Q-398:恨みをメールで送りつけたい気持ちがあります<前編;「恨み」の根元にあるもの>

 

御質問をいただきました。ありがとうございます。

 その一部に回答いたします。

 (変更を加えています)

 

Q10年以上恨みを感じている人物がいます。ときどき名前をネット検索にかけて確認し、そのたびに悔しい気持ちがしています。

もっと自分の人生を大切に決めて生きていたかった。であれば、周りをもっと幸せにできていたのではないかと思うのです。
 その人物の関係者に私の恨みをメールで送りつけたい気持ちがあります。

私らしくないとセルフトークして、公憤のエネルギーにして、静観すべきでしょうか?

 

 いただいた御質問に対して私はこのように回答しました。

 

 

時間は未来から過去に流れています。

どんどん遠ざかる過去をわざわざ“今”にしているのは自分自身です。

この件のことをメールで送りつける」ことで、新たな“過去の延長上の未来”を生みだすのは自分自身。

 

すべて自分で決めることです。

 

これからも過去の延長上で生き続けるのか?

それとも、ゴールを設定し、まったく新しい可能世界を生きるのか?

 

自分で決めてください

 

“自分”を決めてください

 

 

 ところで、認知科学者 苫米地英人博士の著書に「『感情』の解剖図鑑」という本があることをご存じでしょうか?

 

 その中から「恨み」について書かれている部分を引用(青字)し、前後編2回に分けて考察します。

 

 前編;「恨み」の根元にあるもの

 

 

A1:以下、「感情の解剖図鑑」(誠文堂新光社、p64)からの引用(青字)です。

 

 

 「恨み」とは、自分に対する他人のひどい態度や仕打ちを不満に思い、「機会があれば復讐したい」といった、強い気持ちを抱くこと。恨みの感情が高まるとIQが下がり、冷静な判断ができなくなる

 引用終わり

 

 ここで苫米地博士が行われているのは、「恨み」というゲシュタルトの確認です。まず全体像を把握することで、部分の意味がクリアになっていきます。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6193912.html

 

全体と部分の双方向性

 

それを丸ごと感じることで理解が深まります。それがゲシュタルトの重要なポイントです。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353044.html

 

 

 「恨み」という全体像も、じつは、より大きな“全体”の一部分に過ぎません。例えば、「『感情』という全体像がわかることで、『恨み』という部分がわかる」というように。

その関係性を、西洋哲学の観点から表現した言葉が「connect the dots」です。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/7383761.html

 

「感情」という視点を維持したまま「恨み」について考えることができると、「恨み」の理解はさらに深まります。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/13628437.html

 

 そして、きっと新たな気づきを得ることができるでしょう。その理由は?

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html

 

 そう、抽象度が上がり、スコトーマが外れるから。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4448691.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4449018.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516484.html

 

 さらに抽象度を上げていくと、ますます理解が深まり、さらなる気づきを得ていくことができるはず。

 

では、ここで問題。「感情」を“部分”と考えると、その場合の“全体”は何でしょうか?

 (回答の一例はこちら↓)

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/28959379.html

 

 

 おそらく、今、思考の抽象度がだいぶ上がっているはず。

その状態を意識に上げ、逆腹式呼吸でリラックスとゆらぎを得ながら、ゆっくりと読み進めてください。

 L-166202201月シークレットレクチャー -10;呼吸を意識に上げてコントロールするワーク

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/34408574.html

 

 

恨みと怒りはよく似ている

 恨みと怒りは、いずれも「他者から一方的に、理不尽な危害を加えられた」と感じることにより生まれます。

 ただし、怒りはその場で発生し、恨みは少し時間をおいてから発生します。たとえば、「真面目に働いていたのに、突然クビになった」「信頼していた友だちに裏切られた」「自分は安全運転をしていたのに、事故に巻き込まれた」といった出来事に遭遇すると、人はまず怒りを覚えます。そして「なかなか新しい仕事が見つからない」「裏切られて、精神的に大きなダメージを受け、立ち直れない」「事故のせいでしばらく動けない」など、自分にとって不本意な状況が訪れ、それが続くと、怒りは恨みに変わっていくのです。

 引用終わり

 

 「感情」という全体像(ゲシュタルト)ができると、苫米地博士が書かれている「恨み」と「怒り」の類似点と相違点がよくわかるようになります。さらには別の感情とのつながりも。

 F-044:笑顔のままお亡くなりになった患者さんから学んだこと 前編:布施

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/11142143.html

 

 さらに「コーチング」という概念(ゲシュタルト)を意識に上げながらこの引用部分を再読すると、初見とは異なる体感が感じられるはず。そう、未来から過去へと向かう「時間の流れ」です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6542317.html

 

 この引用部分において、苫米地博士は「過去→未来」という時間観で書かれています。対象が一般の読者だからです。多くの人は過去の延長として現在を生き、現在の延長としての未来を迎えます。つまり、心が過去に縛られ囚われたまま。

 L-01020201月シークレット… -10;記憶でつくられる「思い込み」が自由を奪う

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24808708.html

 

 コーチング実践者にとっての時間の流れは「未来→過去」。さらに進むと、「過去」「現在」「未来」が同時に存在している感覚に変わっていきます。

 Q-319~:速いスピードで移動した人は長生きできるって言いますよね?

