Q-366:医師からのパワハラがひどすぎて心が折れました <前編;case-side

 

医師である私のもとに、ズキズキするような御相談が届きました。

 その一部にコーチとして回答いたします。

 (変更を加えています)

 

Q:看護師として療養病棟で働いています。医師からのパワハラがひどすぎて、正直限界です。患者さんが悪くなったりするといつも責められるのですが、この間なんかカルテに「誤嚥させて肺炎になった」「寝かせっぱなしー肺炎」「悪くなってから連絡あり。手遅れ」などと書き込まれて心が折れました。

ギリギリの人員で現場が回っているため今まで我慢してきましたが、もう本当に限界です。

 

A1:「悪くなってから連絡あり。手遅れ」という表現には、いくつか課題(case-side)があります。そのうち3つほど取り上げると

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/12658417.html

 

 □「あなたたちが悪い」「私は悪くない」という他責

 □「手遅れ」に滲み出ている時間観

 □「」と決めつける価値観

 

 先に解決(plan-side)をお伝えしとくと、私の提案は「コーチングを学び、実践する」。そのコアは「抽象度を上げる」ことです。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4448691.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4449018.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516484.html

 

 以下、シンプルにまとめます。参考にしてください。

 

 

 □「あなたたちが悪い」「私は悪くない」という他責

なにか問題が生じたり、嫌なことが起こった場合に、「〇〇が悪い」などと自分以外のところに責任を転嫁してしまうことを「他責」といいます。それとは反対に、「自分の注意が足りなかったのでは?」などと自身の言動を振り返ることが「自責」です。

S-04-05:自責の意味

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/22669112.html

 

 「他責」の前提には、「自と他を明確に区別している」という意識状態があります。その“区別”自体は問題ありません。「自と他の区別」とは、自分の定義=自我のことです。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353425.html

 

 ただし、部分関数としての自我、すなわち”縁起の中心点としての自“の認識が欠けると、「自と他の区別」は「差別」に変質していきます。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353044.html

 

 御相談に登場する医師のブリーフシステム(Belief System)は、おそらく「他責」でしょう。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721531.html

 

しかも、flatな関係上の「あなたたちが悪い」「私は悪くない」ではなく、「自分は上(偉い)」「あなたたちは下(偉くない)」といった上下関係による見下しを根にもつ「他責」であるはず。それが差別です。

PM-06-13:仮説08)はびこる差別意識

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14249741.html

 

 

 □「手遅れ」に滲み出ている時間観

 繰り返しますが、「私は悪くない」や「自分は上(偉い)」は、縁起の理解不足に由ります。西洋的に表現すると不完全性の無理解です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6194669.html

 

 少し掘り下げると、情報空間の不完全性を示したのがクルト・ゲーデル(19061978年)の「不完全性定理」で、物理空間での不完全性を示したのがヴェルナー・ハイゼンベルク(19011976年)の「不確定性原理」です。

 PM-06-18~20:仮説13)宗教の限界

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14526199.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14687391.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14687476.html

 

 *情報空間と物理空間の関係はこちら↓

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516539.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654230.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654316.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4831442.html

 

 いずれにせよ、生きている以上、「手遅れ」はありません。「必ず解決の糸口がある」「いつも可能性が開かれている」というのが、不完全性が示唆することです。

どんな暗闇にも光は差し、どんな逆境でも希望はあり続けます。

 F-155:「怒りと絶望しかありません」という言葉に感じた希望

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/23743308.html

 

 再度繰り返しますが、「私は悪くない」や「自分は上(偉い)」は、縁起の理解不足に由ります。その理解不足が「過去→未来」という固定的かつ閉塞的な時間観を生みだします。「悪いのはいつもあなたたち」「これからも自分は上(偉い)」というブリーフです。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6542317.html

 

 詳細は下記ブログ記事で確認していただきたいのですが、時間は未来から現在、過去へと流れています。その「未来→現在→過去」という時間観の習得が1st. Stepです。

2nd. Stepは「時間は物理空間の軸の1つ(4次元時空)」を理解すること。ひとつ抽象度が上がると、時間は流れていないことがわかります。

 Q-319~:速いスピードで移動した人は長生きできるって言いますよね?

