F-019:「Connecting the dots」 by スティーブ・ジョブズ
先日、コーチングセッション中に、2005年にスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で行った講演の話題になりました。
スティーブ・ジョブズ(Steven Paul Jobs、1955~2011年)はアメリカ合衆国の実業家で、アップル社の共同創設者の一人です。その言動が社内を混乱させたとして閑職へ追いやられ1985年にアップル社を辞めますが、1996年に業績不振で苦しむアップル社に復帰しました。
その後、iPod、iPhone、iPadといった一連の製品群を軸に、アップル社を「パソコンの会社」から「デジタル家電の企業」へと進化させました。さらには「メディア配信事業」という業界自体をつくりあげました。
そのジョブズが、「私は大学を卒業したことがありません。じつのところ、今日が人生で最も大学卒業に近づいた日です。本日は自分が生きてきた経験から三つの話をさせてください。たったの三つです」と語りはじめ、有名な「Stay hungry, Stay foolish」で締めくくったスピーチは今も語り継がれています(ネットで全文を読むことができます)。
今回は、ジョブズが最初に述べた「Connecting the dots」について取り上げます。
You can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backward.
So, you have to trust that the dots will somehow connect in your future.
You have to trust in something – your gut, destiny, life, karma, whatever.
This approach has never let me down, and it has made all the difference in my life.
先を見通して点をつなぐことはできない。振り返ってつなぐことしかできない。
だから将来何らかの形で点がつながると信じることだ。
何かを信じ続けることだ-直感、運命、人生、カルマ、その他なんでも。
この手法は私を裏切ったことはなく、そして私の人生に大きな違いをもたらしてくれた。
…コーチングセッション中は、「時間の流れ」という視点でこのスピーチを説明しました。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6542317.html
他にも、この短い言葉の中には、「ゴール」、「エフィカシー」、そして「ゲシュタルト」といったコーチングにおいてとても重要な概念が含まれています。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5615935.html
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5616012.html
ここでは「ゲシュタルト」について、さらに深く掘り下げます。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6193912.html
「ゲシュタルト(Gestalt)」は“形態”を意味するドイツ語で、全体性を持ったまとまりのある構造のことを指します。
例えば、「ハシをつくる工○」という言葉を目にしたとき、その「ハシ」が「箸」なのか「橋」なのかは判断ができません。ところが、「○」に入る文字が「場」なら「ハシ」は「箸」だと分かり、「事」なら「ハシ」が「橋」だと分かります。
「ハシをつくる工場」という全体が分かってはじめて、「ハシ」が「箸」だとわかる…つまり、「全体が分かることで部分が分かる」のです。
人間の心理現象に関しても同様です。
構成主義・要素主義の立場では、「人間の心理現象は要素の総和によるものであり、視覚・聴覚などの刺激には、個々にその感覚や認識などが対応している」と考えます。
例えば、既知のメロディーを認識する過程では、1つ1つの音に対して記憶と対照した認知があり、その総和がメロディーの認識を構成するという感じです。
ところが、この説では移調した旋律を同じものと認識できる人間の認知機能を説明できません。
ゲシュタルト心理学では、知覚は単に対象となる物事に由来する個別的な感覚刺激によって形成されるのではなく、それら個別的な刺激には還元できない全体的な枠組みによって大きく規定されると考えます。
ここで全体的な枠組みにあたるものが「ゲシュタルト」と呼ばれます。
このようなことが明らかにされたのはつい最近、1980年代半ばにポストモダニズムが登場して以降のことです。
アイザック・ニュートンが古典力学を確立した17世紀から1980年代半ばまで、「部分が全体をつくる」という考え方がスタンダードでした。いわゆる構造主義の考え方です。
つい最近までのおよそ300年もの間、「部分が全体をつくる」という考え方がスタンダードであったため、たいていの方々は今でも「部分が全体をつくる」「部分を順に見ていけば全体が分かる」「部分を順に追っていけば答えが分かる」という考え方にとらわれています。
医療・介護の現場においても、いまだにこの古い考え方にとらわれたままの医療従事者が、驚くほどたくさん存在しています。
しかし、実際は違うのです。
全体が部分から成り立っているだけでなく、全体と部分が双方向的に関係しており、全体が分かることで部分が分かるのです。
この全体と部分との双方向の関係が「ゲシュタルト」です。そして、ゲシュタルトによって事象を認識する能力を「ゲシュタルト能力」といいます。
私が「生きる意味を確信すること」や「死を想うこと」が重要だと考える背景には、この理論があります。
私たちは自分自身の死をしっかり見据え、その意味を知り、死が近づきやがて一体となることそのものが“生”であると認識した上で、目の前の一瞬を鮮やかに生きる必要があります。
そんな生き方そのものが幸福となります。
それはスピリチュアルペインを克服した先にある真の幸福です。スピリチュアルペインに関しては、「The Power of Mind Ⅰ」第四章で詳しく解説いたします。
You can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backward.
So, you have to trust that the dots will somehow connect in your future.
先を見通して点をつなぐことはできない。振り返ってつなぐことしかできない。
だから将来何らかの形で点がつながると信じることだ。
…「connect the dots(点をつなぐ)」とは、ひと回り大きなゲシュタルトで物事をとらえることです。それは、ひとつ上の抽象度で物事をとらえることと同意です。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/cat_123517.html
ジョブズはその重要性を、そしてその達成を信じ切ることの大切さを、若い世代に伝えたかったのだと思います。
それはスピリチュアルペインを克服する鍵となるものであり、人を真の幸福に導くものであるからです。
私が医療・福祉、そして教育といった“いのちの現場”にコーチングを届けたいと願うのも同じ理由からです。
私は、「医療」「福祉」「教育」といったゲシュタルトをはるかに越えた抽象度で、「点をつなぐこと」を熱望しており、そして、「点をつなぐこと」ができると確信しています。
その実現のために、このブログも100% want toで書いています。
Stay hungry ! Stay foolish!!
By Steven Paul “Steve” Jobs
苫米地式認定コーチ
苫米地式認定マスターヒーラー
CoacH T(タケハラクニオ)
Wikipedia より引用
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