F-308:映画のおもしろさって何だろう? ~Indy 5」の評価が割れた理由を考える~ vol.5;コンフォートゾーン②>

 

 今夏(2023年)、映画「インディ・ジョーンズ」の第5作(Indiana Jones and the Dial of Destiny)が公開されました。

 第1作「Raiders of the Lost Ark」が公開されたのは1981年。42年分の記憶とともに楽しまれた方も多いのではないでしょうか?

(私の場合、「少年←思春期←学生←医師←コーチ」を濃縮した感覚でした)

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 今作は(前作もw)評価が真っ二つに割れたようです。「最高級におもしろかった」と「とても退屈だった」といった感じに。皆さんはどうでしょう?

 

 ところで、私の元にはこのような御意見が届きました。「子どもの頃は『インディになりたい』と思うくらい好きだったのに、全然楽しめなかった」。

 

 その理由を推測しながら、“おもしろい”について考えてみました。

 Q-281~:ドーパミン分泌をコントロールまたはどの程度分泌されているか

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 vol.1;臨場感① -洗脳を知るうえで必要な三つの概念

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32129073.html

 vol.2;臨場感② -ゴール達成の秘訣

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32179090.html

 vol.3;臨場感③ -「ゴール達成の秘訣」の秘密

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32229850.html

 vol.4;コンフォートゾーン① -light side

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32279767.html

 vol.5;コンフォートゾーン② -dark side

 

 

「ゴールの世界の臨場感を高めて、ゴールを実現(現実化)する」ためには、ちょっとしたコツが必要。そのコツとは「ゴール達成の秘訣」の秘密。それは

  

「ゴールの世界」を、未来としてではなく、“今”として臨場感を高める

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 その感覚を磨くのに映画鑑賞がとても役に立ちます。守秘義務ギリギリで表現すると、ポイントは「映画を観ているときの『私』の意識状態」です。

 その「『私』の意識状態」とは、コンフォートゾーン(Comfort ZoneCZ)のこと。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6040892.html

 

 前回は、映画を縁にCZを新たに生みだすことについてお伝えしました。それはCZlight side。今回のテーマは、CZdark sideです。

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 ところで、「限定合理性」という言葉をご存じでしょうか?

 

 限定合理性(bounded rationality)とは、「合理的であろうと意図するけれども、認識能力の限界によって、限られた合理性しか経済主体が持ち得ないこと」を指す概念です(Wikipediaより)。

 苫米地博士とも縁のあるノーベル経済学賞受賞者(1978年) ハーバート・アレクサンダー・サイモン(Herbert Alexander Simon1916~2001年)が提唱した人間の認識能力についての概念がベースにあります↓

 限定合理性 - Wikipedia

 

 ここでいう「認識能力」とは、(おそらく)RAS&スコトーマのこと。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721658.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html

 

 しかし、実際には人間の認識能力だけではなく、「合理的」の「理」である論理空間そのものに限界があります。そう、不完全性です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6194585.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6194669.html

 

 苫米地博士は、限定合理性のことを、「人は生来的に変化を好む生き物だということ」「人は本来、現状維持なんて大嫌い。必ず、一定量の変化、特に増加を好ましく思う」と表現されています。博士の著書「オーセンティック・コーチング」(CYZOp168)の中で。

 (下記ブログ記事内で引用しています↓)

 Q-257:私、立ち直れるかな? <中編;組織~社会の視点で>

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/28703188.html

 

 人は本来、現状維持なんて大嫌い。必ず、一定量の変化、特に増加を好ましく思う

 

 その一方で、人は危険を避けます。慣れ親しんだ場所で安穏に暮らしていればそれで問題はないと考えます。無意識下で安定した状態=現状を保とうとする それが一般的なコンフォートゾーン(CZ)です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4831660.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4971818.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4971956.html

 

 つまり、人は、変化が好きな一方で、大きな変化は大嫌い!

