Q-413:やり場のない怒りはどのようにゴール設定すればよいのでしょうか?
<vol.3;抽象度>
先日、医療・介護の場で、「怒りのコントロール」に関する切実な悩みを伺いました。
PMⅠ-06-11:仮説06)二つの「怒り」とその間にある論理的思考
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14107083.html
とりあえずの解決のヒント(plan-side)をお伝えした後、もっと本質的な課題(case-side)について考えていただこうとしたタイミングで、ブログをお読みの方より同様の御質問をいただきました。
S-01-13:「問題解決力」の強度を測る2つの基準
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/12658417.html
「悩み」と「質問」を包摂したLUBを意識に上げながら、「怒り」について5回に分けて考察し、最後(vol.6)にもう一段抽象度を上げて回答します。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4448691.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4449018.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516484.html
*「LUB」はこちら↓
Q-385:現在の若者は、男女問わず、貧しくなってしまったのでしょうか? <補足;case
study>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/34790995.html
vol.1;クレーム
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/36032245.html
vol.2;初心
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/36065757.html
vol.3;抽象度
Q:「F-001:やり場のない…」を読みました。やり場のないストレスを、現状の外にゴール設定すると臨場感が高まるとのことですが、無知なもので、想像ができず、理解が追いつきませんでした。
例えば、失恋をした際のやり場のない怒りはどのようにゴール設定すればよいのでしょうか?
ご教授いただければ幸いです。
A3:前回(Q-412)、人が持つゲシュタルト能力について触れました。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6193912.html
分別しながら“ある枠組み”を決め、その中で思考する
…その“ある枠組み”が「フレーム」であり、「ゲシュタルト」。
F-260:不満と傲慢のはざまで苦しんでいる君へ <vol.4;「Connecting the dots」 ~ゲシュタルト、フレーム、スクリプト~>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/29738652.html
人は同時に1つのゲシュタルトしか維持できません。ところが、私たちは複数のゲシュタルトを統合して“1つ”とすることができます。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/7383761.html
ゲシュタルトを統合すると、物事をより深く理解できるようになります。抽象度が上がるからです。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/13628437.html
反対にいうと、ゲシュタルトの統合がないままではスコトーマは外れません。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html
例えば、私は前回「『物理的』『精神的』『社会的』の3つがそろうことが『物理的&精神的&社会的』なのではなく、そのどれか1つでも攻撃を受けたら『物理的&精神的&社会的』です」と書きました。
(参考にこちらもどうぞ↓)
F-311~:デジタル自傷行為
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_426481.html
その理由は「すべて情報であり、『物理的』『精神的』『社会的』は同じ宇宙の抽象度の違いにすぎない」からですが、この“表現(ゲシュタルト)”が固定化すると、さらなる可能性を見失います。
(見失う“一例”はこちら↓)
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/33866119.html
だから、まずは「宇宙の構造」「宇宙の理」を知り、そして「必ずスコトーマがあること」を意識に上げ続けることが重要。
Q-300~:「心身相関」と「超情報場理論」
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_423993.html
その上でゴール設定を行い、ゴール側の視点から「ゴールに関係すること(T)」はスコトーマを外し、「ゴールに関係ないこと(Nil)」「情動(D)」はスコトーマに隠していきます。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5615935.html
もちろん、「怒り(とくに動物的怒り・私憤)」は「D」です。
L-109:2021年8月シークレットレクチャー
-11;モニタリング&ラベリング
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31421939.html
そんなモニタリング&ラベリングと並行して行うのが、「抽象度のコントロール」。
ゴールを無事に設定することができ、その達成に意識が向かうようになると、どうしても抽象度は下がりがち。
よって、「さらなるゴールを思い描きながら(空観)、同時にゴール達成を模索する(仮観)」という感覚が重要になります。その感覚(=中観)が「抽象度のコントロ-ル」の肝だと私は思っています。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353367.html
最後に苫米地博士の著書「苫米地博士の『知の教室』:本当の知性とは難しいことをわかりやすく説明することです!」(CYZO、p72)より引用します(苫米地博士の発言は青字)。
「怒りのコントロール」をテーマに、苫米地博士は聞き手に合わせながら抽象度をダイナミックにコントロールされています。その“感覚(中観)”を感じながら読み進めてください。Feel!