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_425265.html

  

 未来は確定的なものではなく、いくつもの未来が可能世界(possible world)として同時に存在しています。

じつは未来だけではなく、現在も過去も同時に存在している

それが苫米地博士が座右の銘にされている「一念三千」の世界観です。

 F-319:観自在 <理論編-2;自在を観る>

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32875213.html


 

 □「」と決めつける価値観

 世の中に絶対はなく、未来は無限の可能性として開かれている

 そのように頭では理解できても、実感はなかなかできないはず。簡単にいうと、「可能性」がスコトーマに隠れてしまうからです。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html

 

 *詳しくいうとこちら↓

 L-140202111月小学校親子講演会-03;子どもたちに一番伝えたかったこと

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/33332991.html

 

 先ほど「生きている以上、『手遅れ』はありません」と書きましたが、それもなかなか実感できないはずです。現実問題として、生きるほど、残された時間は短くなっていくのだから。

例えば、今日生まれる子どもであっても、1日経つと、1日死に近づきます。死に近づきながら(時間の流れを考慮すると「死が近づきながら」)、確実に老い、たぶん病になり、そしていつの日か必ず旅立ちの時を迎えます。

L-155202111月医療系研修会 -10;「明日への希望」を失わないために

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/33919200.html

 

 ところが、抽象度を上げた思考ができるようになると、人は「老病死(+生で四苦)」を克服していきます。先の表現でいうと「手遅れ」という概念そのものがなくなる感じです。

それは、いわば時空を超越する体感。情報次元に自が拡張し、宇宙と一体化する感覚です。

F-243:人は、生きている時は自分の心の中、亡くなると親しい人の心の中にいる

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/28791954.html

 

 その境地にいたると、「生」「老」「病」「死」の違いはなくなり、「正誤」「善悪」といった価値判断からも自由になります。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/10400987.html

 

 御相談に登場する医師のブリーフシステム(Belief System)には、「病」←嫌、「病」←悪、「病」←負け といった価値観がすり込まれているはずです。さらには、無意識の奥深くに、死に対する強い恐怖があるのでしょう。

 F-122:免疫力をあげる!

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/21245972.html

 

 恐怖や不安(←未来の恐怖の予期)により抽象度が下がり、大切なもの(例えば「感謝」「感動」「希望」)が見えなくなっている

 PM-07-02:釈迦が教えてくれること ~3Kを新たな3K

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/15395021.html

 

 それが、私が御相談から感じた問題の本質(inherency)です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/12808542.html

 

 以下、苫米地博士の著書「人間は『心が折れる』からこそ価値がある」(PHP研究所、p174)より引用します。逆腹式呼吸を重ね、リラックスを深めながら、「心が折れました」という自分に対するイメージを書き換え、スコトーマを外してください。Feel

 (逆腹式呼吸はこちら↓)

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/27570183.html

 

 

「心が折れる」のはダメな人間の証拠ではなく、人間の素晴らしさの証拠だ

 多くの人は、「どうも不快だ」「今日はかったるい」「最近気が重い」というような、ネガティブな気分をなくしたいと思っています。ネガティブな気分にならない人が完璧な人間だと思っています。

 しかし、それはまったくの誤解なのです。不快な気分、ネガティブな気分があるから、人間は素晴らしい完成された存在なのです。

 心が折れるのはダメな人間の証拠ではなく、人間の素晴らしさの証拠です。

 私や私の仲間たちのように、人工知能を三十年間研究してきた人間は、人工知能が完璧でないのは、「情動」のしくみがなく、「不快な気分」を感じることができず、「心が折れない」からだと考えています。

 情動や気分のしくみがないがゆえに、現在の人工知能は賢くないのです。

 世の中の問題には決まった答えはありません。考えても考えても答えが出ないことばかりです。通常のコンピュータは論理思考しかできないので、答えがなくても理詰めで考え続けます。答えがないのに延々と答えを探し続けて演算を繰り返します。そういう単純な思考しかできないコンピュータは、賢いとはいえません。

 それに対して人間は、途中で計算を打ち切って即座に結論を出すことができます。それを支えているのが「情動」のしくみです。「こっちのほうが好きだから、これにする」とか「これは嫌だから、やらない」とか「何となく、こっちがいいと思う」と判断して、結論をスパッと出すことができます。論理を超えた結論を出せるのです。

