F-309:映画のおもしろさって何だろう? ~Indy 5」の評価が割れた理由を考える~ vol.6;抽象度+α>

 

 今夏(2023年)、映画「インディ・ジョーンズ」の第5作(Indiana Jones and the Dial of Destiny)が公開されました。

 第1作「Raiders of the Lost Ark」が公開されたのは1981年。42年分の記憶とともに楽しまれた方も多いのではないでしょうか?

(私の場合、「少年←思春期←学生←医師←コーチ」を濃縮した感覚でした)

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 今作は(前作もw)評価が真っ二つに割れたようです。「最高級におもしろかった」と「とても退屈だった」といった感じに。皆さんはどうでしょう?

 

 ところで、私の元にはこのような御意見が届きました。「子どもの頃は『インディになりたい』と思うくらい好きだったのに、全然楽しめなかった」。

 

 その理由を推測しながら、“おもしろい”について考えてみました。

 Q-281~:ドーパミン分泌をコントロールまたはどの程度分泌されているか

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_422146.html

 

 vol.1;臨場感① -洗脳を知るうえで必要な三つの概念

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32129073.html

 vol.2;臨場感② -ゴール達成の秘訣

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32179090.html

 vol.3;臨場感③ -「ゴール達成の秘訣」の秘密

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32229850.html

 vol.4;コンフォートゾーン① -light side

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32279767.html

 vol.5;コンフォートゾーン② -dark side

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 vol.6;抽象度+α

 

 

 私は、シリーズものの大作映画の評価が真っ二つに割れる理由を、このように分析しています。

  “変化”がCZ内にギリギリ留まれば →「最高級におもしろかった」

“変化”がCZを飛び出せば(=大きな変化)→「とても退屈だった」

 

 もちろん、これは一般人にとっての話。限定合理性が働き、現状がCZComfort Zone)となっていることが前提での因果関係です。

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「現状にNoを突きつける」というコーチングマインドを持つ者にとっては、因果はまったく反対。コーチングを実践し続ければ、

  “変化”がCZ内にギリギリ留まれば →「とても退屈だった」

“変化”がCZを飛び出せば(=大きな変化)→「最高級におもしろかった」

 となります。

 

 では、コーチングマインドを持つ皆さんに質問です。

 

 予想外の大きなサプライズで驚けば、“おもしろい”といえるのでしょうか?

CZを大きくゆさぶりさえすれば(飛び出しさえすれば)、本当に“おもしろい”のでしょうか?

 

 

 前回(F-308/vol.5)、追記内で映画Mission: Impossible」について書きました。その1作目を鑑賞したとき(1996年)、私は怒りがこみ上げてくるのを感じました。

 それはコーチングを学ぶ前の話。しかし、コーチングを学んでいる今でも、やはり怒りに近い違和感を感じます。

 PM-06-11:仮説06)二つの「怒り」とその間にある論理的思考

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14107083.html

 

 その怒り/違和感の原因は、TV版「Mission: Impossible」の主人公 ジム・フェルプスの描き方にあります。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5882652.html

 

 記憶により作られた強力な“現状というCZ”を破壊し飛び出すこと自体はコーチングマインドといえます。問題はその飛び出す方向性です。

 PM-06-06:仮説01)変わらないCZが生みだす「現状維持の壁」

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/13628746.html

 

例として、もう一つ怒りを感じている映画シリーズを紹介します。その映画とは「Rambo」。

1982年に公開された「ランボー(原題:First Blood)」は、デイヴィッド・マレルの小説「一人だけの軍隊/First Blood」(1972年発表)を映画化したもの。

ベトナム戦争から帰還後社会から孤立している主人公 ジョン・ランボーと、偏見からランボーを排除しようとした保安官との対決を通じて、「ベトナム戦争によって負ったアメリカの傷」が見事に描き出されています。とくにラストシーンの元上官 トラウトマン大佐に向けてのランボーの激白は、当時少年だった私の心にも重く響きました。

Q-298~:どれくらい相手に共感していいものでしょうか?

