Q-259:コーチングは弱った人を対象とする臨床心理や精神医療の世界にはなじまないのだろうか? <vol.1自我から離れ、高い抽象度で物事を捉える技術

 

 医療関係者より御質問をいただきました。ありがとうございます。

 その一部に回答いたします。

 (変更を加えています)

 

Q:コーチングについて、ある医学誌に「健康度や問題意識が高く、自ら向上したいというエネルギーが充実している当事者の場合には適応になるかもしれないが、弱った人を対象とする臨床心理や精神医療の世界にはなじまない手法である」と書かれていました。

 タケハラコーチはどのように思われますか?

 

私も御指摘の医学誌を読みました。そこにはこのように書かれていました。

(「〇〇医療」の部分だけ変更しています)

 

コーチングの当事者への適応は限定的

 意欲を引き出すものとして、目標への自発的な行動を促進するために、健康人に対してコーチングという手法がしばしば紹介される。コーチングとは、本人特有の感情や思考の動きを行動の力に変えることで目標達成や自己実現を促すコミュニケーション技術である。これは現状では、組織のマネジメントの対話の技術として、あるいは生産的で目的志向的な組織における人材開発、キャリアアップの手段として応用されている。〇〇医療の世界では治療者側のスキルの向上のために応用されている。本人自身が答えを見つけていくという点では心理療法と一致する面もある。しかし、弱った人を対象とする臨床心理や精神医療の世界にはなじまない手法である。健康度や問題意識が高く、自ら向上したいというエネルギーが充実している当事者の場合には適応になるかもしれない。

 

 vol.1自我から離れ、高い抽象度で物事を捉える技術

 

 

 苫米地式コーチング認定コーチ兼医師として、私は医療・介護の現場にコーチングを届ける活動を行っています。昨年度は、ある医療機関で、御要望に合わせて作成した1年間のプログラム(45分×12回、ワーク付き)に取り組んでいただきました。

 (医療におけるコーチングの必要性についてはこちらをどうぞ↓)

 PM-04~:苫米地理論で見える医療・福祉現場のスコトーマ(目次)

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/13076878.html

 

 コーチングを医療・介護の現場に届け、ひろげている

 

 それが私のど真ん中にある思いであることは間違いありませんが、コーチングと同じようにディベートも届けたいと思っています。その理由はこちら↓

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/11613757.html

 

 ところで、皆さんはディベートと聞いて、どのようなことをイメージしますか?

 

 「ディベートは説得の技術である」や「ディベートは反論の技術である」といった印象をお持ちの方が多いのではないでしょうか? 中には「ディベートは詭弁の技術である」と蔑んでいる方もいることでしょう。

 事実として、私は「論理武装しためんどくさい奴」といった陰口を叩かれたことがあります。

 PM-06~:職場への苫米地式コーチング導入挑戦と明らかになった課題(目次)

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/15110477.html

 

 「説得」「反論」「詭弁」は完全な誤解!

論題を自らの情動と切り離し、相対化して、物事の裏表両方を見る視点を養えるのがディベート。その目的は「論理脳をフル活用して、シンの問題を見つけ、最短時間で最適解を見いだすこと」です。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/12658417.html

 

そのさらに先には「論理的思考を徹底的に極めることによって、論理という系の外に出る」という目的があります。

自分の頭で考えていると思っていても、たいていは他人に言われたことを利用して考えているだけ。それでは思考停止です。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14120540.html

 

 もしも「コーチングの当事者への適応は限定的」という主張(claim)を盲目的に受け入れたなら、コーチングの可能性はスコトーマに隠れ認識できなくなります。

 反対に、「コーチングの当事者への適応は限定的」という主張(claim)を見下したなら、医療・介護現場へのコーチング導入のヒントを見失うでしょう。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html

 

 「盲目的に受け入れる」や「見下す」という行為の根底には何らかの評価・判断があり、その評価・判断にはたいてい情動がはりついています。だから、つい短絡的かつ感情的になってしまうのです。「戦うか、逃げるか」といった感じで。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/8164566.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/8166289.html

 

そもそも意識・無意識下の判断基準であるブリーフシステム自体が「情動を伴った体験の記憶」と「抽象化された情報の記憶」でつくられています。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721531.html

 

その「情動体験」や「情報」は他人や社会の価値観の影響下にあります。しかも、すべて過去。コーチングを実践していない人にとって、目の前にひろがる世界は“過去”の再合成に過ぎません。

