F-393:ナイセイカンショウ <vol.2;内政不干渉の原則>

 

 サッカー北中米ワールドカップ出場を決めた試合(2025320日、vs バーレーン)で1ゴール1アシストと圧倒的なパフォーマンスを見せた久保建英選手は、試合後このようにコメントしました。

 

 自分の実力は分かっている。幼稚さ、幼さは抜けていい選手になったと思う

 

 これはブリーフシステム(Belief SystemBS)、あるいは自我が、「幼稚で幼い選手」から「幼稚さ、幼さが抜けたいい選手」に書き換わったということ。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721531.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353425.html

 

 一体何があったのでしょう?

 

 vol.1;関数pの再定義ではなく、可能世界“w1”から別の“w2”への移行を促す

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/36550679.html

 vol.2;内政不干渉の原則

 

 

 皆さんは「内政不干渉の原則」という概念(ゲシュタルト)を御存知でしょうか?

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6193912.html

 

 Wikipediaによると、それは「国家は国際法に反しない限り、一定の事項について自由に処理することができる権利を持ち、逆に他国はその事項に関して干渉してはならない義務があるという、国家主権から導出される原則」のこと。

 内政不干渉の原則 - Wikipedia

 

 「国際法に反しない限り」「権利」「義務」「原則」という言葉からわかるとおり、「内政不干渉」は絶対的なものではなく、決して不可侵なものではありません。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6194669.html

 

 それに対して、コーチングにおける「コーチはクライアントのコンテンツには一切関わらない」は絶対的であり、必ず守らなければならないこと。その理由は?

 

 以下、「DaiGoメンタリズム VS Dr.苫米地“脱洗脳”」(ヒカルランド、p270)より引用します。この対談本の最後には苫米地博士による「洗脳の定義」(苫米地コム、1998925日付)が収載されています。その部分からの引用です。

 引用した意図を推しはかりながら、「コンテンツには一切関わらない」ことの重要性を感じてください。Feel

 

 

個々の事例との類似性は、概念の定義ではない

 ちょっと脱線しましたが、ようするに言いたいことは、アメリカの最先端の研究の成果が書かれたものになって、さらに和訳されて、日本に浸透するまでの時間のギャップは、研究成果そのものが、アメリカで上がっている以上しょうがないものがあるということと、その和訳を権威ある定義だとしてしまうと、良くて10年、悪くて20年遅れた定義になりますよ、ということを言いたい訳です。

 大体私達が知りたいのは、brainwashingという、米国におけるいろいろなインスタンス(実例、事例)をグループ化したに過ぎない単体の意味ではなくて、もっと抽象化された「洗脳」の概念そのものの定義です。

 Toshiや貴乃花を見て私に質問をしてきたジャーナリスト達の「あれは洗脳ですか」という質問には、私をうならせる困った日本の学問の実状がこのようにからんできます。ジャーナリスト達が思い浮かべている「洗脳」は、確かに概念として存在します。それは、先に定義した「認知的行動主義的手法」の下位概念であり、昔の中国共産党が利用した一連の「brainwash」手法から帰納的定義した概念の上位概念になるものでしょう。

 現在でも、そのインスタンス(実例)が存在している概念でなければ、質問の答えとして親切ではないでしょう。英語なら、それに当てはまりようなのは、unethical cognitive behavioral controlとでもいえる概念だと思いますが、どうも、日本語では、「洗脳」という言葉がぴったりのようです。昔の中国共産党的な、物理的に拘束してガンガンやるやり方は、当時brainwashと呼ばれていましたが、これは、英語では死語に近い言葉です。どちらかというとmind controlという言葉のほうが生きていると思います。

 一方、日本語では、「洗脳」ということばは生きています。「洗脳セミナー」とか、「カルト洗脳」とか「洗脳された」という言葉は、良く聞く言葉です。だいたい昔の中国共産党的な「brainwash」は世界中まあどこにももうないでしょう。少なくとも日本ではあり得ないでしょう。でも、それで、Toshiや貴乃花は、「brainwash」ではないといっても、そんなのは当たり前で、答えになっていないし、それを、概念の定義レベルで言ってしまえば、それは、クラスとインスタンス、つまり、概念とその実例の差を取り違えて、説明してしまうことになります。

