F-447:音楽から引退することはできない <vol.1;映画音楽の巨匠の軌跡>

 

 前回(F-445~)取り上げた映画「BLACK RAIN」を、私は映画館で二度観ました。

 F-445~BLACK RAIN

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_433236.html

 

二度目は大学受験初日の夜。その日、先に観たのは「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」でした。音楽を担当したのは映画音楽の巨匠 ジョン・ウィリアムズ(John Towner Williams1932~)です。

*インディといえばこの曲↓

John Williams & Saito Kinen Orchestra - "Raider’s March" from "Raiders of the Lost Ark"

 

 

インディ・ジョーンズ 最後の聖戦

 

 

 ウィリアムズは、皆さん御承知のとおり、映画音楽史上最も高い評価を得ているといっていい作曲家。グラミー賞を26回、アカデミー賞を5回受賞(ノミネートは54回!)しています。「ジョーズ」「スター・ウォーズ」「未知との遭遇」「スーパーマン」「E.T.」「74日に生まれて」「ホームアローン」「JFK」「シンドラーのリスト」「ハリー・ポッター」「プライベート・ライアン」「リンカーン」などそのメロディを誰もが耳にしたことがあるはず。

 

 

John_Williams_2024(Wikipedia)

ジョン・ウィリアムズ(2024年撮影)

Wikipediaより引用

ジョン・ウィリアムズ (作曲家) - Wikipedia

 

 

そんなウィリアムズは、昨年(2025年)、自伝を出版しました。その出版に関するインタビューの最後の言葉は「音楽から引退することはできません。それは呼吸のようなもので、私たちの人生だから」でした。

これは「音楽は“命”にかかわる大切なホメオスタシスの一部であり、“生命(活動)”そのもの」という意味であるはず。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4831660.html

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4971818.html

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4971956.html

 

 巨匠らしい抽象度の高さを感じさせる言葉ですが、そこに至るまでは“らしくない表現”が続きました。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4448691.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4449018.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516484.html

 

 例えば、映画音楽について

あまり好きではなかった

懐かしい思い出として記憶しているだけ

儚く、断片的

ただの仕事」  とコメントしています↓

ジョン・ウィリアムズ「映画音楽あまり好きじゃなかった」「ただの仕事」 | THE RIVER

 

 インタビュー記事を読みながら、私はすごく混乱しました。壮大で美しい数々の楽曲やドキュメンタリー映像等での明るく前向きなイメージとインタビューでのコメントがあまりに乖離していたから。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5882652.html

 

 きっと深い意図があるに違いないと思いながら、ジョン・ウィリアムズについてリサーチしてみました。ブリーフシステム分析の過程で感じたことを整理しながら、先ほどの発言を考察します。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721531.html

 

 vol.1;映画音楽の巨匠の軌跡

 

 

 まずは映画音楽の巨匠と呼ばれるまでの軌跡を確認しましょう。

 

 ウィリアムズの母親はジャズドラマーだったそうです。きっと生まれた時から音楽がコンフォートゾーンだったのでしょう。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6040892.html

 

大学時代に作曲を学び、ジャズバンドの一員として活動します。最初はトロンボーンに憧れていたそうですが、アメリカ空軍に入隊後はピアノとベースの演奏を担当し、軍楽隊の指揮と編曲も行っていたそうです。

兵役を終えた後(23歳)、かの有名なジュリアード音楽院に入学します。コンサートピアニストになることを夢みてピアノを専攻しましたが、同世代のピアニストの演奏を目の当たりにし、作曲に専念するようになったそうです。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5882609.html

 

作曲家を志したモチベーションの根底には、ピアニストとしての劣等感があったのかもしれません。

Q-380自分を下に引き戻そうとする意識が働くことがあります<後編;plan-side

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/34672869.html

 

 卒業後は再びピアニストとして活動し、「ピーター・ガン」「ティファニーで朝食を」「シャレード」「アパートの鍵貸します」「ウエスト・サイド物語」といった映画音楽のピアノを担当します。この頃にジャズアルバムもリリースしたそうです。

 話が逸れますが、幼少の頃の私は、なぜか「ピーター・ガン」のテーマが大好きでした。そのピアノを弾いていたのがじつはジョン・ウィリアムズだったと知り、とても驚いています。

 *「ピーター・ガン」のテーマ↓

 ピーター・ガン/ヘンリー・マンシーニ

  

 映画音楽にピアニストとして関わるようになった後、テレビ音楽を作曲するようになり、徐々に映画音楽の作曲へと活動の場を移していきます。そして、1972年に「屋根の上のバイオリン弾き」でアカデミー賞(編曲・歌曲賞)を受賞します。

 *その時の映像がこちら↓

 Fiddler on the Roof Wins Adaptation and Original Song Score: 1972 Oscars - YouTube

 

