Q-317:今、逃げましたよね? <中編;怒っていい時の条件>
私は兼業コーチです。前回(Q314~)は医師としての私に向けられたシリアスな質問に、コーチとして回答しました↓
Q-314~:こんな私に誰がした
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_425205.html
今回も医師としての経験を、コーチとして考察します。
(詳細は変更しています)
御紹介するのは、80代の父親と娘2名が参加したカンファレンス中での出来事。
「生涯 無事故・無違反」が自慢だったという父親は、最近、娘の強い勧めで自動車免許を返納しました。代わりに電動カートを欲しがる父親に対して、娘さんはイライラが抑えられない様子。認知的不協和です。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5882652.html
娘さんのイライラは、やがて医療従事者に向きはじめました。畳み掛けるような攻撃的質問の最後に言い放ったのが…
今、逃げましたよね?
…前回は「感情が発動するきっかけ」について確認しました。苫米地博士が教えてくださるのは、「予想外」というキーワード。
<前編;感情が発動するきっかけ>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31589977.html
娘さんにとってはきっと、「父親が電動カートを欲しがること」は予想外だったはず。「カンファ中の医療従事者の対応(言葉)」も予想外だったのでしょう。娘さんの言動からは「私の味方になってくれると思っていたのに…」という思い(内省言語)が滲み出ていました。
L-079:2021年3月シークレットレクチャー
-02;内省言語を発生させる
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/30021884.html
そんな娘さんのリアクションは、私にとっては予想内。私は“あらゆる可能性”を想定するように心がけています。「ゼロトラスト」です。
F-228~:ゼロトラスト
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_418030.html
しかし、私の情動は動きました。ラベリングでいえば「D」。
F-095:私はイヤなことは心の中で握りつぶす vol.2(ワーク付き)
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/18456250.html
ところで、皆さんは湧きあがる情動を抑えきれないとき、何を心がけますか?
ラベリングした「D」が暴走してしまいそうなとき、どのように対処しますか?
…私は「怒っていい時の条件」をチェックするようにしています。
以下、苫米地博士の著書「『怒らない』選択法、『怒る』技術」(東邦出版、p28)より引用します。
◎怒っていい時の条件
なぜ、怒るに値しないのかというと、「怒る条件」が揃っていないからです。怒る条件さえそろっていれば、たとえ相手が誰であろうと、あなたは堂々と怒りを露わにしていいのです(堂々と怒る方法は第2章でお話しします)。しかし、条件がそろっていない時に怒ってしまうと、不利な状況に陥りストレスの元になります。
それでは、怒る条件とはなにか?
その一つ目は、「相手に過失があり、その過失によって自分に不利益が生じた時」です。
条件の二つ目は、「その過失が予想外だった時」です。
ここで、もう一度、あなたの日々の生活を振り返ってください。ほとんどの場合、一つ目の条件だけで怒ったり、我慢したりしていませんか?
<自分に不利益が生じた→だから腹が立った→しかし、相手は簡単には怒りをぶつけられない相手→だから怒れない→ストレスが溜まる>
という流れになるから、イライラが募るのです。
そうではなく、二つ目の条件、「その過失が予想外だった時」が起きて初めて怒るようにすれば、イライラから解放されるのです。
もちろん、この「予想外」は、さきほどいった感情が喚起するきっかけと同じものです。感情が喚起するきっかけがそこにあるからこそ、怒っていいわけで、身体的に正しい怒りだといえるのです。
では、この「予想外」を踏まえて、さきほどの上司Aさんの例を見てみましょう。卑怯な上司Aさんはいつもどおり卑怯なことをしています。それは予想外ではありません。予想外ではない以上、いくら卑劣で卑怯なことをしても怒るには値しないのです。むしろ、卑怯な人が卑怯なことをしなかった時のほうが予想外で、怒るに値するかもしれないぐらいです。
同じように、ダメな部下が予想どおり、得意先で不始末をしでかしたのだって想定内のことです。決して怒るに値しません。
なぜなら、その行為はパチンコ屋に行って、「玉が出なかった」と店員を怒鳴りつけるのと一緒だからです。「買った株が値下がりしたから損失補てんしろ」と証券会社の社員に文句をいうのとなんら変わらないからです。
十分に予想できることが発生して自分に損害が出たのですから、それは当たり前に受け入れるのが社会人の判断です。それを「悪いのはあいつだ」などといって怒るほうがおかしいのです。
引用終わり
…苫米地博士が教えてくださる「怒っていい時の条件」は、1)相手に過失があり、その過失によって自分に不利益が生じた時、2)その過失が予想外だった時
の2つが揃ったとき。
「今、逃げましたよね?」に対する私の「D」は、最初の「相手に過失があり」から当てはまりません。娘さんにはそもそも自由に発言する権利があり、「今、逃げましたよね?」という正直な感想(言葉)にはまったく過失がありません。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/10400987.html
それなのに、なぜこんなに腹が立っているのだろう?
