L-01920202月リスクマネジメント研修会(医療法人、鹿児島県)レポート -06;「疑問や難しかったことQA<前編>

 

 20202月、鹿児島県の医療法人でリスクマネジメント研修を行いました。タイトルは「医療・介護現場でのレジリエンス ~問題(課題)を解決し、さらにタフになるための科学的方法~」です。

 内容について御紹介し、いただいた御質問や御意見に対して回答いたします。

 (関係者の皆さま方、お待たせいたしました)

 

 01;イントロダクション

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/25664104.html

 02;レジリエンス -前編-

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/25697811.html

 03;レジリエンス -後編-

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/25743784.html

 04;「印象に残ったもの」QA<前編>

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/25761596.html

 05;「印象に残ったもの」QA<後編>

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/25785125.html

 06;「疑問や難しかったことQA<前編>

 

認知科学者 苫米地英人博士は、レジリエンスを「有事の際に迅速にリカバーし、元より強固になることができる性向」と定義されています。「ゼロトラスト」という大前提の下、4つのフェーズごとにやるべきことを想定し、それぞれ具体的な行動に落とし込んでいきます。

   Normal Operations:平常状態の継続的なモニタリング

   ShockCascading:最低ラインの確保(平常状態を有事に確保するのは現実的ではないという認識)

   Recovery Phase:できるだけ迅速にリカバーできる準平常ラインの設定

   Restoration Phase:準平常ラインから元々の平常ラインよりさらに高いラインに回復する構造

 

レジリエンスカーブ(191104バラだん)

「バラいろダンディ」(東京MX2019114日放送回)より引用

 

 

研修後のアンケートにはたくさんのコメントをいただきました。ありがとうございます。今回の研修は、理解度:5.702.6~9.6)、満足度:6.621.5~10)という結果でした。

 御意見・御質問に回答いたします。今回は「疑問や難しかったこと」です。

 

 

・ファイト・オア・フライトの内容が少し難しいと感じました

・「ファイト・オア・フライト」聞くとなるほどとは思いますが、意識して実践するのは難しいかなと思います

 

A:まずは「ファイト・オア・フライト(Fight or Flight)」の説明から。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/8164566.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/8166289.html

 

 

 「ファイト・オア・フライト」とは、高度な情報処理を行う前頭前野よりも本能的な情報処理を行う大脳辺縁系が優位になっている状態です。文字どおり「戦うか、逃げるか(闘争か、逃走か)」という心理状態に陥ります。

 

 米CDCCenters for Disease Control and Prevention、疾病予防管理センター)が公表した「Psychology of a Crisis」中には、危機に瀕した時の行動(Negative Behavior)として下記の4つが挙げられていました。

Demands for unneeded treatment:不必要な対処を求める

Reliance on special relationships:特別な関係に依存する

 〇Unreasonable trade and travel restriction:理由なく商業取引や移動(旅行)が減少する

 〇MUPSMultiple Unexplained Physical Symptoms):医学的に説明できない身体症状が複数出現する

 

クライシス(危機)時には「拒絶→不安・恐怖→回避→希望の消失→パニック」と進行していきます。こうした事態に対処するために米CDCが公表していた基本原則が下記の4つ。

1.      最初に最悪の可能性を伝え、それが改善していることを数字で伝える

2.      「必ず解決します」などの約束はNG。むしろ状況の不確定性を正確に伝え、その問題を解決するプロセスについてのみ伝える

3.      問題解決のプロセスが進んでいることや状況が改善していることを伝えるために、それを示すデータや数字を継続的に提供し続ける

4.      恐怖を認め、問題に関連する文脈情報を与える

 

 これらの基本原則が目的としているのは「前頭前野優位を維持する(すぐに回復する)」こと。なぜなら、クライシス(危機)とは人のマインドで生じるものであり、その本質は「情報処理が前頭前野優位から大脳辺縁系優位になる」ことだからです。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/9815429.html

 

 「拒絶」「不安・恐怖」「回避」「希望の消失」「パニック」といった心の状態は悲観的な言動としてあらわれます。その一例が「難しいと感じる」「難しいと思う」という発言。

 そんな言葉を見聞きするたびに、「だから、できなくても仕方がない」「だから、やらなくてもいい」という心の声が聞こる気がします。それを創造的回避と呼びます。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6040752.html

 

 感想を書いてくださった方はどうだったでしょうか?