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_425265.html

 

 苫米地博士が座右の銘とされている「一念三千」の体感です。

 L-173202203月シークレット… -06;「新たな世界(w2)」に潜む“闇”とその対処法

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/34980243.html

 

 

「自分は間違っていない」という思いが、恨みを生む

 恨みを抱かないようにする一番の方法は、「人を恨むような人間にならない」ことです。

 恨みの感情の前提となっているのは、「自分は間違ったことをしていない」「自分は被害者である」という思いです。しかし、その思いは本当に「正しい」のでしょうか?

 先ほどの例でいえば、会社をクビになった人は、自分では「真面目に働いている」と思っているかもしれませんが、上司や同僚からは「言われたことしかやらない」「コミュニケーション能力が低い」などと思われていたかもしれません。

 また、友だちに裏切られたとしたら、実はその前に、自分が友だちに対し、知らないうちに傷つけるようなことを言ってしまったのかもしれません。

 「理不尽な目に遭わされた」と感じ、恨みを抱きそうになったら、まずはこのように、自分自身を客観的に眺め、相手の事情を考えてみましょう。その結果、「自分にも問題があった」と気づくことができれば、恨みの感情は生まれませんし、前頭前野を働かせることで、感情の増幅を抑えることもできます。

 引用終わり

 

 恨み」の強さを決める重要な要素が「理不尽度」。

 そして、その「理不尽度」は「自己責任感」の大小で決まります。

 S-04-06~7:心に深い傷を負う理由

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/22746255.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/22817135.html

 

 自己責任

 

もちろん、宇宙の理が縁起である以上、起こる事象そのものを思いどおりにコントロールできるわけではありません。

しかし、その事象をどのように認識し、理解し、そして評価・判断するかは、自分で完全にコントロールできます。それが「自己責任」という言葉の意味。

 PM-05-27自由を求める人に必要な「自己責任」の意味

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/10987549.html

 

大切なのは、「自分のマインド(脳と心)は、自分自身の自由と責任でコントロールする」という意思

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/10400987.html

 

そして、「自分自身のマインドで未来を創造する」という覚悟です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5616012.html

 

過去の記憶でつくられたブリーフシステムではなく、未来の記憶によってつくりあげるブリーフシステムで情報処理を行うことができるようになると、未来から流れる時間を生きられるようになります。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721531.html

 

そして、(本来の)“死”までの“生”を存分に生きることができるようになります。

 L-03720204月シークレットレクチャー -06;「ヴィーゼルの言葉」を超越する

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/26744273.html

 

そんな“生”に「恨み」という感情が入り込む余地などありません。

Q-271~現状の外に飛び出す勇気やエネルギーが全く出ませんでした。それでも自己責任なのですね ~綸言汗の如し~

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_421412.html

 

Q-399につづく)

 

 

苫米地式コーチング認定コーチ      

苫米地式認定マスターヒーラー      

 CoacH T(タケハラクニオ)     

 

 

-追記-

 クーリングダウンを兼ね、気楽な話を追加します。

 F-196:コーチとして考える「ウォーミングアップ」と「クーリングダウン」

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/26364639.html

 

 1983年に公開された映画「STAR WARS3作目の副題は「Epi.Ⅵ:Return of the Jedi」。じつは、最初の副題は「Revenge of the Jedi」でした。

同じ時期にパラマウント社が劇場版「Star Trek」第2弾の副題「Vengeance of Khan」を発表したのですが、類似していることを理由にルーカスフィルムは猛烈な抗議を行ったそう。その結果、パラマウント社は副題を「The Wrath of Khan」に変更しました。

 

ところが、SW公開直前にもかかわらず、「高潔なジェダイに『Revenge』は似合わない」と気づいたジョージ・ルーカス(George Walton Lucas Jr.1944~)は、副題をあっさり「Return of the Jedi」に変更してしまいます。STの副題を強引に変更させたのにもかかわらず。

 

 RevengeReturn

 

Revenge」には「恨み」がべったりと張り付いていますが、「Return」に「恨み」はありません。それがルーカスの「ジェダイに『Revenge』は似合わない」の感覚でしょう。

 
 「Return」に「恨み」はない

 

 これは私の中での「“自分”を決める」という感覚とも合致します。

 

 *副題「Epi.Ⅵ:Return of the Jedi」についてはこちらをどうぞ(オタク話です)↓

 F-235:自由訳「revenge」と「avengevol.2;「re」と「a」の記憶

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/28474895.html

 

 

-告知1

今年度のオンラインセミナーは、コーチング募集開始前の「コーチング説明会」として開催します。次回は2025年2月下旬開催の予定です。約1ヶ月前にこのブログで御案内いたします。

 

 

-告知2

 クラブ活動をはじめました。その名は「コーチング・デ・コンパッションクラブ」。

一緒に楽しみましょう!

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_418055.html

 

 

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「感情」の解剖図鑑