Q-171:自身の信念を失いそうです vol.3;コーチング実践者向け -後編-

 

 メールでのやり取り中に気になる表現を見つけました。コーチング入門者向け(vol.1)と実践者向け(vol.23)、そしてコーチ向け(vol.4)に分けて考察します。

 (プライバシー保護のため一部変更しています)

 

 vol.1;コーチング入門者向け

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24385304.html

 vol.2;コーチング実践者向け -前編-

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24425213.html

 vol.3;コーチング実践者向け -後編-

 

 憐れみと同情の違いは?

 「共感する能力」はゴール達成の秘訣 その理由は?

 

 以下、認知科学者 苫米地英人博士の「『感情』の解剖図鑑 仕事もプライベートも充実させる、心の操り方」(誠文堂新光社)より引用(青色)し、コーチング実践者向けに解説します。前回(Q-170)のつづきです。

 

人類は共感によって進化し、生き延びてきた

 人間が種として進化し、存続することができたのは、共感する能力があるからです。もしそれがなければ、人が力を合わせて物事に取り組んだり、さまざまな技術を受け継いでいったりすることはできなかったでしょう。

 もちろん人間以外の動物にも、ある程度の共感能力はあります。群れをつくり、お互いを守りあったり、力を合わせて獲物をとったりするのは、「来るべき危険に備えよう」「今日の食べものを手に入れよう」といった、未来に対するなんらかの想定を、共通認識として持っているからです。

 ただ、高度に情報化された空間を共有するためには、やはり前頭前野が発達した、進化した脳が必要です。「ネットや本、テレビなどで知った、見ず知らずの人の不幸な境遇や経験に同情する」といったことができるのは、人間だけなのです。

 

 「力を合わせて物事に取り組む」ことができるのはゴールを共有しているから。そして、「さまざまな技術を受け継いでいったりする」ことも、時間軸まで含めたゴール共有の結果といえます。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5615935.html

 

 人間の種としての進化は、物理的“現実”世界だけでなく、その世界を写像として生みだす情報空間までをも臨場感豊かに感じることを可能にしています。つまり、ゴール自体が進化とともに高次元に移行しているのです(ここでいう「次元」とは「抽象度」のことです)。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4448691.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4449018.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4516484.html

 

例えば、飢えをしのぐこと(physiological needs)から安全を確保すること(safety needs)へと変わり、コミュニティの課題(social needs/love and belonging)からコミュニティ内での相互承認(esteem)へと移行していくというように。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/9963845.html

 

 米国の心理学者 アブラハム・マズロー(1908~1970年)は、その欲求の階層の頂点に「自己実現(self-actualization)」があるとし、さらに晩年に「自己超越(self-transcendence)」を加えました。「自己実現理論」「欲求階層説」です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/9966391.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/10116950.html

 

 「高度に情報化された空間を共有する」ための「前頭前野が発達した、進化した脳」とは、「自己超越」の階層に属するものであるはずです。私は「“自己”の拡張こそがシンの共感を可能にする」と思っています。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353425.html

 

 

 個人が生きていくうえでも、共感する能力が重要

 人が社会の中で生きていくうえでも、共感できる能力は重要です。もちろん、その方が、より円滑な人間関係を築きやすいというメリットもありますが、理由はほかにもあります。

 他者に共感できるということは、共感するべき仮想空間を選び、しかもその空間にホメオスタシスを築いて臨場感を持つことができるということです。

 たとえば、大切な人を失って悲しんでいるAさんに共感し、同情するためには、「大切な人を失った、Aさんの経験や思い」という仮想空間を選び、そこに臨場感を持つことが必要となります。映画や、テレビで観たスポーツ中継に臨場感を持つことができなければ、登場人物や選手に共感することもできないでしょう。

 そして、その能力は、現状の外に設定したゴールを達成するためにも必要です。「現状の外のゴール」という仮想空間を、臨場感を持ってイメージすることができて初めて、ゴール達成に向けての具体的なアイデアが生まれるからです。

 また、共感するべき仮想空間を選ぶ時間や、ホメオスタシスを築くまでの時間は、短ければ短いほどいいでしょう。仕事に集中したかと思えば、すぐに頭を切り替えて趣味に集中するなど、複数のゴールを同時に達成しやすくなるからです。