 もしも心当たりがあるなら、「私らしくなかった。たとえ難しく感じても、私なら大丈夫」とセルフトークしてください。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/25482691.html

 

 創造的回避は現状肯定のあらわれです。それは過去の記憶でつくられたコンフォートゾーン(CZ)での安住であり、自らつくりあげた「現状維持の壁」の中に自身の能力や可能性を封印してしまっている状態です。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6040892.html

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/13628746.html

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/12794797.html

 

 

・現場で「ファイト・オア・フライト」の状態になる方をよく見ますが、どのように注意、もしくは伝えられるかがわかりません

 

Aでは、現状のCZを抜け出すためにはどうすればよいのでしょうか?

 

 答えはゴール設定。もちろん、“現状の外”です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5615935.html

 

 「どのように注意、もしくは伝えられるかがわかりません」という言葉には、「しっかり注意したい」「うまく伝えたい」という意思が感じられます。

本人は意識していないかもしれませんが、何らかのゴールがあり、現状に不協和を感じているはずです。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5882652.html

 

 

・基本的に話が難しかったです。もうちょっと勉強が必要なのかなって感じました

 

Aまずはゴールを設定すること。

 心にいつもゴールがあると、RASがゴール実現に関係あるもの(こと)を拾い上げ、ゴールに関係ないもの(こと)をスコトーマに隠します。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721658.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html

 

 まるでスポンジが水を吸収するように関係する知識を身につけていきながら、ついにゴール実現のための方法を見つけます。「invent on the way」です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24963004.html

 

 ゴールに向かう過程での知識習得は必ずwant to。「勉めて強いる」と書く“勉強”に潜むhave to感とは無縁のまま、文字どおり気楽に学び習っていくでしょう。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5882609.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/19980130.html

 

それが本当の“学習”です。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/9367702.html

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/9533528.html

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/9533623.html

 

 では、ゴールを設定した後に心がけるポイントはなんでしょうか?

 

 

・なぜ日本はアメリカのようなCDCが確立されていないのか?確立されない理由があるのか?

 

A答えは「エフィカシーを高めること」です

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5616012.html

 

 ゴールがあり、「そのゴールを達成できる」という確信(エフィカシー)があると、今までは気にならなかったことが気になりだし、隠れていた問題・課題を見つけます。この質問者のように「理由」を求めはじめるのです。

 問題・課題(ケース)を見つけた後は、その解決(プラン)に向けてマインドがフル回転しだします。このケースでは「理由」に対する答えを自ら見いだすことでしょう。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/12658417.html

 

 その際にディベートがとても役にたちます。現代ディベート論理はトゥールミンロジックと呼ばれています。ディベートの目的は「最短時間で最適解を見つける」ことです。さらに論理的思考を鍛え続けると、論理という系の外に出ることができます。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6194585.html

 

 それは自由を得るということ。すると、ますますゴールを見つけることができるようになります。もちろん“現状の外”に。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/10400987.html

 

L-020につづく)

 

 

苫米地式認定コーチ                       

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

―追記1

 トゥールミンロジックについて、下記ブログ記事にまとめました↓

 S-01~:よりよい“議論”のために(目次)

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/11613757.html

 

 

-追記2

CDCについてはL-021で再度取り上げます。

 

 

-関連記事-

F-094~:私はイヤなことは心の中で握りつぶす

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/cat_375251.html

F-140~:不要不急

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_400247.html

F-146~:トリアージ(triage)をコーチの視点で考える

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_401494.html

 

 

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 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_408326.html

 

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 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/25412318.html

 

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 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/25720321.html

 

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