Q-417:なぜパワハラや虐待がなくならないのでしょうか? <key 1;「S」>

 

医療現場で働く方から切実な御質問をいただきました。

 その一部に回答いたします。

 (変更を加えています)

 

 key 1;「S

 

 

Q:私は地方の病院で働いています。職員の間でのパワハラ・セクハラ・モラハラや患者さんへの虐待じゃないかと思える行いが嫌でしょうがありません。なぜパワハラや虐待がなくならないのでしょうか?

 

A1:まずは医療に関連した知識から紹介します。

 

 肝臓に脂肪が蓄積している状態を「脂肪肝」と呼びます。

脂肪肝は、じつは、あなどれない病態です。そのまま放置すると慢性的なダメージが蓄積し「肝硬変」に至り、さらには「肝がん」を合併することもあります。

「だから、早期発見・早期治療を!」ということで行われているのが、現在のメタボ健診です。正確には「特定健康診査・特定保健指導」といいます。

F-056~:「不摂生が理由で病気になった人の医療費を健康のために努力している人が負担するのは『あほらしい』」ことなのだろうか?

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_277070.html

 

 脂肪肝に加え、過体重、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などがある場合、飲酒量の確認が行われます。飲酒量が多くなく(アルコール 男性:210g/週未満、女性:140g/週未満)、主因が飲酒ではないと思われる場合には「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLDnon-alcoholic fatty liver disease)」と診断されていました。これまでは。

 

 ところが、最近、その診断名が「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLDmetabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)」に変わりました。その理由は何だと思いますか?

 

 答えは「『alcoholic』『fatty』という表現が差別的だから」です。

 

 

 しばらくの間、読み進めるのをやめて、御自身の心(思考)を観察してください。

 F-321:観自在 <実践編-1;モニタリング>

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32969294.html

 

「『alcoholic』『fatty』という表現は差別的」に対してどんなことを感じていますか?

違和感でしょうか? 驚きでしょうか? それとも憤り?

 

 

 おそらく多くの方にとって、「alcoholic(アルコール依存)」や「fatty(肥満)」という表現(ゲシュタルト)と「差別」(というゲシュタルト)は結びついていなかったはず。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6193912.html

 

 私自身は、「『alcoholic』『fatty』という表現は差別的」と聞いて、とても驚きました。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5882652.html

 

 医療・介護現場が主ではありますが、研修や講演の際にこの知識を紹介し、これまでの認識を確認してみました。すると、案の定、「alcoholic」や「fatty」が「差別」と結びついていない方がほとんど。これは「『alcoholic』『fatty』という表現は差別的」がスコトーマに隠れていたと考えることができます。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html

 

 以下、苫米地博士の著書「立ち読みしなさい! ~美しいほどシンプルな成功術」(ありがとう出版、p137)より引用します。

 

 

◆「見る」と「観る」は似て非なるもの

 漫画の中で出てきた3つ目のキーワードは“スコトーマ”です。

 スコトーマとは「心理的盲点」という意味。見えているのに気付けない状態のことを指します。百聞は一見に如かず! 早速、このスコトーマを体験してもらいましょう。

 今、あなたがいる場所から見える範囲の中で赤い物を3つ探してください。

 赤色であればどんなものでも構いません。できるだけ早く赤色を3つ探してください。

 スタートです!

 

 いかがでしたか? 見つかりましたか?

赤色のモノはありましたよね。それでは青色のモノは幾つありましたか?

 

「え? 青色?」そう思った感覚が大切です。もう一度確認をしてみると、青色のモノも存在していると思います。これがスコトーマです。

一体どうしてこのようなことが起きるのか説明していきます。

 スコトーマとは見えているのに見えていない状態だと話しました。実際に青色の物があったのに見えていませんでした。不思議だと思いませんか?

