L-155202111月医療系研修会 -10;「明日への希望」を失わないために

 

202111月に認知症をテーマとした医療系の研修会で講演を行いました。当日の講演内容をブログ用に再構成し、いただいた御意見・御質問に回答いたします。

 

 01;認知症を引き起こし、BPSDを悪化させるもの

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/33693497.html

 02;人の特性はBSで決まる=人はさまざまな幻想に支配されている

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/33708684.html

 03;「ゴール側の世界(w1)の臨場感を維持し続ける」ための鍵

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/33745283.html

 04;生体に備わっているホメオスタシスの同調性を利用する方法

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/33760483.html

 05;記憶にリアルな臨場感を持たせると、相手も同じ臨場感を感じる

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/33796873.html

 06;人生の様々な方向性に対してそれぞれゴールを持つ

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/33811307.html

 07;ゴールとは「究極的に抽象度が高まった体感」で感じるもの

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/33851880.html

 08;誰もが抱えている“根源的な痛み”

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/33866119.html

 09;「明日への希望」から生まれる“幸福”の好循環

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/33904272.html

 10;「明日への希望」を失わないために

 

 

 確実に老い、たぶん病になり、必ず死ぬ。その間に認知症になるかもしれない

 

それでも「明日への希望」を失わないために、私たちは何を心がけるべきでしょうか?

 

 

 この記事は医療従事者向けに行った講演をもとにしています。講演は認知症と深く関わる方々を対象としていました。

認知症の診療で必ず行われる検査に「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」というものがあります。開発者 長谷川和夫医師は、認知症医療に取り組みながら、認知症ケア職の人材育成にも尽力されたそうです。

 

認知症ケアで長谷川先生が大切にされていたのが「パーソン・センタード・ケア」。それは「認知症の人を一人の『人』として尊重し、その人の立場に立って考え、ケアを行う」という考え方です。コーチングに寄せていうと、「ブリーフシステム(Belief SystemBS)を評価し、共感する」という感じでしょうか。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721531.html

 

 「認知症の人を一人の『人』として尊重し」の『人』とは、釈迦哲学的にいうと「関係性の結び目」のこと。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353425.html

 

 よって、「パーソン・センタード・ケア」の「パーソン」は、たんに認知症の人だけを指すのではなく、縁ある人びとすべてにひろがります。「パーソン」とは、「双方向性の縁起のつながり」のことです。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353044.html

 

 私は、その縁起の体感こそが、「明日への希望」を失わないための最大の鍵だと思っています。コーチングでいうと、ゴールの共有とコレクティブ・エフィカシーです。

 Q-310~2:私のまわりではそうでもvol.5~7:コレクティブ・エフィカシー>

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31049084.html

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31078775.html

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31102405.html

 

 

 ところで、認知症医療の大家である長谷川先生は、先輩医師からこのように言われたそう。

 

 「君自身が認知症になってはじめて君の研究は完成する」

 

 この言葉が、長谷川先生の心の中で反響し続けていたに違いありません。

 L-07920213月シークレットレクチャー -02;内省言語を発生させる

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/30021884.html

 

 201710月に行われた講演で、長谷川先生は自らが認知症であることを明かされました。その後、メディアの取材にも積極的にも応じられています。

以下、認知症公表後の長谷川先生の発言(青字)を紹介します。

 

Q:「自分の姿を見せることで、認知症とは何か、伝えたい」と講演活動を続けられている原点は?

A:忘れられない患者さんがいらしたんですよ。その人はね、五線紙があるでしょう、音符を書く。そこに彼は『僕の心の高鳴りはどこに行ってしまったんだろうか』という悲痛な叫びが書いてある。「僕にはメロディーがない。和音がない。共鳴がない。帰ってきてくれ。僕の心よ、全ての思いの源よ。再び帰ってきてくれ。あの美しい心の高鳴りは、もう永遠に与えられないのだろうか」とも。

それを心にずっと秘めて、これはもう絶対にこの道は認知症に対する研究、診療っていうのは何がなんでも続けるぞと思った。

自分は勉強として、脳がどんなふうになっていくというのはいっぱい研究してきたけども、本人の心の中を見たのはこれが初めてだった。

もうだめだとか。もう僕はあかんとか。もう何もできなくなるのかとか。どんどんひとりになる。自分が認知症になってみたら、そんなに生やさしい言葉だけで、人様に申し上げることはやめなくてはならないと。こんなに大変だと思わなかったな、ということだよね。

NHKスペシャルより-

 

「認知症の人と自分とは同じだ」と同じ目線に立ち、従来のケアに加えて「その人らしさ」を尊重する。その性格を形成していく背景を粘り強く推し量り、「その人らしさ」を理解して、お互いに代えがたい存在であることを認め合う。認知症ケアには、そんな姿勢が求められると思います。

私は、こうした日本の認知症ケアを、世界に広めていくべきだと考えています。

「認知症の人の心は、私の心と同じ。あの人も私と同じように楽しみたい、幸せになりたいと思っているんだ」という気持ちをもって、本人に接してみる。こうして、認知症になっても安心して暮らせる社会をつくっていくことが、これからの日本に求められることではないでしょうか。

私はいま、子どもたちに認知症のことを理解してもらうための絵本を作りたいと考えています。

-認知症公表後の週刊誌(文春)の取材より-

 

 長谷川先生のコメントからは、「双方向性の縁起のつながり」に対する熱い思いが感じられます。それは個人を超えた次元(=克己)で「認知症に対する研究、診療」に向かう情熱。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_268337.html

 

「縁起のつながり」の中で、先生の思いはさらなる未来に向いています。それが「認知症になっても安心して暮らせる社会をつくる」というゴール。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5615935.html

 

ゴール実現のためのCOA(コース・オブ・アクション)の1つが、「子どもたちに認知症のことを理解してもらうための絵本を作る」というもの...

