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抽象度は「情報量の大小で宇宙をならべる軸」のこと。上に上がるほど具体的な情報量は少なくなり(=抽象化)、下に下がるほど情報量は増えていきます(=具体化)。
例えば、「さくら(この世に一匹の実在)」→「ラブラドールレトリーバー」→「犬」→「哺乳類」→「脊椎動物」→「動物」→「生物」→「存在(有)」→… という変化を「抽象度が上がる」「抽象度を上げる」と表現します。
具体的な情報量を青色で表すと、抽象度でみる宇宙は下図のような形になります。
(注;情報宇宙の底面である物理空間が平面ということではありません)
先程の例で考えると、「犬」は「ラブラドール」より具体的な情報量は少ないのですが、潜在的な情報量は(「ラブラドール」よりも)多いと考えることができます。
「潜在的な情報量」を「可能性」に置き換えるとわかりやすいかもしれません。
「犬」は「チワワ」「コーギー」「シェパード」などすべての犬種を包摂(包含)しています。「私は犬を飼っている」という場合、その「犬」には全ての犬種が当てはまります。「シベリアンハスキー」かもしれませんし、「ラゴット・ロマーニャ」「ベルガマスコ」なのかもしれません。可能性が開かれているのです。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/26545746.html
対して、「私はラブラドールを飼っている」の場合、「チワワ」「コーギー」「シェパード」の可能性は0。もちろん、「シベリアンハスキー」「ラゴット・ロマーニャ」「ベルガマスコ」の可能性もありません。
抽象度が下がるほど、具体的な情報量は増えていく一方で、潜在的な情報量(可能性)は減っていきます。物理空間に近づくほど限定的かつ特定的になっていくといえます。
潜在的な情報量を緑色で表すと、抽象度でみる宇宙は下図のような形になります。
(注;赤枠が物理空間。もちろん、二次元平面ということではありません)
抽象度が上がるほど具体的情報量が減り(潜在的情報量/可能性は増え)、抽象度が下がるほど具体的情報量は増える(潜在的情報量/可能性は減る)
…この関係性をしっかり理解することが「戦争と差別のない世界を実現する」ためにとても重要です。
PMⅠ-06-13:仮説08)はびこる差別意識
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14249741.html
*具体的事例はこちら↓
Q-061~:犬好きではいけないのですか?
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_284899.html
では、今回のテーマ「ゼロトラスト」に戻りましょう。
「信用がないとチームは機能しない(=ディスアドバンテージ)」「お互いに信頼するから困難を乗り越えられる(=ソルベンシー)」「ベーシックトラスト」などの「信」や前回(F-228)御紹介した孔子の「信」は高い抽象度次元にあります。
それは物理的な実体ではなく概念。ゲシュタルトです。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6193912.html
対して、「完全に守ることは不可能という認識」「過信しない」というレジリエンスの大原則は、物理空間や物理に近い低抽象度次元での心構え。マネジメントの話です。
PMⅠ-06-17:仮説12)リーダー、マネジメント、コーチの役割と抽象度の関係
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14526054.html
具体的な情報量で考えると、高次の抽象度次元にいくほどシンプルになり、秩序立っていきます。その次元を潜在的な情報量で考えると(無限の)可能性。
そのような可能性に満ちた概念(ゲシュタルト)に対する確信が、「信用」「信頼」「ベーシックトラスト」であり、孔子の「信」です。
より高い視点(シンプル)で本質を見抜き(秩序立つ)、根拠(具体的な情報量)が乏しいのに可能性に賭けることができる
…このような「信」を持ち続けることがリーダーの大切な資質であるといえます。
F-104:「映写機の故障により上映できるかわかりません」Vol.4;リーダーの視点で
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/19485793.html
具体的な情報量で考えると、低次の抽象度次元に向かうほど複雑化し、カオスになっていきます。仏教的にいうと無常。
一番抽象度が低い物理次元(空間)を潜在的な情報量で考えると0。限定的であり、特定的であり、確定的です。それは「その時・その状況での最適解はひとつ(しか選択できない)」ということ。
情報過多(カオス)にて複雑な物理空間でのダイナミックな変化(無常)にしっかり対応し、状況に合わせて柔軟に最適解を選択できる
…あらゆる可能性(解)を想定しながら(=アサンプション)、実際の状況に合わせ素早く修正を行い(=アサンプションアップデート)、最適な行動(COA)を選択し続けることが、現場を任されたマネジメントの役割です。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14973460.html
「ゼロトラスト」、すなわち「過信しない」というレジリエンスの大原則と、「信用・信頼が大切」という現場の認識は矛盾しません。教育の重要なポイントである「ベーシックトラスト」とも。
…その理由は「そもそも抽象度が違う」から。
レジリエンスの大前提である「ゼロトラスト」は低い抽象度次元でのマネジメントの話
「信」は高次の抽象度次元に存在する何らかの概念(ゲシュタルト)に対する確信のこと
…その理解と実践はコーチングの成否に大きく関係します。
(F-230につづく)
苫米地式コーチング認定コーチ
苫米地式認定マスターヒーラー
CoacH T(タケハラクニオ)
-追記-
レジリエンスの大前提である「ゼロトラスト」は低い抽象度次元でのマネジメントの話
「信」は高次の抽象度次元に存在する何らかの概念(ゲシュタルト)に対する確信のこと
…この場合の確信とは「臨場感」のこと。こちらでどうぞ↓
Q-159~:臨場感が薄れても高い抽象度のゴールをイメージし続けるのでしょうか?
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_404758.html
-関連記事-
F-180:“幸福(well-being)”とは?…partⅡ-5;個のwell-beingから社会全体にひろがるwell-beingへ
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F-190:くっきりとした姿が見えているわけではないけど、おぼろげながら浮かんできたんです
<中編;リーダー>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/25988048.html
Q-176:コーチはリーダーとマネージャーの役割・機能を持つと考えてよいのでしょうか?
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/25016029.html
Q-210:世の中はどうしてドリームキラーばかりなのでしょうか? <回答1:ゴール&リーダーの視点で>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/26886756.html
-告知-
クラブ活動をはじめました。その名は「コーチング・デ・コンパッションクラブ」。
一緒に楽しみましょう!
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_418055.html