L-002:2020年1月シークレットレクチャー -02;身体的苦痛
2020年1月にコーチ向けのレクチャーを行いました。守秘義務を結んだ上で行う3回の講義の初回。メインテーマは「スピリチュアルペイン」で、初回のサブテーマは「○○」。
その講義内容をブログ用に再構成してお届けします。
ぜひサブテーマを想像しながらお読みください(漢字二文字ですw)。スピリチュアルペインやトータルペインは過去のブログ記事でも取り上げていますが、きっと新たな発見に驚くはずです。
01;「全人的苦痛(トータルペイン)」と「4つの苦痛」の関係
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24505924.html
02;身体的苦痛
前回は、「全人的苦痛(トータルペイン)」と「4つの苦痛」の関係が、「全体」と「部分」の双方向の関係性であることを説明しました。ゲシュタルトです。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6193912.html
「4つの苦痛」とは、「身体的苦痛」「心理・精神的苦痛」「社会的苦痛」、そして「スピリチャルペイン」のこと。
(「スピリチャルペイン」は「霊的苦痛」と訳されることもあります。誤解されうる表現なので、私はあえて「スピリチュアルペイン」としています)
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/8293317.html
「身体的苦痛」の代表が疼痛(とうつう)です。
医師としての私が「辛くはありませんか?」と質問したとき、多くの高齢患者さんが訴えるのは膝・腰・肩などの身体的な痛みです。
厚生労働省の人口動態統計でみると、日本人の死因(どんな病気で亡くなるか)は1)がん、2)心疾患、3)脳血管疾患、4)肺炎
の順です(2019年)。ところが、同省の国民生活基礎調査で有訴者数(どんな症状で悩んでいるか)を確認すると、1)腰痛、2)肩こり、3)手足の関節の痛み、4)せきやたんが出る、5)鼻がつまる・鼻汁が出る の順となっています(2016年)。
厚生労働省HP>…>H28年 国民生活基礎調査の概況(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/16.pdf
この事実(data)が示すのは、「多くの日本人は、命に関わる重篤な病気(がん・心疾患・脳血管疾患)ではなく、ありふれた『身体的苦痛』に悩まされている」ということ。
医療の現場では、専門であるほど、疾患の病態やその解決にフォーカスしてしまいがちです(RASが働く)。その結果、患者さんの実際の悩みを認識しにくくなっているのかもしれません(スコトーマに隠れる)。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721658.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html
「身体的苦痛」は、いわゆる「痛み」だけではありません。先の統計結果にある「せきやたんが出る」「鼻がつまる・鼻汁が出る」といった身体症状も含みますし、息切れ・息苦しさ・動悸・めまい・倦怠感といった身体不調も含みます。さらには、「転倒する」「むせる」といった機能上の問題から、「トイレがうまくできない」「食事に時間がかかる」といった日常生活上の課題まで幅広く含みます。
このブログをお読みの皆さんは、「老い」を実感することはめったにないと思います。しかしながら、老いは確実に進行しています。気がついていないだけです(スコトーマに隠れている)。
例えば免疫力。人生で一番免疫力が高いのは20代前半といわれています。その免疫力を100としたとき、40歳ではどのくらいだと思いますか? 70歳では?
(…驚きの答えは↓)
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/23108517.html
私たちの身体は日に日に変化しています。死に向かって。
おそらく死の恐怖が無関心を生み、「老」「病」「死」をスコトーマに隠しているのだと思います。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/8045953.html
さらに「生」までも無関心となっていることが、すべての苦の元凶であるはず。詳細は後述します。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_318161.html
話を戻します。
前述のとおり、「身体的苦痛」とは必ずしも「痛み」のことばかりではありませんが、日本人の悩みの多くは「身体の痛み」です。
その「痛み」を、国際疼痛学会は、「組織の傷害あるいはそれに関連付けて述べられる不快な感覚的かつ情動的体験」と定義しています。
つまり、「痛みは主観的表現である」ということ。その“主観”は記憶に由るので、「痛みは記憶である」ということができます。しかも、「情動記憶(emotional memory)」です。
情動記憶
…そう、ブリーフシステムと関係する「情動を伴った体験の記憶」のこと。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721531.html
よって、「身体的苦痛」だけを独立したものとみなすことはできません。心理や人格といった情報(空間)と合わせて評価や対処を行う必要があります。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516539.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654230.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654316.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4831442.html
最近は「一次性疼痛(primary pain)」という「身体に器質的な原因が見つからないのに起こる痛み」が定義されています。該当する疼痛疾患はまだ国際学会レベルで議論中のようですが、非特異的腰痛という整形外科領域の痛みが含まれると考えられています。
物理空間やそれに近い次元での医療においても、心理・精神的なアプローチに対するニーズがどんどん大きくなっているのです。
これは、「身体的苦痛」と「心理・精神的苦痛」は強く相関している(ように感じられる)ことを示しています。
(L-003につづく)
苫米地式認定コーチ
苫米地式認定マスターヒーラー
CoacH T(タケハラクニオ)
-追記1-
「スピリチャルペイン」は「霊的苦痛」と訳されることもあります。誤解されうる表現なので、私はあえて「スピリチュアルペイン」としています
…その「誤解」にも「感覚的かつ情動的体験」が関係しています。言葉には強い想起性があります。関連することを下記記事に書きました(オリンピック関連です↓)。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/7701939.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/7859111.html
-追記2-
「疼痛」に関連する話を、「日本医師会雑誌
2020年4月(第149巻・第1号)」から引用します。これが“専門家の世界”ですw
…日本ペインクリニック学会などでは、かつて痛みに関する用語を整理していこうという動きがあり、「痛み」と「疼痛」もその俎上に上がりました。「疼痛」は読んで字のごとく、疼く痛みであるから決して「痛み」すべてを指していない。「痛み」は全般を指すからこの2つを使い分けるべきだという意見が出され、一旦はその方向で決まりかけました。
しかし、漢字の発祥地とされる中国に「中華人民共和国疼痛学会」という名称の学会が発足し、そこで「疼痛」を痛み全般の意味に用いたことから、「疼痛は疼く痛みのみを表す」という説は完全に覆されてしまいました。さらに「日本慢性疼痛学会」や「がん性疼痛認定看護師」などのように「疼痛」がすでに公式名称として組み込まれていたため、一般的に「痛みを感じる」とか「足の痛み」などの表現は「痛み」で表し、学会の名称や漢字を用いた熟語の中で使うときは「慢性疼痛」「急性疼痛」などのように、「疼痛」をそのまま使うということで、ようやく折り合いがつきました。
引用終わり
-関連記事-
PMⅠ-04~:苫米地理論で見える医療・福祉現場のスコトーマ(目次)
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/13076878.html
Q-064~:認知的不協和の状態にあり頭痛が続いています。適切なアファメーション、ビジュアライゼーションはどうすればよいでしょうか?
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_292583.html
F-122:免疫力をあげる!
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/21245972.html
-告知-
青山龍苫米地式認定マスターコーチと私 CoacH Tとのコラボ企画「Fight Coaching Project(FCP)」がはじまっています(2020年6月~、月額制)。テーマは「マインド(脳と心)の健康」です。
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