F-254:イノベーションがうまれるとき <前編;視点>

 

 「コップに『半分入っている』から、コップは『半分空である』に変わる時、イノベーションの機会が生まれる。」

 

 経営学者 P.E.ドラッカー(注;正確にはP.F.ドラッカー)のコップ理論です。日本は、豊かで住みやすく穏やかな国。自分のサイロに閉じこもり「半分入っている」になりがちです。しかしながら、コロナを経て、時代は、急激に変わっています。

 

 地球規模の危機を実感する時代。国民一人一人、事業者それぞれが、「半分空である」という思いを共有すれば、日本は持ち前の団結力を活かして大きく変貌できると確信しています。

 

 私が目指す“新しい資本主義”では、日本の経済社会が直面する歴史的挑戦の全体像を国民に分かりやすく示します。その上で、市場や競争にすべてを任せるのではなく、官と民が経済社会変革の全体像を共有しながら、変革のために協働していくことを重視します。日本の連帯感の強さは官民協働の土台となります。

 

 そして、投資を引き出す新しい仕組み、また、付加価値配分のあり方を変えるための新しい仕組み。これらを成長戦略、分配戦略それぞれに埋め込んでいくことで、「成長と分配の好循環」を本格的に回していきます。

 

 

 これは岸田文雄首相のスピーチ文です(ダボス・アジェンダ、2022118日)。

□外務省HP>外交政策>経済外交>国際的ルール作りと政策協調の推進>世界経済フォーラム(ダボス会議)

 「ダボス・アジェンダ2022」における岸田総理大臣の特別演説 |外務省 (mofa.go.jp)

 □[参考2]岸田総理大臣によるスピーチ

 100291106.pdf (mofa.go.jp)

 

 この文章を読んでどのようなイメージを感じますか?

 

 私がコーチとして感じたものを(右脳言語野)、ありのままに言語化していきます(左脳言語野)。

 PM-06-12:仮説07)思考停止

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14120540.html

 

 前編;視点

 

 

 ずいぶん昔の話ですが、私は、予期せずにリーダーになったことがあります。「予想と違う」「期待と異なる」ことは無意識にとっては“失敗”です。私にとっても“失敗”だったのでしょう、当時のことはよく覚えています。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/13397552.html

 

 その頃は、もともと好きな心理学からまったく興味がなかった経営学まで、手当たり次第に読み漁りました。リーダーにふさわしいと思える本を。

 F-104:「映写機の故障により上映できるかわかりません」 Vol.4;リーダーの視点で

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/19485793.html

 

そんな日々の最中に、ピーター.F.ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker1909~2005年)と出会いました。もちろん“情報空間で”です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516539.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654230.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654316.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4831442.html

 

 私の中ではドラッカーと「コップ理論」は交わりませんが、あらためて調べてみるとこのような発言を見つけました。

 

 

 The glass is half-full and The glass is half-emptyare descriptions of the same phenomenon but have vastly different meanings. Changing a manager’s perception of a glass from half-full to half-empty opens up big innovation opportunities.

 

 コップに「半分入っている」と「半分空である」は同じ現象の表記であるが、意味はまったく異なる。経営者の認識が「半分入っている」から「半分空である」に変わる時、とても大きなイノベーションのチャンスが生まれる

 

 

 今回(前編)は、ドラッカーのこの言葉について、「視点」をキーワードに考えます。

まずは「視点を変える」から。

 

1) 視点を変える

 苫米地博士に出会う前の私は、「コップ理論」を完全に受け入れていました。事あるごとにこの例えを持ちだし、“心の持ち方”について説いたものですw

 

 「コップに『半分入っている』と『半分空である』」は、ドラッカーがいうとおり「same phenomenon」。違うのは解釈であり、その解釈は視点が生みだしています。視点が変化すると、解釈が変わります。

 コーチング用語でいうと「RAS&スコトーマ」のこと。同じ絵(same phenomenon)が、少女に見えたり、老婆に見えたりするのは、RASによりスコトーマが生じたり外れたりするからです。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721658.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html

 

 その「RAS&スコトーマ」を決めるのはブリーフシステム(Belief SystemBS)。BSにより視点が決まり、RAS&スコトーマが変化し、解釈が変わっていきます。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721531.html

 

 よって、「視点を変える」とは「BSを変える」こと。BSが変わると、物事に対する感じ方や好みが変わっていきます。その反対に、感じ方や好みを変えると、BS=人格が変わっていきます。双方向の関係です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353044.html

 

 例えば、毎朝コーヒーを飲んでいる人は、紅茶に変えてみてください。こだわりのあること(habitattitude)をひとつ変えてみるだけで、新しい発見があることでしょう。スコトーマが外れるから。もしも新しい発見があったなら、BSは確実に変化しています。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/26648449.html

