L-184:2022年06月医療・介護研修会 -07;「イライラ克服」の基盤
2022年6月、鹿児島県の医療法人で認知科学やコーチング理論を用いた職員研修を行いました。依頼されたテーマは「イライラ」。
当日の講演内容をブログ用に再構成し、いただいた御質問や御意見に回答いたします。
(関係者の皆さま方、大変長らくお待たせいたしました)
01;テーマは「『イライラ』の正体を知り、しっかり対処する」
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35443656.html
02;「仕事観」を書き換える
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35479161.html
03;「幻覚」を見破り「付加価値」を生み出すヒント
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35494210.html
04;イライラや不幸から自由になるために…
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35531009.html
05;しあわせは いつも じぶんの こころがきめる
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35545220.html
06;成功体験を再現し、次の日の成功を思い描く
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35578663.html
07;「イライラ克服」の基盤
前回はスコトーマ(Scotoma)についてまとめました。スコトーマが生じる/外れるポイントは 1)知識、2)重要性、3)役割(責任)の3つです。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html
つまり、目の前の世界は、各自の「知識+重要性+役割(責任)」の投影だということ。同じような現実を前にしても、認識にあがる情報は人それぞれです。苫米地博士は、それを「一人一宇宙」と表現されます。
Q-235:「財布を盗られた」といった被害妄想が… vol.6:記憶が織りなす「一人一宇宙」
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/27981625.html
「イライラ」をテーマとした研修を依頼された後、私のRASは「みんな疲れて、イライラしている」をイメージさせる事例をどんどん拾い上げました。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721658.html
□ 北海道知床半島で観光船「KAZU1(カズワン)」が沈没(R4.4/23)
同じ会社の臨時船長が「知識のない社長が、人任せなのに、ベテラン社員を解雇したことが事故の背景にある」「従業員を大事にしない会社」と証言(北海道放送)
□ 「無添くら寿司」(山梨県甲府市)の30代店長が店の駐車場で焼身自殺(R4.4/1)
従業員や元従業員の詳細なパワハラ証言が報道されるも、会社側は否定。その後、会社側が遺族を恫喝していたことが報道される(週刊文春)
□ 熊本秀岳館高校サッカー部コーチが部員を暴行
監督がTVで涙の謝罪を行ったが、その裏で部員を強迫してもみ消しを画策していたことが発覚。さらに部員間での暴行問題も浮上(熊本日日新聞)
…これらの事例に共通して存在するのは強制的動機であるはず。「have to(~しなければならない/してはならない)」という窮屈な心の状態です。
強制的動機「have to」の反対が、「want to」と表現される建設的動機。それは「~したい」というピュアな欲求のこと。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5882609.html
強制的動機「have to」の根底には「恐怖」があり、建設的動機「want to」は「価値」を源泉としています。
Q-260:コーチングは弱った人を対象とする臨床心理や精神医療の世界にはなじまないのだろうか? <vol.2;肯定的立場で(affirmative)>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/28786054.html
これらの2つの動機の間には、決定的な違いがあります。
「経営の神様」と称された松下電器(現Panasonic)創業者 松下幸之助さんの分析でも知られるハーバード大学ビジネススクールの名誉教授
ジョン・P・コッターらの研究を紹介します。
F-160:コーチの視点で考察する“青春” ~心の若さと体の関係~ vol.1;松下幸之助
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24076595.html
1992年に書籍化(「Corporate
Culture and Performance」)されているその研究では、米国フォーチュン500社のうち207社を「自発的・やりたいことを行う文化(“want to”culture)」を持つ企業と「抑圧的・強制的な文化(“have to”culture)」を持つ企業とにグループ分けした上で、10年間の追跡と分析が行われています。
その結果、“want to”cultureの企業は、“have to”cultureの企業より、様々な指標で優れていることが判明しました。
中でも顕著な差が表れたのは生産性。建設的動機の“want to”企業は、強制的動機の“have to”企業に対して、なんと、756倍も生産性が優れていることが判明しました。
L-042:2020年7月マネジメント研修会… -02;「余裕」を生みだす魔法のスキル ~折れない心の作り方~ <研修1;ワーク付き>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/27105005.html
私が見聞きした「みんな疲れて、イライラしている」という現場も、すべて「~ねばならない」という“空気感”に支配されていました。そして、その“空気感”の根底には「恐怖」が跋扈しているように感じられました。
「イライラ」とは、いわば「Fight or Flight」の一表現。誰もが“動物的”になり、心身ともに緊張(&疲弊)している状態です。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/8164566.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/8166289.html
そんな時に意識に上げるべきなのが「逆腹式呼吸」。
L-166:2022年01月シークレット… -10;呼吸を意識に上げてコントロールするワーク
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/34408574.html
さらに付け加えると…
以下、苫米地博士の著書「思考停止という病」(KADOKAWA、p185)より引用します。
ローアルファ状態をつくりなさい
リラックスする状態のために、脳波のレベルから見てみましょう。
職場で働いている時に、私はいつも「want toを目指しなさい」と言ってきました。これはwant to(やりたい、したい)という職場環境のほうが、have to(やらなければならない)という職場環境で働くよりも圧倒的な生産性の違いが生まれるからです。
have toで仕事をしている人は、常に緊張状態で仕事をしていることになります。これでは本来のパフォーマンスが発揮できません。脳のパフォーマンス低下とは、記憶力、認識力、理解力、問題解決力など思考にまつわる機能低下を表しています。
・怒られるのではないか
・やりたくない
・なんとか逃げだしたい
など、have to状態は、雑念や不安と緊張を生み出しています。ストレスの負担を常に受けている状態ですから、IQも下がってしまいます。つまり、新しいゲシュタルトなど一切生み出すことはできません。怒られないように仕事をしたり、早く終わることだけ考えて仕事したりするようになります。むしろ思考停止のススメとも言えるでしょう。
脳のパフォーマンスを向上させるには、肉体と脳の両方をリラックス状態にするしかありません。
脳波のレベルから見てみましょう。そもそも、脳波とは、脳から生じている電気活動のこと。その支配的な周波帯域によって、デルタ波、ベータ波、シータ波、アルファ波、ガンマ波などにわかれています。脳の状態と周波数帯域の強弱で表したものだと思って下さい。
1924年、ドイツ人精神科医ハンス・ベルガー氏が、人間の脳における電気活動を記録したのが、脳波研究の始まりです。
一般的にリラックスしている時は、アルファ波が出ていると言われています。わかりやすいのが、ヨガの瞑想でしょう。瞑想時は、ものすごくリラックスしている状態です。
アルファ波であれば、なんでもいいかというとそうではありません。
理想的な状態は、アルファ波の中でも8~10ヘルツのローアルファ波状態が、もっとも良いリラックス状態です。
通常のアルファ波と何が違うかと言えば、言葉どおり、通常のアルファ波よりも周波数が少し低くなっている状態です。つまり、リラックスしているが、完全に緩みきっている状態ではないのです。
シータ波(レム睡眠時に多くみられる脳波)やデルタ波(ノンレム睡眠時に多くみられる脳波)は、アルファ波よりもリラックスしている状態と言えますが、思考を働かせたり、日中活動したりするには、リラックスしすぎだといえます。
早々シータ波やデルタ波になることはありませんので、それほど心配はいりません。とにかく、リラックスしながら、しすぎない状態を目指してください。
適度なリラックスをするために有効なのが、逆腹式呼吸です。
呼吸法は古代インドやチベットなどで、精神状態をコントロールするために活用されてきました。本来、生体的機能というのは意識的にコントロールできません。たとえば、パフォーマンスをあげたいから血流を早くしようと思ってもできないわけです。
しかし、呼吸だけは唯一といってもいいコントロール可能なホメオスタシス活動なのです。
通常の腹式呼吸は、ご存じの方が多いでしょう。
鼻から息を吸うと同時にお腹をふくらませ、息を吐くと同時にお腹から息を吐き出します。しかし、逆腹式呼吸はそのまま逆で、息を吸うときにお腹を凹ませ、息を吐く時お腹をゆるめてリラックスさせるように意識して行います。この方法を行うことで、より簡単に最適なリラックス状態をつくり出すことができます。
引用終わり
アルファ波の中でも8~10ヘルツのローアルファ波状態が、もっとも良いリラックス状態です
…基本は「逆腹式呼吸」です。さらに付け加えると「ローアルファ状態」。
みんなで意図的に「ローアルファ状態」を生みだしていくことが、私がお勧めする「イライラ克服」の基盤。詳しくはこちらでどうぞ↓
Q-354~:休みの日なのに気持ちが良くない日が続きます。単に疲れているだけでしょうか?
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_427647.html
(L-185につづく)
苫米地式コーチング認定コーチ
苫米地式認定マスターヒーラー
CoacH T(タケハラクニオ)
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今年度のオンラインセミナーは、コーチング募集開始前の「コーチング説明会」として開催します。次回は2025年2月下旬開催の予定です。約1ヶ月前にこのブログで御案内いたします。
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クラブ活動をはじめました。その名は「コーチング・デ・コンパッションクラブ」。
一緒に楽しみましょう!
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_418055.html
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Q-064~:認知的不協和の状態にあり頭痛が続いています。適切なアファメーション、ビジュアライゼーションはどうすればよいでしょうか?
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_292583.html
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