L-185:2022年06月医療・介護研修会 -08;つまらない夢を失った瞬間に訪れるもの
2022年6月、鹿児島県の医療法人で認知科学やコーチング理論を用いた職員研修を行いました。依頼されたテーマは「イライラ」。
当日の講演内容をブログ用に再構成し、いただいた御質問や御意見に回答いたします。
(関係者の皆さま方、大変長らくお待たせいたしました)
01;テーマは「『イライラ』の正体を知り、しっかり対処する」
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35443656.html
02;「仕事観」を書き換える
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35479161.html
03;「幻覚」を見破り「付加価値」を生み出すヒント
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35494210.html
04;イライラや不幸から自由になるために…
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35531009.html
05;しあわせは いつも じぶんの
こころがきめる
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35545220.html
06;成功体験を再現し、次の日の成功を思い描く
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35578663.html
07;「イライラ克服」の基盤
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35592887.html
08;つまらない夢を失った瞬間に訪れるもの
前回(L-184)、「イライラ」は「Fight
or Flight」の一表現であり、“動物的”になり心身ともに緊張(&疲弊)している状態だとしました。「Fight
or Flight」とは、“人間らしさ”の源である前頭葉前頭前野よりも、“動物的(原始的)”な大脳辺縁系の方が優位になっている状態です。
PMⅠ-06-11:仮説06)二つの「怒り」とその間にある論理的思考
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14107083.html
人間の脳には、じつは、階層性があります。その階層性は脳の進化と関係しています。
では、ここで問題。「階層性」とは何のことでしょうか?
…脊椎動物の脳は、脳幹、小脳、大脳で構成されています。この基本構造はどの脊椎動物でも共通ですが、各パーツの大きさやその機能は進化の度合いで大きく異なっています。
魚類や両生類の大脳は大脳辺縁系だけで大脳皮質はありません。爬虫類には大脳皮質がありますがごく小さいもので、大脳辺縁系がほぼむきだしです。
大脳辺縁系は旧皮質といわれる「本能を司る脳」で、食欲や性欲などの本能や、怒りや恐れといった原始的な感情に関係しています。
ちなみに、人間でも、一時的に「本能を司る脳」が優位になることがあります。それが「Fight or Flight」。日本語で「闘争逃走反応」と呼ばれる状態です。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/8164566.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/8166289.html
鳥類や哺乳類の大脳皮質は大きく発達しており、運動野や感覚野といった高度な機能を持つ部位がここに宿っています。鳥が巧みに空を飛んだり、哺乳類が素早く行動できるのはこの大脳皮質の働きのおかげです(さらに人の場合はこちら↓)。
L-173:2022年03月シークレット… -06;「新たな世界(w2)」に潜む“闇”とその対処法
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/34980243.html
哺乳類でも霊長類になると、大脳皮質に連合野が現れます。その中でも、思考や創造、推論、意欲、情操といった人間ならではの行動の源、さらには自我や意識などの根源と考えられているのが前頭前野です(前頭連合野とも呼ばれます)。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353425.html
ちなみに、大脳皮質に占める前頭前野の割合は、ネコが3.5%、サルで11.5%、人間では30%といわれています。霊長類の中で最も進化した人間が高度な認知や行動を行えるのは、この前頭前野のおかげ。まさに人を人たらしめる理性の座であり、思考の場です。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14120540.html
さらに前頭前野は、論理的な判断をつかさどる背外側部と社会的情動にかかわる内側部に分かれます。ディベート中に活性化するのは、論理脳である前頭前野背外側部です。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6194585.html
このように階層性は脳の進化と関係しており、進化した脳ほど抽象度が高く、階層的に高い世界に臨場感を感じることができます。つまり、階層性≒抽象度。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4448691.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4449018.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516484.html
初回(L-178/01)にお伝えしたとおり、私はコーチングが「イライラ」を解決すると思っています。その理由は「ゴール設定(&達成)を繰り返すたびに、抽象度が上がる」から。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5615935.html
コーチングを実践するほど、スコトーマがどんどん外れ、より高次の抽象度次元を感じることができるようになります。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html
その過程をシンプルに表現すると、「煩悩克服」。
L-176:2022年03月シークレットレクチャー
-09;ラベリングにより到達する境地
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35045101.html
その時の意識状態は、落ち着いていて、とてもクリアな感じ。私の感覚では「気楽」です。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/19980130.html
コーチングに取り組むほど、抽象度が上がり、煩悩を克服できる
…しかしながら、本当に大切なことは「煩悩克服」そのものではありません。それはコーチングの結果として起こることです。では、何を目指すのでしょう?
