Q-172:自身の信念を失いそうです vol.4;コーチ向け
メールでのやり取り中に気になる表現を見つけました。コーチング入門者向け(vol.1)と実践者向け(vol.2&3)、そしてコーチ向け(vol.4)に分けて考察します。
vol.1;コーチング入門者向け
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24385304.html
vol.2;コーチング実践者向け -前編-
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24425213.html
vol.3;コーチング実践者向け -後編-
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24448644.html
vol.4;コーチ向け
前回(Q-170&171)、「共感を伴う同情」と「共感を伴わない憐れみ」は違うことを、博士の著書を引用しながら解説いたしました。
コーチは常に共感しているべきですが、必ずしも同情(ホメオスタシス同調)し続ける必要はありません。むしろ、同情(同調)から抜ける意識状態を体得するべきです。共感は維持したまま。
共感は維持したまま、同情(同調)からは抜ける
…それはどういうことなのか、あるコーチからいただいた御相談に答えながら考えていきたいと思います。
(プライバシー保護のため一部変更しています)
Q:クライアントさんが現状のネガティブばかりを訴えてきます。もちろん、その方のMindを慮ってスルーしているのですが、正直に言うと、そんな自分のあり方に疑問を感じることがあります。
共感の無いコーチって意味があるのだろうか?
コーチって何なのか? さっぱり分からなくなりました。
A:本当に「共感が無い」のならば、コーチとはいえないでしょう。
それはコーチだけでなく、すべての職種にいえるはずです。なぜなら、仕事・職業とは「役に立つ」「価値を生みだす」ことであり、必ず相手がいるから。私たちは縁起の一部であり、いつもつながりの中で生きています。いえ、つながり(和)そのものであるというべきでしょう。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353044.html
縁起の一部であるから「空(くう)」。すべてのものは他との関係性の網の中で形作られていて、普遍的な存在などありません。無常です。
だから、仕事・職業は「仮(け)」です。無常だから仮です。空であることをちゃんと理解しながらも、仮としての機能・役割はしっかりと果たす
…その境地を「中観(ちゅうがん)」と呼びます。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353367.html
ところで、私は「自己責任」をとても重要視しています。
詳しくはシリーズ編第4弾「さぁ『人間関係の悩みを克服する旅』をはじめよう!」にまとめました。ぜひ確認を↓
S-04-00:はじめに(目次)
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/22305802.html
私が「自己責任」を重要視している根源的な理由は、もちろん、「“宇宙”の理が縁起だから」です。
「共感」という言葉はいろいろな解釈ができると思いますが、私は「情報場の共有」だと思っています。ここでいう情報場とは、情報空間のことであり、縁起空間のことです。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516539.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654230.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654316.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4831442.html
その縁起空間を「共に感じる」というのは同調のことばかりではありません。同調だと同じスコトーマができてしまいます。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html
共感しているが同調ではない
共感は維持したまま、同情(同調)からは抜ける
…そんなことが可能なのは「抽象度が高い」からです。「抽象度を上げる」とは包摂すること(subsume)。「牛」と「クジラ」を分けて考えるのではなく、同じ「哺乳類(あるいは動物)」と見る視点
…「無分別」の実践です。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4448691.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4449018.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516484.html
よって、「抽象度を上げて考える」ときのコーチの世界(縁起空間)には、自分も家族もクライアントもしっかり入っています。過去も未来も、そしてあらゆる可能性(可能世界)もちゃんと含んでいます。それが「包摂」であり、「無分別」です。
しっかりとクライアントを包摂しているが、同情(同調)ばかりではなく、より高い抽象度でさらに大きな世界(ゲシュタルト)を認識している
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6193912.html
…それが本物のコーチの姿であるはず。私はそんな意識状態を“無敵”と呼んでいます。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5446097.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5448151.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5615695.html
そのようなコーチの本当のすごさは、クライアント側からはわかりにくいはずです。抽象度が違うから。反対に、クライアントが「すごさ」をリアルに感じているようなときは、コーチがクライアントに完全に同情(同調)してしまっている可能性を疑うべきです。
…中国の古典「菜根譚(さいこんたん)」を御存知でしょうか?
