F-270:冗長性と多様性 <vol.2;アサンプション・アップデート>

 

 先日(20221031日)、認知科学者 苫米地英人博士が「バラいろダンディ」(TOKYO MX)に出演され、「世界的有事におけるスターリンクの安全な運用法」について講義されました。まずはこちらを御確認ください↓

 世界的有事におけるスターリンクの安全な運用法 Dr.苫米地 2022年10月31日 - YouTube

 

 博士は「有事を前提とした計算機システムと通信ネットワークの基本原則」として、「通信(情報)の冗長性の確保」と「システム(ハードソフト)の多様性」について語られています。

 

 視聴後に苫米地式のコーチ&ヒーラーとして感じたことをまとめます。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14120540.html

 

 vol.1;有事を前提とした計算機システムと通信ネットワークの原則

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/30221598.html

 vol.2;アサンプション・アップデート

 

 

 人間の場合、「全て同じ」を目指しても大丈夫なのでしょうか?

 アリ以上に「全て同じ」は危険なのではないでしょうか?

 

 苫米地博士が「冗長性と多様性」について話されたタイミングで、博士も使われているツイッターの騒動が起こったことをきっかけに(縁)、私は「アサンプション・アップデート」や「デタッチメント・ユニット」について考えました(起)。いずれもコーポレートコーチングの用語です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353044.html

 

 まずはそれらの定義を確認しましょう。苫米地博士の著書「コーポレートコーチング(下)」(開拓社、p100)より引用します。前回(vol.1/F-267)引用分の続きです。

 

 

 「アサンプション・アップデート」を行う「デタッチメント・ユニット」

 では、なぜエンドステート、COAを粛々とこなすことがIQの高まった状態と言えるのでしょうか。

 それは、エンドステートも、COAも事前に誰かによって決められたものではなく、刻一刻と変化する状況に適応するために「アサンプション・アップデート」された結果だからです。

 この「アサンプション・アップデート」はIQの低い状態では、うまくできません。「アサンプション・アップデート」とは、状況に応じて「アサンプション(想定)」を「アップデート(更新)」すること、もう少し噛み砕いて言えば、「状況の変化に応じて行動計画を書き換えていくこと」です。

 これは必要に応じて随時行う(少なくとも随時行う準備をしておく)べきものです。

 COAは事前に想定される状況を予測して行動計画を考えていくものですが、現実には状況は刻一刻と変化します。

 変化の度合いに応じて、COAを変える必要があったり、なかったりするわけですが、変える必要がなかったとしても、状況を捉えて、COAをその状況と照らし合わせた上で「変える必要がない」と判断を下すことになります。

 このCOAを変える(変えないという判断も含む)ことを「アサンプション・アップデート」と言うわけです。

 また、この「アサンプション・アップデート」は通常、最小単位のチーム(部隊)が独自に行うことになります。

 状況の変化を逐次、上司に報告して、COAの変更許可を求める、あるいは変更の内容自体を決めてもらうなどという悠長なことをしている暇は、現代のコーポレーションにはありません。

 ほとんどのケースにおいて、その場でそこにいる構成員たちの判断ですぐに動かなければならない、それができない企業は、最終的には競争に敗れてしまう、そういうビジネス環境になっているのです。

 これは、人質救出を任務とする特殊部隊が、目の前の敵の行動を逐一、本部に報告して、自分たちの次の行動についての指示を仰ぐことなどできないという状況とよく似ています。

 目の前に現れた敵の戦力が、想定していた敵の戦力と異なった場合、それを本部に報告して、撤退すべきか、抗戦すべきかの判断を仰ぐなどという暇はありません。

 その場で構成員たちが判断しないと、間違いなく部隊は全滅します。

 現代のビジネス環境も、まさにそのような状況にあるということです。

 このように、本部の判断を仰げない状態にある部隊のことを「デタッチメント・ユニット」と言います。

 現代のビジネスにおける各部署は、基本的に「デタッチメント・ユニット」だと言えます。

 刻一刻と変化するビジネス環境において、あらゆる細かい指示を上司や上層部に仰いでいる余裕はありません。

 少なくともその部署のトップ、さらに言えば、構成員のひとりひとりが常時、的確にアサンプション・アップデートができなければ企業は生き残れないと言えるのです。

 引用終わり

 

 

 このブログを書いているのはサッカー“ワールドカップ2022(カタール大会)”の真最中。

 

 なぜか私の中での重要度はそれほど高くなかったのですが、ひとつの試合をきっかけに急上昇しました。

 

 そう、日本代表(FIFAランキング 24位)とドイツ代表(同 11位)の試合!

