F-148:トリアージ(triage)をコーチの視点で考える vol.3;トリアージの問題点/課題
<中編>
私は2007年から11年間にわたって病院長を務め、その間に300回の研修会を開催しました。今回御紹介するのは、コーチングを導入しようと奮闘していた院長時代に作成したもの。テーマは「トリアージ(triage)」です。
(実際には“奮闘”ではなく“粉砕”しましたw)
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/15110477.html
2008年(苫米地理論と出会う前)に作成後2011年(苫米地理論と出会った後)に作り直したものをベースに、さらに2020年(認定コーチ6年目)の視点で「connect the dots」したいと思います。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/7383761.html
vol.1;トリアージとは?
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/23110775.html
vol.2;トリアージの問題点/課題 <前編>
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/23211097.html
vol.3;トリアージの問題点/課題 <中編>
…このように厳しい状況下でのトリアージには、「最大数の命を救うために、全ての命を救う努力を放棄する」という決断が求められます。医療者は、限られた時間の中で、究極の判断をしなければならないのです。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/14120540.html
ここで厳しい状況下でのトリアージについて、違う表現でまとめます。
1)
手を尽くしても助けられない人には何もしない
2)
放っておくと死ぬけれども、すぐ手を尽くせば助かる人をまず最初に治療する
3)
放っておくとよくないが、とりあえず少しは待てる人を次に
4)
放っておいても死なない人は後回し
繰り返しますが、災害医療は、通常の医療とは大きく異なり、限られた資源(医薬品、医療従事者等)で多くの患者(負傷者)を診なければなりません。よって、冷たいようですが、どうしても“見捨てられる患者”が生じてしまいます。
ここで問題です。
Q1:“見捨てられる患者”が生じることは、「仕方がない」と受け入れ、諦めるべきなのでしょうか?
Q2:トリアージを行う者は何をよりどころにすればいいのでしょうか?
Q3:「限られた資源で多くの患者を診なければならない」 …このフレーズを聞いて何か思い当たりませんか?(F-149で考察)
Q4:下記の表現に潜む問題点(課題)とは何でしょうか? (F-150で考察)
1)
手を尽くしても助けられない人には何もしない
2)
放っておくと死ぬけれども、すぐ手を尽くせば助かる人をまず最初に治療する
3)
放っておくとよくないが、とりあえず少しは待てる人を次に
4) 放っておいても死なない人は後回し
…それではコーチの視点で考察していきます。
Q1:“見捨てられる患者”が生じることは、「仕方がない」と受け入れ、諦めるべきなのでしょうか?
A1:最初に「『仕方がない』と受け入れる」ことはとても重要です。なぜなら、「全員を助けることはできない」という厳しい状況では、医療者自身がファイト・オア・フライトに陥りやすくなるから。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/8164566.html
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/8166289.html
ファイト・オア・フライトの状態とは、簡単にいうと、心身ともこわばった状態。前頭葉前頭前野よりも大脳辺縁系の方が優位になるため、IQが一時的に下がり(「頭が真っ白」「思考がまとまらない」「怒りっぽくなる」など)、普段は簡単にできることができなくなります(「粗暴」「乱雑」「ミスが増える」など)。
それは抽象度が下がった状態。脳の機能でいえば、人間的な社会的情動(感性)または論理のレベルから、動物的な情動処理レベルに一時的に退化してしまった状態です。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/14107083.html
そんな状態では助けられる命も助けられなくなります。だから、まず「『仕方がない』と受け入れる」ことで、自らがファイト・オア・フライトに陥らないようにする(すぐに脱する)必要があるのです。「厳しい状況の中で最大数の命を救う」ために。
コーチとしてしっかり言い換えると、「最大数の命を救う」をゴールにし、「厳しい状況」をコンフォートゾーンに変えてしまう感じです(さらに詳しくは追記で)。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5615935.html
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6040892.html
「『仕方がない』と受け入れる」ことはとても重要
…しかしながら、受け入れることはOKでも、諦めることはNGです。諦めた瞬間に「もっと救える可能性」がスコトーマに隠れてしまいます。そればかりか解決(改善)のためのエネルギーと創造性を失い、上方修正することができなくなります。現場の状況は刻一刻と変わっていくのに。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5721610.html
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5882609.html
では、「とりあえず受け入れるが、決してあきらめない」ためにはどうすればいいのでしょう?
…その答えはQ2への回答と同じです。
Q2:トリアージを行う者は何をよりどころにすればいいのでしょうか?
A2:ポイントは「不完全性を忘れることなく思考し続け、ゴールを再設定し続ける」こと。つまり、大乗仏教でいう「空(くう)」をよりどころにするのです。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6194669.html
「空」を理解しているからこそ、厳しい状況の中に希望を見いだすことができます。
「空」を体感しているからこそ、“現状の外へ新たなゴールを設定し続けることができます。
「空」だからこそ、リミッターをはずし、潜在能力をフルに発揮することができます。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/8045695.html
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6353367.html
…これらは私が苫米地式認定コーチとして医療・介護現場にコーチングを届け続けている“よりどころ”でもあります。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/14833876.html
(F-149につづく)
苫米地式認定コーチ
苫米地式認定マスターヒーラー
CoacH T(タケハラクニオ)
-追記1-
本文中に「コーチとしてしっかり言い換えると、『最大数の命を救う』をゴールにし、『厳しい状況』をコンフォートゾーンに変えてしまう感じです」と書きました。
さらに詳しく述べると、「最大限の命を救う」はエンドステートに相当します。エンドステート、アサンプション、コース・オブ・アクションについて、苫米地博士の著書「コーポレートコーチング(下)」を参考に下記記事にまとめています。「不言実行」がテーマです↓
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/14973460.html
-追記2-
今回は「厳しい状況下でのトリアージ」をテーマにしていますが、その“状況”自体はどんどん変化していきます。私が医療・介護現場で行う研修では、その“状況”の変化を「レジリエンス」の枠組み(ゲシュタルト)で捉えることを提案しています(「重要度&緊急度によるマネジメント」も)。
①
Normal
Operations ←継続的なモニタリング :第二領域「重要不急」
②
Shock&Cascading ←最低ラインの確保 :第一領域「重要緊急」
③
Recovery
Phase ←準平常ラインの設定 :第一から第二領域への移行期
④
Restoration
Phase ←さらに高いラインに回復 :第二領域「重要不急」
「バラいろダンディ」(東京MX、2019年11月4日放送回)より引用
https://www.youtube.com/watch?v=CZyGvCXnCGI
御興味のある医療・福祉関係者の皆さまは、下記メールアドレスに御連絡ください。
(今後、セミナーや研修はオンラインで行う予定です。ただ今準備に奮闘中ですw)
連絡先:coachfor.m2@gmail.com
-関連記事-
□
F-140~:不要不急
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/cat_400247.html
□
S-02~:自由に生きるために ~マナー、ルール、モラルについて考える~(目次)
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/17563396.html
□
S-03~:心のエネルギーとは何か? ~カナックス事件に学ぶ“心のエネルギー”をコントロールする方法~(目次)
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/19879680.html
コメント