 引用終わり

 

 

 「コンテンツには一切関わらない」という理由は、一般向けには、「スコトーマを生みだすから」「限界をつくるから」。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html

 

 コーチング実践者向けの本質的な理由は、「抽象度の上限はないから」であり、「空(くう)だから」です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353367.html

 

 人は空として存在し、無限の可能性を秘めています。そして、誰もその可能性すべてを知り得ることはできません。

 Q-409:ブリーフシステムをゼロベースで観察することが困難な中vol.3;方向>

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35983549.html

 

 だから、コンテンツには一切関わらない。

「『一人一宇宙』にそもそも関わりようがない」というのが私の本音です。

 Q-235:「財布を娘に盗られた」といったvol.6:記憶が織りなす「一人一宇宙」>

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/27981625.html

 

 

 では、サッカーの話に戻ります。

久保選手の変化(=関数pの再定義)に興味を持った私は、早速サッカー日本代表の記事を調べてみました。

 (「興味」の正体は↓)

 L-06320209月シークレット… -03;全面肯定しつつ、“現状の外”を志向する

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/28501205.html

 

すると、わかったのが

 

1)アウェーでのサウジアラビア戦(202410月)に向けた練習に2日目から合流した際に覇気がまったくなかった

 2)試合の終了間際に出場するも、見せ場を作れなかった

 3)試合後「今日はすみません」と取材を拒否してバスへ乗り込んだ

 4)一連の言動を見守っていた森保監督から「日本のために戦えるか?」「戦えないなら帰るか?」と問われた

 5)(久保選手)号泣

 6)長友選手から「お前は日本代表に必要だ。ラ・リーガでプレーしているんだろ?」と声をかけられた

 

 …1)~3)の“らしくない低パフォーマンス(ハビット&アティテュード)”の裏には、いつもとは違う低いセルフイメージがあったはず。

 L-09620217… -08BSとハビット&アティテュードと抽象度の関係

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/30652206.html

 

 セルフイメージが低下する要因は、大きく分けると4つあります。「身体的要因」「心理・精神的要因」「社会的要因」、そして「スピリチュアルな要因」です。

 L-00120201… -01;「全人的苦痛(トータルペイン)」と「4つの苦痛」の関係

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24505924.html

 

 「スピリチュアルな要因」をコーチとして突き詰めると、それは「ゴールがない」こと。

「ゴールがない」をさらに分類すると、「そもそも設定されていない」「本当のゴールではない」「すでに達成している(再設定なし)」、そして「ゴール側の臨場感を失っている」という感じ。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5615935.html

 

 森保監督や長友選手の言葉が刺さったことを考えると、久保選手の場合はおそらく「ゴール側の臨場感を失った状態」だったのでしょう。それは「エフィカシーが下がった状態」ともいえます。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5616012.html

 

 エフィカシーと双方向的に抽象度も下がり、「日本のために」という視点を失っていたはずです。それが久保選手が言及した「幼稚さ」「幼さ」の感覚でしょう。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4448691.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4449018.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516484.html

 

 ここでのポイントは、森保監督や長友選手は久保選手のBSや自我に直接言及していないこと。「お前は〇〇だからダメだ」と評価・判断するのではなく、「何で〇〇しないんだ」と責めるわけでもなく、ただ「日本のために」という方向性を示しています。

もちろん、それは抽象度が上がる方向性です。

 F-299~:芸術は高抽象度の未知なるLUB。では、コーチングは?

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_425725.html

 

 そんな働きかけが、結果的として久保選手のBSや自我を「幼稚で幼い選手」から「幼稚さ、幼さが抜けたいい選手」に書き換えました。

 F-222:コーチングの基本概念を習熟して、エフィカシーをブーストしよう!

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/27832570.html

 

 では、森保監督らの働きかけと久保選手自身によるBSや自我の(結果としての)書き換えの間には何が起こったのでしょう?

 Q-405:コーチングを受けると、結局のところ、どうなるのですか?

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35882023.html

 

F-394につづく)

 

 

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一緒に楽しみましょう!

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