 論理的に見れば間違った結論かもしれませんし、矛盾した結論かもしれません。けれども、人間はそこから学んで、次はより適切な結論を出そうとする学習能力があります。

 そういうしくみこそ「賢い知能」なのであって、人工知能にはまだまだ追いつけない部分です。

 その人間の一番優れた機能である情動の働きを「ないほうがいい」と思うのは、とても残念なことです。情動の働きが人間の脳の素晴らしさを支えているのであり、この働きをもっと大切にするべきです。

 不快な気分になる、怖い思いをする、気分が憂うつになる、心が折れる。いずれも、とてもよいことです。人間は感情的になっていいのです。人間の脳は、そうなるようにできています。

 悲しいときには泣く。心が折れるときには折れる。嬉しいときには喜ぶ。それを禁じる社会のほうがどうかしています。

 引用終わり

 

Q-367につづく)

 

 

苫米地式コーチング認定コーチ      

苫米地式認定マスターヒーラー      

 CoacH T(タケハラクニオ)     

 

 

-追記1

少し掘り下げると、情報空間の不完全性を示したのがクルト・ゲーデル(19061978年)の「不完全性定理」で、物理空間での不完全性を示したのがヴェルナー・ハイゼンベルク(19011976年)の「不確定性原理」です

 

 ずっと待ち続けていたクリストファー・ノーランの最新作「オッペンハイマー(原題:Oppenheimer)」が、ついに公開されました。アルベルト・アインシュタイン(1879~1955年)やニースル・ボーア(1885~1962年)とともに、ゲーデルやハイゼンベルクもチラッと登場します。

俳優が演じているのは百も承知ですが、それでも「不完全性」に対する臨場感が上がりました。映画の持つ強力なパワーをあらためて実感しています(いろんな意味で)。

F-304~:映画のおもしろさって何だろう? ~Indy 5」の評価が割れた理由を考える~

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_426094.html

 

 

-追記2

 時間は未来から現在、過去へと流れています。その「未来→現在→過去」という時間観の習得が1st. Stepです。2nd. Stepは「時間は物理空間の軸の1つ(4次元時空)」を理解すること。ひとつ抽象度が上がると、時間は流れていないことがわかります

 

 大乗仏教的にいうと、「未来から過去へ流れる」という時間観が仮観で、「流れていない」が空観という感じでしょうか。そして、「離散的である時間の本質をわかった上で、あえて流れを楽しむ」という境地が中観であるはず。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353367.html

 

 

 その中観的な世界が、なんと、ノーランの「インターステラー(原題:Interstellar)」で描かれています。サントラ(ハンス・ジマー!)とあわせ強くお勧めします。

 F-192:「夢をかなえる方程式 I×V=R」実践の秘訣(ワーク付き)

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/26119647.html

 

 

-告知1

2023年度のオンラインセミナーを企画しました。9月から1ヶ月おきに、計4回開催する予定です(9月、11月、1月、3月)↓

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32135874.html

 

 次回の開催は2024428日(日)(←再変更しました)。詳細はこちらで御確認ください↓

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/33835792.html

 

 

-告知2

 クラブ活動をはじめました。その名は「コーチング・デ・コンパッションクラブ」。

一緒に楽しみましょう!

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_418055.html

 

 

-関連記事-

F-228:ゼロトラスト 前編;民無信不立

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/28170711.html

F-330:分断緩和のための処方箋 vol.1;サーフィンvsウインドサーフィン

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/33414117.html

F-336:次世代プロファイリング×ゴール設定 <vol.1;コーチングにプロファイリングは必要?>

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/33723264.html

L-05220207月シークレットレクチャー -02;縁により「呪縛」は「希望」にかわる

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/27587288.html

S-04-16:反求と在身-1;吉田松陰の教え

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/23437901.html

S-04-17:反求と在身-2;「自分中心」克服のためのワーク

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/23512794.html

 

 

人間は「心が折れる」からこそ価値がある

Kindle版はこちら↓

人間は「心が折れる」からこそ価値がある | 苫米地英人 | 個人の成功論 | Kindleストア | Amazon