明(みん)末期に洪自誠(こう じせい)によって書かれた随筆集で、人の交わりを説いた前集222条と自然と閑居の楽しみを説いた後集135条から成ります。
その菜根譚の中に、こんな一節があります。
人生減省一分、便超脱一分
「人生、一分(いちぶ)を減省(げんせい)せば、すなわち一分を超脱す」と読みます。意味は「人生では減らすことを考えれば、それだけ抜けだすことができる」です。
私は「抜けだす」とは「煩悩の克服」のことだと思っています。つまり、「抽象度を上げる」「抽象度が上がる」ということ。それはマインドを制限しているリミッターをはずす極意でもあります。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/20078569.html
情報量を少なくすると、抽象度が上がります。反対に、情報量が増えてより具体的になると、抽象度は下がります。具体例を考えることなどは抽象度を下げる操作です。利点としては臨場感が上がりやすくなります(V)。それはイメージ(I)がしやすくなるということ。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6542364.html
菜根譚では「減省一分 超脱一分」の抽象度を下げた例として、「交際を減らせばもめ事から解放される」「口数を減らせば非難から逃れられる」「知恵を減らせば本性を全うできる」が挙げられています。
Q:現状、〇〇だけでなく様々な管理職としての葛藤を抱きながら、それらを省みる時間も日々の業務に追われるためできずにいて、自身の信念を失いそうになっております
…「自分の信念を失いそうです」というときの信念は「過去」です。そのように感じる時は「これまでの自分」を克服するチャンス!
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_268337.html
その時、今までより高次の抽象度次元に新たなゴールを設定してください。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5615935.html
すると、今まで感じていた葛藤が霧散し、時間的余裕を取り戻していることに気づくはず。「減省一分」した結果、「超脱一分」するから。
〇〇さんが感じているクライシス(crisis)は、じつは、貴重な転換点です。それは高次の抽象度へと向かう“転換点”。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_395184.html
私は、〇〇さんがそのクライシスをチャンスに変えて、さらに飛躍していくことを確信しています。大丈夫!
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5616012.html
御連絡ありがとうございました。今後の経過を楽しみにしていますw
苫米地式認定コーチ
苫米地式認定マスターヒーラー
CoacH T(タケハラクニオ)
-追記1-
知恵を減らせば本性を全うできる
…知恵とは煩悩にまみれた「悪知恵」の類。本性とは「空(くう)」。知恵を減らしながら本性を全うしていく過程が「人間形成」のはずです。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/9963845.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/9966391.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/10116950.html
-追記2-
本当に「共感が無い」のならば、コーチとはいえないでしょう
…「共感」からひろがる「慈悲」について、認知科学者 苫米地英人博士の著書「近未来のブッダ
21世紀を導くリーダーの鉄則」(サンガ)で学ぶことができます。
以下、同書より引用します。苫米地博士の言葉をガイドに、コーチとしての自分の姿を存分にイメージし、どんどんアップデートしてください。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_262962.html
◇慈悲の定義
慈悲は情動ではない
慈悲は行動するもの
きわめてIQの高い前頭前野を使った行動
苦行や瞑想からほど遠いもの
徹底的に自分以外のこと
慈悲は上から目線ではない
他者の苦しみを最小化する
他者の幸せを最大化する
◇ポイント
人間は、自分以外の人の喜びしか自分の幸せにならない、だから慈悲は幸せの道だということ
◇慈悲の体感
めちゃくちゃハッピー
-追記3-
…連載中の下記ブログ記事(フリーテーマ)は、じつは慈悲をイメージしながら書いています↓
F-163~:アンチ(anti)からウィズ(with)、そしてウェル(well)へ
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_404044.html
-告知-
青山龍苫米地式認定マスターコーチと私 CoacH Tとのコラボ企画「Fight Coaching Project(FCP)」がはじまっています(2020年6月~、月額制)。テーマは「マインド(脳と心)の健康」です。
参加される皆さんの疑問・質問にもお答えする1年間の双方向(インタラクティブ)オンラインコミュニティの中で、徹底的に「マインドの健康」を追求したいと思っています。
一緒にさらなる“現状の外”へ飛びだしましょう!
(詳細は下記サイトで↓
FCPのみの受付は終了いたしましたが、青山コーチのコーチングクラブ2020に入会することで視聴できます)
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