 

 前半は圧倒的にドイツが優勢でした。ボールの支配率は日本の17%に対して、ドイツは72%13本ものシュート(枠内4本)が日本のゴールを脅かしたのに対して、日本が放ったシュートはたった1本(しかも枠外)。

サッカーには詳しくない私がひいき目に見ても、圧倒的な力の差を見せつけられた感じがしました。

 

 ところが、後半の日本は別のチームに生まれ変わったかのように躍動。その理由として、多くの専門家が3バックへの「システム変更」と攻撃的な「選手交代」を挙げていました。

 それに対してドイツは、1点リードした状態の67分に主力の二人を下げました。ランキング7位の強敵スペイン戦が次に控えているからでしょう。当初のプランどおりの「選手交代」だったはずです。

 

 今回のW杯は初の11~12月の開催で、とてもタイトな日程が組まれています。優勝を目指すチームからすると、いかに主力選手を休ませるかも重要なポイント。大会全体を見据えた妥当な判断(部分)だったといえます。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6193912.html

 

 御承知のとおり、結果は後半に2本のゴールを決めた日本が逆転勝ち!

 なんと逆転でのW杯勝利は初めてなのだそうです。

 

 試合前半の内容を考慮しアサンプション・アップデートを行った日本と(おそらく)しなかったドイツ。その結果としての日本の「システム変更」とドイツの「選手交代」が勝負を決めたといえます。

 

 と、ここまでが一般的な視点。コーチはもう一歩踏み込みます。“もう一歩”とは、高次の抽象度次元へ向かう“一歩”。物理次元(空間)での「システム変更」や「選手交代」という行動を生みだした情報次元(空間)における“思考”の分析と上書きです。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516539.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654230.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654316.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4831442.html

 

一言でいうとマインドの書き換え。物理的な脳と情報的な心は同じものであり、「脳と心」でひとつです。それを私たちコーチは「マインド(脳と心)」と呼びます。

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https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24617501.html

 

 先ほどの「システム変更」とはサッカーの戦術的な話ですが、コーチは常に“システム変更”を心がけています。コーチングで行う“システム変更”とはブリーフシステムの変更のこと。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721531.html

 

 ブリーフシステムが、各人が認識する世界を、そして共有する世界(共同幻想)を生みだしています。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/11823351.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/11823843.html

 

 たとえば私も含む多くの日本人が試合前に共有していた世界は、「ドイツに勝てるはずがない」というセルフトークを生みだすものだったはずです。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/28959379.html

 

 そのブリーフシステムを(結果的として)書き換えるために行う最初の行為がゴール設定!

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5615935.html

 

ゴールが決まると、その達成のためのエンドステートやCOAが決まります。W杯なら「予選リーグ突破」「ドイツ戦勝利」がエンドステート、そのための具体的な「選手起用・交代」「システム選択・変更」がCOAです。

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 そして、エンドステートやCOAは事前に誰かによって決められたものではなく、刻一刻と変化する状況に適応するために「アサンプション・アップデート」され続けるもの。

 日本はそれができて、ドイツはできなかったと考えることができます。

 

 その違いにより、日本の方が「勝利」の臨場感がどんどん高まっていきました。セルフトークでいうと、試合前の「勝てたらいいな」が前半終了時には「勝てるわけがない」に変わり、“システム変更”後に「勝てるかもしれない」→「きっと勝てる」→「絶対勝つ」→「勝った~!」と変わっていった感じ。

 Q-191:ヒーリングとコーチングの関係がよくわかりません

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/25482691.html

 

 エンドステートやCOAは事前に誰かによって決められたものではなく、刻一刻と変化する状況に適応するために「アサンプション・アップデート」され続けるもの

 

 では、コーチングにおいて、アップデートするのは誰でしょうか?

 

F-271に続く)

 

 

苫米地式コーチング認定コーチ     

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

 

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