 

 前回の繰り返しになりますが、臨場感が現実を生みだします。その事実を方程式化したものが「I×V=R」です。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6542364.html

 

 「『現状の外のゴール』という仮想空間」は、通常は認識することができません。スコトーマに隠れているから。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html

 

 そんな認識さえできない何かをゴールとして設定し、しかもその達成のイメージ(I)を臨場感豊かに感じること(V)ができるようになるのは、コーチが存在するからです。コーチとの縁によってゴールはゆるぎない確信に変わり、やがて現実化していきます(R)。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6353044.html

 

ゴール実現の鍵となる「自分のゴール達成能力の自己評価」をエフィカシー(efficacy)と呼びます。エフィカシーが上がる(高まる)ほど、かつての“現状の外”は“あたりまえ”に変わっていきます。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5616012.html

 

 

 他人に同情できるのは、素晴らしいこと

 共感する能力は、人類にさまざまな恩恵をもたらしました。たとえば、数学や物理が発達したのも、数学者や物理学者などが、その世界に強い臨場感を持ったからこそ可能だったのです。

 ただ、ルールを知らなければスポーツ中継を観てもまったく理解できず、臨場感が持てないように、数学や物理など、高度に抽象化された仮想空間に臨場感を持つには、基礎となる知識、教養が必要です。そして本来、大学では、そのための教育を行うべきなのです。

 なお、こうした知識・教養のことを、「リベラルアーツ」、つまり「人を自由にする学問」といい、古代ギリシャやローマでは、奴隷ではなく、自由人として生きていくために必要なものであるとされていました。

 同情という感情を持てるのは、素晴らしいことです。それは、他人に共感できるということであり、そのために必要な教養が身についているということであり、そして、自由に生きられるということだからです。

 

 苫米地博士は「高度に抽象化された仮想空間に臨場感を持つためには基礎となる知識や教養が必要で、そのために教育がある」と語られています。

 その教育の目的は「自由」!

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/10400987.html

 

 

Q:現状、〇〇だけでなく様々な管理職としての葛藤を抱きながら、それらを省みる時間も日々の業務に追われるためできずにいて、自身の信念を失いそうになっております

 

 私は「様々な管理職としての葛藤」という言葉の中に、〇〇さん自身の「共感を伴う同情」を感じました。それは組織と〇〇さん自身をさらに高みに引き上げるきっかけとなるはずです。 

前頭前野をフル活用しながら、「ファイト・オア・フライト」を余裕で克服し、ゴールに向かって挑戦し続けてください。その過程で失う信念とは「過去」。

つまり、信念を失うたびに自由を得て、過去と決別するたびに未来の結果として生きることができるようになります。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6542317.html

 

だから、「自分の信念を失いそうです」は全然大丈夫。肩の力を抜いて、気楽に楽しんでくださいw

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/19980130.html

 

 

 次回、「共感」や「同情」について、コーチ向けに掘り下げます。

 

Q-172につづく)

 

 

苫米地式認定コーチ                       

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

-追記-

 臨場感について、いただいた質問を御縁に書き下ろしました↓

 Q-159~:臨場感が薄れても高い抽象度のゴールをイメージし続けるのでしょうか?

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_404758.html

 

 

-関連記事-

 PM-05~:苫米地理論で見える教育現場のスコトーマ(目次)

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/13077001.html

 

 

-告知-

 青山龍苫米地式認定マスターコーチと私 CoacH Tとのコラボ企画「Fight Coaching ProjectFCP)」がはじまっています(20206月~、月額制)。テーマは「マインド(脳と心)の健康」です。

 参加される皆さんの疑問・質問にもお答えする1年間の双方向(インタラクティブ)オンラインコミュニティの中で、徹底的に「マインドの健康」を追求したいと思っています。

一緒にさらなる“現状の外”へ飛びだしましょう!

(詳細は下記サイトで↓ FCPのみの受付は終了いたしましたが、青山コーチのコーチングクラブ2020に入会することで視聴できます)

http://aoyamacoach.com/fcp/

 

 

「感情」の解剖図鑑ver.2