Q-318:今、逃げましたよね? <後編;相手の世界に想像を働かせて、その因果関係をイメージする>
私は兼業コーチです。前回(Q314~)は医師としての私に向けられたシリアスな質問に、コーチとして回答しました↓
Q-314~:こんな私に誰がした
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_425205.html
今回も医師としての経験を、コーチとして考察します。
(詳細は変更しています)
御紹介するのは、80代の父親と娘2名が参加したカンファレンス中での出来事。
「生涯 無事故・無違反」が自慢だったという父親は、最近、娘の強い勧めで自動車免許を返納しました。代わりに電動カートを欲しがる父親に対して、娘さんはイライラが抑えられない様子。認知的不協和です。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5882652.html
娘さんのイライラは、やがて医療従事者に向きはじめました。畳み掛けるような攻撃的質問の最後に言い放ったのが…
今、逃げましたよね?
…前編(Q-316)は「感情が発動するきっかけ」について確認しました。苫米地博士が教えてくださるのは、「予想外」というキーワード。
<前編;感情が発動するきっかけ>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31589977.html
中編(Q-317)は「怒っていい時の条件」を確認しながら、私の心の内を言語化しました。例えば…
<中編;怒っていい時の条件>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31628205.html
「逃げる」というのは、同じ抽象度での移動ではなく、より上位の抽象度次元へのホメオスタシス・フィードバックである
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4831660.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4971818.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4971956.html
*抽象度はこちら↓
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4448691.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4449018.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516484.html
…ちょうどそんなことを考えていたときに、カンファレンスでの発言の順番が回ってきました。
私はコーチとしてしっかり怒ることにしました。その怒り(公憤)を言葉にしながら、コーチングにおいて重要なある概念について説明しました。
PMⅠ-06-11:仮説06)二つの「怒り」とその間にある論理的思考
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14107083.html
「モチベーション」です。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5882609.html
御承知のとおり、モチベーションが高まっていないと、人間の脳は目の前のタスクを回避する(サボる)ために働きます。それはまさしく「逃げる」状態
…創造的回避です。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6040752.html
では、どうすればモチベーションを上げることができるのでしょうか?
…答えはシンプル。自身のモチベーションがアップするようなゴールを自分で設定すればいいだけです。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5615935.html
父親は新たなゴールを設定し、「電動カート」にロックオンしました。そこにあるのは「want
to」ばかり。そんな父親をサポートしたいと願う医療従事者の心も「want to」です。
ところが、娘さん(の一人)にとっては「want to」ではありませんでした。心の中の不安や恐怖が「want to」を消し去ったのでしょう。そして、父親や医療従事者の「want to」まで潰そうとしました。ドリームキリングです。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6040935.html
そんなドリームキリングに対して、私が心がけたのが 1)最悪を想定する(させる)、2)対処とプロセスにフォーカスする(させる)、3)経時的変化を共有する、4)関連する文脈情報を確認する の4つ。「モチベーション」についての話は4)文脈情報です。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/19485793.html
これら4つは、大脳辺縁系優位の動物的な状態から、前頭前野優位の人間らしい状態に戻る(戻す)秘訣。「fight or flight」を克服してはじめて、1)正しく見て、2)自由自在に見て、3)臨場感を維持する ことができます。
Q-159~:臨場感が薄れても高い抽象度のゴールをイメージし続けるのでしょうか?
