PMⅠ:The Power of Mind

PM-04苫米地理論で見える医療・福祉現場のスコトーマ

PM-04-11すでに始まっている医療に抽象度を取り入れる試み -後編-

 

 この章(第四章)では、医療・福祉現場での常識や取り組みを御紹介しながら、苫米地理論で考察していきます。

 

 

すでに始まっている医療に抽象度を取り入れる試み -後編-

 

 医療・福祉の現場にコーチングが有用であることを理解していただけたでしょうか。大切なのは、前頭前野をしっかり使い「抽象度を上げること」です。

 その抽象度を上げる取り組みは、じつは、様々な場面ですでに始まっています。そのうち五つを簡単に解説いたします。

 前編はこちら:http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/8292888.html

 

4)     臨床倫理四分割法

 

不完全性定理により、何かを決断するための絶対的なモノサシ(判断基準)は存在しません。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6194669.html

 

状況により「正しい」とも「間違っている」ともいえるため、判断を下す場合には必ず迷いが生じます。医療・介護現場における判断は“いのち”に関わるものであるため、その迷いはより大きなものとなります。

 

前にも述べたとおり、医療・介護現場ではスコトーマが外れることで四苦がリアルになりやすく、「ファイト・オア・フライト(Fight or Flight)」という心理状態に陥った結果、「不必要な治療(対処)を求める」という行動が起こりやすくなります。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5721610.html

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/8164566.html

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/8166289.html

 

その状況下で、例えば人工栄養・人工呼吸・人工透析といった延命治療等の判断を後悔なく行うということは、とてもとても難しいことです。

それは医療・福祉従事者にとっても同じです。専門であるほど、あえて治療を行わないという決断を受け入れることは困難であるはずです。

 

その問題を解決に導く方法として、「臨床倫理四分割法」があります。

治療の是非を判断するときに、「医学的適応」「本人の意向(人生観、Living Will)」「まわりの状況(医療制度、経済状況、家族の状況、家族の意向等)」「QOLQuality of Life、生活の質)」という四つの視点で考察するというものです。

 

四つの視点で俯瞰して考えるのですから、抽象度が一つ上がっているといえます。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/cat_123517.html

 

5)     国立長寿研究センターの「三本の柱」戦略

 

国立長寿医療研究センターのEnd-Of-Life Care TeamEOLCT)の取り組みも高い抽象度で行われています。

センター内の他科よりEOLCTに依頼のある患者さんの3056%が意思決定困難者で、先程の臨床倫理四分割法での「本人の意向」が確認できないそうです。その場合に「三本の柱」戦略がとられます。

 

「三本の柱」戦略とは、「現在」「過去」「未来」の視点から患者さんの意志決定を支援する取り組みです。

 

第一の柱は、「現在」表出されている微細なサインを読みとる努力をすることです。

食事、入浴、体位交換、胃瘻注入、輸液の滴下時などから患者さんの様子を観察します。うれしそうな表情、無表情、嫌そうな表情など、患者さんが示す微細なサインに注目して気持ちを探ります。

物理空間(身体)の現象を観察することで情報空間(心)にアクセスするということです。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/4516539.html

 

第二の柱では、「過去」に残された本人の意志を確認します。いわゆるリビングウィル(Living Will)です。

実際は事前指示のあるケースは少数のようで、事前指示が不明確な場合はライフレビュー(Life Review)が行われます。仕事、結婚、子供などに関する何気ない会話からその人の価値観や人となりを理解し、「本人ならばきっとこう判断したであろう」ということを家族と共有するのです。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5721531.html

 

第三の柱では、「未来」に得られる本人の最善の利益がなんであるかを考えます。

例えば、胃瘻造設(PEG)を行うか否かを選択する際は「その後の生活へどのような影響をもたらすか」を考慮します。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5615935.html

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6542317.html

 

ポイントはあくまで「本人にとっての最善の利益に焦点を当てて、議論のプロセスを尽くすこと」です。最終的な意志決定の“結果”よりも、意志決定の“プロセス”とそれを“尽くすこと”を、EOLCTは重視しているそうです。

 

この「現在」「過去」「未来」を考えるという行為の根底には、「患者さんの人生全体の意味が分かってはじめて、目の前の医療行為の意義が決まる」という信念があります。

それは、「全体と部分の双方向性で成り立ち、一つの統合的意味を持つまとまり」であるゲシュタルトとして人生全体をとらえるものであり、当然、高い抽象度の判断といえます。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6193912.html

 

余談ですが、「意志決定支援」の「支援」という言葉に、「医療者の立場はあくまでサポート」という思いが滲み出ています。そして、その意志決定過程での家族との価値観の共有を重視しているところに縁起の視点を見出すことができます。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6353044.html

 

(つづく)

 

 

苫米地式認定コーチ                        

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)