F-392:ナイセイカンショウ <vol.1;関数pの再定義ではなく、可能世界“w1”から別の“w2”への移行を促す>
先日(2025年3月20日)、サッカー北中米ワールドカップ アジア最終予選が開催されました(vs バーレーン)。勝てば本大会出場が決まる大事な試合で1ゴール1アシストと圧倒的なパフォーマンスを見せたのが久保建英選手。
プレイヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた23歳の若者は、試合後このようなコメントを残しています。
何よりもみんなを安心させたい思いでプレーしていたので、前半は負けても良い試合のはずなのに負けちゃいけないみたいなところがプレーしている身からするとあって、ロングボールの精度とか、気持ちは入っていたけど、空回りではないけど硬さが見えていた。僕自身は動きが良かったので何とか結果を出してチームを落ち着かせたい、楽にしたいと思っていたので、アシストのところはゴールよりうれしかったかもしれない
「みんなのために」「チームのために」と繰り返した後、ふと漏らしたのが…
自分の実力は分かっている。幼稚さ、幼さは抜けていい選手になったと思う
…この「幼稚さ、幼さは抜けていい選手になった」というのは、「ブリーフシステム(Belief System、BS)」が書き換わったということ。
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それは「自我」が書き換わったということでもあります。自我とは、「部分関数」であり、「評価関数(重要性関数)」のこと。
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釈迦哲学で言い換えると、自我とは「縁起の中心点」です。
私たちは必ず「他との関係性」により存在しています。それが縁起。自我が書き換わると関係性が変わり、関係性が変わると自我が書き換わっていきます。
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「関係性が変わる」を違う表現で表すと「重要度が変わる」。その重要度が「評価関数(重要性関数)」としての自我です。重要度が変わるとRAS&スコトーマが変化し、それまでとはまったく違う世界を認識するようになります。
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「書き換わる」というのは、ただ「ズレる」というようなものではありません。その本質は「抽象度が上がる」こと。その抽象度が上がった感覚が、久保選手の「みんなのために」「チームのために」という言葉にあらわれています。
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自我が書き換わることの本質は「抽象度が上がる」こと
…以下、苫米地博士の著書「『性格』のカラクリ “イヤな他人”も“ダメな自分”も一瞬で変えられる」(誠文堂新光社、p193)より引用します。
人はさまざまな幻想に支配されている
私たちを束縛したり振り回したりしている幻想は、他にもたくさんあります。
「いい学校に進み、いい会社に入ってこそ幸せである」「家庭を持ってこそ幸せである」「自分の家を建ててこそ幸せである」といった幸福観。
「社会人はこうあるべき」「家庭はこうあるべき」といった暗黙のルール。
「会社を辞めたら食べていけなくなる」「結婚しなければ孤独で淋しい人生になる」といった恐怖。
日々の生活の中で、親や兄弟、教師、友人、メディアなどによって摺り込まれたこうした価値観は、情動と結びつき、ブリーフシステムとして前頭前野に蓄積されていきます。
いずれも実体はなく、幻想にすぎません。
いい学校に進み、いい会社に入ったから、家庭を持ったから、家を建てたからといって、幸せになれるとは限らず、むしろ苦しみを抱えることも多いでしょう。
「~はこうあるべき」といった価値観やルールは決して絶対的なものではなく、場所や時代が違えば簡単に変わってしまいます。
恐怖という感情の無意味さについても、PART3でお伝えした通りです。
しかし、私たちはそれらを盲目的に信じ込まされています。
「自分の意思で選んだ」「自分の意思で行った」と思っている選択や行為のほとんどは、誰かに選ばされていたり、やらされたりしていることであり、多くの人が、こうした過去の記憶、他者の価値観をもとに、自分の未来を決めてしまっているのです。
もっとも、私は、ブリーフシステムの存在自体を否定しているわけではありません。
ブリーフシステムは、社会による教育の成果でもあります。
教育が行われ、ブリーフシステムによって行動が制御されなければ、人間はもっと本能のおもむくままに、利己的に生きることになってしまうでしょう。
ただ、過去に摺り込まれた他者の価値観に振り回され、縛られて生きるのは、やはり「幸せ」ではありません。
それは、他者によって洗脳され、支配され、奴隷化して生きることだからです。
自分の本当の意思、自分の本当の望みに気づくことなく、他者の欲望を満たすために踊らされ続けて一生を終えるのは、とてもむなしいことだと思いませんか?
なお、現代の日本において、もっとも強力な洗脳装置として機能しているのが、テレビです。
映像や音が生み出す臨場感は、人の脳に強いインパクトを与えます。
近年、多少はテレビ離れが進んだとはいえ、テレビが流す情報を鵜呑みにしてしまう人は、まだまだたくさんいますし、テレビで活躍した人、テレビで人気のある人が選挙で選ばれ、政治家になることも少なくありません。
テレビからの情報は、現代の日本人のブリーフシステムに、かなり色濃く反映されているはずです。
これは、異常かつ危険な状態であるといえるでしょう。
また、多くの人は何も気づかずに、大手広告代理店やテレビ局、芸能プロダクションなどが提示する価値観を受け入れ、彼らが次々と与える欲望にとらわれています。
洋服、旅行、グルメ、人にうらやましがられるような生活……。
たまに欲しいものを手に入れても、すぐにまた欲しいものが現れるため、本当に満足できることはありません。
まさに、仏教でいう、「餓鬼」の状態になってしまっているのです。
人は、洗脳による支配から自由になったとき、初めて自分の本当の意思に基づいて未来を選択できるようになります。
そのためには、思考の抽象度を高め、物事を俯瞰して眺めること、スコトーマをずらし、見える世界を変えることなどが必要です。
PART2やPART3でご紹介したのは、単なる「『性格』を変える方法」ではありません。
さまざまな洗脳から解放され、他者からの摺り込みによるものではない、自分自身の価値観に基づいて、本当の意味で自由に生きていくための方法なのです。
引用終わり
人は、洗脳による支配から自由になったとき、初めて自分の本当の意思に基づいて未来を選択できるようになります。そのためには、思考の抽象度を高め、物事を俯瞰して眺めること、スコトーマをずらし、見える世界を変えることなどが必要です
…ところで、コーチングの重要なポイントは「クライアントのコンテンツには一切関わらない」ということ。
Q-381~:クライアント側に圧倒的な知識や経験があり、話の内容で相手が見えない場合の対応は?
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ここでいう「コンテンツ」とは、BSや自我のこと。そして、そのBSや自我が生みだしている“現実”のことです。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6542364.html
では、コーチは何に関わるのでしょう?
…答えは「クライアントの“未来”」。正確には「今のまま(のBSや自我)では絶対に達成することができない未来や世界(可能世界w2)に向かう“方向性”」です。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6542317.html
苫米地博士は、そのことを「コーチングでは関数pの再定義を促すのではなく、可能世界“w1”から別の“w2”に移行することを促す」と表現されています。
(バラダンでの講義では「wからw1」でしたが、現在の博士の表現に統一しています)
F-222:コーチングの基本概念を習熟して、エフィカシーをブーストしよう!
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/27832570.html
関数pの再定義を促さない =コンテンツに関わらない =(現在の)BSや自我には介入しない
…冒頭の久保選手の例でいうと、「『(これまでの)幼稚さ、幼さ』については評価・判断せず、それを変えようとも一切しない」ということ。
Q-409:BSをゼロベースで観察することが困難な中、どのように…? <vol.3;方向>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35983549.html
でも、結果的に久保選手のBSや自我は「幼稚で幼い選手」から「幼稚さ、幼さが抜けたいい選手」に書き換わり、「圧倒的なパフォーマンスを見せてW杯本大会出場獲得」という可能世界w2を現実化しました。
L-090:2021年7月シークレットレクチャー
-02;臨場感世界の現実化(realized virtuality)
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/30497354.html
一体何があったのでしょう?
(F-393につづく)
CoacHing4M2 EDGE
CoacH T(タケハラクニオ)
-追記-
映像や音が生み出す臨場感は、人の脳に強いインパクトを与えます
…久保選手のインタビュー中の姿(映像)や肉声(音)を観察しながら得たひらめきがこのブログ記事執筆のきっかけです。
Q-408:ブリーフシステムをゼロベースで観察する… <vol.2;〇〇を感じ取る力>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35967572.html
文字だけで「自分の実力は分かっている。幼稚さ、幼さは抜けていい選手になったと思う」という言葉を確認した場合にも、果たして同じように感じただろうか?
…そのように自問しながら、あらためて「もっとも強力な洗脳装置として機能しているテレビ」の怖さを思い知りました。
F-153~:チャリティーマラソンで走った人が走った分だけ募金するシステムは…
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_404043.html
-告知1-
2025年度のオンラインセミナーは、コーチング募集開始前の「コーチング説明会」として期間限定配信(2ヶ月)します。次回は2025年秋から配信開始する予定です。
-告知2-
クラブ活動をはじめました。その名は「コーチング・デ・コンパッションクラブ」。
一緒に楽しみましょう!
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-関連記事-
L-065:2020年9月シークレットレクチャー
-05;「生と死の間/ between life and death」に向き合い、「生/life」そのものを磨き上げる
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/28529789.html
L-115:2021年9月シークレットレクチャー -03;夢を現実化する方法
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32114512.html
L-170:2022年03月シークレットレクチャー -03;「新たな世界(w2)」を現実化する感覚
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/34892980.html
Q-403~:接遇に関する研修を何度も行っていますが、いつの間にか元の状態に戻ってしまいます。どうすればいいのでしょうか?
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_430302.html
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