F-387:“心身の不調”の一考察 ~苫米地式コーチング認定コーチとして~
<vol.3;満たされない承認欲求が「かまってちゃん」を生みだす>
はじめに(F-385/vol.1)、私が医師として経験した<ケース>を紹介しました。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353044.html
私が感じた本質的課題(case)は「ゴールがない」こと。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5615935.html
その根治的解決法(plan)は、もちろん、「ゴールを設定し、ゴールに向かって生きる」ことです。そのプロセス中に、人は「『宇宙に対して果たす機能』がわからない」というスピリチュアルペインを克服していきます。
L-122:2021年11月医療・介護研修… -03;ゴールがスピリチュアルペインを解決する
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32663640.html
ゴールを設定し、ゴールに向かって生きる
…その間に起こること(起こすべきこと)を、コーチとして考察します。
vol.1;本質的課題と根治的解決法
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/36235572.html
vol.2;動物の本能から生じる情動
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/36282736.html
vol.3;満たされない承認欲求が「かまってちゃん」を生みだす
前回(F-386)は、苫米地博士の著書「『感情』の解剖図鑑 仕事もプライベートも充実させる、心の操り方」(誠文堂新光社、p76)より引用しました。その中にこんな文言(青字)があります…
動物にはもともと、身の安全を守るために群れをなす習性があります。
進化の結果、人間は一人でも行動できるようになりましたが、脳内には、仲間を求める仕組みがまだ残っています。集団で行動していた時代の名残が、生物としての人間の脳に残っているのです。たとえば、一人暮らしの人が寂しさを感じてしまうのは、そのせいです。
引用終わり
…その「名残」は、じつは、コーチングにも大いに関係します。「名残」を克服できないと、いつまでも過去に囚われたままです。
その「名残」のひとつが「エスティーム(Esteem)」。
L-172:2022年03月シークレット… -05;「新たな世界(w2)」が包含する“光”と“影”
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/34943681.html
そのエスティームについて、苫米地博士はこのように書かれています。「オーセンティック・コーチング」(CYZO、p125)より引用します(青字)。
エスティームの意味は「尊重する」「高く評価する」という意味で、エフィカシーと似ているように聞こえますが、コーチングでは両者を明確に分けています。
なぜなら、コーチングにおけるエスティームとは、社会の中での地位のことを指すからです。課長よりも部長の方が高いエスティームであり、部長よりも社長のほうが高いエスティームを持っているということです。
しかし、社会的地位とは現状の中に居続けることで意味を成します。「私はこの会社の部長なんだ」ということに誇りを持っていればこそ、それを実現したいと思うわけです。つまり、エスティームを高めることは自分を現状に縛り付けることを意味します。ですから、エスティームはコーチングではクローズアップされることが少ない言葉になります。
引用終わり
エスティームを高めることは自分を現状に縛り付けることを意味します
…「だから、エスティームと関係なく生きよう!」と言うことは簡単ですが、実際にエスティームを手放すことは簡単ではありません。「集団で行動していた時代の名残」であり、遺伝子レベルで書き込まれているから。
ところで、米国の心理学者 アブラハム・マズロー(Abraham Harold
Maslow、1908~1970年)の「欲求階層説」を御存知でしょうか?
欲求階層説(自己実現理論)
Wikipediaより引用
…マズローは、「人間は自己実現に向けて絶えず成長する生き物である」と仮定し、人間の欲求を五段階の階層で理論化しました。それが「欲求階層(段階)説」で、「自己実現理論」とも呼ばれています。
それによると、人間の欲求は五段階のピラミッドのようになっており、下位の段階の欲求が満たされるとより高次の欲求を目指すと説明されています。
その欲求とは下位より、1.生理的欲求(Physiological needs)、2.安全の欲求(Safety needs)、3.所属と愛の欲求(Social needs/Love and belonging)、4.承認(尊重)の欲求(Esteem)、5.自己実現の欲求(Self-actualization)の五つ。
そう、下から四段階目がエスティーム。日本語でいうと「承認欲求」です。
PMⅠ-05-13~5:そもそも教育とは?-6)人間形成
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/9963845.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/9966391.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/10116950.html
この「承認欲求」が満たされない苛立ちを、私は、<ケース>を観察しながら感じました。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721531.html
以下、苫米地博士の著書「ため息をやめれば年収1億円への道が開ける」(宝島社、p205)より引用します。
「かまってちゃん」は自己愛の歪んだ表出?
