Q-261:コーチングは弱った人を対象とする臨床心理や精神医療の世界にはなじまないのだろうか? <vol.3;否定的立場で(negative)>

 

 医療関係者より御質問をいただきました。ありがとうございます。

 その一部に回答いたします。

 (変更を加えています)

 

Q:コーチングについて、ある医学誌に「健康度や問題意識が高く、自ら向上したいというエネルギーが充実している当事者の場合には適応になるかもしれないが、弱った人を対象とする臨床心理や精神医療の世界にはなじまない手法である」と書かれていました。

 タケハラコーチはどのように思われますか?

 

私も御指摘の文章を読みました。そこにはこのように書かれていました。

(「〇〇医療」の部分だけ変更しています)

 

コーチングの当事者への適応は限定的

 意欲を引き出すものとして、目標への自発的な行動を促進するために、健康人に対してコーチングという手法がしばしば紹介される。コーチングとは、本人特有の感情や思考の動きを行動の力に変えることで目標達成や自己実現を促すコミュニケーション技術である。これは現状では、組織のマネジメントの対話の技術として、あるいは生産的で目的志向的な組織における人材開発、キャリアアップの手段として応用されている。〇〇医療の世界では治療者側のスキルの向上のために応用されている。本人自身が答えを見つけていくという点では心理療法と一致する面もある。しかし、弱った人を対象とする臨床心理や精神医療の世界にはなじまない手法である。健康度や問題意識が高く、自ら向上したいというエネルギーが充実している当事者の場合には適応になるかもしれない。

 

 vol.1自我から離れ、高い抽象度で物事を捉える技術

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/28742699.html

 vol.2;肯定的立場で(affirmative

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/28786054.html

 vol.3;否定的立場で(negative

 

 

 今回は否定的な立場(negative)での回答です。

 

意欲を引き出すものとして、目標への自発的な行動を促進するために、健康人に対してコーチングという手法がしばしば紹介される。

 

 前回は2つのモチベーションについて言及しました。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5882609.html

 

いずれにせよ、モチベーションは結果です。ゴール設定の結果。

意欲」を引き出したから「目標への自発的な行動」が促進されるのではなく、ゴールを設定したから「意欲」が引き出され「自発的な行動」が加速するのです。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5615935.html

 

ただし、それは傍から見た評価。本人にとっては「あたりまえ」であり、呼吸と同じホメオスタシス活動です。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4831660.html

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4971818.html

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4971956.html

 

 「健康人に対してコーチング」も因果が反対。正しくは「コーチングでゴールを設定するから健康になる」です。そもそも「健康」の定義から見直す必要があります。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/7859675.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/7859828.html

 

 コーチングの基礎にある苫米地理論における健康とは、「そのときの自分の状況にとっての正常な状態」。「状況」を生みだし「正常な状態」を定義するものがゴール。自由意思で設定した本物のゴール(Authentic Goals)です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/7859896.html

 

 

コーチングとは、本人特有の感情や思考の動きを行動の力に変えることで目標達成や自己実現を促すコミュニケーション技術である。

 

 コーチングとは、目標達成や自己実現を促すコミュニケーション技術である」には三重の誤りがあります。

 1つ、コーチングは目標達成が目的ではありません。ゴールは達成前に更新(再設定)するもの。その意味では永遠に「達成」はありません。

 2つ、コーチングは自己実現が目的ではありません。ゴールは自分中心を捨て去ったもの。自分のことではなく、豊かな社会や未来のことです。

詳しくはこちらをどうぞ(苫米地博士の動画リンクあり)↓

 F-222:コーチングの基本概念を習熟して、エフィカシーをブーストしよう!

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/27832570.html

 

 3つ、コーチングは単なる「技術」ではありません。その本質は「人が豊かに生きるためのプリンシプル」であり、高次の抽象度空間にひろがる叡智です。

苫米地博士は「コーチングとはインベストメントではありません。人が生きるプリンシプルを伝えるものです。そして、プリンシプルだからこそ、その後の人生に良い影響を与えるのです」と書かれています(「オーセンティック・コーチング」p47)。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4448691.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4449018.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516484.html

 

 もしも技術でもあるのなら、それは「自らの人生のゴールを強く達成しようとするときに、自然発火が起こり、自然に強烈な幸福感を感じるように導く技術」。博士の著書「イヤな気持ちを消す技術」(フォレスト出版)の最終章に記載されています。

 Kindle版はこちら↓

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これは現状では、組織のマネジメントの対話の技術として、あるいは生産的で目的志向的な組織における人材開発、キャリアアップの手段として応用されている。

 

 この部分は前回(Q-260)の記載をお読みください。

 ところで、「組織のマネジメント」「対話」「生産的で目的志向的」「人材開発」「キャリアアップ」には共通する“ある概念”がべったりと貼り付いています。それは何でしょうか?

