F-341:次世代プロファイリング×ゴール設定 <vol.6;苫米地博士の“プロファイリング”とは? -各論・実践編2-

 

 コーチングにおいて重要なプリンシプルのひとつが、「過去は一切関係ない!」。

 時間は未来から現在へと流れており、過去はどんどん遠ざかっていきます。

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 だから、コーチとしてクライアントさんと関わるとき、私は“未来”に集中しています。“未来”とは、もちろん、クライアントさん自身がゴール設定で生みだすものです。

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 過去は一切関係ない!

 

 先日(2024226日)、「バラいろダンディ」(TOKYO MX)に出演された苫米地博士は、初対面で「直前まで男性だと思っていた」というキンタロー。さんに対して“プロファイリング”をされていました↓

 今一番「顔芸」がバズる!キンタロー。を分析! Dr.苫米地 (2024年2月26日) (youtube.com)

 

 その様子を拝見しながら、感じ、考えたことをまとめます。

 

 vol.1;コーチングにプロファイリングは必要?

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/33723264.html

 vol.2;ゴールは自分という“殻(w0)”を抜け出して初めて見えてくる

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 vol.3;苫米地博士の“プロファイリング”とは? -総論-

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/33827695.html

 vol.4;苫米地博士の“プロファイリング”とは? -各論・理論編-

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/33880880.html

 vol.5;苫米地博士の“プロファイリング”とは? -各論・実践編1-

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 vol.6;苫米地博士の“プロファイリング”とは? -各論・実践編2-

 

 

今回も苫米地博士と本橋信宏さんの共著「『洗脳』プロファイリング 重大未解決事件の犯人を追え!」(宝島社、p108)より引用し、重要な部分(青字で再引用)を解説します。キーワードは「ホメオスタシス同調」。引用文中の「犯人」を「クライアント」に、「刑事」を「コーチ」に置き換えて読み進めてください。

 

 

現場におけるホメオスタシス同調効果プロファイリングのやり方(前回引用のつづき)

 「現場に立って一瞬、悟りの世界に行くわけです。そうすると全部見えてくる。捜査側の視点が何かもわかるし、犯人の視点もわかる。犯人の行動がわかるということは見えるものが決まったということ。世田谷一家4人殺人事件では、私が現場に立ったとき、風呂場の鍵が外れているのが見えました。そこから現場の情報が入ってきたときに、犯人が見たものが全部見えてきます。窓をよじのぼった可能性。そこに立っていたであろう若者の心理。そこに立った男、若い男、むしゃくしゃするときがあってそこに立つときがあった。そういったものを再現していくのです。どういうルートで室内に入ったか。全部再現していく。北側の窓を見たときに、彼の情動が再現できました。それまでは絞り込みだから、犯人像は不特定多数しかわからない。男かもしれないし、女かもしれない。そしてだんだん人格が特定されてくると、そのときに見えるものが特定されてくるのです。プロファイリングで犯人が絞り込まれてくると、犯人だけしか見えてこないものが見えてくるわけです。犯人だけが気にしているものが見えてくるわけです。そこから次はどういう行動をするか。そうするとその行動が実際の犯人の行動と合致するとプロファイリングになる。つまり、ホメオスタシス同調効果によるプロファイリングは、その人の認識を作り上げること。その人の自我を作ることなのです。犯人が見たものが決まってくると、その瞬間に犯人の自我が形成されてくる。犯人がその自我で見ているであろうことが私に見えてくる。それまではファクトです。犯人が行った場所、おこなったこと、触ったものが、ファクトでわかる。犯人の自我が形成されてくると、犯人の目だったら見えるけど、通常の人なら見えないものが見えてくる。そこからがプロファイリングになります。この現場を見ることができた人間はどういう人物か。犯罪の結果は、見えているものの集合体です。それは従来のプロファイリングのような統計にもとづいたものではない。ただし抽象度が低い状態でプロファイリングすると、自分の自我で見てしまうのでうまくいきません。多くの刑事は抽象度が高くない。足で稼ぐなんて言ってる刑事は抽象度が低い、ダメな刑事です。過去と同じプロファイリングをやっているので、いまのように色々な心理的要因の異常犯罪が起きると機能しなくなります。刑事は自我をますます強めてしまって経験則に頼りすぎて現場に立ってしまう。刑事の想像もつかないような人格、価値判断をもっている犯罪者が続々と登場しているから、未解決事件が増えるのです」

