F-142:不要不急 vol.3;レジリエンス <ワーク付き>
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のため、今春(2020年)、日本中が自粛ムードに包まれました。にぎわいが消えた町の様子はまさに「沈黙の春」のよう。自粛期間中、よく耳にしたのが「不要不急」という言葉でした。
その「不要不急」について考えてみたいと思います。シリーズでお届けします。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/22636357.html
vol.1;重要度と緊急度 <ワーク付き>
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/22705015.html
vol.2;「不要不急」や「重要緊急」を決めるもの
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/22775911.html
レジリエンス(resilience)という概念を御存知でしょうか?
…レジリエンスは物理学の用語で、「外力による歪み」を意味するストレスに対して、「ストレスを跳ね返す力」の意味で使われています。
そこから心理学の世界にひろがり、「社会的ディスアドバンテージや己に不利な状況において、そういった状況に自身のライフタスクを対応させる個人の能力」を表す言葉として用いられるようになりました。
シンプルにいうと「自発的治癒力」。それは「脆弱性(vulnerability)」の反対概念であり、「精神的回復力」「抵抗力」「耐久力」とも訳されています。
(そして現在は、安全保障の基本概念としても用いられています)
余談ですが、私がレジリエンスという言葉をはじめて聞いたのは、認知科学者 苫米地英人博士のセミナーでした。といっても、セミナー受講時はまったく意識にあがっていませんでした。それからしばらく経った後、過去のノートを見返しているときに「レジリエンス」と書き込んでいるのを見つけました。衝撃でした。つい最近知ったと思っていた言葉を、ずいぶん前に教わっていたのですから。改めてスコトーマの怖さを体感しました。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5721610.html
苫米地博士は、レジリエンスを、「有事の際に迅速にリカバーし、元より強固になることができる性向」といった意味で使われています。古い言い回しを用いると、「転んでもただでは起きぬ」というブリーフシステムです。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5721531.html
そのレジリエンスの大前提は「ゼロトラスト」。これは「完全に守ることは不可能という認識」を示します。「無常」で知られる縁起の思想はもちろんのこと、不完全性定理以降の西洋哲学においてもとても重要な概念です。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6353044.html
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6194669.html
今回のCOVID-19でいうと、「今までそんなことはなかった。だから、これからもおこりえない」と考えてはいけないということ。「可能性は低い。だから対策はたてなくていい。準備はしなくていい」と安心してはいけないということ。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/13628746.html
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/14120540.html
繰り返しますが、レジリエンスの大前提は「ゼロトラスト」。
その上でポイントとなるのが下記の4つです。
①
平常状態の継続的なモニタリング
②
最低ラインの確保(平常状態を有事に確保するのは現実的ではないという認識)
③
できるだけ迅速にリカバーできる準平常ラインの設定
④
準平常ラインから元々の平常ラインよりさらに高いラインに回復する構造
この4つのポイントに、苫米地博士が出演されている「バラいろダンディ」(東京MX、2019年11月4日放送回)内での講義時に使用された用語(下図)を重ねると、
①
Normal
Operations ← 継続的なモニタリング
②
Shock&Cascading ← 最低ラインの確保
③
Recovery
Phase ← 準平常ラインの設定
④
Restoration
Phase ← 元々の平常ラインよりさらに高いラインに回復する構造
…となります。
「バラいろダンディ」(東京MX、2019年11月4日放送回)より引用
https://www.youtube.com/watch?v=CZyGvCXnCGI
さらに、このシリーズのテーマ「不要不急」と関連する重要度と緊急度を軸とした4つのカテゴリー分類を重ねると、
①
Normal
Operations ←継続的なモニタリング
:第二領域「重要不急」
②
Shock&Cascading ←最低ラインの確保
:第一領域「重要緊急」
③
Recovery Phase ←準平常ラインの設定
:第一から第二領域への移行期
④
Restoration
Phase ←さらに高いラインに回復
:第二領域「重要不急」
…となります。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/22705015.html
次回(F-143)は各フェースでのマインドの在り方(作り方)を取り上げます。高い臨場感で考えていただくためにワーク(宿題)をご用意しましたw
<転倒骨折事例でレジリエンス各フェースのポイントを考えるワーク>
医療・介護現場で起こりえる下記事例において、各フェースでどんなことを行えばいいか考えてください(医療・福祉従事者もそうではない方も、自由な発想を楽しんでくださいw)
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/22599317.html
<事例>認知症によるBPSD(Behavioral
and Psychological Symptoms of Dementia …以前は周辺症状と呼ばれていた暴力、不潔行為、幻覚、せん妄などの行動・心理症状)として徘徊が目立っていた高齢男性患者さんが肺炎のため入院しました。
幸い呼吸状態は改善しましたが、治療の間に下肢筋力が低下してしまいました。歩行はとても不安定でしたが、病識がなく徘徊しようとするため転倒の危険が高まっていました。
そこで病院は転倒事故防止のために腰ベルトを用いた車イス離床を行うことを提案しました。ところが「親父を縛りつけるのか!」と家族が強く反対するため、なかなか実行できないでいました。そうこうするうちに患者さんが転倒してしまい、大腿骨頸部(太ももの骨の付け根)を骨折してしまいました。
担当者は御家族に連絡し、丁寧に説明しました。すると、「骨折とはどういうことだ!この病院の安全管理はどうなっているんだ!! 責任者を出せ!!! 」と怒りまくっています。
そのキレ方があまりにも激しいので、担当者はとてもショックを受けました…
Q1:大前提となる「ゼロトラスト」は?
Q2:各フェース(①~④)での取り組みを考えてください
①
Normal Operations ←継続的なモニタリング
:第二領域「重要不急」
②
Shock&Cascading ←最低ラインの確保
:第一領域「重要緊急」
③
Recovery
Phase ←準平常ラインの設定
:第一から第二領域への移行期
④
Restoration
Phase ←さらに高いラインに回復
:第二領域「重要不急」
(F-143につづく)
苫米地式認定コーチ
苫米地式認定マスターヒーラー
CoacH T(タケハラクニオ)
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