 

 それが“シリーズものの大作映画”の評価が真っ二つに割れる理由でしょう。つまり、

  “変化”がCZ内にギリギリ留まれば →「最高級におもしろかった」

“変化”がCZを飛び出せば(=大きな変化)→「とても退屈だった」

 

 もちろん、最初に述べた「臨場感(←鍵は記憶)」や次回取り上げる「〇〇〇」など、いろいろな要因が絡んで“おもしろい”が決まっているはず。

 (「〇〇〇」はこちら↓)

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4448691.html

 

でも、“おもしろい”のど真ん中には、人間のマインドが抱える「限定合理性」があるはずです。いわば“矛盾”。その不安定な“矛盾”を言葉にすると、「これまで構築してきたコンフォートゾーンが維持されている状態で、少しずつ変化している状況」が“おもしろい”。

 Q-306~8:私のまわりではそうでもないですvol.1~3;コンフォートゾーン>

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/30925409.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/30976461.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/30996032.html

 

 だから私たちは、自身の中の限定合理性を意識に上げて、無意識が強力に維持しようとしているCZを自らゆさぶる必要があります。それがモニタリング&ラベリングです。

 Q-287:ドーパミンの分泌をvol.7;モニタリング&ラベリングの意義>

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/29863863.html

 

 そのモニタリング&ラベリングと合わせ、このような言葉を自分に問いかけ続ける(セルフトーク)のが重要↓

 

 このコンフォートゾーンは本当に良いものなのだろうか?

 

以下、苫米地博士の著書「オーセンティック・コーチング ~本物のコーチング~」(CYZOp146)から引用します。

 

 

 ◎変わるきっかけ

 現状の外側にゴールが設定されると、いままでのコンフォートゾーンは居心地が悪くなってしまいます。

 コンフォートゾーンとは本来そういうものなのです。

 それはそうでしょう。心は早くゴールに向かって飛び出していきたいのです。

 ところが、これまでのコンフォートゾーンでやり残したことや、そこを出るための準備は必要です。逸る気持ちを抑えながらそこに居ることは、次第に苦痛になってきます。つまり、これまでのコンフォートゾーンは時が経てば経つほど、アンコンフォータブルな空間に変わっていきます。

 しかし、それはがっかりすることではありません。それが正しいのです。

 逆に、新しいゴールが見つかったのに、これまでのコンフォートゾーンがコンフォータブルのままだったらそれは新しいゴールではありません。現状の中のゴールであり、あなたの世界はまったく変わっていません。

 つまり「現状」とはいままでのコンフォートゾーンだったとも言えるのです。

 ですから、本当の新しいゴールが見つかったかどうかは、いままでのコンフォートゾーンが苦痛になっているか、否かですぐにわかります。

 なっていなければ、それは現状の外のゴールではないということです。

 現状のひとつの形、それが、いままでのコンフォートゾーンでした。ですから、いまのコンフォートゾーンが心地よい、出たくないと思うのであれば、コーチングの必要もないわけです。

 逆に言えば、コーチングに興味を持つという時点で、現状のコンフォートゾーンに満足していないことを意味します。

 ここまで本書を読んだあなたがそのいい例ではないでしょうか?

 あなたはいま変わるきっかけが欲しいと思っているはずです。その一方で新しいゴールはまだ見つかっていないでしょう。すでに新しいゴールが見つかっているのならば、かつての私のように、そこに向かってもう動き始めているはずです。

 そうしていないということは、いまのコンフォートゾーンを直感的に「違う」と思い始めている反面、どうすればいいのかがわからない、暗中模索の状態だと推測できます。宙ぶらりんの状態の中で、自分が進むべき道を探しているのが、この本を手に取っているいまではないでしょうか?