 現場におけるホメオスタシス同調効果によるプロファイリングにおいて、被害者のプロファイリングは一切関係が無くなる。

 苫米地博士によれば、被害者は犯罪プロファイリングにおいて、データとして認識されるが、事件においては点景に置かれるという。

 「たとえば、いま、ある女子校に通う女子高生が授業を抜け出して、この店にいた中年男性客を殺害したとしましょう。中年男性が被害者になっても、中年男性の心理状態はプロファイリングにおいて何の関係も無い。おじさんの心理は女子高生の行動に全然関係がない。そのおじさんを突然殺しそうになったときに、おじさんがどういう反応をするかがプロファイリングするときに重要になってくるので、おじさんの反応を見なければならない。そのとき初めて被害者のプロファイリングが重要になってくるわけです。プロファイリングにおいて、最初は被害者は背景の点景に過ぎないのです。被害者の心理が犯人と被害者の行動に影響を与えるときに、初めて被害者のプロファイリングが重要になってくるのです。それまでは被害者が外側から見てどのように見えるかのほうが重要なのです」

 では、読者が苫米地博士のように殺人現場でホメオスタシス同調効果によるプロファイリングを敢行できるのだろうか。

 すると苫米地博士は冷厳な言葉を下した。

 「読者がホメオスタシス同調をやろうとしても無理です。釈迦のようにならないといけないのですから。ホメオスタシス同調効果のプロファイリングをやりたいと思っているうちは抽象度が低いので、いい結果はもたらしません。抽象度を上げる訓練をしている段階で、ホメオスタシス同調のプロファイリングなんかしたら、非常に危ない。完全に自分の自我を無くすことができる人間でなければ、実行はやめるべきです」

 クンダリーニヨーガをまねて心身のバランスを崩し死亡してしまったり、心の奥底を覗こうと催眠術を会得して他人にかけたのはいいが催眠状態から戻ってこられなくなったり、催眠セミナーで精神世界の真底であるダークネス・バウンダリ(闇の領域)まで分け入って、正常な精神状態に戻ってこられなくなったり、みずから心を操ることは危険と隣り合わせであることを銘記すべきだろう。

 引用終わり

 

 

犯人の行動がわかるということは見えるものが決まったということ

 

 認知科学ができる前から、心理学には「スキーマ」という考え方があったそうです。様々な記憶や知識が統合された“まとまり”のようなもののことで、苫米地博士が好んで使われる表現でいうと「ゲシュタルト」に相当します。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6193912.html

 

 「スキーマ」があることによって、私たちは物事をうまく認知できるようになります。逆に、「スキーマ」があることで心理的盲点(スコトーマ)も生じます。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html

 

 つまり、「行動がわかる=見えるものが決まる」というのは、相手(クライアント)の「スキーマ」や「ゲシュタルト」を把握するということ。もっとコーチング的にいうと、「ブリーフシステム(Belief SystemBS)」を知るということです。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721531.html

 

苫米地博士とも御縁があったマーヴィン・ミンスキー(1927~2016年)の「フレーム」や、博士がコンピュータ・サイエンスに進むきっかけとなったロジャー・シャンク(1946~2023年)の「スクリプト」と合わせて理解すると、認知科学の全体像がつかめるはず。こちらでどうぞ↓

F-260:不満と傲慢のはざまでvol.4;「Connecting the dots~ゲシュタルト、フレーム、スクリプト~

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/29738652.html

 

 

つまり、ホメオスタシス同調効果によるプロファイリングは、その人の認識を作り上げること。その人の自我を作ることなのです

 

 そのために、まずは自分の自我を消します。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353425.html

 

 「自我を消す」の本質は、「抽象度を上げる」ことです。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4448691.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4449018.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516484.html

 

 

犯人の自我が形成されてくると、犯人の目だったら見えるけど、通常の人なら見えないものが見えてくる。そこからがプロファイリングになります

 

 これは「RAS&スコトーマ」を共有したということ。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721658.html

 

 一方で、「通常の人」の視点は失います。コーチの立場でいうと「クライアントと同じスコトーマができる」。

コーチがその状態のままであれば、相手(クライアント)をよく理解することはできますが、現状の外に導くことができなくなります。

Q-216:「現状の外のゴール」とは何か? 混乱しています

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/27346333.html

 

 だから、ホメオスタシス同調によるプロファイリングをしっかり行いつつ、一方でその同調から抜け出さなければなりません。その感覚が“共感”です。

 Q-265~:臨場感世界をまったく同じように感じることが可能なのでしょうか?

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_420880.html

 

 そのときのポイントが

 

 

この現場を見ることができた人間はどういう人物か。犯罪の結果は、見えているものの集合体です。それは従来のプロファイリングのような統計にもとづいたものではない

 

 そのときのポイントが「抽象度のコントロール」。

その肝がゴール設定です。Goal comes 1st.