 その後「ポセイドン・アドベンチャー」「タワーリング・インフェルノ」「大地震」といった大作映画の音楽を担当するようになり、ついにスティーヴン・スピルバーグ(Steven Spielberg1946~)と出会います。

 スティーヴン・スピルバーグ - Wikipedia

 

 余談ですが、たった2つの音で作られた「ジョーズ」のメインテーマを聴いたとき、スピルバーグは冗談だろうと思ったそう。その後様々なテーマのバリエーションを聴き、「最もシンプルなアイデアこそが最高なのだ」と納得したそうです。

その「ジョーズ」の楽曲にて、ウィリアムズは2つ目のオスカーを手にします(以後の受賞はすべて作曲賞)。

*「ジョーズ」のテーマ↓

 John Williams: Theme from Jaws (Boston Pops)

 

 その後数多くの作品を共作することになるスピルバーグの強い勧めで取り組むことになったのが、ジョージ・ルーカスの「スター・ウォーズ」。

 ジョージ・ルーカス - Wikipedia

 

1977年の第1作(Episode /A New Hope)から2019年の第9作(Episode /The Rises of Skywalker)までのすべて音楽を担当し、さらにスピンオフ映画「ハン・ソロ」(2018年)やDisney+で配信された「オビ=ワン・ケノービ」(2022年)にも楽曲を提供しています。

 *「スター・ウォーズ」メインタイトル↓

 John Williams & Wiener Philharmoniker – "Main Title" from "Star Wars: A New Hope"

 

 ルーカス(&フィリップ・カウフマン)の原案をもとにスピルバーグが監督を務め生みだしたのが「インディ・ジョーンズ」シリーズ。

冒頭で紹介したインディのテーマ曲だけでなく、マリオンのテーマ曲も秀逸です。42年という長い時を経て、その美しい旋律は深みを増しています↓

 John Williams & Anne-Sophie Mutter – Williams: Marion's Theme - From "Indiana Jones"

 

 

 ジョン・ウィリアムズの長い音楽活動の軌跡をたどるにはまだまだ情報が足りませんが、あと1つだけエピソードを紹介します。

 

 1993年、スピルバーグとウィリアムズのタッグは、正反対の映画と音楽を生みだしました。最初に公開されたのが「映画の歴史が変わる スピルバーグが変える」というキャッチコピーが付けられた「ジュラシック・パーク」。その後が「一つの生命を救う者が 世界を救える」というキャッチコピーの「シンドラーのリスト」(日本での公開は942月)。

 *「ジュラシック・パーク」のテーマ曲はこちら↓

 John Williams & Vienna Philharmonic – Williams: Theme from “Jurassic Park”

 

 「ジュラシック・パーク」終了後にすぐに「シンドラーのリスト」の撮影のためにポーランドに飛んだスピルバーグは、帰国後ラフカットをウィリアムズに見せて音楽を依頼します。

その映像を見て「打ちひしがれ、言葉が出なかった」「圧倒されて、涙が出た」というウィリアムズは、盟友に正直な気持ちを打ち明けます。「この映画は、私よりも優れた作曲家が必要だと思う」。その告白に対するスピルバーグの返答は、「わかる。でも、彼らはみんな死んでしまった」

 「彼の粘り強さのおかげで音楽を引き受けた」というウィリアムズは、「でも、本当に自信がなかったんだ。誰が、どんな曲を書いても、ふさわしい曲にはならない- それほど重みのある作品だった」と述べています(Disney+「ジョン・ウィリアムズ 伝説の映画音楽」)。

 このエピソードから感じるのは、スピルバーグのエフィカシーを高める働きかけ。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5616012.html

 

 もっと正確に表現するとコレクティブ・エフィカシーです。

 Q-310~2:私のまわりではvol.5~7:コレクティブ・エフィカシー>

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31049084.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31078775.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31102405.html

 

 そのエフィカシーによりセルフイメージの限界を突き破り、ついに生みだされたのが、5つ目のオスカーをもたらしたこの名曲↓

 *サントラ録音時のヴァイオリニスト イツァーク・パールマン演奏

 John Williams: Schindler´s List Theme - Itzhak Perlman

 *2023年ジョン・ウィリアムズ来日時演奏(サイトウ・キネン・オーケストラ)

 John Williams & Saito Kinen Orchestra - Schindler’s List (Live at Suntory Hall, 2023)

 

 

 私は「シンドラーのリスト」を観る前にこの楽曲を聴きましたが、それはまさに「打ちひしがれ、言葉が出なかった」「圧倒されて、涙が出た」という至高の体験でした。

ひょっとしたら、「高抽象度の未知なるLUB」に触れてしまったのかもしれません。

 F-299~:芸術は高抽象度の未知なるLUB。では、コーチングは?