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_423870.html

 

 その後、服役していたランボーが極秘任務に復帰する2作目「Rambo: First Blood PartⅡ」(1985年)、トラウトマン救出に向かう3作目「RamboⅢ」(1988年)と続いた後、20年ぶりに4作目「Rambo」(2008年)が公開されました。そのラストは、2作目以降ずっとアメリカを離れていたランボーが、ついにアリゾナの実家に帰るというシーン。

 物理空間のみに注目すると、それは“かつてのCZ(実家)”への回帰といえます。しかし、情報空間(マインド)に注視すると、戦いを経て成長したランボーが見いだしたゴールが実家(母国アメリカ)を“新たなCZ”に変えたと解釈することができます。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5615935.html

 

 *物理空間と情報空間はこちら↓

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516539.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654230.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654316.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4831442.html

 

 さらに原題が「Rambo」であり4作目を示すナンバーがないことを加味すると、「戦いを経て見いだしたゴールにより本当の“自分”になれた」と解釈することができるはず。

 意図性(intentionality)によるオリジナルとコピーの逆転です。詳しくは↓

 F-265:不満と傲慢のはざまで苦しんでいる君へ <vol.9;“初心”とは?>

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/30002338.html

 

 *こちらもぜひ↓

 Q-321:速いスピードで移動した人はvol.3:「時間は体感」を体得する4つのステップ -後編->

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31732537.html

 

 

 それから11年後を描いた5作目が「Rambo: Last Blood」(2019年)。

37年前の1作目「First Blood」に対しての「Last Blood」であることより、本当の“自分”になれたランボーのさらなる現状の外への挑戦が描かれると期待していました。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353425.html

 

ランボーは1947年生まれという設定なので、劇中では73歳です。「無人運転」「自動運転」から脱し、老境を迎えた男の豊か(well-being)な“Last”を期待していたのですが

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_369873.html

 

 ネタバレになるのでこれ以上書きませんが、ジョン・ランボーというキャタクターを生み出した原作者 デイヴィッド・マレルは「この映画はグチャグチャ。私の名とかかわりがあるのが恥ずかしい(The film is a mess. Embarrassed to have my name associated with it.)」とコメントしています↓

 「ランボー」の小説家、最新作『Rambo: Last Blood』を「駄作」「関わりがあるのが恥ずかしい」と酷評 (ign.com)

 

 繰り返しますが、記憶により作られた強力な“現状というCZ”を破壊し飛び出すこと自体はコーチングマインドといえます。問題はその飛び出す方向性です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/12658417.html

 

 では、その方向性とは?

 

 最後に、苫米地博士の著書「「人生を劇的に好転させる自己洗脳ルール44」(学研プラス、p150から引用します。方向性を“立体的”に感じてください。Feel

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14120540.html

 

 

ルール38 デヴィッド・リンチ監督や黒澤明監督の映画を見る

 デヴィッド・リンチ監督の映画と黒澤明監督の映画とではやや性質が違うので、これらを別々に説明していきましょう。

 まず、リンチ監督の映画ですが、非常に抽象度の高い映画と言えます。抽象度の高い映画を見るのは、脳の抽象度を高めるための訓練にもなります。

 ハリウッド映画は抽象度が低い代わりに非常に臨場感の高いものになっています。そういったハリウッド映画のような臨場感とは違った抽象度の臨場感が、リンチ監督の映画にはあるのです。

 リンチ監督が描きたいと考える世界観があり、その世界の臨場感を高めてくれて、しかも非常に抽象度が高いものになっていますから、映画を見るということで言えば、これ以上ないくらいおすすめです。「人生が変わる」というテーマにふさわしいと思います。

 黒澤映画も同様だと言いたいところなのですが、実は黒澤映画のすばらしいところは、リンチ監督の映画とは少し違ったところにあります。それは、黒澤監督が映画に導入した手法には、それまでにはなかった、つまり黒澤監督自身が発明したものが数多くあるという点です。