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_404758.html
それはゴールを実現するための大切な行動。このケースでいうと、「父親とゴールをしっかり共有し、ゴール実現に向けて論理的に検討する」といった感じです。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6194585.html
鍵は「ソウゾウリョク」。
以下、苫米地博士の著書「超『時間脳』で人生を10倍にする」(宝島社、p75)より引用します。「前頭前野優位の人間らしい状態」をイメージしながらお読みください。
立体的認識には想像力が不可欠
対象を立体的に認識するには、想像力が不可欠です。
自分の視点ばかりにこだわっていると、見えるものも見えなくなってしまいます。
「立体的に見る」トレーニングをよりスムーズに実践していただくために、ここで少し「想像力の大切さ」についてお話ししたいと思います。
まずは、先日私が体験したエピソードをお話ししましょう。
その日、あるテレビ局のプロデューサーとの打ち合わせで、都内の某ファミリーレストランへ行きました。時間はすでに深夜0時を回っていました。珍しく朝から打ち合わせや取材が詰まっていて、まともな食事をしていなかった私は、通りかかった店員に、
「何か食事を出せますか?」
と聞いたんです。そしたらその店員は、
「当たり前じゃないですか。ここはレストランです!」
と怒りながら返答をしてきたのです。
その返答を聞き、私は一瞬唖然としてしまいました。
私の頭の中では「すでに深夜0時を過ぎている」「周りはコーヒーやお酒を飲んでいる」という状況から、「すでに食事のラストオーダーは終わったのではないか」と推察したんです。また、「一般的なレストランならば、深夜になれば食事のオーダーをストップするのでは?」という予測もありました。
だから「この時間でもまだ食事は出せますか?」と聞いたつもりだったのです。別にこの店がレストランかどうか、聞きたかったわけではありません。
しかし、その店員にとっては「レストラン」という概念には「24時間食事を出すことができるファミレス」しかなかったのかもしれません。店員の頭の中には「21時や22時でラストオーダーになるような普通のレストラン」の概念がないのです。
それゆえ、私の質問を聞いたとき、店員の側で私の質問の意図を書き換えて、私が「お前の店では食事が出せるのか?」「お前の店はレストランなのか?」とバカにしたような質問をしたとでも勘違いしたのでしょう。結果、私がまったく予想もしなかった返答をしてきたのです。
まさに想像力欠如の典型的な例です。
もし店員が、「レストラン」という概念についてもう少し広い認識を持っていたり、そのときの私が置かれていた状況を多少なりとも想像することができたならば、返答の仕方は変わっていたはずです。たとえば「当店は24時間営業のレストランですので、今のお時間でもお食事をご提供できます」という答えだったかもしれません。
しかし実際には、想像力が欠如し、「レストラン」についても「私」についても限られた認識しかなかったために、「当たり前じゃないですか。ここはレストランです!」という返事になってしまったのです。
その店員の最大の欠点は「自分と相手との関係性の中で、自分の側からの解釈でしか相手を見ていない」ことです。相手が「どういう人なのか」「今日1日どんな過ごし方をしていたのか」「今、どういう気持ちで、何を考えているのか」など、立体的な情報がまったく見えていない。
「相手の因果関係がまったく見えていない」と言い換えることもできます。
因果とは、原因と結果のことを指します。目の前にいる相手は、時間と空間に広がるさまざまな「因」(「1時間前はどこにいた」「両親はどんな人なのか」「出身はどこなのか」「昨日はどんなことを考えていたのか」……)が積み重なって生じた「果」なのです。つまり、「因」について想像できなければ、「果」である相手の存在を理解することはできないのです。
この店員は、自分の常識が、相手の常識であり、この世界を支配する常識であると考えてしまっている。でも、そうじゃないんです。すべてのモノや人に因果が必ずあります。その因果が見えなければ、二次元的な世界から脱することはできません。
自分の世界に閉じこもるのではなく、相手の世界に想像を働かせて、その因果関係をイメージしてください。そうすれば、自然とすべてのことが立体的に見えてきます。
目の前の対象が、時間的・空間的広がりをもった立体的な存在に見えてくれば、同時にたくさんの情報にアクセスできるようになります。結果として並列度も上がり、タスク処理時間も速まり、体感時間も拡張されるのです。
引用終わり
自分の世界に閉じこもるのではなく、相手の世界に想像を働かせて、その因果関係をイメージする
… 想像力 → 創造力 です。
それが「1)正しく見て、2)自由自在に見て、3)臨場感を維持する」。
カンファに参加された父娘にどこまで働きかけることができたかはわかりませんが、縁ある人々すべての想像力を引き出し(healing)、創造力のブーストを支え続けたい(coaching)と願っています。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353044.html
それが苫米地博士に学んでいる私の機能・役割です。
苫米地式コーチング認定コーチ
苫米地式認定マスターヒーラー
CoacH T(タケハラクニオ)
-追記-
「モチベーション」の論理は、「タスクの処理速度を速め、体感時間を拡張する」ための4つ目の軸です。では、他の3つの軸は?
…次回(Q-319~)からはコーチとの会話中に得たインスピレーションをまとめます。その中で「『体感時間』を拡張する4つの要因」を取り上げます。お楽しみに。
-告知1-
今年度のオンラインセミナー開催は2回の予定です。詳細はあらためて告知いたします。
-告知2-
クラブ活動をはじめました。その名は「コーチング・デ・コンパッションクラブ」。
一緒に楽しみましょう!
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_418055.html
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