第6時限 「怒りのコントロール」
― 博士、感情ってどうやってコントロールしたらいいんですか!
苫米地 ん!? どうしたの? 急に。
─ いや、なんというか夫婦間でいろいろあってコテンパンにやられて……。
苫米地 要は夫婦ゲンカで負けたんだ。ワハハハ!
でも、それでいいじゃん、負けておけば(笑)。
─ いや、まあ、そうなんですけど、僕の人間が小さいというかですね、あとになって「なんで、俺が我慢しなきゃいけないんだ!
俺、悪くないじゃん!」ってなって余計腹が立ってくるのがどうにも、こうにも。はあ〜。
苫米地 相変わらず、自分が未熟で困る、という話ね(笑)。だからさ、前から言ってるように怒ったら我慢しなくていいんじゃないの?
自分が悪くないと思ってるんでしょ?
─ いや、そうなんですけど、そこで怒るとまた一悶着起きてしまって……。
苫米地 面倒なのね(苦笑)。じゃあ、一生怒らないってことにしたら?
─ う〜ん。以前、そう決めたんですけど、ダメでした……。
苫米地 でしょ、結局決めたって守れないんだから(笑)。要は怒ることはいいか、悪いかじゃないんだって。怒りたければ怒っていいの。でも、みんな必死で怒らないようにしたり、ヘタな感情の爆発のさせ方をしているから失敗するの。じゃあ、なんでそんな失敗をするのかっていうと、勘違いしているからなんだよ、感情をコントロールするっていう意味を。
─ 勘違い?
苫米地 そう。そもそも感情ってなんだかわかる?
─ 博士がよくおっしゃっているのは、人間の生理現象であり、排泄物と一緒。だから我慢するものでもないし、我慢したら身体に悪い。
苫米地 そう。ということは、感情って出していいものでしょ。というか、出さなきゃダメでしょ。ただし、通勤電車の中で排泄したいと思った時、普通そこでする?
─ いや、絶対にしません。したらダメだと思います(笑)。
苫米地 だよね。電車が駅につくまで我慢してトイレに駆け込むでしょ。
─ そうか! 怒りや感情もそれと一緒で人前でやっちゃダメだと。排泄物に例えるとわかりやすいですね(笑)。
苫米地 人前で出すと差し障りのあるものは人前では出さないってことが基本ね(笑)。要は感情を爆発させてはダメな場所やタイミングってあるわけ。タイム、プレイス、オケージョン。TPOをみて吐き出す。例えば、取引先の社長に頭に来てもそこで怒るのは大抵自分が不利になるでしょ。だったら、その場は我慢して、あとでバッティングセンターでボールを引っ叩いたり、木人拳を叩いてもいいし(笑)。それこそトイレに駆け込んで罵詈雑言を吐き出せばいいわけでしょ。その数分から数十分を我慢すれば?
って言ってるわけね。
─ それが感情のコントロールだと。
苫米地 そういうこと。で、その数分を我慢することって難しい?
だって、みんなできているよ。電車の中で漏らさないでトイレ行けるでしょう。そんなのウチで飼っているネコだってやってるよ(笑)。
─ そもそも感情のコントロールなんて大層な話ではないと。コントロールができないとか言っている時点でネコ以下だと(苦笑)。
苫米地 みんなできるし、現にもうやっている。じゃあ、なぜ問題が発生するのかというとそのあとの対処がなってないからなんだよ。
─ そのあと?
苫米地 よく考えてみればわかると思うけど、怒るなんて感情は本来どうでもいいわけでしょ。怒ったからなに?で、問題は怒ったとか、怒らないとかではなくて、自分を怒らせるような出来事があって、それがのちのち自分に不都合な事態を引き起こす可能性があるかもしれないってことじゃないの?
─ 確かにそうですね。だいたい自分に不利益が起きるかもしれないから怒るわけで。
苫米地 ということは大事なのは怒ったあとにどう復讐するかってことじゃないの?
─ えっ、復讐ってアリなんですか!?