 

*私の答えはこちら↓

F-027~:プロとアマの違い

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_268331.html

 

 

〇〇医療の世界では治療者側のスキルの向上のために応用されている。

 

 こちらも前回の記載を御確認ください。私は「まずは医療従事者がコーチングを学び、実践するべき」と考えています。

 PM-04~:苫米地理論で見える医療・福祉現場のスコトーマ(目次)

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/13076878.html

 

 

本人自身が答えを見つけていくという点では心理療法と一致する面もある。しかし、弱った人を対象とする臨床心理や精神医療の世界にはなじまない手法である。

 

 弱った」状態では前頭前野をフルに働かせることはできず、当然、コーチングを十分に行うことはできません。だから、「弱った」状態からリカバーすることが先決。それは「不安を解消し、コンフォートゾーン(CZ)に復帰する」という感じです。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6040892.html

 

そのときゴールがなければ、現状のCZを強化してしまう可能性が高まります。それは「現状維持の壁」が強固になるということ。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/13628746.html

 

 そのままではきっと、不安解消と引き換えに、エネルギーと創造性を失うでしょう。災害時の心の動きでいえば「幻滅期」への突入です。

 F-240:「出口が見えない」と「出口戦略」 vol.4;ヒーリングとコーチングのLUBで考える <実践編;レジリエンス>

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/28657999.html

 

 あるいは、「不安」と「不満」の間を行ったり来たりするはず。抽象度が変わらないからです。

 F-217~:不安と不満のはざまで苦しんでいる君へ

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_416096.html

 

 必要なのはゴールです。1)心から望み、2)自分中心を捨て去り、3)現状の外に設定するゴール。ゴールがあるからこそ、不安を解消することができ(ヒーリング)、不安を新たにうみだすことができます(コーチング)。

 

 「コーチングのために、まずはヒーリングが必要」「ヒーリングのために、じつはコーチングが有効」というのが私の実感です。

 Q-068~:認知的不協和の状態にあり頭痛が続いています。適切な

 Vol.5;ヒーリングとコーチングの関係

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14400982.html

 Vol.6;セルフヒーリングとセルフコーチングのコツ

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14524490.html

 

 

健康度や問題意識が高く、自ら向上したいというエネルギーが充実している当事者の場合には適応になるかもしれない。

 

 まずは医療従事者自身が「健康度や問題意識が高く、自ら向上したいというエネルギーが充実している当事者」になること!

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14973460.html

 

 医療・介護の現場がどんなに忙しく過酷であるか、私は痛いほど理解しています。だからこそ、しっかりコーチングを届けたいと願っています。ヒーリングやディベートとともに。

 Q-223~:コーチングが重要なのは理解しているが、医療現場は忙しすぎて実践できない

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_416549.html

 

 

 以上より、否定的な立場での私の意見は

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/12340209.html

 

 認知科学はコーチングの祖 ルー・タイスさんの言葉「ゴールが先、認識が後」「ゴールが先、現実は後」が正しいことを明らかにした(data)。「弱った人」とは、そもそもゴールがないか、ゴールを失っている人のこと(warrant)。

よって、「臨床心理や精神医療の世界にはなじまない」は誤りで、本当は「弱った人」ほどコーチングを必要としている(claim)。

 

 

コーチングが「臨床心理や精神医療の世界にはなじまない」ように感じられるのは、本物のコーチング(Authentic Coaching)がスコトーマに隠れたままだから。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html

 

 まずは医療・介護現場にコーチング(Authentic Coaching)がひろがり、誰もがゴールを見つけスピリチュアルペインを克服している。すると、老病死(+生で四苦)が縁でコーチングを実践しはじめた人たちがどんどん生命エネルギーをとりもどし、人生(世界)を輝かせ、社会全体および未来が豊かになっていく

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24706915.html

 

 苫米地博士に学びながら、私はそのようなビジョンに向かっています。

 

Q-262につづく)

 

 

苫米地式コーチング認定コーチ     

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

 

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