F-371:義を見て為さざるは、勇無きなり <vol.5;エフィカシー=〇〇のレベル=△△の強度>

 

 最近、医療法人を経営されている理事長(医師)と面談する機会がありました。理事長のブリーフシステム(Belief SystemBS)を観察している間に浮かんできたのが

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  義を見て為さざるは、勇無きなり

 

 この論語の一節を、苫米地式コーチング認定コーチとして考察します。

 

 vol.1;問題も解決も〇〇〇にあり

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35363063.html

 vol.2;「義を見て為さざる」の問題点 -正義-

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35409039.html

 vol.3;「義を見て為さざる」の問題点 -義務-

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35457949.html

 vol.4;「勇無きなり」の問題点 -「勇」と「エフィカシー」の違い-

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 vol.5;エフィカシー=〇〇のレベル=△△の強度

 

 

前回(F-370)、「成功の可能性」と「リスク」のバランスであることを前提に「勇気」を分析しました。

 □成功する可能性よりリスクの方がはるかに高い → 無謀な行動

 □リスクがはるかに少なく、「絶対に大丈夫」と自信あり → 普通の行動

 □目的が達成できる可能性よりも、リスクの方が少しだけ上回る → 勇気ある行動

 

 以前の私は単純に「勇気=エフィカシー」と理解していました。しかし、それは完全な間違い。それでは「『目的が達成できる可能性よりも、リスクが少しだけ上回る』という状況での『達成できるという確信』」のことになってしまうから。

エフィカシーはそんな小さなスケールではありません。

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 では、勇気とエフィカシーとは、根本的に何が違うのでしょう?

 

 

 苫米地博士は「『目的が達成できる可能性よりも、リスクの方が少しだけ上回る』場合も、本当に『勇気』という感情が行動を促しているかどうかは疑問」と書かれています(「『感情』の解剖図鑑」p152)。

 

 その理由は「リスクがあるのに行動を起こすとき、人は必ず『脳内報酬』を受け取っている」から。「脳内報酬」の代表がドーパミンやセロトニンです。

 L-154202111月医療系研修会 -09;「明日への希望」から生まれる“幸福”の好循環

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「ドーパミン(dopamine)」とは、“行動”を促す中枢神経系の神経伝達物質のこと。食事で摂取したフェニルアラニンやチロシンを元に作られ、興奮した状態をつくるアドレナリン、不安や恐怖を引き起こすノルアドレナリンに変わります。

かつてはアドレナリンやノルアドレナリンの単なる前駆物質と考えられていましたが、ドーパミンそのものに、運動調節、ホルモン調節、快の感情や意欲・学習に関わる重要な働きがあることがわかってきました。

L-167202201… -11(最終回);モーツァルトの音楽を“体感”するワーク

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そのドーパミンが減ると、運動や思考が緩慢になっていきます。

L-173202203月シークレット… -06;「新たな世界(w2)」に潜む“闇”とその対処法

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じつは年を重ねるほど、ドーパミンは減っていきます。10歳老いるごとに、なんと10%のドーパミンニューロンが死滅してしまうそう。その結果、物理空間での身体の運動のパフォーマンスは下がり、情報空間での思考のスピードも遅くなっていきます。

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https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654230.html

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654316.html

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病的にニューロン死が起きた結果ドーパミンが不足してしまうのがパーキンソン病です。反対に、ドーパミンが増えすぎると幻覚や妄想などの問題を生じます。

F-245:「ゴール」と「現状の自我」の間に臨場感という橋をvol.2;双極性障害>

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/28916956.html

 

そんなドーパミンは、1)うれしい・楽しい状態で、2)ストレスがない状況のときに、中脳の腹側被蓋野(ふくそくひがいや、VTAVentral Tegmental Area)から放出されます。

Q-076180804医療講演会レポート vol.4:コーチングが“痛み”に有効な理由

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/15549035.html

 

 私たちが注意しないといけないのは、「勇気ある行動」に伴う満足感の裏には「脳内報酬>リスク」という“状況”があること。ここでいう“状況”とは、「ゲシュタルト」のことです。

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 その“状況”を他者につくられてしまうと、自分の人生が他に支配されてしまいます。それが“洗脳状態”です。

