Q-316:今、逃げましたよね? <前編;感情が発動するきっかけ>
私は兼業コーチです。前回(Q314~)まで、医師としての私に向けられたシリアスな質問に、コーチとして回答しました↓
Q-314~:こんな私に誰がした
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_425205.html
今回も医師としての経験を、コーチとして考察します。
(詳細は変更しています)
御紹介するのは、80代の父親と娘2人が参加したカンファレンス中の出来事。「生涯
無事故・無違反」が自慢だったという父親は、娘たちの強い勧めで自動車免許を返納しました。
「元気がなくなり心配していたが、今は怒りっぽくて困る」というのが娘さんの認識。コーチとして読み解くと、「自動車免許を返納していったんエフィカシーが下がったが(厳密にはエスティーム)、行き場のないエネルギーがたまってきた」という感じ。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5616012.html
カンファレンス中はお互い冷静さを保っていましたが、家ではけっこうやり合っているようでした。そのエネルギー源は認知的不協和でしょう。
父親は「自動車を運転している私」と「自動車を運転できない私」とのギャップが、娘さんは「平穏無事な父親」と「平穏でない父親(-:元気がない/+:怒りっぽい)」とのギャップが、エネルギーを生みだしているようでした。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5882652.html
そのエネルギー自体はピュアなはずですが、ときに破滅的な方向に発揮されます。情動と紐づき、コントロールを失うからです。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/8164566.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/8166289.html
*具体例はこちらでどうぞ↓
S-03~:心のエネルギーとは何か? ~カナックス事件に学ぶ…~(目次)
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/19879680.html
最近、父親はエネルギーの“行き場”を見つけました。その行き場とは「電動カート」。きっとその先には「現状では不可能だけど、絶対に実現したい“何か”」があるのでしょう。そう、ゴール!
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5615935.html
カンファレンス中、父親は「最高時速は…」「重さは…」「購入したらいくら、リースならこれくらい」など、うれしそうに語っていました。慣れないネットで調べまくったそうです。
F-158~:無我夢中
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_405002.html
それは認知的不協和のエネルギーが学習として発揮されたということ。
PMⅠ-05-06~8:そもそも教育とは?-3)学習を促進する
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/9367702.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/9533528.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/9533623.html
その本質は情報空間に働くホメオスタシスです。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4831660.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4971818.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4971956.html
*情報空間はこちら↓
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516539.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654230.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654316.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4831442.html
カンファレンス中、娘さんの一人は明らかにイラついていました。父親が電動カートを語るたびに、イライラが募っていくのが伝わってきました。非言語で。
L-082:2021年3月… -05;「非言語」が重要なのはなぜ?
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/30102311.html
その根底にあるのは不安と恐怖。
自宅前には勾配があるそうで、転倒しないか心配されていました。さらに父親は在宅酸素療法を必要としています。外出中に酸素が切れてしまい、呼吸状態が悪化することを恐れているようでした。
不安と恐怖(Fear)が、義務感(Obligation)や罪悪感(Guilty)と絡み合いながら、娘さんの心をhave toだらけにしてしまったのでしょう。
PMⅠ-06-03:抗不安薬を常用する医師の叫びで気づいた「FOG」
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/13523715.html
その「とげとげしいhave toの塊」は、やがて医療従事者に向きはじめました。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5882609.html
電動カートに乗って大丈夫なのですか?
転倒したり、転落したりはしませんか?
呼吸に問題は起こりませんか?
交通事故にあったりしないといえますか?
本当にトラブルは起こらないのでしょうね?
畳み掛けるような攻撃的質問に対して、司会担当のスタッフが丁寧に答えました。「日常生活動作(ADL)的には可能です。認知機能も問題はありません。でも、カートの操作や酸素ボンベの準備などがあるので…」。
真摯に答えていたスタッフに対して、娘さんが放った言葉が…
今、逃げましたよね?
…私は、私の中で情動が動くのを感じました。ラベリングなら「D」です。
L-109:2021年8月… -11;モニタリング&ラベリング
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31421939.html
以下、苫米地博士の著書「『怒らない』選択法、『怒る』技術」(東邦出版、p17)より引用します。「D」に対処するときに知っておくべき「感情が発動するきっかけ」を理解し、「自分の足元」を見つけてください。
L-110:2021年8月シークレットレクチャー -12;「D」の対処法
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/31447445.html
◎感情が発動するきっかけはたったひとつ
喜怒哀楽といった人間の感情、情動はどうやって発生するのかというと、実はたった一つのきっかけによって発動します。
そのきっかけが「予想外」です。怒りも悲しみも喜びも、すべての感情は予想外の出来事によって発生するのです。
たとえば、会社に行って、その日の朝に届く荷物が順調に届いていたとします。そこには喜びも怒りもありません。届いているのが当たり前だからです。ところが、昼過ぎになっても到着しなければ「今日必要なのに!
これじゃあ、社外に出られないじゃないか」となって、腹が立ってくるでしょう、あるいは「なにかトラブルが起きたのか」と不安になるかもしれません。
もうひとつ例を挙げれば、買った宝くじが当たらなかったらどうでしょうか?
そこで怒る人があまりいないのは、宝くじは大抵当たらないからです。しかし、当たった場合はみんな大喜びするはずです。
つまり、私たちの情動は、自分の予想していなかったこと=予想外の出来事が起きた時に発生するのです。その予想外の出来事が自分にとって好ましいものであれば喜びになるし、好ましくなければ怒りや悲しみになります。すべての感情は、予想外の出来事によってのみ喚起されるのです。
玄関にスリッパがあるのは当然です。なんの感情も湧きません。しかし、頭の上にスリッパがあったら意外です。ありえませんから、笑いになるのです。食卓の上にスリッパがあるのは意外です。だから、「誰だ、こんなものを食卓に置いたのは!」と怒りたくなるのです。
その予想外を好むか、好まないか。
その違いだけが喜怒哀楽を分けるのです。
同じことをしても、この人がやると腹が立たないのに、コイツがやると腹が立つというのも同様です。
私たちはその境界を日々、歩いているということです。
そして、その境界をしっかり意識することによって、自分の足元が見えてくるのです。なにをしていいのか、わるいのか、それが判断できるのです。
引用終わり
(Q-317につづく)
苫米地式コーチング認定コーチ
苫米地式認定マスターヒーラー
CoacH T(タケハラクニオ)
-告知1-
今年度のオンラインセミナー開催は2回の予定です。詳細はあらためて告知いたします。
-告知2-
クラブ活動をはじめました。その名は「コーチング・デ・コンパッションクラブ」。
一緒に楽しみましょう!
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_418055.html
-関連記事-
PMⅠ-06-11:仮説06)二つの「怒り」とその間にある論理的思考
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14107083.html
F-240:「出口が見えない」と「出口戦略」 vol.4;ヒーリングとコーチングのLUBで考える <実践編;レジリエンス>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/28657999.html
Q-268~:薬をやめることができますか?
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_421168.html
Q-294~:孤独を感じています。私はどんなゴールを設定すればいいでしょうか?
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_423127.html
Kindle版はこちら↓
Amazon.co.jp:
「怒らない」選択法、「怒る」技術 eBook : 苫米地英人: 本
コメント