 結論から話すと、私たちの脳は同時に2つの世界を維持することはできません。

 そして、見たいものしか見ないのです。赤色と言われれば赤しか見ませんし、青色と言われれば青しか見ません。その他の色も見えてはいますが、認識しないのです。

 

 少し違う観点から説明します。

 私たちが小学生の時に習った漢字「見る」と「観る」の違いです。

 「見る」という行為はただ漠然と眺めているだけです。目を開けているので見えているだけだと思ってください。見えてはいますが、私たちの脳にとってはあまり重要な情報ではありません。

 しかし「観る」という行為は、意識して観ている。集中して観ている。気になって観ている。そういった状態です。私たちの脳にとっては重要な情報を得ようとしています。一眼レフのカメラであれば、その対象物にズームし、ピントを合わせている状態です。

 

 ちなみに「聞く」と「聴く」も同じような意味があります。

 「聞く」はただ聞こえているだけ。たとえ寝ていても何かしらの音は私たちの耳に入ってきます。しかし、ほとんどの音はまさしく右から入って左にぬけていくだけの状態です。

 これに対して「聴く」は意識して聴いている状態。興味があり耳を傾けている状態です。

 私たちの脳がその音に対して重要な情報だと認識し情報を欲している状態です。

 

 先ほどの質問を思い出してください。

 「赤い物を3つ探してください」ということだったので私たちの脳が「赤い物だけ」を観よう! としました(「見る」ではなく「観る」です)。

 青色をはじめ他の色も見えていましたが、認識しませんでした。

 

 これはGoogleYahoo!の検索ワードで調べる場合とほぼ同じです。

 まず赤色が最優先の検索ワードで、それを3つというのがその次のワードです。

 まず赤色とそれ以外の色に分けられ、その次に、その色を3つ、となります。

 赤に近いピンクなどの色は脳の検索ワードに少しヒットしますが、赤色でないためスルーされてしまいます。しかし青色など全く違う色の場合は最初からスルーされていました。

 引用終わり

 

 

 スコトーマとは「心理的盲点」という意味。見えているのに気付けない状態のことを指します

 

 私は、このスコトーマの原理が働くことが、「パワハラや虐待がなくならない」理由の1つ目だと思っています。パワハラや虐待を繰り返す人の多くは、そもそも自身の行いが「パワハラや虐待」であると認識していないはずです。

 Q-279~:今までRASとスコトーマは「認識しているものの中から何を選ぶか?」という話だと思っていました

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_422026.html

 

 だから、その行いが「パワハラや虐待」であることをしっかり認識してもらえば、パワハラや虐待はなくなる

 

 そうならいいのですが、そんなに簡単には解決しませんよね。解決どころか、「パワハラや虐待」はもっとエスカレートしてしまうかもしれません。

 Q-326~7:最近「記憶が抜ける」ようなことがvol.1~2;感情が起こるメカニズム>

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31854899.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31891038.html

 

 「パワハラや虐待を繰り返す人は、そもそも自身の行いが『パワハラや虐待』だと認識していない」ことは多くの場合で事実であるはず。しかし、「『パワハラや虐待』だと認識したところで解決しない」こともまた事実。

 

 では、どうすればいいのでしょうか?

 「パワハラや虐待」のもっと根深いところには、一体何があるのでしょう?

 

Q-418につづく)

 

 

CoacHing4M2 EDGE          

 CoacH T(タケハラクニオ)

 

 

 

-追記1

医療・介護現場が主ではありますが、研修や講演の際にこの知識を紹介し、これまでの認識を確認してみました。すると、案の定、「alcoholic」や「fatty」が「差別」と結びついていない方がほとんど。これは「『alcoholic』『fatty』という表現は差別的」がスコトーマに隠れていたと考えることができます

 

 この仮説は「『alcoholic』『fatty』という表現は差別的」という主張(claim)が正しいことを前提としたもの。私が調べる限り、その根拠(warrant)や事実(data)ははっきりしません。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/12340209.html

 

 今回のブログ執筆をきっかけにもう一度考えてみましたが、やはり「『alcoholic』『fatty』という表現は差別的」には違和感があります。もっとはっきりいうと、「『alcoholic』『fatty』という表現は差別的」という考え自体が差別的!

 

 原因は、おそらく、差別と区別の違いが不明瞭なところにあるはず↓

 PM-06-13:仮説08)はびこる差別意識

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14249741.html

 

 鍵は「抽象度」です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4448691.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4449018.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516484.html

 

 

-追記2

 さらに考察すると

 

「『alcoholic』『fatty』という表現は差別的」は「〇〇依存」という表現をタブー化するための仕込みなのでは?

 

 そんな疑念が浮かびます。

 

残念ながら、日本では、これから確実に「依存症」が増えます(case)。

 Q-383:現在の若者は、男女問わず、貧しくなってしまったのでしょうか? <前編>

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/34738124.html

 

 その解決(plan)として、コーチングはますます重要になるはずです。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/12658417.html

 

 

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