F-136The Sweet Hello, The Sweet Goodbye -8SadSweetに書き換えるコーチング<老人向け 前編>

 

過去の記事(F-128)で、スウェーデンの男女デュオ ロクセット(Roxette)のボーカル マリー・フレデリクソン(Marie Fredriksson)を取り上げました。最後に御紹介したのは「The Sweet Hello, The Sad Goodbye」という曲。

内科医としての私が医療・福祉の現場で経験するのは「The Sad Goodbye」ばかり。でも、苫米地博士に学ぶ今は、「ヒーリング&コーチングで『The Sweet Goodbye』を実現できる」と信じています。

今回は、その「The Sweet Goodbyeを実現するために」がテーマです。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/21580684.html

 

 1不安に襲われる若者、希望を失う老人

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/21892496.html

 2The Sweet Goodbye」とは?(ワーク付き)

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/21970436.html

 3SadSweetに書き換える準備となるヒーリング<若者向け>

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/22043888.html

 4SadSweetに書き換えるコーチング<若者向け>

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/22117623.html

 5SadSweetに書き換える準備となるヒーリング<老人向け 前編>

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/22194084.html

 6SadSweetに書き換える準備となるヒーリング<老人向け 中編>

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/22259321.html

 7SadSweetに書き換える準備となるヒーリング<老人向け 後編>

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/22335910.html

 

 

vol.5F-133)で私はこのように書きました。

老人の場合、元気を失っていくのは身体面(身体的苦痛)ばかりではありません。若者以上に精神面が落ち込んでいきます(心理・精神的苦痛)。その代表が思考にも関係するドーパミンです。一般的には10歳老いるごとに10%のドーパミンニューロンが死滅するといわれており、年を重ねるごとに物理空間での身体の運動と同じように情報空間での思考のスピードが遅くなっていきます。

そこに退職や引退による社会的機能・役割の喪失、友人や家族など身近な者との別れといった社会的喪失が重なっていきます(社会的苦痛)。やがて「自分もいつかは死ぬ」ことを感じはじめると、スコトーマが外れ、突然「自分の存在や意味」が突きつけられていることに気づくのです。

その時、衝撃とともに感じる苦しみが「スピリチュアルペイン」。本当は思春期から青年期にかけて生じていますが、いつの間にか感じなくなっていた(スコトーマに隠れていた)根源的な痛みです。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/8293317.html

 

 前回(vol.7/F-135)は、そんなトータルペイン(全人的苦痛)に苦しむ老人のためのヒーリングとして、1)若い頃からコーチングに取り組み“超自我”の境地に到達する、2)“超自我”の境地に達した人と情報空間(“場”)を共有する(=ホメオスタシス同調)、という2つの方法を御紹介しました。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/22335910.html

 

 このシリーズの最後は老人向けのコーチングです。暗中模索していた私が“答え”にたどり着いたきっかけ(F-136)と、現在実践している老人向けコーチングの具体例(F-137)についてまとめます。

 

 「老人に対してどのように向き合えばよいのだろうか?」という疑問は、苫米地博士に学ぶずっと前から抱えていたものであり、なんとしてでも解決したい課題でした。医師として、ヒーラーとして、老病死に苦しむ人々と日々関わりを持ちながら、どのような働きかけを行うべきかいつも悩んでいました。コーチングを学ぶようになってからは、それをうまく診療に応用できないか模索していました。

しかし、なかなかうまくいきませんでした。若者向けのコーチングで私がまず説明するロジックが使えない(通用しない)からです。そのロジックとは、「時間は未来から過去へと流れる」という時間観に関するもの。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6542317.html

 

老人の場合、未来、すなわち残された時間に限りがあることを、誰もが痛切に実感しています。本当は気づかないままでいたいことが、老いや病を自覚するたびに、あるいは縁ある者を失うたびに、顕在化していく(スコトーマが外れる)からです。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5721610.html

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/8045953.html

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/8164566.html

 

 どんどん残り少なくなる未来としっかり向き合ったまま、もっとはっきり表現すると確実に近づいてくる死を直視した上で、「このままでは達成できない何かをゴールとして設定する」というのはかなりの胆力を必要とします。身体ばかりでなくトータルで苦痛が増大している状況では、ゴール設定を促すほどhave toになってしまう危険が生じます。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5615935.html

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5882609.html

 

 老人へうまくコーチングを行うために、いったいどうすればよいのだろう?

