F-191:くっきりとした姿が見えているわけではないけど、おぼろげながら浮かんできたんです <後編;トゥールミンロジック>

 

 最近、再び、小泉進次郎環境大臣の発言が炎上しました。その発言とは

 

くっきりとした姿が見えているわけではないけど、おぼろげながら浮かんできたんです。46という数字が。シルエットが浮かんできたんです

 

これはTVインタビュー中のもの(TBSNEWS23」、2021423日)。「30年度までに温室効果ガスを46%削減する」と高らかに宣言(claim)した小泉環境相に対し、聞き手が「46%に設定した根拠(warrant)」を質した直後の言葉です。その時、両手で“浮かんできたシルエット”を描きながら発言していました。

さらに「意欲的な目標を設定したことを評価せず、一方で現実的なものをだすと『何かそれって低いね』って(言われる)」「『金メダル目指します』と言って、その結果、銅メダルだったとき非難しますかね?」と続きました。

 後日(同427日)、閣議後の会見にて「(発言が)切り取られている部分も相当ある」と釈明。「真摯な積み上げに加えて、やはり意欲の高い目標を設定するための作業だ」と自己肯定後、「しっかり説明していきたい」と抱負を述べました。

 

 この小泉環境相の言動を3回に分けて考察します。最後は「トゥールミンロジック」。

 

 前編;ゴール

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 中編;リーダー

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/25988048.html

 後編;トゥールミンロジック

 

 前回(F-190)は「リーダー」という観点で考察しました。

 このところ東京五輪をめぐる政治家の発言が「精神論」と批判されているのを見聞きします。私はリーダーの発言が「精神論」に感じられること自体は問題ではないと思っています。はじまりは必ず情報空間だからです。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516539.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654230.html

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 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4831442.html

 

はじまりは必ず情報空間。しかも“現状の外”!

 

 しかしながら、東京五輪はもう目の前。今はゴール設定ではなく、ゴール達成の段階のはずです。

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それなのに未だ「精神論」が主で物理空間への実装のための具体的情報が示されていないのは大問題といえます。聞いているだけで目の前に浮かんでくるような(V)具体的情報をしっかり共有できなければ(I)、現場は確実に混乱することでしょう(R化しない)。

いつまでも「くっきりとした姿が見えているわけではない」ではいけないのです。

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 (実装化の秘訣についてはこちら↓)

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24275156.html

 

今、議論されるべきは、ゴールやミッションではなく、エンドステートやCOA(コース・オブ・アクション)です。刻々と変わる状況の変化に合わせて想定を更新し(アサンプションアップデート)、課題とその対策を摺り合わしているべきです。

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 「この期に及んで精神論」の状況をシンプルに分析すると可能性は2つ。実装化(インプリメンテーション)を「やらなかった」か「できなかった」か。いずれにしてもリーダーとして失格です。

しかしながら、まだリーダーとしての役割(責任)は残っています。それが説明です。

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 では、実装や説明のために必要なことはなんでしょうか?

 

 そう、論理力。その論理力はディベートで鍛えることができます。ディベートの目的は「論理脳を鍛えること」「最短時間で最適解を見つけること」、そして「論理という系の外に出て自由になること」。

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現代ディベート論理は「トゥールミンロジック」と呼ばれています。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6194585.html

 

 では小泉環境相の発言を確認しましょう。

 

 

 30年度までに温室効果ガスを46%削減する

くっきりとした姿が見えているわけではないけど、おぼろげながら浮かんできたんです。46という数字が。シルエットが浮かんできたんです

 

 「おぼろげ」「シルエット」という言葉は、最初にゴールを見いだしたときの表現としては悪くありません。「くっきりとした姿が見える」のは、ゴール設定時ではなく、ゴール達成前です。繰り返しますが、ゴール設定時には「精神論」と思われてもかまいません。

 (ゴールとリアルの関係はこちら↓)

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しかし、「30年度までに46%削減する」は、ゴールではなく、具体的なエンドステートです。「46という数字」は、「おぼろげ」でも「シルエット」でもなく、「くっきりとした姿」でしょう。

