F-014:「THE LAST JEDI」評 ~ネタバレなしversion~
今回は「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」がテーマです。
通算(本編)8作目となる「THE LAST JEDI」は、公開後3日間で世界の興行収入が4億5080万ドルを記録する大ヒットとなりました。しかし、映画批評家と一般観客の評価は大きく分かれました。
映画レビューサイトRotten Tomatoesでは、批評家93%に対して観客満足度は56%。映画レビュー集積サイトMetacriticでは、批評家86点(100点満点)に対して観客は4.9(10段階)です。
その理由を、コーチとしての視点で考えてみました。
「THE LAST JEDI」の脚本を書いたのはライアン・ジョンソン監督自身です。
今回の話は前作(本編7作目)「THE FORCE AWAKENS」から続くストーリーですが、ジョンソン監督はインタビューにこのように答えています。少々長いですがWIRED(2018年1月9日配信)から引用します。
エピソード7から8をやるとき、そして次は8から9に行くわけだけど、関係者で話し合う機会をつくったんだ。
7から8へのバトン渡しでは、主に僕がJ.J.(注釈:SW7の監督・共同脚本家 J.J.エイブラムス)に「フォースの覚醒」とそこでの選択について質問をした。あれは何を意味しているのか?こちらは?といった具合にね。彼からできるだけ多くの情報を引きだすようにしたんだ。
でも、そこからは完全にバトンを受け取った。自分がここから引き継ぎたいと思っている場所から引き継ぐことができて、物語がどうなるべきか、またドラマチックな状況で一番ふさわしいと思う選択をする自由があるということが、このシリーズをつくるうえでは非常に重要だと思っている。
そして、8から9へのバトンタッチでも同じだ。仮にここで次回作のネタバレをしたいと思っても、そんなことはできないんだよ。J.J.とクリス・テリオが脚本を書いている最中で、「最後のジェダイ」はどのような状態で終わったか、この先はどういう可能性があるかといったことについて、彼らに伝えたばかりだからね。ふたりはこれからこうした情報を元にストーリーを組み上げていく。ぼくはここから先は観客の1人にすぎなくて、シリーズの行方を見守るだけなんだ
…私が驚いたのは、7作目が公開された時点で8作目、9作目のストーリーがまったく決まっていなかったことです。
「全体と部分の双方向性で成り立ち、一つの統合的意味を持つまとまり」というゲシュタルトの考えでいうと、先に全体が決まっていないことで一貫性がなくなったり、中途半端になってしまうリスクが生じます。
批評家の評価が高いことを考えると、そんなマイナス面は(現時点では)感じられなかったと考えられます。むしろ、ジョンソン監督が言うように「選択をする自由」から新たな可能性が生まれました。
スター・ウォーズの生みの親 ジョージ・ルーカスは、新たな三部作(7~9)の構想を持っていたそうです。しかし、ルーカスフィルムを買収したディズニーはそれを受け入れませんでした。
それは、おそらく、ルーカスがSWサーガを創りだした人であるがゆえに、強力なスコトーマがあり、自由な発想ができなくなっていることを(ディズニー側が)理解していたからです。
ルーカスに代わって新たな物語づくりを託されたJ.J.エイブラムスは、オリジナル三部作の主役(ルーク・スカイウォーカー、レイア・オーガナ、ハン・ソロ)も描きながら、新たな可能世界(possible world)を創造しました。そして、それを引き継いだジョンソン監督が、今作でその可能世界をさらに拡張しました。あえてスカイウォーカーから離れるような演出は“創造的破壊”の象徴です。
日本の某大企業のトップに返り咲いた創業家がお友達人事をしたことが話題となっていますが、かつては隆盛を誇った組織が没落していくのは、その成功体験が足かせとなり、スコトーマが外せなくなるからです。
コーチングを受けてマインドの力を発揮できるようになると、かつては夢だったようなことが次々と現実となります。それは同時に、強力なコンフォートゾーンをつくりだし、さらなる進化・向上を阻むように無意識が働いてしまうようになることを意味します。
いわば「“出し惜しみ”マインド」です。
ルーカスが生みだしたSWサーガは、全世界の熱狂的なファンの心に強力なコンフォートゾーンを作り上げました。それ故に、そのコンフォートゾーンを壊しさらに先に行こうとする次世代の監督たちの意図が、生粋のファンには不快に感じられるのです。
それが観客評価(特に熱狂的なファンであるほど)が低い理由ではないでしょうか。
「LAST」とは終わりではなく、新たな可能世界の始まりである
…それが「THE LAST JEDI」の後に、コーチとしての私が感じたイメージです。
苫米地式認定コーチ
苫米地式認定マスターヒーラー
CoacH T(タケハラクニオ)
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