L-194:2022年07月医療・介護研修会 -04;「言語束縛」を外すための二つの方法
2022年6月、鹿児島県の医療法人で認知科学やコーチング理論を用いた職員研修を行いました。依頼されたテーマは「イライラ」↓
L-178~:2022年06月医療・介護研修会(イライラの正体を知り、しっかり対処する)
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_430045.html
その翌月、同じ医療法人で再び職員研修を行いました。今回のテーマは「ワクワク・ドキドキ」です。
Q-281~:ドーパミンの分泌をコントロールまたはどの程度分泌されているか分かるようになるのですか?
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_422146.html
私が意図したのは、これまでの「イライラという可能世界w1」から新たな「ワクワク・ドキドキという可能世界w2」に移行すること。そのためにコーチとしての働きかけを行いました。
F-222:コーチングの基本概念を習熟して、エフィカシーをブーストしよう!
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/27832570.html
当日の講演内容をブログ用に再構成し、いただいた御質問や御意見に回答いたします。
(関係者の皆さま方、大変長らくお待たせいたしました)
01;ゴール達成を邪魔する「〇〇」
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/36175836.html
02;ゴールを考える前に必要なもの
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/36208966.html
03;左脳的な働きを超え、右脳的な働きをブーストする
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/36223150.html
04;「言語束縛」を外すための二つの方法
コーチングは「『目の前の世界』や『人生』を丸ごと変える」ものであり、その目的は「人々をリッチにする」「社会や未来をリッチにする」こと
…リッチ(rich)とは、「金持ち」という意味ではなく、「豊かさ(well-being)」のこと。コーチングは「豊かさ(well-being)」のためにあります。
L-179:2022年06月医療・介護研修会 -02;「仕事観」を書き換える
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35479161.html
その「豊かさ(well-being)」は、前回の講義でお伝えしたとおり、「健康(Health)」の定義でもあります。
1998年にWHO(世界保健機関)の執行理事会で採択された健康の定義がこちら↓
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/7859675.html
Health
is a dynamic state of complete physical, mental, spiritual, and social
well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
健康とは、身体的に、心理・精神的に、スピリチュアルに、そして社会的に完全に良好な(well-being)ダイナミックな状態であり、単に病気がないとか、弱っていないということではない
…私はこの健康の定義を肯定しているわけではありませんが、「physical」に限定することなく、「mental」「spiritual」「social」にまで“拡張”していることは素晴らしいと思っています。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/7859828.html
スコトーマに隠れがちな“より高次の抽象度次元”をしっかり捉えているから(lock
on)。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html
「physical」と「mental」「spiritual」「social」は、そもそも抽象度が違います。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4448691.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4449018.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516484.html
「physical」が情報空間の底面である物理空間上の身体が対象であるのに対して、「mental」は情報空間の心が対象です。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516539.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654230.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654316.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4831442.html
もちろん、体(物理)と心(情報)は同じもの。
同じものの抽象度の違いに過ぎないのですが、意識は情報量が多い下位の抽象度次元に向いてしまいがちです。例えば、「うつ」という心の状態(←情報次元)の話が、セロトニンやそのセロトニンを増やす薬(←物理次元)のことばかりになってしまうなど。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24575354.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24617501.html
体(物理)と心(情報)は決して別々のものではなく、「体(物理)と心(情報)」でひとつ。物理空間の体と情報空間にひろがる心すべてが“自分”の正体だといえます。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353425.html
その“自分”は縁起のつながりのことでもあります。それが「social」という言葉の意味です。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353044.html
*「spiritual」についてはこちらをどうぞ↓
Q-168:スピリチュアルペインは抽象度でいえばどこに入るのでしょうか?どうやって原因である無関心が生まれてくるのでしょうか?
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24321116.html
医療・介護現場では、それら4つの視点で患者(利用者)さんの「苦痛」を考えます。それが「トータル・ペイン(Total
Pain)」です。
PMⅠ-04-12:次世代型緩和ケアの鍵となるもの
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/8293317.html
厚生労働省HP>…>第2回終末期懇談会
資料2-2より引用
「トータル・ペイン(Total Pain)」は、緩和ケア(緩和医療)における重要な概念です。
緩和ケアとは、「患者とその家族のQOL(Quality of Life、生活の質・人生の質)を改善するための取り組み」のことをいいます。
解決(解消)する領域として4つのカテゴリーが設定され(「身体的」「心理・精神的」「社会的」「スピリチュアル」)、さらに、その4つを別々に考えるのではなく全体として捉えるために「全人的(トータル)」という概念が用いられています。
L-001:2020年1月… -01;「全人的苦痛(トータルペイン)」と「4つの苦痛」の関係
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24505924.html
この「部分(4つの領域)」と「全体(トータル)」の関係は双方向性。東洋哲学的にいうと「縁起」、西洋哲学では「ゲシュタルト」です。
ゲシュタルト(Gestalt)とは、形態を意味するドイツ語で、「全体性を持ったまとまりのある構造」のことを指します。それは「全体と部分の双方向性で成り立ち、一つの統合的意味を持つまとまり」のことです。部分を積み重ねたから全体がわかるのではなく、全体がわかったから部分の意味が決まることともいえます。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6193912.html
「身体的(physical)」「心理・精神的(mental)」「社会的(social)」「スピリチュアル(spiritual)」のそれぞれが独立したひとつのゲシュタルトです。と同時に、それらを包摂した「トータル(total)」という“全体”を構成する“部分”でもあります。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/7383761.html
“部分”である「身体的苦痛」「心理・精神的苦痛」「社会的苦痛」「スピリチュアルペイン」はまったく違うもの。その違う概念を「同じ(“全体”の一部)」と認識する力がゲシュタルト能力。それは「人が持つとてつもない才能」です。
L-157:2022年01月… -01;フレームとは、認識の枠組みであり、行動の枠組み
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/34174778.html
「同じ」と認識できたとき、じつは、抽象度が上がっています。抽象度が上がると「対象の本質をとらえる」ことができるようになり、理解がさらに深まります。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/13628437.html
そして、そのプロセスを繰り返すと、前回(L-193)お伝えした「左脳的な働きを超え、右脳的な働きをブーストする」ことができるようになっていきます。苫米地博士の表現でいうと「超人」化です。
F-289:今日1日だけは、憧れるのはやめましょう vol.2;超人脳
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31299309.html
もしも「左脳的な働き」に留まると、シンの「豊かさ(well-being)」は手に入れられないでしょう。そのレベルでは「豊かさ(well-being)」を求めるほど、「ワクワク・ドキドキ」が消え、「イライラ」が募っていくはずです。なぜだと思いますか?
…そう、ますます”モノサシ“に縛られるから。苫米地博士は、刷り込まれてきた考え方や価値観の代表として「3つの“モノサシ”」を挙げられています↓
F-241:トレーニングは「昨日の自分を超えていく自己確認」
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/28695996.html
もしも他者や社会から刷り込まれた“モノサシ”を捨て去ったとしても、「豊かさ(well-being)」を左脳的処理で評価し続ける限り、「イライラ」の可能性は残ります。たとえ“モノサシ”がオリジナルのものだったとしても、その“モノサシ”を基準にした認知的不協和が生じるから。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5882652.html
だから、“モノサシ”そのものを手放すことが重要。その上で右脳的評価を行うようになったとき、人はシンの「豊かさ(well-being)」を感じることができるようになります。
L-158:2022年01月シークレットレクチャー
-02;フレーム=BS(囚)問題
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/34191211.html
鍵は「『言語束縛』を外す」こと。大きく分けて二つの方法があります。
F-364:シコウサクゴ <後編:コーチング中は「from思考錯誤×3 to試行錯誤」>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35211211.html
以下、苫米地博士の著書「宗教の秘密」(PHP研究所、p50)より引用します。
「言語束縛」を外すには -禅の場合
では、この「言語束縛」をどうやって外すか、それが次のステップになります。それには二つの方法があります。
一つは馬鹿になる方法。それが禅宗のやり方です。馬鹿と言ったら怒られますが、頭の中をスッカラカンにする、ということです。これは、自分の頭の想念から一切の言語を消し去る方法です。
禅では、言語の介在なしでイメージだけが見えている分には、それを「雑念」とは言いません。光が見えたから音が聞こえたからといって坐禅のときに「喝!」とは言われませんし、頭の中に仏様の姿があらわれたからといって「喝!」とはなりません。光も音も仏様も、それに意味を持たせたり言語化した瞬間に「喝!」が来ます。「お腹がすいた」と言うと「喝!」なのは、言語が介在するからです。お腹がぐーっと鳴っても、「喝!」にはなりません。
では、私たちの想念は何で作り上げられているかというと、それは子どもの頃から今日に至る経験で積み重ねてきたことの集積です。そして過去の自分についてのありとあらゆる記憶は、親との関係や学校教育なども含めて、そのほとんどが他人との関係でつくり上げられたものです。
仏教の言葉で言うと、それは私たちそのものがどのように成り立っている存在であるか、すなわち「縁起」を意味しています。縁起とは「それ単体で成り立つものは何もなく、すべては他のものとの関係性によって成り立っている」という思想です。
このようにして、言語としての想念が作り上げられていきます。それが世界を規定しているのですから、その言語を取っ払ったとき、はじめて本物が見えるようになります。それを「覚醒」といいます。
このとき、言語という言語はすべて取り払います。自然言語だけでなく、記号の類いや人工言語もすべてです。言語化されていなくても、「思考」であれば、ほぼ言語に近いと考えられるので、思考もしません。
この世は情報で成り立っているわけですから、言語化しないというのはとんでもなく大変なことなのです。すべてのスコトーマをはずして「あるがままに見る」を実践する必要があるのですから。
引用終わり
このようにして、言語としての想念が作り上げられていきます。それが世界を規定しているのですから、その言語を取っ払ったとき、はじめて本物が見えるようになります。それを「覚醒」といいます
…これは「左脳的な働きを超える(>抑える)」ことに主眼を置いた方法です。止観瞑想でいうと「止(サマタ)」の方。
(「止観瞑想」に関する博士の解説はこちら↓)
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/18576926.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/18684707.html
そんな「止」に対して、「観(ヴィッパサナー)」が「右脳的な働きをブーストする」ための方法です。具体的には…
以下、引用のつづきです。
言語を入れずにイメージを使うのが密教方式
言語束縛を外すためのもう一つのやり方が密教方式です。密教方式は、頭を馬鹿にするのとは逆に、イメージで頭をいっぱいにすることで行います。
たとえば曼荼羅を見ることです。曼荼羅のイメージで頭をいっぱいにして、言語を排除します。曼荼羅はご存知のように仏教(特に密教)の世界観を表現した絵画ですが、仏様がいっぱい描かれています。それをひとりひとり見ていきますが、そのとき言語を一切介在させてはいけません。
仏教の歴史に詳しい人などが曼荼羅を指して、これは何という仏様だとか、どういう意味があるのかと説明していることがありますが、それはやってはいけない、素人の行いなのです。イメージに「意味」を持たせてはいけません。「意味」という解釈された情報にした瞬間に、言語化されることになるからです。曼荼羅のみならず、密教は言語を排除することを目指しています。
引用終わり
イメージで頭をいっぱいにする
…「言語を排除し、イメージで頭をいっぱいにする」ことが、Total Pain(全人的苦痛)をTotal well-being(全人的幸福)に書き換える奥義。
L-076:2021年1月… -05;部分を統合し、全体を書き換え、部分に落とし込むワーク
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/29515037.html
医療・介護に携わりながら、私はそのような確信に至りました。コーチとしての揺るぎない確信です。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5616012.html
(L-195につづく)
CoacHing4M2 EDGE
CoacH T(タケハラクニオ)
-追記-
だから、“モノサシ”そのものを手放すことが重要。その上で右脳的評価を行うようになったとき、人はシンの「豊かさ(well-being)」を感じることができるようになります
…“モノサシ”が空だとわかりながら(空観)、あえて手放さずゴールという“モノサシ”を仮として保ち続けるのがコーチング(仮観)。
空と仮をバランスよく維持する苫米地式コーチングは「中観」です。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353367.html
もう一つ付け加えると、目の前のすべてを「ゴールという“モノサシ”」で評価することが「ラベリング」です。
L-109:2021年8月シークレットレクチャー
-11;モニタリング&ラベリング
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31421939.html
-告知1-
「<25年前期>コーチング説明会&セミナー」の動画配信を開始しました。今回のテーマは「現状の外をどうやって見つけるか?」。2025年4月末まで視聴可能です。
ぜひゴール設定の“基本”と“ポイント”を体得してください↓
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/36249577.html
-告知2-
クラブ活動をはじめました。その名は「コーチング・デ・コンパッションクラブ」。
一緒に楽しみましょう!
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/36149164.html
-関連記事-
F-216:激烈な腹痛の最中に得たインスピレーション -真夜中に、一人きりで-
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/27521647.html
L-086:2021年3月シークレットレクチャー -09;部分を統合し、全体を書き換え、部分に落とし込むワーク
ver.2
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/30210986.html
L-087:2021年3月シークレットレクチャー -10;言葉を使わずに臨場感を高める“秘技”
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/30239571.html
Q-330:最近「記憶が抜ける」ようなことが続いています <vol.5;イメージの限界が自分の限界>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31958269.html
Kindle版はこちら↓
宗教の秘密: 世界を意のままに操るカラクリの正体 | 苫米地英人
| 宗教学 | Kindleストア | Amazon
コメント