Q-072:不言実行はなぜ大切なのか? 有言実行は本当に間違っているのか?

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14973460.html

 

 身体的にも心理・精神的にも徐々に老いていく長谷川先生と先生を支え続けた人たちの思いは、「だいじょうぶだよ:ぼくのおばあちゃん」(ぱーそん書房)という絵本になって現実化しました。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6542364.html

 

だいじょうぶだよ:ぼくのおばあちゃん

 

 

 その過程では、個人のレベルを遥かに超えた次元(超自我)でのゴール共有とコレクティブ・エフィカシーが実現していたに違いありません。

 L-10120218月シークレットレクチャー -03;自分中心を捨て去る=解放

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31210545.html

 

そのゴール共有×コレクティブ・エフィカシーが、「明日への希望」を失わないための最大の希望!

 

 これが長谷川和夫先生との御縁で、コーチ兼医師としての私が体感したイメージです。

(↑「オラクル」なのかもしれません)

L-142202111月小学校親子… -05;人の成長や進化・向上は情報空間で起こる

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/33383147.html

 

L-156につづく)

 

 

苫米地式コーチング認定コーチ      

苫米地式認定マスターヒーラー      

 CoacH T(タケハラクニオ)     

 

 

-追記-

 講演内容をブログ用にリライトしながら、苫米地博士が「ネオテニー(幼態成熟)」について言及されているのを思い出しました。

 

 以下、苫米地博士の著書「全速脳 ~脳は鍛えると100倍加速する」(宝島社、p150)より2回に分けて引用します。前回引用分(L-154/09)のつづきです。

皆さん御自身の「ゴール共有×コレクティブ・エフィカシー」を体感しながら読み進めてください。Feel

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14120540.html

 

 

4-07 人類が進化してきた理由はネオテニー(幼態成熟)にあり?

 これまで説明してきましたように、私たち人間が、頭の中で何を思っているか、何を考えているかは、私たちの寿命に大いに関連があります。

 私は以前、脳が人間の若さを決めると述べましたが、この命題は次のように言い換えることができると思います。

 脳が人間の死を決定する。

 

 ということは、脳を働かせて常に若々しく保っている人は、肉体と精神の若さをも維持し、なおかつ長寿になることができる、といえるでしょう。

 超長寿時代における若返りとは、ひとえに脳の若返りのことを指しているのです。私たちは、心肺が停止すれば死にますが、心臓が止まってしまうのは、脳が停止命令を出すからに他なりません。

 脳を若々しく働かせ、その状態をできるだけ長く維持することができれば、私たちだって、ヒマラヤのヨーガ行者たちのように長生きすることが可能です。

 近い将来、現代を生きる人類の寿命は、飛躍的な向上を見せ、私たちはその変化に度肝を抜かれることになるはずです。

 

 その兆候はすでに現れています。

 新しい世代が世の中に登場するたびに、街を歩く若者たちはどんどん幼く見えるようになっているように思います。若者だけにとどまらず、社会で重要な地位についている50代の人びとも、例えば昭和一桁世代が50代だった頃とは、外見も考え方もまったく違うと言ってもいいでしょう。

 これは、日本人だけに起きている現象ではありません。もちろん、経済的に貧しい発展途上国では、このような現象は目立っていませんが、欧米の先進国では、それぞれの国民に同じような変化を見て取ることができます。

 それらの先進国においては、そうした変化と軌を一にするように、国民の平均寿命の継続的な長期化現象が起こっているのです。

 現代人がどんどん幼くなっていることを、私は必ずしも否定的には捉えていません。なぜなら、それは人間の進化のプロセスだと捉えているからです。

 

 ご存じの方もいるかもしれませんが、ネオテニーという言葉があります。

 日本語に訳した場合、「幼態成熟」といい、幼い形態を維持しながらも成熟することを意味します。人間はそのネオテニーの代表的存在といわれています。

 一般的にいって、ライオンや熊などの動物は、産声を上げるとすぐに自分の足で立ち上がろうとし、ごく短期間で成熟した大人と同じ物を食べるようになります。そういった動物たちは、誕生したときは、確かに赤ん坊の形態をとっていますが、最初からほとんど大人と同じような状態で生まれてくるのです。

 つまり、脳や身体が速く発達することで、環境に適応した生体器官の特殊性を瞬く間に獲得していくのです。

 しかし、一方で、人間の赤ん坊は違います。生まれたばかりの状態では、爪や歯などもしっかりしていないし、すぐに二足歩行できるようには足腰が発達していません。

 また、人間が社会で生き抜いていくための一人前の身体と頭脳を持つまでには、十数年という年数を必要とします。そのうえ、ただほったらかしにしているだけでは、一人前にはなれず、基本的な能力を身につけさせるためには、じつにさまざまな教育や訓練を親や学校が受けさせる必要があります。

 さらにいうなら、人間の赤ん坊は、見るからに無防備な姿で生まれてきますが、十数年の年月を費やして、成人としての身体を獲得できたとしても、その外見的特徴は基本的に大きく変わりません。幼いときの形態のまま、ただ単にサイズが大きくなる、というだけなのです。

 引用終わり(つづきは次回に)

 

 

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一緒に楽しみましょう!

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