↑これは私の内省言語。
カンファレンス中ではありましたが、そこから私の心の中の探索がはじまりました。
混乱しないでいただきたいのですが、「心の中の探索」は「Nil」です。コーチングにおいては、「探索」はまったく必要ありません。
確かにブリーフシステムの分析には役立つかもしれません。しかし、それは過去をわざわざ引っぱりだして、強化してしまうことに繋がります。現状の強化です。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721531.html
「私らしくない」とセルフトークをしながら、それでも私は「心の中の探索」を続けました。コーチ(&ヒーラー)としての気づきを得る貴重な体験になると確信したから。スコトーマが外れそうな気がしたのです。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html
その”気“が「心の中の探索」を「Nil」から「T」に変えました。
これが縁起であり、無常。空(くう)であり、ゼロトラスト。最近のパワーワードでいうと、「アプリオリの否定」です。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353367.html
間は端折りますが、「心の中の探索」の結果わかったのは、「逃げる」という言葉に対する執着。その執着とは、私憤レベルではなく、公憤レベルであるはず。
PMⅠ-06-11;仮説06)二つの「怒り」とその間にある論理的思考
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14107083.html
それはゴールが生みだす世界に対するこだわり。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5615935.html
その本質は責任(あるいは覚悟)なのだろうと思っています。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/19033189.html
そしてそれは、私のゴールが生みだす社会的使命であり、callingだとも。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31524022.html
主人公が「逃げちゃだめだ」「逃げちゃだめだ」とつぶやくアニメがひろく共感を得ている事実が示すとおり、今の世の中はhave toばかりです。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5882609.html
そのhave toは今後ますます強くなっていきます。Bio-power化しながら。
F-061~:バイオパワー(生権力)
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_292569.html
そんなことを思いながら、私は「怒っていい時の条件」を再確認しました。
1)相手に過失があり、その過失によって自分に不利益が生じた時
…「have toばかりの世の中(社会)」には明らかに過失がある。その過失により「アンハッピー」という不利益が蔓延している
2)その過失が予想外だった時
…進化は、本来、抽象度が上がる方向性。よって、「have toばかり」は予想外(想定外)といえる
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4448691.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4449018.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516484.html
…そんな再確認を経て、私はコーチとしてしっかり怒ることにしました。社会に対して。
その怒り(公憤)を言語化したのがこのブログ記事です。中でも一番届けたいのがこのメッセージ↓
「逃げる」というのは、同じ抽象度での移動ではなく、より上位の抽象度次元へのホメオスタシス・フィードバックである
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4831660.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4971818.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4971956.html
そう、逃げていいのです。ゴールとして生みだす新たな世界(w1)へ。
F-222:コーチングの基本概念を習熟して、エフィカシーをブーストしよう!
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/27832570.html
そこは「want to」だらけの“エネルギーと創造性が満ちあふれる世界”。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/25090742.html
そこ(w1)に向かう知識とスキルをしっかり届けるのがコーチとしてのcauseである
…ちょうどそんなことを考えていたときに、カンファレンスでの発言の順番が回ってきました。
(Q-318につづく)
苫米地式コーチング認定コーチ
苫米地式認定マスターヒーラー
CoacH T(タケハラクニオ)
-告知1-
今年度のオンラインセミナー開催は2回の予定です。詳細はあらためて告知いたします。
-告知2-
クラブ活動をはじめました。その名は「コーチング・デ・コンパッションクラブ」。
一緒に楽しみましょう!
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_418055.html
-関連記事-
PMⅠ-06-09:仮説04)自由と責任の関係の理解不足
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/13958864.html
F-234~:自由訳「revenge」と「avenge」
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_419026.html
Q-142~:現状の外にゴールが設定できている状態と現実逃避に陥っている状態とでは何が違っているのでしょうか?
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_400116.html
Kindle版はこちら↓
Amazon.co.jp:
「怒らない」選択法、「怒る」技術 eBook : 苫米地英人: 本
コメント