F-384:ロバート・メーガーの「3つの質問」 <vol.4(最終話);役割/責任「Intentionality」>

 

 最近、精神科医として働く後輩から、「ロバート・メーガーの『3つの質問』」を教えてもらいました。時空を超えた情報空間で。

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 ロバート・メーガー(Robert F. Mager)は米国の教育工学研究者。授業設計(授業計画)のシステム的なアプローチが盛んに議論された頃、「3つの質問」を提唱したそうです。

その質問とは

 

 Where am I going

私はどこに行くのか

 How do I know when I get there

私はそこにたどり着いたことをどうやって知るのか

 How do I get there

  私はどうやってそこへ行くのか

 

 後輩からのありがたい教えを縁に、コーチとして考えたことをまとめます。

 

 vol.1induction「すべてが情報である」

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 vol.2;知識「無限の『there』」

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 vol.3;重要性「『there』を生みだす」

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 vol.4;役割/責任「Intentionality

 

 

自分(w1)を構成する記憶を吟味し、受け入れるかどうか再度判断し、新しい自分(w2)をゴール側からつくりあげていく

 

その積み重ねにより、まったく新しい「there」を生みだすことができます。それは新たな縁起宇宙の創造です。

F-222:コーチングの基本概念を習熟して、エフィカシーをブーストしよう!

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 大切なのは「可能世界としての『there』は無限に存在していて、すべて自分のマインド次第である」と理解し実践し続けること。

それが「内部表現を自らの手に取り戻す」こと。ひと言でいうと「脱洗脳」です。

 F-378:学びと破門で脅しをかける <vol.2;洗脳を一瞬でキャンセルしてしまう方法>

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 「内部表現を自らの手に取り戻す」「脱洗脳」を別の表現で言い換えると「空観」。「空(くう)」とわかった上で「可能世界としての『there』」を生みだすことが「仮観」。

 そして、その「空」と「仮」をバランスよく行う境地が「中観」です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353367.html

 

 ところが、空を維持し、中観を実践し続けることは簡単ではありません。なぜ?

 

 

 答えは、ひとたびゴールを設定すると、ゴール達成、すなわち抽象度が下がる方向ばかりに気が向いて、「空」を忘れてしまうから。

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 このシリーズ初回(F-381/vol.1)の内容に沿っていうと、それは「抽象度という軸を見失い、宇宙を“正しく”観察できない状態」「生命現象について“立体的”に観察できない状態」です。

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 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4449018.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516484.html

 

 さらに釈迦の言葉で言い直すと、「指ばかりを見て、指さす先を見失った状態」。

 

 以下、苫米地博士の著書「人はなぜ、宗教にハマるのか?」(フォレスト出版、p175)より引用します。

 

 

釈迦が死ぬ前に出した2つの注文

 釈迦は、毒キノコを食べる数ヶ月前に、「私はそろそろ死ぬぞ」と、死を予言しています。

 それを聴いた弟子たちは、どうしたものかと大騒ぎになります。弟子たちは教えを伝える方法として、釈迦の言葉をすべて文章にまとめて遺し、釈迦の死後はそれを読んで聞かせるのがいいのではないかと提案します。

 それが、いまに伝わるお経です。

 釈迦は、それを了承しますが、そのときに2つ注文をつけています。

 弟子たちは、当時でも古語であったサンスクリット語の文語で記述し、あいまい性をできるだけ低くすることを提案していましたが、釈迦はそれを却下し、「口語で、いまのように語って伝えなさい」といいます。それで口語で釈迦の言葉が伝えられます。

 釈迦はマガダ語をしゃべっていたと推測されますが、インドでは滅んだ言語なので、現在には伝わっていません。一方、南インドの方言のパーリ語での経典は現在にも伝わっています。パーリ語は、インド南部、スリランカなどに受け継がれた言葉です。

 対するサンスクリット語は、礼拝用の厳格な言語ですが、文法的に複雑で、それが理解できるのはカースト上位の出身者たちだけです。そこで、ひとつ目の注文として、自分の教えが誰にでもわかるように、生きた言葉で語って伝えるようにしなさい、としたのです。