 

そんな私の悩みを解決してくださったのは、やはり師である苫米地博士でした。週刊女性での連載「3分で幸せになるための『知恵力』ドリル」中の文章に大きなヒントがありました。以下、第49回「年をとるって、どういうこと? 人間は老いとどう付き合っていったらいいの?」から引用します。

 

 年をとるということは、未来が感じられなくなることです。老人とは、未来が短い人たちのことです。

 若者は、20年先30年先、どうしていたいかを考えなければなりませんよね。しかし、老人は違います。3年後5年後に自分はどうなっているか、が重要となります。現状を最適化することが目標になるのです。家にたとえるならば、リフォームをしようとする。引っ越しはしたくない、ということです。

 一方、人間は若いころは、現状の外側に最適化を考えます。だから親元を離れたり、目標を探したりするのです。つまり、未来がない人たちの考え方を、「保守的だからダメだ!」と言ってしまうのは、ちょっとかわいそうともいえます。

 ここで「やっぱり年をとりたくないわ」と思った方。ちょっと待ってください。年をとるということは決して悪いことではありません。認知科学の見地からお話ししましょう。

 あなたがいま見ている、目の前の現実とは、すべて記憶からできています。20歳と70歳とでは50年分の記憶の差があります。ということは、老人の見ている現実のほうが、若者よりもはるかに豊かなのです。わかりやすくいうと「ここには昔こんな建物が建っていた」といった、これまでの人生で見聞きしてきた“歴史”が加わるのです。これは、若者がどれだけ知識を持っていたとしても、年齢を経ている人間にはかないません。見えている現状に、深みがないのです。ですから、現状ではない違うところ、例えば新しい形態の職業を作ろうとしたり、外国などの新天地に夢を見ます。老人は、夢を見る必要がないくらい、記憶を持っていますし、若者よりもはるかに豊かな現状を見ているので、新たな現状を作る必要がないのです。

 いわば、その記憶を大切にしつつ、若者のようにいつまでも目標を持っていれば、素晴らしい人生を送ることができるということです。

 これを知ると、年をとることは決して嫌なことではないと思えると思います。

 引用終わり(続きは追記で)

 

 老人は夢を見る必要がないくらい記憶を持っていますし、若者よりもはるかに豊かな現状を見ているので新たな現状を作る必要がない

 

 ということは、前回書いた“超自我”の境地はもちろんですが、そこに至る過程の豊かな記憶そのものが、老人にとっての「The Sweet Goodbye」の要因になるといえます。さらに、その老人の情報場(豊かな記憶で構築された世界)を縁ある人々が共有することで、その“豊かさ”は世代を超えてひろがっていくはずです(=ホメオスタシス同調)。親(祖父母)世代の「The Sweet Goodbye」が子(孫)世代の「The Sweet Hello」を優しくサポートすると、子(孫)世代はさらなる“現状の外”へますます飛びだせるようになります。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6353044.html

 

 よって、老人向けコーチングのポイントは、「『豊かな記憶で構築された世界』の再発見(再認識)&共有」と考えることができます。

 

次回(F-137/vol.9)は、このシリーズの最終回。老人の情報場(豊かな記憶で構築された世界)を縁ある人々と共有する方法を紹介し、具体的な実践例を報告します。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5306445.html

 

F-137につづく)

 

 

苫米地式認定コーチ                       

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

-追記-

以下、本文中の引用文の続きです。

 

 そしてもうひとつ。実は脳の寿命はだいたい200年と推測されています。つまり、臓器や骨などをメンテナンスし続ければ、人は200年は生きられるということです。そうなると、いつからが高齢者かという考え方もあいまいになり、80代でも、これまでの若者のように30年以上先を考えなければならなくなります。「若者」「老人」という概念そのものが、根本的に変わっていく可能性もあるのです。

引用終わり

 

 このシリーズは「ヒーリングとコーチングを行う上での『若者向け』と『老人向け』のポイント」をテーマに書き綴っていますが、苫米地博士はその「若者」「老人」という定義(概念)そのものが「根本的に変わっていく」ことを想定されています。ディベートでいう「カウンターワラント(Counter Warrant)」です。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/13076426.html

 

 これが抽象度の高い思考です。その高次の意識状態が、「誰も想像(I)したことがない未来を創造(R)すること」を可能にします。そして、つながる(縁ある)人々の意識をどんどん引き上げます。より高い抽象度次元へと。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6542364.html

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/cat_393431.html