Q-006171117研修会アンケート回答編 vol.4

 

 霧島市(鹿児島県)で開催したコーチングをテーマとした研修会に、たくさんの保健師・看護師さんに御参加いただきました。御意見や御質問の一部に回答いたします。個人が特定されそうなもの等は除いていますので御了承ください。

 

 

・自分の心を書き換えるには具体的にどうすればいいか教えていただきたいです

・マインドにどのように働きかけたらよいか。もっと具体的に知りたかった

・コンフォートゾーンを少しずつずらす具体的な方法などを知りたいです

A:研修会では、霧島市(鹿児島県)の健康計画中に「行動科学に基づいたセルフケアを行うことを目的に」という文言があり、それ(行動科学)は古いパラダイム(構造主義)に基づいたモデルであることを説明しました。

 心理学は「フロイトやユングの時代」から「実験心理学」になり、現代は「認知心理学」へと発展しています。行動主義(科学)である「実験心理学」以前の心理学は文系(文学部、教育学部)の領域でしたが、関数を扱う認知科学となった現在は理学部の領域へと変わっています(海外では)。

 行動主義では人間を「入力と出力の関係」でみますが、認知科学では人間を「内部表現」としてみて、「内部表現を変えることで(入力を変えることなく)出力が変化する」と考えます。「内部表現」とはマインド(脳と心)のことです。そこでの情報処理が言動などの出力を決めるのです。よって、マインドを変えると行動が変わることになります。

 じつは、出力だけではなく、そもそも入力そのものがマインドでの情報処理により決まっています。講義中のスコトーマ体験を思いだしてください。スコトーマは現在のブリーフシステムから生まれています。その現在のブリーフシステムは、過去の記憶でつくられています。一般的には「思い込み」や「偏見」と表現されています。

 「過去でつくられたブリーフシステムを、未来からつくりなおすこと」がコーチングです。このまま続く現状の延長線上にはありえない何かをゴールとして設定することでブリーフシステムが変わり、コンフォートゾーンが変わります。

 よって、「自分の心を書き換える方法は?」「マインドにどのように働きかけたらよいか?」「コンフォートゾーンをずらす方法は?」という質問への回答は「コーチングを受けること(学ぶこと)」です。より具体的な答えは「本物のゴールを設定すること」となります。

 

 

・空(くう)が少しあいまいなイメージで難しく感じました

A:「空」は覚りの境地ですから(笑)。仏教を学ぶ者は「難しく感じるのはあたりまえ」と答えるはずです。大乗仏教において、空の理解はゴールではなくスタートですけど。

 ちなみに、チベット密教では約22年間顕教を学んだあとに密教に入るそうです。その22年間の間に空について徹底的に学んでいきます。つまり、密教者が22年かけるところを数分間で学んだようなものですので、「あいまいなイメージ」であっても感じられたこと自体がすばらしいことだと思います。空の本質を考えると、むしろ、「あいまいなイメージ」だからこそすばらしいともいえます。

「空の理解はゴールではなくスタート」と書きましたが、空の体得である空観(くうがん)の先に仮観(けかん)があり、空観と仮観の一つ上の抽象度に中観(ちゅうがん)があります。スタートとは、中観へ向けてのスタートです。
 
私は空・仮・中の三つを同時に体感している状態こそが涅槃であると思っています。その状態を天台宗では「円融三諦(えんゆうさんたい)」と呼びます。


・リラックスできると消してしまわれた音楽~音 → もっと聞きたかった

A:洗脳・脱洗脳のスペシャリストである苫米地博士は、じつは、音の研究家でもあります。博士が製作する「機能音源」は、特殊な周波帯の音を脳に浴びせることで脳の特定の部位を刺激し、IQアップ、集中力アップ、記憶力向上、リラックス、快眠他を実現します。

 博士の80年代からの音の研究は、2004年にディスカバリーチャンネルに取り上げられました。同番組は世界中で放映され、4億人が視聴したそうです。ある音源はテロ予防として某国の空港で使用され、暴動対策として刑務所でも利用されているそうです。

 私は、自宅はもちろん、職場でも常に機能音源を流しています。保健センターでの研修会中にも音源をかけていました。御指摘の「途中で消した(変えた)音楽」も博士の機能音源です。じつは、あと四つの機能音源がかかっていたのですが気づきましたか? スピーカーも持ち込んでおり、しかも全部フルボリュームでかけていたんですよ(笑)。

 興味のある方は、苫米地博士の「音楽と洗脳:美しき和音の正体」(徳間書店)をお読みください。ハイレゾ対応の純正律でつくられた機能音源も付属しています。

 

 

・講義前に関連した本を読んでいれば理解がさらに深まったのではと思いました

A:そのとおり。予習が大切なのは、まず“全体”をつくることで“部分”の認識や理解がしやすくなるからです。ゲシュタルトが作りやすくなります。

 ゲシュタルトに関しては、前々回(Q-004)の三つ目の回答、前回(Q-005)の一つ目の回答を参照してください。

 

 

・相手を行動変容させようとするときは、まずは自分が心からその人と一緒に何とかしていきたいと心をもってどこにゴールを持っていくかを一緒に考えていくことが大事?

A:コーチは自我を可能な限り消してコーチングを行います。あえて言葉にすると「100%相手の利益だけを考える」状態です。だからスコトーマが外しやすくなります。「相手を行動変容させよう」とは考えておらず、そもそも「行動を変えたい」「人生を変えたい」と強く願う人しか相手にしていません。

 冷たく聞こえるかもしれませんが、そうでなければ「~ねばならない(have to)」となり、創造的回避(Creative Avoidance)が働いてしまうのです。その結果「変わりたい」という言葉とは裏腹に、強力な現状維持の力(ホメオスタシス・フィードバック)が働いてしまいます。「啓発」という言葉の語源は論語ですが、孔子も同じことを考えていたようです。

 私もとても痛い経験をしました。職場へのコーチング導入が予想外の反発にあってしまったことは、経営陣の本心(抽象度)を読み違えていたからです。本当かどうかは別として、「あなたのせいで看護体制が崩壊する。病院が維持できない」と経営陣に言わせる状況を招いたことは私の大失敗でした。それ以来、私は常に空(くう)を意識するようにしています。詳細は「The Power of Mind Ⅰ」の第六章で取り上げます。

 「コーチングでは相手のゴールにはかかわらない」ことが大前提であることを知っていただいた上で、あえて相手のゴールにうまく関わる方法を一つ書きます。それは、「わたし(I)」と「あなた(You)」の双方を満たすゴール(目標、課題等)を考えることです。つまり、「わたしたち(We)」という視点で考えるということです。その時に、抽象度が一つ上がっています。Q-003の一つ目の回答や「The Power of Mind Ⅰ」第一章ラストの「“無敵”の意味」を確認してください。

 

(つづく)

 

苫米地式認定コーチ                        

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

音楽と洗脳