以下、苫米地博士の著書「『イヤな気持ち』を消す技術」(フォレスト出版、p143)より引用します。
果てしない煩悩が満たされない気持ちをつくる
とすれば、つまらない記憶ばかりをくり返し思い出し、あるいはつまらない考えばかりが浮かんでイライラする原因は情報過多ではありません。
イライラの原因は、自分で重要度を高めているものが多すぎるということなのです。
重要度が高くなければ、認識にのぼってこないし、それが澱のように溜まっていくこともないからです。
問題は、なぜ自分で重要度を高めているものが多いのか、ということでしょう。
おそらく読者のみなさんは、その理由は煩悩が多いダメな人間だからだ、と考えるのではないでしょうか。
しかし、よく自分のそれを顧みて欲しいのですが、ひとりの人間が持つ欲望など、じっさいはたかが知れています。あれも欲しい、これも欲しいと希っているうちが花で、いざそれを手に入れてしまうと、「なんだ、こんなものか」と欲望がたちまち欲望でなくなって、さびしい思いをする経験は誰しもあるはずです。
たとえば、私が思い出すのは芥川龍之介の『芋粥』という短編小説です。
子どもからも「赤鼻」と呼び捨てにされる平安時代のだらしない侍が、当時のご馳走とされた芋粥を腹いっぱい食べてみたいと思っています。
それを聞いた藤原利仁という武将が、望みをかなえてやろうということになりました。
招かれた先で、その侍の前に芋粥がこれでもかとばかりに提供されていきます。その侍は、やがて芋粥を食べることが苦痛になり、ついに食べなくてもいいという許しが出ると、心から安堵します。
それは、心ゆくまで芋粥を食べたいという夢を失うことと引き換えに許された安堵である、という残酷な小説です。
煩悩とはつまらないものである、といいたいのではありません。
私は、もっとお腹いっぱいになりたいとか、もっとおいしいものが食べたいとか、自分自身の中から発せられた欲望を満たそうとすることは、決して悪いことではないと考えています。
いざ欲望を満たしてみると、それがつまらないものに映り、それが次の欲望を膨らませていくエンジンになったとしてもいいのです。
それが進歩や成長というものであり、人間はそうやって一歩一歩、自分が本当にやりたいことは何か、本当に成し遂げたいことは何かを理解していきます。
一般に、芥川の『芋粥』は、救いようのない絶望を描いた作品と理解されています。
しかし、私は、だらしない侍がつまらない夢を失った瞬間に、その男に本当の目覚めが訪れたのではないか、とも思います。夢を失うことによって初めて手に入れることができる夢というものが、人間には必ずあるからです。
その意味で、私は人間の煩悩を否定することはできないと考えているわけです。
引用終わり(このつづきは次回引用します)
夢を失うことによって初めて手に入れることができる夢というものが、人間には必ずある
…つまらない夢を失った瞬間に訪れるものとは、「本当の目覚め」。そう、“覚醒”!
F-353:“覚醒”の夏に向けて習得! 苫米地式「オーセンティック・コーチング」
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/34650757.html
“覚醒”を経て手に入れた「夢」のことを、コーチングでは「ゴール」と呼びます。
L-100:2021年8月シークレットレクチャー -02;ゴールの基本条件(「頭のゴミ」を捨てるver.)
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31184436.html
(L-186につづく)
苫米地式コーチング認定コーチ
苫米地式認定マスターヒーラー
CoacH T(タケハラクニオ)
-追記-
このように階層性は脳の進化と関係しており、進化した脳ほど抽象度が高く、階層的に高い世界に臨場感を感じることができます。つまり、階層性≒抽象度
…教育の目的は、人類の進化といえるこの脳の変化を、個人の成長に落とし込むこと。それは「人間形成」という形で実現していきます。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/9963845.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/9966391.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/10116950.html
この「臨場感が物理空間から高次の情報空間に拡大していく」という「人間形成」はとても重要です。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516539.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654230.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654316.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4831442.html
苫米地博士は「人は、進化の結果として、ホメオスタシスの能力が物理空間から情報空間にまで拡張している」と説明されています。
ホメオスタシス(Homeostasis)とは、「恒常性維持機能」のこと。私たちが環境の変化にもかかわらず体温や血圧、心拍数といったものを保つことができるのは、この機能によります。
そんな恒常性維持機能が「情報空間にまで働いている」というのが、博士が提唱される「サイバーホメオスタシス理論(CH理論)」です。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4831660.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4971818.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4971956.html
-告知1-
今年度のオンラインセミナーは、コーチング募集開始前の「コーチング説明会」として開催します。次回は2025年2月下旬開催の予定です。約1ヶ月前にこのブログで御案内いたします。
-告知2-
クラブ活動をはじめました。その名は「コーチング・デ・コンパッションクラブ」。
一緒に楽しみましょう!
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_418055.html
-関連記事-
F-209:マトリックス/Matrix
-04<Resurrections;慈悲的人類の進化>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/27122988.html
F-276~:L下でのBS&B
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_423822.html
Q-313:私のまわりではそうでもないです。私が気づいていないだけかもしれませんけど… <vol.8:レベルの高いコーチングは…>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31130216.html
S-01~:よりよい“議論”のために
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_254557.html
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