 

 「認識が『半分入っている』から『半分空である』に変わる時」も、BSが変わり、新たな視点にてRAS&スコトーマが変化し、解釈が変わっていきます。その結果、新しい認識と理解が生まれ、新たな評価と判断によりイノベーションのチャンスが生まれます。

 

 

 しかしながら、ここで終わったら(止まったら)苫米地式とはいえません。

 苫米地博士と出会った後、私の中で「コップ理論」は崩れ去りました。「視点を変える」ことを否定はしませんが、それだけでは真のイノベーションは難しいはずです。

 

なぜなら、認識・理解・評価・判断といった情報処理が現状(Status QuoSQ)の中で行われてしまうから。

Q-137:問題が生じたゴールへの向き合い方 -02

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/22312817.html

 

それはこれまでのコンフォートゾーン(Comfort ZoneCZ)の強化と同じ。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6040892.html

 

 ドラッカーはたびたびヨーゼフ・シュンペーターの「創造的破壊」という言葉を引用しています。それをコーチング理論で“解釈”すると、「創造」するものは「ゴール側、すなわち未来のCZ」、破壊するものは「現状のCZ」といえるはずです。

 PM-06-06:仮説01)変わらないコンフォートゾーンが生みだす「現状維持の壁」

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/13628746.html

 

 だから、私の中ではドラッカーと「コップ理論」は交わりません。

 

 では、「創造的破壊」のためには、「視点を変える」の代わりに何をすればいいのでしょうか?

 

 そうです。答えは「視点を上げる」。

 

 

2) 視点を上げる

 苫米地博士は「コップ理論」のことを詭弁と評され、「無理矢理な視点の変え方では脳が納得しない」と語られています。

 脳が納得するのは視点が上がるとき。「視点が上がる」は、「抽象度が上がる」「抽象度を上げる」と同義です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4448691.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4449018.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516484.html

 

 抽象度を上げて、上から俯瞰するように物事を眺める

 

 すると、コップの水がいっぱいだろうが半分だろうが関係ないと感じられます。「どっちでもいい」「どうでもいい」をはるかに越えたところで感じる「違いがない」「まったく同じ」という感覚です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5446097.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5448151.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5615695.html

 

 その感覚で水が半分入ったコップを眺めると、「水」という機能がクリアに感じられます。もしも水がなくなったとしても、「コップ」という役割を感じられるでしょう。それが中観の感覚です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353367.html

 

 「水→液体→→物質」「コップ→容器→→物質」というように抽象度を上げて「同じ」とみて、その上で少し抽象度を下げながらあらためて水が入ったコップを眺める(=区別)

 

そんな意識状態でまったく新しい“何か”を感じたなら、それがイノベーションの種になります。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_284899.html

 

 つまり、イノベーションとは、同じ抽象度での視点の変化で生まれるものではなく、より高次の抽象度次元への視点の移動をきっかけとして生まれるもの。その時に起こっているのはゲシュタルトの統合です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6193912.html

 

 これはコーチングの“奥義”でもあります。

 コーチングとは、同じ抽象度での関数pの再定義ではなく、現状の外へのゴール設定で生みだす高次の可能世界“w1”への移動だから。

 F-222:コーチングの基本概念を習熟して、エフィカシーをブーストしよう!

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/27832570.html

 

 この“奥義”を実践する上で、常に意識に上げておくべき注意点があります。それは「抽象度を上げることだけが重要なのではない」ということ。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24281579.html

 

一度しっかり上げて(空観)、その上であえて下げる(仮観)

 

その自由自在な抽象度のコントロール(上げ下げ)が、イノベーションを実現するリーダーの資質であるといえます。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/10400987.html

 

F-255につづく)

 

 

苫米地式コーチング認定コーチ     

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

 

-追記-

つまり、イノベーションとは、同じ抽象度での視点の変化で生まれるものではなく、より高次の抽象度次元への視点の移動をきっかけとして生まれるもの。その時に起こっているのはゲシュタルトの統合です

 

 ゲシュタルトが統合されるから(connect the dots)、理解が深まります。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/7383761.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/13628437.html

 

 「より高次の抽象度次元への視点の移動」「ゲシュタルトの統合」のために、日々実践するべき思考法が「コンセプチュアル・フロー」。苫米地博士の著書「苫米地 思考ノート術」(牧野出版)に詳しくまとめられています。
 シンプルにはこちら↓

 Q-182~185:家族ががんで… -06~09;「I×V=R」を用いた2nd.Step<ゲシュタルトを巨大化する>実践編vol.1~4(ワーク付き)

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/25217507.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/25259581.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/25282178.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/25324197.html

 

 

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