F-162:コーチの視点で考察する“青春” ~心の若さと体の関係~ vol.3;サミュエル・ウルマン

 

 過去の記事で(F-157)、自分の死に自ら意味を見いだしたことで情報(心)を書き換え、その写像である物理(体)を書き換えていった高齢女性のケースを御紹介しました。

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 その様子はまさに“無我夢中”

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この場合の“無我”は「“私(我)”の定義を拡張する」という意味です。それは「抽象度を上げる」と同義。

 抽象度が上がるほど、情報的に大きな存在になることができます。情報的に大きな存在になるほど、未来志向で優しく書き換えることができるようになります。本当は“私”である他人も。もちろん、“私”自身の心身も。

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 実際に、「死後も役に立てる」という希望を感じた患者さんは、「うれしい~」という言葉とともにどんどん回復していきました。まるで“奇跡”のように。

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 キーワードは「社会性」「利他(unselfishness)」です。

その上で重要なのは行動することではなく、ゴールを設定し、ブリーフシステムを書き換えて、その結果として行動につなげること(つながること)。

その過程で、人は“若さ”を取り戻し、その“若さ”を維持し続けます。“青春”にホメオスタシスが働くから。


 

 前々回(F-160)はPanasonicの創業者 松下幸之助さんの座右の銘を、前回(F-161)はフリードリヒ・ニーチェの言葉を紹介しました。

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24076595.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/24140969.html

 

 今回は過去のブログ記事でも紹介したサミュエル・ウルマン(Samuel Ullman1840~1924年)の「青春(Youth)」を取り上げます(「青春の詩」とも訳されています)。

 じつは、松下幸之助さんの座右の銘を生んだ“あるヒント”とは、この詩のことです。

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 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/23108517.html

 

 

YOUTH(青春)

青春とは人生の一時期のことではなく心のあり方のことだ。

若くあるためには、創造力・強い意志・情熱・勇気が必要であり、安易(やすき)に就こうとする心を叱咤する冒険への希求がなければならない。

人間は年齢(とし)を重ねた時老いるのではない。理想をなくした時老いるのである。

歳月は人間の皮膚に皺を刻むが情熱の消失は心に皺を作る。悩みや疑い・不安や恐怖・失望、これらのものこそ若さを消滅させ、雲ひとつない空のような心をだいなしにしてしまう元凶である。

六十歳になろうと十六歳であろうと人間は、驚きへの憧憬・夜空に輝く星座の煌きにも似た事象や思想に対する敬愛・何かに挑戦する心・子供のような探究心・人生の喜びとそれに対する興味を変わらず胸に抱くことができる。

人間は信念とともに若くあり、疑念とともに老いる。

自信とともに若くあり、恐怖とともに老いる。

希望ある限り人間は若く、失望とともに老いるのである。

自然や神仏や他者から、美しさや喜び・勇気や力などを感じ取ることができる限り、その人は若いのだ。

感性を失い、心が皮肉に被われ、嘆きや悲しみに閉ざされる時、人間は真に老いるのである。そのような人は神のあわれみを乞うしかない。

                        「80歳の年月の高見にて」より

 

 

青春とは人生の一時期のことではなく心のあり方のことだ

 原語では「Youth is not a time of life, it is a state of mind」です。ここで抽象度という重要な概念を踏まえると、timestateを明確に分けて考えることができます。

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 青春とは、物理空間における「時間(time)」ではなく、情報空間での「状態(state)」である つまり、青春とは情報次元にあるということ。

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 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654230.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4654316.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/4831442.html

 

 コーチングでいうと、「青春とは、ゴール設定の結果」。釈迦哲学でシンプルに表現すると「縁起」です。「ゴール設定という因により、果として青春になる(青春でいられる)」という感じでしょうか。

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若くあるためには、創造力・強い意志・情熱・勇気が必要であり、安易(やすき)に就こうとする心を叱咤する冒険への希求がなければならない

 「創造力」「強い意志」「情熱」「勇気」はすべてゴール設定の結果です。ゴール側のコンフォートゾーンの臨場感が高まるほど(=「冒険への希求」)、それらはさらに強大になっていきます。

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 ホメオスタシス・フィードバックがより強力に働くからです。

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 「安易(やすき)に就こうとする心を叱咤する冒険への希求」を可能とするのは、「さらなるゴール設定(更新)」です。私はその「さらなるゴール設定」の秘訣となるものはゴールのバランスホイールであると思っています。

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人間は信念とともに若くあり、疑念とともに老いる

 疑念や迷いがあると、RASが「疑わしいもの」を拾い上げ、事実(データ)や根拠(ワラント)をスコトーマに隠してしまいます。

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 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html

 https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/12340209.html

 

その「疑わしいもの」ばかりを認識している状態が「疑心暗鬼」。そんな“心のあり方”は、ますます不安や恐怖を増幅してしまいます。

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そんな疑念に対して信念が取り上げられていますが、ニーチェが指摘していたとおり、この部分は注意が必要です。

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信念とはブリーフシステム(BS)と呼ばれる情報処理のパターンのこと。

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 通常は他人や社会の価値観の影響を受けた過去の記憶(それも失敗の記憶)によってつくられています。よって、多くの人がじつは「無人運転」であり、よくて「自動運転」です。

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自信とともに若くあり、恐怖とともに老いる

 コーチングにおける「疑念や恐怖に打ち克つための自信」とは、過去の実績に裏付けされたconfidenceのことではありません。根拠(warrant)をまったく必要としないゴール達成の確信です。

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そのゴールを達成した未来の確信を「エフィカシー(efficacy)」と呼びます。

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エフィカシーは、正確には「自分のゴール達成能力の自己評価」のこと。よって、根拠はいりませんが、ゴールは絶対に必要です。もちろん、1)100%want toで、2)自分中心を捨てた、3)“現状の外”にあるゴール。

 そのようなゴールが人生のあらゆる領域にちりばめられていること(バランスホイール)でますますエフィカシーが高まり、高まったエフィカシーがさらなるゴール設定(更新)を可能にします。

 では、ゴールはなぜ生じるのでしょうか?

 

 

希望ある限り人間は若く、失望とともに老いるのである

 答えは「希望がある」から。

早いもので、もう四半世紀以上も医療や介護の現場で働いています。その間ずっと感じていることが“希望/HOPE”の重要性。

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多くの先人が述べているとおり、私も、医師として、“希望/HOPE”こそが若さや健康の源泉であることを確信しています。

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そして、その“希望/HOPE”をひろげ、次の世代に手渡したいと願っています。それが苫米地式コーチとしての私のゴールのひとつです。

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苫米地式認定コーチ                       

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

-追記-

無常を認められないことが健康や死に関する苦しみの原因であると考える私は、「アンチエイジング」という言葉は好きではありません。一方で、「心のアンチエイジング」はしっかりと心がけたいものだと思っています。

 

最近、「老いは治療できる病気である」「もはや老いを恐れる必要はない」と主張(claim)する衝撃的な本を読みました。次回以降(F-163~)、読後に医師&コーチとして考えたことをまとめます。

 

 

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青春という名の詩