他人にかまってほしいという願望を持つ人間のことを、一般的に「かまってちゃん」と呼びます。たとえば、ツイッターに「困ったな~」「疲れた…」といったツイートを頻繁にアップし、「どうしたの?」「大丈夫?」といった心配する返信を期待する人などは、典型的なかまってちゃんと言ってもよいでしょう。
このような軽度のかまってちゃんは、適当に相手をしていれば満足するし、うっとうしければ無視すればいいので、有益ではないけれども有害でもありません。しかし、重度のかまってちゃんを放置すると、冗談ではすまされない嘘や自傷行為によって自分に注目を集めようとするなど、関わる人間を心身ともに疲弊させます。
なぜかまってちゃんのような人間がいるのか。私は自己承認欲求が異常に強いことがその原因だと考えています。
「自分を認めてほしい」と願う自己承認欲求は、社会的動物である人間ならば誰しもが持っている欲求です。ところが、コンプレックスや情緒不安定などによって自分に自信がない=エフィカシーが低い人間は、その状態を許容してもらうために周囲の人間を巻き込もうとします。重度になればなるほど、手段を選ばずに。
パーソナリティ障害の一種である自己愛と混同されることもありますが、こちらは過剰なまでの自信や幼少期に矯正されなかった全能感などが根底にあるため、かまってちゃんとは逆に、無駄にエフィカシーが高い点が違います。
自分がかまってちゃんだという自覚がある人は、エフィカシーを高める努力をすれば、自然と自己承認欲求が弱まります。
また自分の身近にかまってちゃんがいる場合は、無視するのが最良の対策と言えるでしょう。本人に自覚と改善の意志がない限り、自己承認欲求は弱まってくれないからです。それどころか、中途半端に相手をすると確実にエスカレートするのでご用心を。
引用終わり
「自分を認めてほしい」と願う自己承認欲求は、社会的動物である人間ならば誰しもが持っている欲求です。ところが、コンプレックスや情緒不安定などによって自分に自信がない=エフィカシーが低い人間は、その状態を許容してもらうために周囲の人間を巻き込もうとします。重度になればなるほど、手段を選ばずに
…<ケース>で紹介した患者さんの心の内は、まさにこんな感じでしょう。
根治的解決法は、最初(F-385/vol.1)に提示したとおり、「ゴールを設定し、ゴールに向かって生きる」こと。ゴールがなければ、エフィカシーを高めようがありません。
Q-358:止められてもやりたいゴールが見つかりません
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/33485940.html
でも、よほどいいコーチに巡り会わないかぎり、ゴールを設定すること自体が難しいでしょう。決して少なくない人が、「ベーシックトラスト」のレベルで大きな問題を抱えているからです。
Q-229:低年齢の子どもも「want toで生きる」「have toは一切しない」なのでしょうか? しつけと教育の違いはどのように考えればよいでしょうか?
後編;しつけと教育の違い
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/27824108.html
博士が書かれている「エフィカシー」とは、「自分のゴール達成能力の自己評価」のこと。簡単にいうと、「私はゴールを達成できる」という確信。
その確信に、根拠はまったくいりません。ただ「できる」と確信するだけです。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5616012.html
ただ「できる」と確信するだけ
…それがエフィカシー。
エフィカシーを高めることは一見簡単そうに思えますが、実際にはそんなに簡単ではありません。なぜでしょうか?
…そう、エフィカシーは「ゴール達成能力」の評価であり、ゴールを設定しないことには高めようがないから。
F-384:ロバート・メーガーの「3つの質問」 <vol.4;役割/責任「Intentionality」>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/36189008.html
エフィカシーは「ゴール達成能力」の評価であり、ゴールを設定しないことには高めようがない
…その一方で、現状の外にある本物のゴールというのは、エフィカシーが高くないとなかなか設定することができません。
F-314~5:デジタル自傷行為 <plan-side -2;ゴール×エフィカシーの“秘密”>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32626694.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32678098.html
では、どうすればいいのでしょう?
“心身の不調”を抱えるような人に対して、まわりはどのように接すればいいのでしょう?
(F-388につづく)
CoacHing4M2 EDGE
CoacH T(タケハラクニオ)
-追記-
エスティームを高めることは自分を現状に縛り付けることを意味します。ですから、エスティームはコーチングではクローズアップされることが少ない言葉になります
…それは過去の話。「オーセンティック・コーチング」以降、エスティームはコーチングにおいても重要な概念になりました。
以下、「オーセンティック・コーチング」(p126)より再引用します。本文で引用した部分のつづきです。
ただし、人間の心理とは不思議なものでエスティームが高い人はエフィカシーも高いことが往々にしてあります。
ですから、今回、私はエスティームに新たな意味を追加し、再定義しました。この再定義によってエスティームはコーチングにおいて重要な言葉となります。
エスティームの新しい定義とは自分の社会的地位を誇るのではなく、「自分のゴールの凄さを自ら誇る」というものです。部長や社長といった社会的な地位を誇るように、自分のゴールの高さを自ら評価し、誇るのです。
これまでのエスティームは「私もとうとう社長にまで上りつめた。凄いな。私は」としみじみ思うことでした。しかし、これからのエスティームは「私のゴールは社会的貢献度がとても高い。現にあそこやあそこの国の人々の暮らしを豊かにできそうだ。私ってすごいなあ」としみじみと思うということです。
自分が持っているゴールを誇ることでエスティームを高める。エスティームが高まれば、エフィカシーも自然に高まってくるのです。
引用終わり
…この“新たなエスティーム”が、「かまってちゃん」克服の鍵だといえそうです。
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