苫米地 全然アリ(笑)。逆にしっかりリベンジしないからダメなんだって。「自分に不利益な事態が発生しそうだなと思ったけど放っておきました」ではまたやられるよ。それは地震警報が発令されたのと同じ。普通はどこに身を置いたら安全かを考えるでしょ。でも、「なんだよ、ゆっくり寝ているのに起こしやがって」って怒っていたらバカでしょってこと。でも、現実には皆さんそれをやっちゃってるんだよ。
─ そうですね。よくも俺を怒らせやがって、許せねえって。
苫米地 でも、本当に大事なのは怒ったあと。次の理不尽な攻撃を防ぐための抑止力としての復讐をどうやるかってこと。じゃあ、その大事なことをするのに怒っててできる?
情動に負けてて抑止力としての復讐なんて論理的に考えられる?
─ 絶対無理です。
苫米地 でしょ。怒りながら抽象度の高い作業なんてできないわけ。
─ ということは、怒ることっていうのはそもそも無意味なんですか?
苫米地 無意味は無意味だけど、でも怒ってもいいわけ。湧き上がった感情はTPOにあわせて吐き出せばなんの問題もないのに、いちいちそこで「怒るべきか、怒らざるべきか」って立ち止まるから問題になってしまうわけね。だけど、本当の問題は相手の次の攻撃があるか、ないか。ありそうだったら抑止力としての報復行動を取る。でも、それは怒ったままではできませんよってことね。
─ そうか。怒りは一回すっきり全部吐き出して、そのあとに抑止力としての復讐を考えなければいけなかったんですね。それを「怒りたい、怒れない。我慢しなきゃ、でも、我慢できない」ってやってたからいつまで経っても……。
苫米地 堂々めぐりだよ。感情は感情として吐き出しておいて、復讐は論理的にやらないと成功しないよという話。そういう報復行動は、人間は昔からしてきているんだよ。例えば、中国人なんて何千年も前からやっているよ。墓まで暴いて名誉を傷つけたりしているでしょう。
─ ああ、死体を晒したりしてますね。
苫米地 あれは権力を握った者に反抗する人間をもう出さないためっていうことでもあるし、ありとあらゆる意味合いを持った報復攻撃でしょ。いまの日本だってやってるよ、それは。テレビで官邸批判をすると、すぐにその局の役員に、ある筋から電話がかかってきて「上の人間が怒っています」とかやるらしいよ。別に、上の人間は怒っていないと思うけど(笑)。これなんて抑止力としての怒りを活用しているいい例だよ。
─ 怒るのではなく、怒っているフリ。
苫米地 いまの例の場合はね。肝心なことは、論理的に行動しているかってこと。ところが、怒りで悩む人っていうのは感情のハケ口としての復讐行動ばっかりとってない?
─ やり返えさないと腹の虫が収まらないんですよね(苦笑)。
苫米地 でも、それって自分の怒りを吐き出すことが目的であって、その後のことなんかなにも考えていないでしょ。脳内の情報処理でいえば前頭前野ではなく、扁桃体優位のままで動いている。それじゃあIQの高い行動に出られないわけで、結局、取引先を怒らせたり、奥さんを怒らせて、自分に不利益な事態を招いてしまうんだよ。
─ そうですねえ……。そういう結果になるとわかっていながら、なぜかガーッと言いたいんですよね。
苫米地 実はそこにもうひとつの問題があるわけ。感情を爆発させるのを是とする風潮がいま日本にはある。
─ えっ、そうですか?
苫米地 だって、昔の日本の教育は感情を出すのはみっともないだったはずだよ。人前で泣くなんて恥っていうのが日本の武家文化だったはずでしょ。
─ いわれてみればそうですね。子供の頃、泣くなんてみっともないっていわれました。
苫米地 でしょ。それが戦後GHQによって感情表現を出していく文化を植え付けられて、少しずつ変わってきた。いまなんて、場合によってはTPOもわきまえないぐらい大げさに感情を出すほうがいいという風潮、それが男らしいみたいな風潮がどこかあるんじゃないかと思うんだよ。
─ そうなんですか?
苫米地 うん。実は俺、この前の冬休みにNHKの大河ドラマの黒田官兵衛モノと坂本龍馬のヤツをDVDで全部見たんだよね。それでわかったんだけど、あんな泣いてばっかりいる武士なんていないよ。坂本龍馬ものなんか、龍馬も龍馬の周りにいる人もみんなワンワン泣いてない?