 

 まさに映画は、黒澤以前と黒澤以後に分けられると言っても過言ではないのです。時間の流れであったり、カメラワークであったり、あるいは細かいシーンの撮り方に至るまで、それまで誰もやったことのない方法を次々と編み出して、導入し、そしてその後はそれがスタンダードとなって誰しもが当たり前のようにやるようになったものが大量にあるのです。奇抜なことをやるだけなら、多くの人がやっていますが、それがその後の業界標準になるというのが黒澤監督のすごいところです。

 詳しい説明の前に言っておくと、私は映画、特に黒澤映画には非常に詳しいのです。だいぶ昔ですが、黒澤監督のもとで助監督をしていたとか、照明係をやっていたというような人たちを前に、「黒澤映画のすごさ」というテーマで講演をしたこともあります。

 それはともかく、黒澤監督が初めて取り入れて、その後、業界標準になった手法を列挙していくと、例えばカメラをレールに乗せて走らせていくというものがあります。黒澤以前は、映画というのは特等席で演劇を見るようなもので、カメラはほぼ固定された状態だったのです。それを黒澤監督はカメラを動かしただけではなく、カットで視点を動かすということまでしたのです(斬る人間の視点から見ていた、次の瞬間には斬られる人間の視点で見ているというような視点の移動のことです)。

 あるいは、川面を花びらが流れていくシーンを見せて、その間に5年の月日が流れたことにしてしまうというような撮り方で、映画における時間の流れを大きく変えました。今ならよくあることですが、当時は、見ている人間の時間の流れと映画の時間の流れはそう大きくかけ離れることはありませんでした。

 また、悲しいシーンで雨を見せることによって、次回作では雨を見せた瞬間に、観客に前の映画の悲しいシーンで思い描いた気持ちを思い出させるという手法も導入しました。あるいは、細かい撮り方で言えば、当時、フィルムの感度が現在の1/100ぐらいだったので雷の稲光を映画で映すというのは至難の業だったのですが、失明してしまうのではないかと思うくらいものすごい電力を使って稲光を映すことに成功したり、雨粒がシーンにうまく映らなかったので、墨を混ぜて、黒い雨を降らせたなど、枚挙にいとまがないのです。

 何が言いたいのかと言いますと、黒澤映画というのはまさにスコトーマ外しの宝庫だということです。「これはできない」とか「こうするのが当たり前」というような既成概念をことごとく打ち破ったのが黒澤映画なのです。

 黒澤映画が表現の世界で次々とスコトーマを打ち破っていったその足跡を追ってみると、スコトーマとはどのようにはずせばいいのかについてのヒントが山のように見えてくるはずです。

 ハリウッド映画も悪いとは言いません。でも、もう少し抽象度の高い映画、スコトーマ外しの参考となる映画もあるのだということを知ってほしいと思います。

 引用終わり

 

F-310につづく)

 

 

苫米地式コーチング認定コーチ     

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

 

-追記-

映画がおもしろく感じられないとき、それが映画館なら、(多くの場合)コーチ/ヒーラーとしてのワークに取り組みながら鑑賞を続けます↓

F-192:「夢をかなえる方程式 I×V=R」実践の秘訣(ワーク付き)

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/26119647.html

 

映画館ではなかったなら、ためらわず観るのをやめます。「フレームの中断」です↓

F-114:情報が書き換わると現実が変わる vol.5;「幸せなら手を叩こう♪」(ワーク付き)

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/20477749.html

 

 

-告知1

今年度のオンラインセミナーを企画しました。9月から1ヶ月おきに、計4回開催する予定です(9月、11月、1月、3月)↓

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32135874.html

 

 次回の開催は9/24(日)。詳しくはこちら↓

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32237668.html

 

 

-告知2

 クラブ活動をはじめました。その名は「コーチング・デ・コンパッションクラブ」。

一緒に楽しみましょう!

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_418055.html

 

 

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人生を劇的に好転させる自己洗脳ルール44

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