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 具体的な話をすると、私は「内部表現から頭を突き出し、真の自由意思を獲得する」というゴールを設定しています↓

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刑事は自我をますます強めてしまって経験則に頼りすぎて現場に立ってしまう。刑事の想像もつかないような人格、価値判断をもっている犯罪者が続々と登場しているから、未解決事件が増えるのです

 

 「最近スムーズに事が運ばない」「以前ほど上手くできない」と感じたなら、「経験則に頼りすぎていないか?「思い込みや決めつけはないか?」と自問してください。

 きっとゴールの感覚を失っているはずです。あるいは、かつてのゴールが、いつの間にか現状になっているのかもしれません(=コンフォートゾーン化)。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6040892.html

 

 その対策として、私が強くお勧めしているのが「ラベリング」。

 先ほど触れた「RASReticular Activating System、網様体賦活系)」とは、簡単にいうと重要度のことです。その重要度を「ゴールから考えたときに、どれくらい重要か」という尺度に統一することがラベリングの目的です。

 F-095:私はイヤなことは心の中で握りつぶす vol.2(ワーク付き)

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/18456250.html

 

 そのラベリングの際に、私はいつも“集中”を意識に上げています。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24281579.html

 

 

プロファイリングにおいて、最初は被害者は背景の点景に過ぎないのです。被害者の心理が犯人と被害者の行動に影響を与えるときに、初めて被害者のプロファイリングが重要になってくる

 

 その“集中”には2つの意味があります。「concentration」と「focus of attention」です。

 Q-202:視点のきりかえとは、「1)現状の外からの視点」「2)現状の認識」「3)最悪の状態の想定」を切り替えて考えるということでしょうか?

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/26408247.html

 

ゴールは人生のあらゆる領域にたくさん設定するもの(バランスホイール)。

F-273:冗長性と多様性 <vol.5;抽象度×バランスホイール>

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/30452009.html

 

ラベリングの際には、たくさんのゴールを同時に感じながら(無意識下でconcentration)、その時の“状況”で選択する(意識に上げfocus of attention)ことが重要です。

その“状況”の感覚を、「被害者の心理が犯人と被害者の行動に影響を与えるときに、初めて」という表現が言い表していると感じました。

Q-279~:今までRASとスコトーマは「認識しているものの中から何を選ぶか?」という話だと思っていました

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_422026.html

 

 

読者がホメオスタシス同調をやろうとしても無理です。釈迦のようにならないといけないのですから。ホメオスタシス同調効果のプロファイリングをやりたいと思っているうちは抽象度が低いので、いい結果はもたらしません

 

 ホメオスタシス同調効果のプロファイリングをやりたいと思っているうちは抽象度が低い」というのはOKですか?

 

多くの「やりたいwant to)」は煩悩にまみれています。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5882609.html

 

マズローの「自己実現理論(欲求段階説)」を用いるとわかりやすいと思いますが、「自分の『やりたい』はどの階層か?」とつねにモニタリングしていることが大事。それが“観自在”の1st. stepです。

F-321:観自在 <実践編-1;モニタリング>

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32969294.html

 

 

自己実現理論(Wikiより引用)

自己実現理論(欲求段階説)

Wikipediaより引用

自己実現理論 - Wikipedia

 

 

抽象度を上げる訓練をしている段階で、ホメオスタシス同調のプロファイリングなんかしたら、非常に危ない。完全に自分の自我を無くすことができる人間でなければ、実行はやめるべきです

 

 抽象度を上げる」とは、先ほどのマズローの階層を上がっていくこと。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/9963845.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/9966391.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/10116950.html

 

 ですが、下から数えて5層目の「自己実現(Self-actualization)」の段階でも、まだまだ足りません。「自己実現」だから。

 L-10120218月シークレットレクチャー -03;自分中心を捨て去る=解放

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31210545.html

 

 では、私たちは「完全に自分の自我を無くす」まで、プロファイリングやプロファイリングから始まるコーチングを行うこと控えるべきなのでしょうか?

 

F-342につづく)

 

 

苫米地式コーチング認定コーチ     

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

 

-追記-

私たちは「完全に自分の自我を無くす」まで、プロファイリングやプロファイリングから始まるコーチングを控えるべきなのでしょうか?

 

 皆さんはどう思いますか?

 

 私の思いはこちら↓

 Q-344~:自身の人生を変えることに専念? それともコーチング活動を開始?

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_426561.html

 

 

-告知1

2023年度のオンラインセミナーを企画しました。9月から1ヶ月おきに、計4回開催する予定です(9月、11月、1月、3月)↓

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32135874.html

 

 次回の開催は2024428日(日)(←再変更しました)。詳細はこちらで御確認ください↓

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/33835792.html

 

 

-告知2

 クラブ活動をはじめました。その名は「コーチング・デ・コンパッションクラブ」。

一緒に楽しみましょう!

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『洗脳』プロファイリング 重大未解決事件の犯人を追え!(文庫版)