 F-179:“幸福(well-being)”とは? ~「antiwithwellpart-4;洗脳によって生まれる幸福

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 以下、苫米地博士の著書「『感情』の解剖図鑑」(誠文堂新光社、p153)より引用します。「勇気という感情との付き合い方」をマスターし、本物のエフィカシーを高める礎にしてください。

 

 

勇気という感情との付き合い方

 ここでは、勇気という感情との付き合い方を2つ、紹介しましょう。

 

「勇気」という言葉のイメージに惑わされない

 「勇気」は、概念としては存在しますが、実際には、単に脳内報酬がリスクを上回っただけの現象にすぎません。

 つまり、勇気などという感情は存在せず、「勇気を出す」ことは、偉いわけでもなんでもないのです。

 くれぐれも、「勇気」という言葉のイメージに惑わされないでください。本当は脳内報酬が出ているだけなのに、「私には勇気がある」と自分に酔ったり「あなたには勇気がある」などとおだてられたりして、思い切った行動に出てしまうと、取り返しのつかないことにもなりかねません。

 自分が「勇気を出そうとしている」と感じたときは、まずリスクを過大評価もしくは過小評価していないか、しっかり考えましょう。リスクの計算が冷静にできていないのに、思い切った行動に出るのは危険です。

 

洗脳状態にないか自分を見つめ直す

 リスクが著しく高いのに、「勇気を出そう」としているときは、何らかの価値観に洗脳されていないか、もう一度自分を見つめ直しましょう。さらに、リスクと引き換えに得られるものが、本当に自分にとって価値あるものかどうか、あらためて考えてみてください。

 脳内報酬はしょせん、脳内報酬でしかありません。命と引き換えにしてまで得る必要などないのです。

 引用終わり

 

 

 脳内報酬はしょせん、脳内報酬でしかありません

 

 「所詮は脳内報酬でしかない勇気」とエフィカシーは、根本的に何が違うのでしょう?

 

 

 私の答えは、もちろん、「ゴール」。ゴールの有無がその違いです。

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 ゴールがない、もしくは他者に埋め込まれている(=洗脳状態)という勇気に対して、エフィカシーは自身の自由意思で設定したゴールの存在を前提としています。「自分のゴール達成能力の自己評価」ですから。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/10400987.html

 

 そのエフィカシーことを、苫米地博士は「コンフォートゾーン(Comfort ZoneCZ)のレベル」と表現されたりもします。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6040892.html

 

 つまり、「エフィカシーを高める」とは、「CZをゴール側にずらす」ということ。

 Q-310:私のまわりではそうでもないvol.5:コレクティブ・エフィカシー -前編-

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31049084.html

 

 コンフォートゾーンはその語義どおり「本人にとって居心地がいい場所」です。ですから、「わざわざその場所から抜け出して、あえて不快な状態に身を置く」ことを、人は本能的に避けようとします。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5882652.html

 

 もしも対象や出来事がコンフォートゾーンから外れてしまうと、良い方に外れても、悪い方に外れても、無意識はそれをあらかじめ設定された元の状態に戻そうとします。その働きがホメオスタシス(恒常性維持機能)です。つまり、

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4831660.html

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エフィカシー =CZのレベル =ホメオスタシス・フィードバックの強度

 

 それがエフィカシー!

だからエフィカシーは、「脳内報酬>リスク」に過ぎない勇気とは、まったくの別物だといえます。

 Q-351:「情報的身体」というのがよくわかりません? <後編;プランサイド>

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32956635.html

 

F-372につづく)

 

 

苫米地式コーチング認定コーチ     

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

 

-追記-

 エフィカシー =CZのレベル =ホメオスタシス・フィードバックの強度

 

 そんなエフィカシーのことを、私は「覚悟」だとも思っています。「勇気」ではなく、「覚悟」です。

 F-100:芸術は爆発だ!

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/19033189.html

 

 

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今年度のオンラインセミナーは、コーチング募集開始前の「コーチング説明会」として開催します。次回は2025年2月下旬開催の予定です。約1ヶ月前にこのブログで御案内いたします。

 

 

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 クラブ活動をはじめました。その名は「コーチング・デ・コンパッションクラブ」。

一緒に楽しみましょう!

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「感情」の解剖図鑑