Q-220:ゴールに対するスケジュールはたてますか? <後編;人類には“今”しかない>

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/27478021.html

 

よって、そもそも思考に自由はなく、過去に縛られた「無人運転」「自動運転」であるといえます。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_369873.html

 

さらに、不完全性定理により「この世に絶対的な真実はない」ことが明らかになりました。真実と思われることにも、必ず表と裏(光と影)が存在します。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6194669.html

 

それは「すべて相対的」ということ。だから、常に疑ってみることが大切なのであり、自身の軸で評価することが重要なのです。それが自由の前提条件です。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/10400987.html

 

ディベートを学ぶことで、私たちは自我から離れ、自分の頭で物事を考え、一段高い抽象度で物事を捉えることができるようになります。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353425.html

 

 *抽象度はこちら↓

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4448691.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4449018.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516484.html

  

 その上でゴール設定をしてはじめて、「自分自身の軸」を得られ、シンの自由を獲得することができます。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5615935.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/20874002.html

 

 

論題を自らの情動と切り離し、相対化して、物事の裏表両方を見る視点を養えるのがディベート。その目的は「論理脳をフル活用して、シンの問題を見つけ、最短時間で最適解を見いだすこと」「論理的思考を徹底的に極めることによって、論理という系の外に出ること」

 

 

現代ディベート論理は、トゥールミンロジックと呼ばれています。

トゥールミンロジックは、イギリスの分析哲学者 スティーブン・トゥールミン(Stephen Edelston Toulmin1922~2009年)により、1960年代に提唱された論理構築法です。

いわゆる三段論法で代表される形式論理の方法論が実社会における論理構築の手段として適さないと考えて提唱された現代の論理技術です。

実際は別途、とくに米国のソール・クリプキ(Saul Aaron Kripke1940年~)以降の分析哲学の進化により人間の思考に近い論理学が分析哲学の世界では生まれてきましたが、60年代までは一階の述語論理(命題の内部構造である主語・述語の関係を中心に分析する論理)という三段論法が教えられており、これよりも優れた実践的な論理構築法として生み出されました。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6194585.html

 

 トゥールミンロジックについて本気で学びたい方は、認知科学者 苫米地英人博士の著書「ディベートで超論理思考を手に入れる」(CYZO)をお読みください。

Kindle版はこちら↓
Amazon.co.jp: ディベートで超論理思考を手に入れる 超人脳の作り方 eBook : 苫米地 英人:

 

 *手短に全体像を把握したい方はこちらをどうぞ↓

 S-01~:よりより“議論”のために

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_254557.html

 

 次回、御質問に対して肯定的な立場(affirmative)で回答いたします。

 

Q-260につづく)

 

 

苫米地式コーチング認定コーチ     

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

 

-追記-

 私がディベート(トゥールミンロジック)を学ぶ中で驚いたのは、「競技ディベートにおいて、肯定側になるか否定側になるかは競技開始時のコイントスで決まる」ということ。自分が肯定側に立つのか、それとも否定側に立つのかは、直前にならないとわからないのです。

 

 つまり、「ディベーターに自分の意見は関係ない」ということ。

 だからこそ、論題を自らの情動と切り離し、相対化して、物事の裏表両方を見る視点を養うことができます。

 

 そして、それは「クライアントの利益100%」というコーチの心得を体得するためにも役立ちます。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/27832570.html

 

 

-告知1

 2022年度のオンラインセミナー(全12回)を企画しました。

メインテーマは「夢が勝手にかなうマインドセット(“Matrix”)の構築 ~ReloadRevolution」。詳細はこちらでどうぞ↓

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/28274321.html

 

 第3回目(R4.6/19開催)のテーマは「ゴール」。詳細はこちら↓

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/28683163.html

 

 

-告知2

 クラブ活動をはじめました。その名は「コーチング・デ・コンパッションクラブ」。

一緒に楽しみましょう!

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_418055.html

 

 

-関連記事-

F-129~The Sweet Hello, The Sweet Goodbye

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_396235.html

F-163~:アンチ(anti)からウィズ(with)、そしてウェル(well)へ

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_404044.html

F-176~:“幸福(well-being)”とは? ~antiwithwellpart

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_408326.html


  

ディベートで超論理思考を手に入れる

Kindle版はこちら↓

Amazon.co.jp: ディベートで超論理思考を手に入れる 超人脳の作り方 eBook : 苫米地 英人: