L-01620202月リスクマネジメント研修会(医療法人、鹿児島県)レポート -03;レジリエンス -後編-

 

 20202月、鹿児島県の医療法人でリスクマネジメント研修を行いました。タイトルは「医療・介護現場でのレジリエンス ~問題(課題)を解決し、さらにタフになるための科学的方法~」です。

 内容について御紹介し、いただいた御質問や御意見に対して回答いたします。

 (関係者の皆さま方、お待たせいたしました)

 

 01;イントロダクション

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/25664104.html

 02;レジリエンス -前編-

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/25697811.html

 03;レジリエンス -後編-

 

「レジリエンス(resilience)」は、もともとは物理学の用語です。「外力による歪み」を意味するストレスに対して、「ストレスを跳ね返す力」の意味で使われています。そこから心理学の世界にひろがり、「社会的ディスアドバンテージや自分に不利な状況において、そういった状況に自身のライフタスクを対応させる個人の能力」を表す言葉として用いられるようになりました。

認知科学者 苫米地英人博士は、レジリエンスを、「有事の際に迅速にリカバーし、元より強固になることができる性向」と定義されています。その大前提は「ゼロトラスト」です。

 

 レジリエンスの大前提は「ゼロトラスト」。

それは「完全に守る(防ぐ)ことは不可能という認識」のこと。「無常」で知られる縁起の思想はもちろんのこと、不完全性定理や不確定性原理以降の西洋哲学の根幹にある概念です。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353044.html

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6194669.html

 

「ゼロトラスト」という大前提の下、4つのフェーズ(phase)ごとにやるべきことを想定し、それぞれ具体的な行動に落とし込んでいきます。「フェーズ」はゲシュタルト(より具体的にしていくとアサンプション)、「やるべきこと」はエンドステート、「具体的な行動」はCOA(コース・オブ・アクション)と考えることができます。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6193912.html

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/14973460.html

 

   Normal Operations:平常状態の継続的なモニタリング

   ShockCascading:最低ラインの確保(平常状態を有事に確保するのは現実的ではないという認識)

   Recovery Phase:できるだけ迅速にリカバーできる準平常ラインの設定

   Restoration Phase:準平常ラインから元々の平常ラインよりさらに高いラインに回復する構造

 

 

レジリエンスカーブ(191104バラだん)

「バラいろダンディ」(東京MX2019114日放送回)より引用

 

 

上記ポイントについて説明しながら、医療・介護現場で起こりえる4つのケースについて具体的に考えていただきました。このブログでは2つ紹介します。

 

Case1<転倒・骨折事故発生時のレジリエンス>

ゼロトラスト;転倒・骨折は起こりうるという認識

 ①Normal Operations(平常状態の継続的なモニタリング);

転倒リスクの評価、ハイリスク者の観察(見守り・声掛け)、補助具の活用工夫、リハビリ、不穏・不眠や頻尿等に対する薬物治療

 ②ShockCascading(最低ラインの確保);

アクシデント前:衝撃吸収マットやパット付き下着の使用

アクシデント直後:出血性ショック予防(補液・抗血小板剤中止等)、固定、鎮痛処置

Recovery Phase(できるだけ迅速にリカバーできる準平常ラインの設定);

固定や鎮痛処置の継続、家族への報告、専門医受診(手術や急性期リハビリ)

 ④Restoration Phase(準平常ラインから元々の平常ラインよりさらに高いラインに回復する構造);

回復期リハビリ、維持期リハの継続(日常生活動作訓練)、RCA(←*追記2で解説)等を通じた分析と再発予防の取り組み、職員間の情報共有、他病院・施設との情報共有(新たな取り組みの検討)

 

 

 Case2<ファイト・オア・フライトへのレジリエンス(セルフコントロール)>

ゼロトラスト;不安・恐怖、怒りの感情は必ず生じ、誰でも「ファイト・オア・フライト」に陥るという認識

 ①Normal Operations(平常状態の継続的なモニタリング);

want toか?」「リラックスしているか?」等自分の状態を常にモニタリング

 ②ShockCascading(最低ラインの確保);

イライラなどの情動を感じた瞬間に「ファイト・オア・フライト」について思い出し、セルフトークなどで衝動的な行動を自制。ゴールを共有する仲間同士の前向きな声掛け「私たちらしくない」

Recovery Phase(できるだけ迅速にリカバーできる準平常ラインの設定);

  CDCガイドラインの復習(復唱)等で前頭前野優位を維持。ゴールを共有する仲間同士の励まし「大丈夫」「私たちらしい」「もっとできる」

 ④Restoration Phase(準平常ラインから元々の平常ラインよりさらに高いラインに回復する構造);

さらに先のゴールを再設定。「時間の流れ」をふまえ「いい機会」と再解釈。ゴール共有

  https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/8164566.html

  https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/8166289.html

 

 

私たちは目の前の世界をありのままには認識していません。重要なこと(モノ)のみがRAS(ラス、網様体賦活系)を通過し、重要度の低いこと(もの)はスコトーマに隠れるからです。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721658.html

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html

 

その重要度を決めるものがブリーフシステム(BS)。行動や行動性向といわれる無意識の判断・行動を決めるシステムです。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721531.html

 

そのブリーフは「強い情動を伴った体験の記憶」と「抽象化された情報の記憶」でつくられています。つまり、私たちは他人の視点や社会の価値観に束縛されながら生きているということ。時間でいうと過去→未来という流れに囚われているのです。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6542317.html

 

その流れを未来→過去へと反転させるものがゴールです。「心から望むものであること」「自分中心を捨て去ること」「現状の外側に設定すること」を満たすゴールを自らの自由意思で設定することで、本当の自分を生きることができるようになります。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5615935.html

 

 その時のマインドは100%want to756倍の生産性を発揮できる心の状態です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5882609.html

 

 今回の話題「レジリエンス」も秘訣はコーチングです。「Restoration Phase(準平常ラインから元々の平常ラインよりさらに高いラインに回復する構造)」を先にゴールとして設定するから、「ShockCascading(最低ラインの確保)」を凌ぐことができ、「Recovery Phase(できるだけ迅速にリカバーできる準平常ラインの設定)」において加速することができます。ゴールに向かって。

 

 やはりGoal comes first

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24178986.html

 

 

 研修では以上のような話をさせていただきました。

 

L-017につづく)

 

 

苫米地式認定コーチ                       

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

-追記1

 「クライシス(危機)」については下記記事をどうぞ↓

 F-035~:クライシス(危機)の本質

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_395184.html

 

 心のエネルギーのコントロールについてはこちら↓

 S-03~:心のエネルギーとは何か? ~カナックス事件に学ぶ“心のエネルギー”をコントロールする方法~(目次)

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/19879680.html

 

 

-追記2

 RCAとはRoot Cause Analysisのことです。「根本原因分析法」と日本語訳されています。抽象度を上げて考察すると、「Root」とはマインド(脳と心)のことです。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4448691.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4449018.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516484.html

 

よって、マインドでの情報処理能力を最大化することこそが、最高の(リスク)マネジメントであるはず。RCAに関しては、後日あらためて考察します(フリーテーマ)。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/25016029.html

 

 

-関連記事-

F-094~:私はイヤなことは心の中で握りつぶす

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/cat_375251.html

F-140~:不要不急

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_400247.html

F-146~:トリアージ(triage)をコーチの視点で考える

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_401494.html

 

 

-告知-

 今年度(2021-22年)は計8回のオンラインセミナーを予定しています。1年間を通してのテーマは「Well-being」です。

 F-176~:“幸福(well-being)”とは? ~antiwithwellpart

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_408326.html

 

2021年度セミナー予定はこちら↓

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/25412318.html

 

 第2回目は2021523日(日)開催。テーマは「情報宇宙の構造」「トータルペイン」「自由」「時間の流れ」です。詳細はこちらから↓

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/25720321.html

 

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