PMⅠ:The Power of Mind

PM-04苫米地理論で見える医療・福祉現場のスコトーマ

PM-04-10すでに始まっている医療に抽象度を取り入れる試み -前編-

 

 この章(第四章)では、医療・福祉現場での常識や取り組みを御紹介しながら、苫米地理論で考察していきます。

 

 

すでに始まっている医療に抽象度を取り入れる試み -前編-

 

 医療・福祉の現場にコーチングが有用であることを理解していただけたでしょうか。大切なのは、前頭前野をしっかり使い「抽象度を上げること」です。

 その抽象度を上げる取り組みは、じつは、様々な場面ですでに始まっています。そのうち五つを簡単に解説いたします。

 

1)     疾患の大別-感染症と非感染症

 

疾患を「感染症」と「非感染症」の二つに大別する考え方が広がりを見せています。たった二つに分別しているだけですから抽象度の高い視点といえます。その中では、がんは生活習慣病などと一緒に「非感染症」にひとくくりにされています。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/cat_123517.html

 

抽象度という視点でみると、「感染症」は抽象度が低い(情報量が多い)物理次元が主です。よって、治療は「どの抗菌薬を、どのくらい使うか」といった具体的な話が中心になります。

 

それに対して「非感染症」は、概念自体が抽象度の高い次元にまで広がっています。特にがんの場合は「生きること」「死ぬこと」といった哲学的な領域に重心が移行していきます。よって、具体的な身体への治療だけでは「何か足りない感じ」がするのです。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/7385278.html

 

医療・福祉を学ぶ者には、まずは具体的な(専門的な)知識が必要です。

しかし、それと同時に“生と死”について学び、自ら思考を重ねながら、自身の哲学を完成していくことが求められています。

他人のコピーではなく、自分自身の「生きる理由」「死ぬ意味」を見つけていかなければならないのです。

 

2)     リハビリテーション医学

 

 第三章で紹介させていただいたとおり、私は鹿児島大学のリハビリテーション科で医師としてのキャリアをスタートしました。入局した当時(1990年代)、リハビリテーション科のある国立大学は国内に二校しかありませんでした。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/7385143.html

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/8292241.html

 

 リハ科が認知されてきた現在はあたりまえのことかもしれませんが、当時のリハ科的な「病気ではなく病人を診る」という考えに感動しました。

患者さんを、身体的、機能的、心理的、そして社会的な視点でそれぞれとらえることは、医療現場で働きながら抽象度を上げていく実践トレーニングとなりました。

 

それは、もともと密教から医療の世界に入った私にとっての原点回帰にもなりました。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6854577.html

 

3)     トータルペイン(Total Pain

 

「トータルペイン」とは、「全人的疼痛」と訳される緩和ケアの概念です。

 

緩和ケアとは、「生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者と家族の痛み、その他の身体的、心理社会的、スピリチュアルな問題を早期に同定し適切に評価し対応することを通して、苦痛(suffering)を予防し緩和することにより、患者と家族のQuality of Lifeを改善する取り組み 」のことです(WHO2002年)。

 

かつては、がんなど病気の治療を最優先に行い、やり尽くしたら緩和ケアを開始するという考えでした。現在は、がん等の診断と同時に緩和ケアも開始し、徐々にその比重を大きくする(大きくなる)という考え方に変わっています。

 

緩和する対象となる「身体的な痛み」「心理的(精神的)な痛み」「社会的な痛み」、そして「スピリチュアルな痛み」を、それぞれ個別に捉えるのではなく全体として捉えるために「トータルペイン(Total Pain)」という概念が生まれました。

 

先程のリハビリテーション医学と重なりますが、病そのものだけではなく、これらの四つの視点で患者さんを診ようという取り組みは抽象度が上がっています(もちろん、痛みだけに囚われないことは必要ですが)。

その四つを一つとみなす「Total」という概念は、さらに上の抽象度空間への扉を開く大切なものです。この続きは「The Power of Mind Ⅰ」第七章にまとめます。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/7383761.html

 

(つづく)

 

 

苫米地式認定コーチ                        

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)