F-164:アンチ(anti)からウィズ(with)、そしてウェル(well)へ vol.2-1「老」;anti-aging <ワーク付き>

 

 最近、「生命は老いるようにはできていない」「老いは治療できる病である」「もはや老いを恐れることはない」と主張(claim)する衝撃的な本を読みました。読後に医師&コーチとして考えたことをまとめます。

vol.1「生」;好きなことだけやる

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24281579.html

vol.2-1「老」;anti-aging <ワーク付き>

 

 

 その本とは「LIFESPAN 老いなき世界」(東洋経済新聞社)です。米ハーバード大学医学大学院教授で老化研究の第一人者であるというデビッド・A・シンクレア氏が、「老いない体を手に入れることができる未来」を示しています。

医師としてワクワク感を楽しみながら一気に読み終えました。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5882609.html

 

 「病」や「老」の定義には「高齢者メルクマニュアル」が引用されていました。病気とは「人口の半数未満がこうむる不調のこと」、そして老化とは「外傷・疾病・環境リスクあるいは不健康な生活習慣の選択といった要因が存在しなくても、時とともに臓器の機能が不可避的、かつ不可逆的に低下すること」です。

 (参考:WHOの健康の定義はこちら↓)

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/7859675.html

 

 そんな老化の典型的特徴として、次の9つが挙げられていました。1)栄養感知の調整不全、2)タンパク質恒常性の喪失、3)細胞間情報伝達の変化、4)幹細胞の消耗、5)テロメアの短縮、6)ミトコンドリアの機能不全、7)細胞の老化、8)ゲノムの不安定化、9)エピゲノムの変化 です。

「どれか1つに対処すれば、老化を遅らせることができる。すべてを解決すれば年をとらなくなるかもしれない」という言葉に感じられるものは「anti-aging」に対する憧憬

 大量の科学的事実(data)と「老化とは治療できる病気である」という主張(claim)をつなぐ根拠(warrant)として、「老化とはエピゲノムの喪失である」とする「老化の情報理論」が提唱されていました。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/12340209.html

 

 シンクレア教授がいう“情報”とは、アデニン(A)・グアニン(G)・シトシン(C)・チミン(T)の4つの塩基で表現されるような“デジタル情報”だけではありません。体内に「もう1種類の情報」として存在している“アナログ情報”まで含みます。その“アナログ情報”が「エピゲノム」です。

同書では、エピゲノムとは「親から子へと受け継がれる特徴のうち、DNAの文字配列そのものが関わっていないものを指す」と説明されていました。さらに、「DNAによらないこうした仕組みを『エピジェネティクス』と呼ぶ」とあります。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5165789.html

 

 私なりにシンプルに言い換えると、「遺伝子をオンまたはオフにする“スイッチ”」がエピジェネティクス(epigenetics)。そして「オン/オフのプロセスが記録されたもの」がエピゲノム(epigenome)です。

最新の研究により、エピゲノムの長期的な働きによりゲノムの機能が変化する可能性が指摘されています。ちなみにゲノム(genome)とは、遺伝子(gene)と染色体(chromosome)の合成語で、「DNAのすべての遺伝情報」を意味する言葉です。

 

 シンクレア教授の「老化の情報理論」を支える「一見ばらばらに思える老化の要因が矛盾なく並び立ち、統合されるモデル」が、若さ→DNAの損傷→ゲノムの不安定化→DNAの巻きつきと遺伝子調整(つまりエピゲノム)の混乱→細胞のアイデンティティの喪失→細胞の老化→病気→死という流れ。ここでポイントとなるのが「遺伝子調整(エピゲノム)の混乱」です。

 「老化は、エピゲノムの混乱により、デジタル情報の読み出しがうまくいかなくなることでおこる」と考えるシンクレア教授は、「エピゲノムの状態を制御してデジタル情報をきちんと読み取ることができれば、老化を止めることができる」「若返りさえも可能になる」と主張しています。

 CDcompact disc)を例にすると、老化は「CD表面の傷(=エピゲノムの混乱)」に相当するものであり、「丁寧に研磨(=エピゲノムの制御)」することで、「デジタル情報を再び読み取ることができる(=若さを取り戻せる)」ということ。

読書後、「確かに『老いは治療できる病』といえる時代が到来するのかもしれない」と思いました。臨場感が上がり(V)、新たな「老=病」というイメージ(I)がリアルになったのかもしれません(R)。私の中で。

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まさにAnti-aging

老いを克服した未来にあるものは自由 !!

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/10400987.html

 

そんなヴィジョンを体感した医師としての私は、大きな希望を感じました。

https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/8045695.html

 

 

一方で、苫米地式コーチとしての私は、読書中ずっとモヤモヤ感に包まれていました。「老いは治療できる病である」と聞いて、皆さんはどのように感じますか?

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5882652.html

 

 シンクレア教授の「老化の情報理論」と認知科学者 苫米地英人博士が提唱する「超情報場仮説(理論)」の間には、間違いなく、大きな隔たりがあります。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5165789.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5165823.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5165888.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5306380.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5306438.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5306445.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5445932.html

 

 最後にLIFESPAN 老いなき世界」から引用します。その“大きな隔たり”をぜひ感じてください。それが今回のワークです。

 

 老化は1個の病気である。私はそう確信している。その病気は治療可能であり、私たちが生きているあいだに治せるようになると信じている。そうなれば、人間の健康に対する私たちの見方は根底からくつがえるだろう。

 

F-164につづく)

 

 

苫米地式認定コーチ                       

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

-追記1

 そうなれば、人間の健康に対する私たちの見方は根底からくつがえるだろう

 

 「根底からくつがえる」は、より大きなゲシュタルト構築に伴っておこります。アップルの共同創設者 スティーブ・ジョブスは、その感覚を「connect the dots」と表現しました。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6193912.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/7383761.html

 

 

-追記2

 もうひとつ、LIFESPAN 老いなき世界」から引用します

 

 老化細胞によるダメージのメカニズム

 老化細胞はよく「ゾンビ細胞」と表現される。いっそ死んでくくれればいいのに、死ぬのを拒んでいるからだ。(中略)

 老化細胞はたとえ数が少なくても、広い範囲にダメージを及ぼしかねない。分裂をやめているとはいえ、サイトカインという小さなタンパク質を放出し続けて炎症を起こし、免疫細胞のマクロファージを引き寄せて組織を攻撃させるのだ。慢性的な炎症は体に良くない。多発性硬化症や炎症性腸疾患、あるいは乾癬にかかっている人に訊いてみたらわかるはずだ。こうした病気は、すべてサイトカインが多すぎるために引き起こされる。炎症はまた、心臓病、糖尿病、認知症の引き金にもなる。エイジング(老化)に伴う病気の発症にインフラメーション(炎症)が中心的な役割を果たすことから、科学者はこのプロセスをよく「インフラメイジング(炎症性老化)」と呼ぶ。しかも、サイトカインは炎症の原因になるだけではない。生物界の黙示録さながらに、ほかの細胞までをもゾンビ化させる。こうなると、さらに周囲の細胞を刺激してがん化させ、それが広がるおそれさえ出てくる。

 引用終わり

 

 この文章を読みながら、私はドリームキラーを思いだしました。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6040935.html

 

 例えば、世界最高峰のMLBにおいても「ゾンビ細胞」のようなドリームキラーにチームが毒されたりします。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/10691753.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/10692725.html

 

 「分裂をやめている(←思考停止し進化・向上を止めている)とはいえ、サイトカインという小さなタンパク質を放出し続けて炎症を起こし(←抽象度の低い言動や権力維持のためのパワハラ等で軋轢を生みだし)、免疫細胞のマクロファージを引き寄せて組織を攻撃させる(←情動優位のファイト・オア・フライトを誘発し組織をダメにする)のだ。

 

 私は、11年の間、“老化”と戦っていたのかもしれません。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/15110477.html

 

 

LIFESPAN