─ そうですね。特に龍馬はいまそんなキャラクターになっている気がします。
苫米地 でもさ、あんなに情動を剥き出しにする人間が切腹なんてできないよ。龍馬はずっと命を狙われていたんだよ。もっと情動を抑えているって。あれはさ、日本の文化をNHKはぶっ壊してない?
─ う〜ん、たしかに情動出しすぎな感じはしますけど、日本の文化を壊すまで言うと大げさすぎる気もしますが(苦笑)。
苫米地 だけど、戦前は親が死んでも泣くのは恥ずかしいっていう文化だったんだよ。それが、武士も泣いていいんだっていうふうに180度変わっているよ。
─ 確かにそうですね。全然気が付きませんでした。
苫米地 それが洗脳なんだって。で、ここ最近、その傾向に拍車がかかっているから問題なんだよ。で、その原因が……。
─ 大河ドラマですか?
苫米地 違うんだよ。この前わかったんだけど、韓流ドラマなんだよ(笑)。
─ え〜〜っ、ホントですか(笑)。だって、博士は韓流ドラマ好きじゃないですか。
苫米地 好きだし、よく見ているよ。だから、わかるんだけど、俺、日本国民があんなふうに泣いたり、怒ったりしたらダメだと思うんだよ。
─ 韓流ドラマファンとは思えない発言ですね(笑)。
苫米地 俺はああいうのを娯楽として楽しんでいるからいいの。でもさ、見習っちゃダメでしょ(笑)。
─ ダメだと思いますけど、見習う人なんていますか?
苫米地 NHK大河ドラマのスタッフは見習っていると思うよ。だから、あんな泣きすぎ龍馬を是としているんだよ。俺はあのドラマを見て「こんなものを1年も流して、日本人を弱っちいヤツにするための謀略か?」って思ったけど(笑)。
─ そんな壮大な策略が大河ドラマというか、韓流ドラマにあったんですか。
苫米地 そう思えるほどNHKの大河ドラマは韓流ドラマみたいだったね(笑)。
─ とりあえず、感情をコントロールしたければ、大河ドラマを見ちゃダメ(笑)。
苫米地 ダメ(笑)! ま、余談はこのぐらいにして、情動は出してもいいけど、それは人前で出さないってことだよね。で、抑止力的な報復が必要だと思ったら情動優位のままでは動かない。じゃあ、どうすれば情動優位状態をやめることができるのかといえば、論理的に復讐する方法を考えること。いきなり情動状態をやめようとするのは間違いってことだよね。
─ ああ! 一生懸命論理的になろうとするんじゃなくて、どうやったら効果的な復讐ができるかを考えれば、自然に論理的になれると。
苫米地 だから、そういう意味でも、抑止的な復讐を考えるってことは大切なんだよ。で、最後にもうひとつ、一番いいのがそもそも感情的にならない人間になること。情動は娯楽として愉しめばいいんだから。逆に、娯楽に振り回されるからおかしなことになるんだって。情動はなにかというと、自分から出しに行くものなの。嬉しい、悲しいっていう感情を楽しみに行くのが正解。今日は思い切り怖がるぞってホラー映画を見にいくのが正しいわけ。
─ それが感情をコントロールするってことだったんですね。
苫米地 そう。出したい感情を出したい時に出す。相手が選ぶんじゃない。自分で選ぶってことね。
─ あっ、いまの言葉で凄く納得しました!
苫米地 わかった?
ということで、夫婦ゲンカも娯楽にするように(笑)。
─ うぅ、頑張ります……。
引用終わり
(Q-414につづく)
CoacHing4M2 EDGE
CoacH T(タケハラクニオ)
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https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_418055.html
-関連記事-
F-234~:自由訳「revenge」と「avenge」
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_419026.html
L-176:2022年03月シークレットレクチャー -09;ラベリングにより到達する境地
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35045101.html
L-180:2022年06月医療・介護研修会 -03;「幻覚」を見破り「付加価値」を生み出すヒント
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35494210.html
Q-213~:「ラベリングを夢の中でも行う」ことの意味
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_414537.html
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