Q-231:「財布を娘に盗られた」といった被害妄想がでている老人に対して、どのように対応すればよいでしょうか? <vol.2RAS&スコトーマと専門性の関係>

 

 先日、認知症をテーマとした医療系の研修会で講演を行いました。コーチとして。

 私が取り上げたのは「認知機能の低下で情緒が不安定になり、環境に反応して起こる」とされている「BPSDBehavioral and Psychological Symptoms of Dementia、行動・心理症状)」。

 厚生労働省HPBPSD:認知症の行動・心理症状」

 s0521-3c_0006.pdf (mhlw.go.jp)

 

講演後に行われたシンポジウムで、大学教授からこのような御質問をいただきました。ありがとうございます。

 

Q:「スコトーマは医療の現場では『認知バイアス』として知られている」ということでしたが、とくに注意バイアスの話に思えました。

 認知症の患者さんでは、記憶障害のため財布などを見つけられない時に、「ここに置いたはず」→「娘が盗った」という被害妄想がおこりがちです。特に大切なものにバイアスがかかりやすいと思いますが、コーチング(コーチ)の視点では、「財布を娘に盗られた」といった被害妄想がでている老人に対してどのように対応すればよいでしょうか?

 

 回答を一般~コーチング実践者向けに再構成し、6回に分けてお届けします。

 vol.1:認知症の2つの症状>

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/27839838.html

 

A2Wikipediaには「認知バイアス(cognitive bias)とは、認知心理学や社会心理学での様々な観察者効果の一種であり、非常に基本的な統計学的な誤り、社会帰属の誤り、記憶の誤り(虚偽記憶)など人間が犯しやすい問題である」と書かれています。

 関連する概念として「確証バイアス」「リスキーシフト」「コンコルド効果」「錯誤相関」「一貫性バイアス」「自己中心性バイアス」「感情バイアス」「熱い認知/冷たい認知」「事前確率無視」「フレーミング効果」「アンカリング」「自己奉仕バイアス」「投影バイアス」「外集団同質性バイアス」「後知恵バイアス」「確証バイアス」「根本的な帰属の誤り」「正常性バイアス」「生存者バイアス」などが挙げられています。

 

 ↑これらの「関連する概念」は、すべて抽象度が下がる方向性です。情報量を増やし細分化していくことが“専門性”といえます。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4448691.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4449018.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516484.html

 

教授が「認知バイアス→注意バイアス」と抽象度を下げたことは、専門家(研究者)としてのブリーフのあらわれのはず。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721531.html

 

 そのブリーフが「RASを規定し、スコトーマを生みだす」ということが、まさに私が(とくにシンポジウムで)お伝えしたかったことです。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721658.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html

 

 スコトーマを生みだす/外すポイントは3つ。1)知識、2)重要性、3)役割 です。

 知識が増えるほどスコトーマは外れやすくなりますが、一方でその知識が新たなスコトーマを生みだします。

 

その事実に人類は古くから気づいていました(=スコトーマが外れていた)。例えば、ギリシャの哲学者 ソクラテス(紀元前469~紀元前399年)は「無知の知」と表現し、中国の孔子(紀元前552or551~紀元前479年)は「知之為知之 不知為不知 是知也」と語っています。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/19879896.html

 

 ところが、それから2500年も経つというのに、現代人の多くは「必ずスコトーマが生じる」という事実を実感していません。Wiki.に書かれている「人間が犯しやすい問題」という表現が不完全性を前提にしていないのなら、その象徴といえます。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6194669.html

 

さらにいうと私たち現代人は、どんどん増え続ける情報量によって、ますます“大切な何か”を見失っています。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654230.html

 

 「情報量が増える」「細分化する」ことでかえって全体が見えなくなってしまうことを、「木を見て森を見ず」「森を見て山を見ず」と言い表したりします。それらの言葉が示しているのは「ゲシュタルトの重要性」です。

 ゲシュタルトとは「全体性を持ったまとまりのある構造」「部分と全体の双方向の関係性」のこと。先ほどの例えでいえば「木:部分<森:全体」「森:部分<山:全体」です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6193912.html

 

 ちなみに、「AB」は「AよりBの方が抽象度が高い」という意味でもあります。

あるゲシュタルトと別のゲシュタルトを統合し「より大きなひとつのまとまり(新たなゲシュタルト)」を作りあげたとき(connect the dots)、スコトーマが外れ、理解がより深まります。抽象度が上がるから。
 その時、きっとひらめきを得るでしょう。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/7383761.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/13628437.html

 

 医療というdotとコーチングというdotconnectする

 

 

 医療とコーチングを包摂した新たな次元をイメージしながら(feel!)、当日の講演やシンポジウムで話をさせていただきました。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14120540.html

 

 実際に新たなブレークスルーは医学や医療のど真ん中とは違うところで起こったりします。例えば「被害妄想がでている老人に対しての対応」といった課題(case)への解決(plan)も。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/12658417.html

 

 次回は「被害妄想がでている老人に対してどのように対応すればよいでしょうか?」への回答として、医療・介護現場でひろがりつつある“ある技法”を紹介し、苫米地式認定コーチとして解説します。

 

Q-232につづく)

 

 

苫米地式コーチング認定コーチ     

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

-追記-

「情報量が増える」「細分化する」ことでかえって全体が見えなくなってしまうことを、「木を見て森を見ず」「森を見て山を見ず」と言い表したりします。それらの言葉が示しているのは「ゲシュタルトの重要性」です

 

 「木」「森」「山」などの概念そのものがひとつのゲシュタルト。それらを「ある」と思ってしまうことで重大なスコトーマが生じます。繰り返しますが、Wiki.に「人間が犯しやすい問題」と書かれていることは、その象徴のはずです。

 F-171:アンチ(anti)からウィズ(with)、そして vol.4-3「死」;well-aging

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