F-007:感覚過敏
DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)は、精神障害の分類のための共通言語と標準的な基準を提示するもので、アメリカ精神医学会により出版されています。最新版はDSM-5です(2013年出版)。
第五版から自閉症スペクトラム(ASD:Autism Spectrum Disorder)の診断基準に「感覚入力に対する過敏性あるいは鈍感性、あるいは感覚に関する環境に対する普通以上の関心」という項目が加わりました。
「感覚の偏り」はASDの早期発見に役立ちます。例えば、「靴下や帽子のヒモを嫌がる(触覚)」「特定の音に敏感(聴覚)」「固形物と液体が混ざっていると嫌がる(触覚、味覚)」「光るもの、回転するものをよく見る(視覚)」などです。
その感覚過敏のうち聴覚過敏(Hyperacusis)とは、「たいていの人が我慢できる音を、苦痛を伴う異常な音として経験すること」です。耳の病理と関係する生理学的な要素だけでなく、心理的な要素も含まれているとされています。
小児期に限られているわけではなく、成人後に発症する場合もあります。
頭部外傷後や耳鼻科的疾患(急性低音障害型感音難聴、メニエル病等)、帯状疱疹ウイルス感染によるラムゼイ・ハント症候群(Ramsay Hunt Syndrome)などの身体疾患で起こる場合もありますが、うつ病やPTSD(Post Traumatic Stress Disorder、心的外傷後ストレス障害)といった精神疾患でも起こるとされています。
前者は物理空間に近い因果、後者は情報空間での因果(マインドの問題)です。
もちろん、もともと生命は情報(処理)現象であり、体と心は同じものです。表記する抽象度が違うだけです。
Wikipediaによると「心理学的治療として、認知行動療法(CBT)が論文で評価されてきた唯一のアプローチである。この中で患者が即座にリラックスし、体と心の感覚(たとえばストレス)を自己制御することを徐々に学ぶ方法として応用リラクゼーションがある」とあります。
私は、苫米地式認定コーチとして、聴覚過敏などの感覚過敏に対してコーチングが有効なのではないかと考えています。特に情報的な因果の大きいもので、例えば「好きなことに熱中している時にはあまり気にならなくなる」というケースでは確実に効果をあげると確信しています。
RAS&スコトーマ、ブリーフシステム、エフィカシー、そしてゴール…症状改善に大いに役立つはずのコーチング基礎用語は「The Power of Mind Ⅰ」の第二章で解説していきます。
ところで、先程の「例えば『好きなことに熱中している時にはあまり気にならなくなる』というケースでは確実に効果をあげると確信しています」という文章に対して、「好きなことをしている時には気にならなくなるような人は、そもそもコーチングなしでも改善するはず」と思った人はいませんか?
…じつは、そうともいえません。
反対に、「好きなことをしている時には気にならなくなる」という人ほど、コーチングなしでは症状の改善は望めないはずです(物理的要因が主の患者さんはコーチングなしで改善するという意味ではありません)。
なぜなら「好きなことをしている時には気にならなくなる」という人は、「それ以外のときは音が気になる」という現状を肯定してしまっているからです。知らないうちに聴覚過敏がコンフォートゾーン(Comfort Zone、CZ)となっています。それが一つ目の理由です。
さらに、聴覚過敏であることを理由に「休ませてもらった」「やさしくされた」「優先してもらった」など好ましいことが起こると、無意識はその現状をますます維持しようとします。
CZがさらに強化されてしまうのです。それが二つ目の理由です。
その状況を抜けだすには、つまり聴覚過敏を克服するには、そんな現状の外に新たなゴールを設定する必要があります。ゴールを達成するために聴覚過敏であることはふさわしくないと無意識がしっかり理解した時に、その人の生命力が改善に向かって働き始めます。生命力はホメオスタシスと表現することもできます(CH理論)。
しかしながら、“現状の外”にゴールを設定するためには、コーチングについて学んだ上でコーチのサポートを受けることが必要です。スコトーマ(心理的盲点)が外せないからです。それが三つ目の理由です。
コーチングを学んだとしても、不適切なコーチングを受けてしまい、現状の中に誤ったゴールを設定してしまった場合、ゴールに近づくほどその聴覚過敏は強化・固定化されていくことでしょう。
コーチングとは、まったく新しい自分に生まれ変わることであり、目の前に見たこともない新しい世界(宇宙)を創りだすことです。それはコーチがクライアントの無意識に直接介入し、強力に働きかけを行うことで実現します。
そのために、私たちコーチは自ら学び続けながら、高いエフィカシーとともに未来を切り拓き続けています。
苫米地式認定コーチ
苫米地式認定マスターヒーラー
CoacH T(タケハラクニオ)