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_425725.html

 

 

 ところで、きっと誰もが音楽を聴いて「打ちひしがれる」「言葉が出ない」「圧倒される」「涙が出る」という体験をしているはず。なぜ、そのようなことが起こるのでしょう?

 

 著書「音楽と洗脳 美しき和音の正体」(徳間書店)の中で、苫米地博士は「音」や「音楽」について詳しく解説されています。これから4回にわたって同書より引用します。

まずはこちらから(p71)。

 

 

◎音はどうやって脳を刺激するのか?

 それにしても不思議なのは、なぜ、ある一定の響きやパターン、変化が脳を刺激するのか? です。

 そもそも音とは空気の振動です。この振動が耳から入り、長さ約3.5センチの外耳道を通って鼓膜を揺らします。たったそれだけのことなのに、人は音に気持ちよさや不安感などを感じ、時にはトランス状態にまでなってしまいます。

 この秘密を解き明かすためにも、一度、音がどのようにして脳まで届くのかを確認する必要があるでしょう。

 それでは、鼓膜を震わせた空気の振動は、どんな経路をたどって、脳に行き着くのか見てみましょう。

 鼓膜に伝わった空気の振動は中耳にある3つの連携した小骨に伝わります。ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨で、鼓膜で受けた振動はこれら3つの骨によって増幅されて内耳へと伝わっていきます。

 ただし、耳小骨は骨である以上どうしても物理的な制約がかかってしまいます。大きなエネルギーを持つ音が入力されても鼓膜のように大きく振動せず、エネルギーの小さな音ではそもそも振動できません。私たちの耳に可聴域があるのはこのためで、可聴域の下が約20Hz、上が約20kHzと決まっているのは、鼓膜の振動を内耳に伝える伝導体が骨だからです。

 中耳の奥にあるのが内耳で、カタツムリ(蝸牛)の形をしています。蝸牛の内部はリンパ液で満たされており、リンパ液の中には2万個ほどの有毛細胞があります。

 この有毛細胞は文字どおり、蝸牛内部に生えた毛で、この毛が音の周波数の高低に反応します。

 例えば、高い音は蝸牛の入り口付近に生える毛だけを揺らします。一方、低い音は蝸牛の奥、つまりカタツムリの殻の奥のほうの毛まで振動させることができます。

 ですから蝸牛の入り口の有毛細胞しか振動していないと脳が認識すれば、いま高い音が鳴っているとわかり、蝸牛の奥まで振動していれば、いま低い音が鳴っているとわかるわけです。

 ちなみに、年齢が上がってくるに従って高音が聞きづらくなるのは、高音に反応する有毛細胞が蝸牛の入り口に生えているからです。入り口付近の毛ですから、担当外の低音でも常に揺らされることになり、消耗が激しくなってしまいます。年を経るに従って高音の代表的な音であるモスキート音が聞こえなくなるのは高周波に反応する入り口付近の有毛細胞が徐々に劣化(脱毛)してしまったのが原因です。

 引用おわり(このつづきは次回引用します)

 

F-448につづく)

 

 

CoacHing4M2 EDGE         

 CoacH T(タケハラクニオ)

 

 

 

-追記1

 「映画制作者を育成し、映画芸術の遺産を顕彰する」ために設立された団体AFIAmerican Film Institute)は、2005年にアメリカ「映画音楽ベスト100film scores)」を発表しました。

 映画音楽ベスト100 - Wikipedia

 

 堂々の1位に選ばれたのは、「スター・ウォーズ」のこの曲です↓

 John Williams & Saito Kinen Orchestra - 王座の間とエンドタイトル

 

 ちなみに、私の1位はこちら↓

 John Williams & Vienna Philharmonic – Williams: Imperial March (from “Star Wars”)

 

 ウィリアムズ自身のお気に入りはこの曲なのだそう↓

 John Williams & Berliner Philharmoniker – Yoda's Theme (Official Music Video)

 

 

-追記2

 2016年に、ジョン・ウィリアムズは、AFIから「生涯功労賞」を贈られました。

授賞式当日、インディのテーマ曲が流れる中ちょっと不機嫌そうに登場したハリソン・フォード(Harrison Ford1942~)は、「この“damn music”がいつもついて回る。舞台に上がるとき、舞台から降りるとき、いつもこの曲がかかる。この前なんか大腸内視鏡検査を受けている手術室でもかかった」と悪態をつきます。

そんなつかみの後に取り上げたのは「マリオンのテーマ」。ウィリアムズが作る音楽の本質を捉え、さらに音楽の持つ力を感じさせる名スピーチです↓

Harrison Ford on the "Indiana Jones Theme" song, praises John Williams

 

その日のジョン・ウィリアムズのスピーチもどうぞ↓

ジョン・ウィリアムズが第44回AFI生涯功労賞を受賞

 

 

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一緒に楽しみましょう!

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