 これからどのように判断し、行動していくのか、どういうゴール設定をしていけばいいのか、いろいろ試行錯誤している最中だと思いますが、確実に言えることが一つあります。それは、いまが一番重要な分岐点だということです。

 引用終わり

 

 

 本当の新しいゴールが見つかったかどうかは、いままでのコンフォートゾーンが苦痛になっているか、否かですぐにわかる。なっていなければ、それは現状の外のゴールではないということ

 

 先程、シリーズものの大作映画の評価が真っ二つに割れる理由を、このように分類しました。

  “変化”がCZ内にギリギリ留まれば →「最高級におもしろかった」

“変化”がCZを飛び出せば(=大きな変化)→「とても退屈だった」

 

 もちろん、これは一般人にとっての話。限定合理性が働き、現状がCZとなっていることが前提での因果関係です。

 Q-204~:「縁起」と「因果」

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_413308.html

 

「現状にNoを突きつける」というコーチングマインドを持つ者にとっては、因果はまったく反対。コーチングを実践し続ければ、

  “変化”がCZ内にギリギリ留まれば →「とても退屈だった」

“変化”がCZを飛び出せば(=大きな変化)→「最高級におもしろかった」

 となります。

 

 現状の外にゴールをたくさん設定し、実際に現状の外にどんどん飛びだしている

 

 子どもの頃は『インディになりたい』と思うくらい好きだったのに、全然楽しめなかった」という感想は、コーチのブリーフシステム(Belief SystemBS)を体得している証なのかもしれません(おそらく、そうでしょう)。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721531.html

 

 「とてもコーチらしいコメントだ」と思いました。Yes, You’re good

 Q-276~:セルフトークのマネジメントについて

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_421937.html

 

F-309につづく)

 

 

苫米地式コーチング認定コーチ     

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

 

-追記-

「現状にNoを突きつける」というコーチングマインドを持つ者にとっては、因果はまったく反対。コーチングを実践し続ければ、

  “変化”がCZ内にギリギリ留まれば →「とても退屈だった」

“変化”がCZを飛び出せば(=大きな変化)→「最高級におもしろかった」

 となります

 

 実際、長く続いている物語においては、それまでのCZを大きく飛びだすような変化がみられます。例えば、「007」「Mission: Impossible」「Star Trek」、そして「Star Wars」。

 F-014:「THE LAST JEDI」評 ~ネタバレなしversion~

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6542066.html

 

 とくに最新作(7作目:Dead Reckoning Part One)が公開中の「Mission: Impossible」においては、テレビドラマ「Mission: Impossible/スパイ大作戦」(1966~73年)とその続編「Mission: Impossible/新スパイ大作戦」(1988~90年)で長い間リーダーを務めたジム・フェルプスから映画シリーズの主人公 イーサン・ハントへのバトンタッチが、CZを大きく飛び出した“ありえないレベル”で行われました。

 1作目を鑑賞したとき(1996年)、とても驚いたことを覚えています。はっきり言うと、むちゃくちゃ気分が悪く、怒りがこみ上げてくる感じ。

それまでのCZが大きくゆさぶられたのでしょう。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/13397552.html

 

 それはコーチングを学ぶ前の話。しかし、コーチングを学んでいる今でも、やはり怒りに近い違和感を感じます。

 PM-06-11:仮説06)二つの「怒り」とその間にある論理的思考

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14107083.html

 

 では、コーチングマインドを持つ皆さんに質問です。

 

 予想外の大きなサプライズで驚けば、“おもしろい”といえるのでしょうか?

CZを大きくゆさぶりさえすれば(飛び出しさえすれば)、本当に“おもしろい”のでしょうか?

 

 私がたどり着いた答えは次回(F-309/vol.6)に。

 ぜひ“おもしろい”について考察し、そして感じてください。Feel

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14120540.html

 

 

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今年度のオンラインセミナーを企画しました。9月から1ヶ月おきに、計4回開催する予定です(9月、11月、1月、3月)↓

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32135874.html

 

 次回の開催は9/24(日)。詳しくはこちら↓

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/32237668.html

 

 

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 クラブ活動をはじめました。その名は「コーチング・デ・コンパッションクラブ」。

一緒に楽しみましょう!

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_418055.html

 

 

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PM-06-06:仮説01)変わらないコンフォートゾーン(CZ)が生みだす「現状維持の壁」

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