Q-124:190919リスクマネジメント研修会(医療法人、鹿児島県)Q&A -03
2019年9月、鹿児島県の医療法人にて、「リスクマネジメント」をテーマとした研修を行いました。タイトルは「すべてはマインド(脳と心)が生みだしている ~イヤな気持ちをエネルギーと創造性に変える科学的方法~」です。
研修内容はこちら(Q-122)↓
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/21034051.html
研修後のアンケートにはたくさんのコメントをいただきました。ありがとうございます。
アンケート結果概要(Q-123):
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/21141120.html
いただいた御意見・御質問に回答いたします。まずは「印象に残ったもの」です。
・ファイト・オア・フライトを防ぐリスクマネジメント(複数回答)
・ファイト・オア・フライトという言葉。自分の経験を思い返すとよくある気がする
A:人は進化の過程で前頭前野での思考を手に入れました。
平常時は、本能的な情報処理を行う大脳辺縁系の活動より、高度な情報処理を行う前頭前野の方が優位に働いています。
ところが、いったん危機に瀕すると「ファイト・オア・フライト(Fight or Flight)」という「戦うか、それとも逃げるか」という心理状態に陥ります。例えば「頭の中が真っ白になる」というような状態です。さらには体もこわばり、ふだんどおりのパフォーマンスができなくなってしまいます。
「一時的に動物(獣)レベルに退化する」「心身ともにこわばってしまう」 …それが「ファイト・オア・フライト」です。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/8164566.html
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/8166289.html
米国CDC(Centers for Disease Control and Prevention、疾病予防管理センター)が公表している「Psychology of a Crisis」中に、危機に瀕した時の行動(Negative Behavior)として、4つの行動(症状)が記載されています。
その一つが「不必要な対処を求める(Demands for unneeded treatment)」というもの。
仏教でいう四苦のうち、特に「老」「病」「死」の臨場感が高いのが医療や福祉の現場です。
スコトーマが外れることで「老いる悲しみ」「病による苦しみ」「死に対する恐怖(不安)」を実感してしまった患者さんやその家族は、容易に「ファイト・オア・フライト」に陥ってしまい、つい「不必要な対処」を要求してしまいます。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5721610.html
そんな現場で働く医療・福祉従事者には、自分自身が「ファイト・オア・フライト」に陥らない(素早くリカバーする)ことが求められています。ベストを尽くすために、そして自分自身を守るために。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/8166400.html
・ファイト・オア・フライトがとても印象に残った。イライラした時にまず一呼吸おけたらと思う
A:…では、自分自身が「ファイト・オア・フライト」に陥らないために、そして他者を「ファイト・オア・フライト」の状態から救いだすために、私たちは何をするべきなのでしょうか?
…その答えが、御指摘の「ひと呼吸おく」です。
「ひと呼吸おく」ために、私はCDCのガイドラインを再確認することを勧めています。ガイドラインには、「平常心を取り戻す方法」として、下記の4つの基本原則が記載されています。
〇最初に最悪の可能性を伝える
〇状況の不確実性を伝え、問題を解決するプロセスについてのみ言及する
〇プロセスが進んでいることを伝えるため、データや数字を継続的に提供する
〇恐怖を認め、問題に関する文脈情報を与える
それらの基本原則を復習(復唱)しながら「ひと呼吸」おき、ガイドラインに沿った対応をイメージすることに取り組んでください。必ずイメージどおりにいくとは限りませんが、未来のイメージが不明瞭なままでは解決に導くことはできません。
コーチングでいう「I×V=R」の実践です。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6542364.html
・「ファイト・オア・フライト」被害者から加害者になりうる …自分の心を強く持ち続けるように日々頑張る
A:目の前の世界は失敗の合成です。しかも、そこには情動がべったりと張り付いています。辛い、苦しい、悲しい、悔しい、憎いといったネガティブな情動や怒りなどです。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/13397552.html
みんな最初は被害者です。大人になるまでの間にたくさん心に傷を負い、その心の傷(ネガティブな情動が張り付いた記憶)がブリーフシステムとなって生みだしたイヤな世界の中で、ますます心に傷を負っていきます。大人になってからも。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/10114934.html
みんな最初は被害者
…しかし、「ファイト・オア・フライト」の状態が続くうちに、やがては自分自身や縁ある人たちを傷つける加害者へと変貌していきます。人間らしさの源である前頭前野よりも、動物的な脳である大脳辺縁系が優位な状態がずっと続くからです。ますます易怒的、攻撃的、他罰的となり、まわりが見えず、未来を豊かに想像することができない状態が続きます。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6353044.html
大切なのは「自分で自分の生き方を選択する」こと。そして、「自身の選択に責任を持つ」ことです。私は、責任が覚悟となり、やがてエフィカシーへと変わっていくと信じています。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5616012.html
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/19033189.html
「心を強く持ち続ける」ことがゆるぎない自己イメージとなった時、「日々頑張る」必要はなくなります。ホメオスタシスが「心を強く持ち続ける」ことを勝手に維持してくれるからです。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/4831660.html
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/4971818.html
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/4971956.html
・ファイト・オア・フライト …(転倒の)リスクが起きる。正直、利用者に対して「何で?」と思ってしまうことがあります。今日の講義を聞いて、「私は逃げていたのかな?」って思いました。これからちゃんと落ち着いて行動ができるようにいったん考えて行動していきたい
A:念を押しますが、「ファイト・オア・フライト」が問題なのは、前頭前野が働かなくなり、ベストパフォーマンスができなくなるからです。戦ったり(ファイト)、逃げたり(フライト)することそのものが悪いわけではありません。
「私は逃げていたのかな?」と内省する際には、同時に「私のゴールは何か?」をしっかりイメージしてください。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5615935.html
本当はゴールに近づくチャンスだったのに「逃げた」と思う時は、「私らしくなかった。次は○○している」とセルフトークしながら自己イメージを修正してください。時間は未来から過去に向かって流れています。Next chance!
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6542317.html
(Q-125につづく)
苫米地式認定コーチ
苫米地式認定マスターヒーラー
CoacH T(タケハラクニオ)
-追記-
コーチング実践者向けに2点追記します。
「自分の心を強く持ち続けるように日々頑張る」には強制的動機(have to)が潜んでいます。「頑張る」「努力」「根性」といった言葉がよぎるときは、いったん立ち止まり(「止観」の止)、ゴールを再確認してください(「止観」の観)。モチベーションはいつも100% want toです。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5882609.html
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/19980130.html
「これからちゃんと落ち着いて行動ができるようにいったん考えて行動していきたい」はセルフトークの第3段階(誓い)です。次の第4段階(新しいイメージについてのセルフトーク)に到達することで、ゴールの世界に向けてRASがオープンになり、スコトーマが外れます。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5721658.html
セルフトークの4ステップについては、下記ブログ記事を参照してください↓
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/19152931.html
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