F-121:「あぁ生まれてきてよかったな」で思いだす一例

 

 映画「男はつらいよ」を取り上げた前回のブログ記事(F-120)で、主人公 寅さんのこんなセリフを紹介しました。

 

あぁ生まれてきてよかったな、って思うことが何べんかあるじゃない。そのために、人間、生きてんじゃねえのか

 

 1987年12月に公開されたシリーズ39作目「男はつらいよ 寅次郎物語」において、甥の満男に「伯父さん、人間は何のために生きているのかな?」と問われたときの答えです。

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 人間は何のために生きているのか?

 そして、なぜ死ななければならないのか?

 

 

 …医療・福祉の現場で働いていると、そんな問いを突き付けられることが少なくありません。それらの問いは“私”という存在の根底にある“痛み”の表出だといえます。スピリチュアルペインです。

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 思えば子どもの頃から、私は誰かが苦しむ場面に遭遇するのがたまらなくイヤでした。

 「しつけ」と称する暴言・暴力を浴び続けたせいで、痛みや苦しみに敏感になっていたのかもしれません。

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そんな私のブリーフシステムを “炎の行者”が命懸けで炎に向き合う姿が書き換えていったのでしょう。最福寺 池口恵観先生との御縁にはとても感謝しています。

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http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6854577.html

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恵観先生から学んだ「抜苦与楽」のイメージは、苫米地式のマスターヒーラーやコーチとして果たす機能として“現実化”しました。

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あぁ生まれてきてよかったな、って思うことが何べんかあるじゃない。そのために、人間、生きてんじゃねえのか

 

 …「あぁ生まれてきてよかった」と心の底から思えるのは「誰かの役にたった時」。

それは前頭前野が発達した人間のみが(おそらく)感じることができる幸せです。たとえ結果が伴わなかったとしても、「役に立ちたい」と願い行動し続けたこと自体が人を元気にしていきます。「役に立ちたい」という思いの中に希望が存在するからです。

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 私が実際に経験したケースを御紹介します。

 (プライバシー保護のため、一部変更を加えてあります)

 

 離婚した直後に脳出血を発症した40代の男性は、初診時は心を完全に閉ざしていました。重度の左半身の麻痺のため寝たきりの状態で、食事など生活動作すべてに介助が必要でした。特に若い看護師や介護士に対しては横柄で、思い通りにいかないと怒って大声で叫んだり、反対にふさぎ込んで食事を拒否したりするなどの行動が続きました。「ファイト・オア・フライト」の状態です。

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 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/8166289.html

 

 当初は主治医である私のことも拒絶し、本心を語ることはありませんでした。しかし、ある話題をきっかけに状況が大きく変わりました。その話題とは「母親への思い」。

 

 一緒に入院する患者さんの平均年齢は80歳前後でした。親世代の人たちと一緒に入院生活を送り、反対に自分の親が他の患者さんの子ども世代の人たちと同じように介護してくれることがとても辛く、そして申し訳ないようでした。

「今後どうなってしまうのか」という不安・恐怖(Fear)、「むしろ自分が親の世話をしないといけない(のに)」という義務感(Obligation)、そして「親に迷惑ばかりかけて申し訳ない」という罪悪感(Guilty)…

それらが霧(FOG)を生みだし、その男性の希望や生きる喜びを隠してしまっていました。

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 ある日、母親から「子どもたちに絵本を読み聞かせているときが一番幸せそうだった」と伺いました。そこで、ともに生活する入院患者さんや面会に来る(他の患者さんの)孫たちのために絵本の読み聞かせをしてはどうかと提案しました。

嫌々ながらも読み聞かせをしてみた男性は、喜ぶ患者さん達の姿に何かを感じたようでした。おそらくゴール(になりえるもの)を見つけたのでしょう。

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 その後リハビリにも積極的に取り組むようになり、入院当初は短時間の座位保持さえ難しかったのがみるみる改善していきました。さらに、厳しめの目標だったベッド⇄車椅子間の移乗や車椅子での移動も自立していきました。

絵本の読み聞かせも大反響です。皆から喜ばれることでますます明るくなった患者さんは、なんと車椅子で病棟を見回りしてくれるようになりました。まるでスタッフのように。

 建設的動機(want to)と強制的動機(have to)の生産性の差は756倍といいますが、医療・福祉の現場でもその圧倒的な差を実感します。例えば、このケースのような回復力という形で。それは生命本来の力、すなわち生命力の表れなのでしょう。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5882609.html

 

 ある日、すっかり定番化した絵本の読み聞かせ会に母親も参加しました。イキイキとした息子がまわりを喜ばしている姿を優しく見つめながら、「むしろ病気前より元気になっている。こんな息子の姿をまた見られるなんて… ほんと生きていてよかった」と泣いていました。

 

 後で母親のコメントを伝え聞いた患者さんは、自分こそ「生まれてきてよかった」と久しぶりに思ったことをこっそり教えてくれました。その時のとても照れくさそうな笑顔を思い出すたびに、私自身の中でも「生まれてきてよかった」という思いが反響します。

ずいぶんと時間が経った今でも。時空を超えて。

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あぁ生まれてきてよかったな、って思うことが何べんかあるじゃない。そのために、人間、生きてんじゃねえのか

車寅次郎(映画「男はつらいよ 寅次郎物語」より)  

 

 

苫米地式認定コーチ                       

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

-追記-

 過去のブログ記事(PMⅠ-05-06)で、鹿児島大学リハビリテーション科の前教授 川平和美先生が開発された「促通反復療法(川平法)」を取り上げた「脳がよみがえる ~脳卒中・リハビリ革命~」(主婦と生活社)を紹介しました。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/9367702.html

 

 その本の中には“革命的”なリハビリ法として「ほめること」が取り上げられています。「ほめること」で高まるものとは「未来の自分の姿の臨場感」。それは「エフィカシーを上げる(高める)」と同意です。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6542317.html

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5616012.html

 

 そのすべてが正しいゴール設定からはじまります。

 よって、コーチングこそが“革命”の本質であるといえます。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/15700308.html