ゴール達成のためにクリアしなければならない具体的なエンドステートやCOA(コース・オブ・アクション)は、当たり前ですが、論理的にしっかりと検証されている必要があります。もちろん、「○○だったらいいな」というただの期待や「きっと△△に違いない」という根拠のない思い込みを徹底的に排除して。レジリエンス(resilience)でいうと「ゼロトラスト」です。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/22878502.html

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/22931091.html

 

 その根底にあるべきは不完全性。不完全性定理/不確定性原理以降の社会に「絶対」など存在しません。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6194669.html

 

 その不完全性が示唆するのは、「何事にも課題が内包されている」ということ(ケースサイド)。そして、「必ず改善点がある」「常に可能性が開かれている」ということです(プランサイド)。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/12658417.html

 

 コーチング理論でいうと「必ずスコトーマがある」ということ。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html

 

大乗仏教では「空観」。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353367.html

 

 だからこそ、論理的な議論はとても大切であるといえます。議論とは「ゴールを共有した集団が、お互いの情報処理の違いによりスコトーマを外しあい、ゴール達成のために解決するべき問題(課題)を明らかにして、有効な解決策を見つけていく共同作業」なのです。

その議論のためにトゥールミンロジックを活用し、エンドステートやCOAに落とし込んでいきます。つねにアサンプションアップデートを重ねながら。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/11994979.html

 

「温室効果ガス46%削減」という主張(claim)のためには、まずは事実(data)を示し、主張と事実をつなぐ根拠(warrant)を明らかにする必要があります。これが基本!

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/12340209.html

 

 その上で、根拠が正しいことを支持する裏付け(backing)、主張の相対的強度の表現である確率(qualifier)、例外である反駁(reservation)までそろえてひとつの論理です(下図)。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/12504855.html

 

 その論理をわかりやすく伝えることが、リーダーが果たすべき説明(責任)です。

 

トゥールミンロジックの6要素



 最初のゴールは必ず“現状の外”!

 “現状の外”にあるゴールは、「他人の視点や社会の価値観でつくられたこれまでのブリーフシステム」を手放さなければ、決して見いだすことができません。

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“現状の外”にゴールを設定すると、未来から現在への時間の流れを生きられるようになります。それは「ゴール側(未来)の自分が現在の自分を導く」という意味でのリーダーの誕生です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6542317.html

 

 さらにゴール設定のポイントの2つ目「自分中心を捨てる」に挑み続けると、自分の世界(一人一宇宙)だけでのリーダーが、縁ある人々の間でのリーダー(という機能)に拡張していきます。

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 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353044.html

 

 そのとき責任と義務が生じます。ゴールの世界(CZ)を生みだす自由に対する責任であり、同調させる権利に対する義務です。

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 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/13959033.html

 

その責任と義務を背負っても余裕で100%want toであり続けるのがシンのリーダー。それは本当のプロフェッショナルの姿でもあります。

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 私は新型コロナ感染症(COVID-19)というクライシス(危機)を契機に「誰もがリーダーとして覚醒し、その役割を全うしているヴィジョン」を体感しました。

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 それは小泉環境相の発言との縁によるアサンプションアップデート。今後のコーチング活動にしっかり活かしてきたいと思います。

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苫米地式認定コーチ                       

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

 

-追記-

 その根底にあるのは不完全性。不完全性定理/不確定性原理以降の社会に「絶対」など存在しません。

 その不完全性が示唆するのは、「何事にも課題が内包されている」ということ(ケースサイド)。そして、「必ず改善点がある」「常に可能性が開かれている」ということです(プランサイド)。

 コーチング理論でいうと「必ずスコトーマがある」ということ。大乗仏教では「空観」。

 だからこそ、論理的な議論はとても大切

 

 もっとストレートに表現すると「思考停止しない」「思考し続ける」ということ。それが21世紀に生きる私たちに求められているブリーフ。

 政治に携わる方々の発言が炎上を繰り返す原因はこの点にあるのかもしれません。

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