 2つ目の注文は、「私は君たちに教えを伝えることによって、悟りの世界を指している。しかし、お経をどんなに遺しても、それは私の指しか見ていないことになる。私の指ではなく、私の指すところを見なさい。それが悟りの世界だ」ということです。つまり、指をいくら正確に記述しても、指すところを見なければ何にもならない、と教えたわけです。

 ところが、いつの間にか仏教は、こうした釈迦の意図を離れてしまいました。経典は、サンスクリット語で現代に伝えられています。また、釈迦が指すところを見るのではなく、指そのものの中のどれがいいかを信者は競い、たとえば、どのお経がより優れているかを論争したり、単にお経を唱えたりする宗教に変わってしまいました。

 引用終わり

 

 

 指をいくら正確に記述しても、指すところを見なければ何にもならない

 

 釈迦の悟りとは、「縁起」のことです。縁起とは、「すべての存在は関係で成り立っている」ということであり、「関係が存在を生みだす」と見る概念。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353044.html

 

 前々回(F-382/vol.2)言及した「ニュートン/カント的な決定論的世界観」の根底には、「存在が関係を生みだす」という見方があります。それは釈迦が見いだした縁起とは正反対。

 L-03120203月シークレットレクチャー -09;縁起的解決の先に広がる世界

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/26219480.html

 

現代の数学や物理学、そして哲学において、「存在の確定性はない」ことは証明されています。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6194669.html

 

それは「関係があって存在が生まれる」という釈迦の縁起の思想が正しいことを示しています。

L-133202111月シークレット… -02;自我とRAS&スコトーマとコーチングの関係

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/33004210.html

 

 ただし、縁起ばかりにこだわると本質を見失います。それが「指をいくら正確に記述しても、指すところを見なければ何にもならない」の意味。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html

 

 大乗仏教の立場では、縁起はあくまでも「」。縁起とは、「空(くう)を」説明するための説明原理」であり、「空を体感するための哲学」にすぎません。

大切なのは、その縁起を使って「指すところ」を見続けること。それが今回のキーワードである「there」。そして、それはゴール設定で自ら生みだし続ける「高次の抽象度空間にひろがる潜在的な縁起」のことです。

 L-11420219月シークレット… -02;夢=w1=高次の抽象度空間にひろがる縁起

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32099568.html

 

とても重要なことなので繰り返しますが、ひとたびゴールを設定すると、ゴール達成、すなわち抽象度が下がる方向ばかりに気が向いて、「空」を忘れてしまいがち。それが「指ばかりを見て、指さす先を見失った状態」。だから

 Q-408BSをゼロベースで観察することが困難な中vol.2;〇〇を感じ取る力>

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35967572.html

 

「さらなるゴール」を思い続ける

 

その鍵となるのが「意図性(intentionality」です。

 

 

「意図性(intentionality)」とは、「次に何をするか」という将来に対する自身の意図のこと。それは行動だけでなく、思考(=情報空間での行動)も含みます。

「意図性(intentionality)」が、“自分”という存在のオリジナルを決め、その存在の意義を決めます。シンプルにいうと、「なぜ存在するのか?」「なぜ生きるのか?」への答えが自分(=宇宙)を決定します。

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私は「意図性(intentionality)」が不明瞭なままなのであれば、むしろコーチングを受けない方がいいと思っています↓

Q-333:「記憶が抜ける」ようなvol.8;抽象度を上げた“オンリーワンのプラン”>

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32048435.html

 

 なので、コーチングを希望する方に、私はこのような自問を勧めます。

 Q-390:僕はコミュ障で親しい関係の人が誰もいません。休みの日も部屋に閉じこもりゲームばかりで、人生が終わっている気がします

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35197372.html

 

 

私は自分の意図をしっかり把握しているか?

どんな人生を送りたいのか?

どんな人間になりたいか?

どんな社会や未来を実現したいのか?

 

 

そのような問いを凝縮したのが、メーガーの「Where am I going」。

後輩からのありがたい教えを縁に、私は「意図性(intentionality)」の重要性をあらためて体感しました。

 Q-377:同じ抽象度で最適化されたゴールのような気がします

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/34573983.html

 

 

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