Q-418:なぜパワハラや虐待がなくならないのでしょうか? <key 2;「パワハラや虐待」の根底にあるもの>
医療現場で働く方から切実な御質問をいただきました。
その一部に回答いたします。
(変更を加えています)
key 1;「S」
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/36446341.html
key 2;「パワハラや虐待」の根底にあるもの
Q:私は地方の病院で働いています。職員の間でのパワハラ・セクハラ・モラハラや患者さんへの虐待じゃないかと思える行いが嫌でしょうがありません。なぜパワハラや虐待がなくならないのでしょうか?
A2:ずいぶん前に医師として経験した話を紹介します。
その病院の院長は世襲の二代目。「優しい医療」や「仁」という言葉を好んで使っていました。しかしながら、職員の評価は微妙で、事実として離職率が高い職場でした。
当初、私は“偽善”を疑っていました。しかし、院長自身はいたって真面目。本気で「優しさ」や「仁」を追求しているように思えました。
PMⅠ-02-22~3:偽善とは?
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6681205.html
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6681282.html
そんな院長に対して、職員は3つのグループに分かれていました。1)10%が院長を崇拝するグループ、2)20%が院長を小馬鹿にするグループ、そして3)大多数(70%)が「どうでもいい」という感じの日和見グループ。
つまり、職員の9割が、院長のコンフォートゾーン(Comfort Zone、CZ)の外にいるという感じです。
(↑今はこの分析は正しくないと思っています。その理由は次回まとめます)
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6040892.html
その院長は、確かに明るい人ではありませんでしたが、根暗なわけでもありませんでした。今思い出しても、間違いなく真面目。
F-143:不要不急 vol.4;レジリエンスをコーチング理論で考える <ワーク付き>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/22931091.html
こんなに一生懸命なのに、なぜ職員から評価されないのだろう?
…そんな疑問を解決することなく、私は任期を終え病院を去りました。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721610.html
その後、認知科学者 苫米地英人博士に学ぶ中で、この病院での経験を思い出しました。そして、RAS&スコトーマで説明できるのではないかと思うようになりました。私の分析は…
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/5721658.html
院長および崇拝グループ:パワハラや虐待があると思っていない
=スコトーマに隠れている
その他の職員:パワハラや虐待がひどいと思っている
=スコトーマが外れている
…しかし、このような分析を行っても、やはりスッキリしないまま。何か大事なことを見逃している気がしていて、「一向にゲシュタルトが完成しない」という不安定な感覚が続きました。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6193912.html
そもそも「パワハラ・セクハラ・モラハラ」や「虐待」はなぜ生じるのでしょう?
以下、苫米地博士の著書「脱洗脳教育論」(オープン・エンド、p39)より引用します。
■差別思想と身分制度
儒教は、権力を持つに至った支配者が、その支配を維持し、より強固なものにしていくためには何をなすべきか、民衆をどう教育すべきか、ということを並べ立てた宗教なのである。本質的に支配者にとって利用しがいのある宗教だと言える。なぜならば、儒教はその中に差別思想をふんだんに内包しているからである。差別思想を民衆の中に埋め込めば埋め込むほど、国の支配は強固なものとなり、支配者にとって都合のよい安定(秩序)が生まれる。
では、儒教の差別思想はどこから生まれてきたものだろうか。
前項で述べた儒教の「孝」という概念では、先祖代々木の板や墓を守り継ぐ家長が最も偉いということになる。家長は血のつながりによって長男へと受け渡され、一族は存続していく。ここに、先祖、家長、長男、二男、三男といった順位が生まれる。
また、儒教には「仁」という考え方がある。儒教の中で中心に置かれる徳目の一つで、人と人とが結び付くときの規範である。仁とは仁愛と言い換えることもできる。
確かに、仁愛は自分が他者との関係を築くときの重要な心構えではあるが、この場合の「他者」がくせものなのだ。儒教で言う他者とは、限られた身内、あるいは、限定された空間つまり仲間においての他者を指している。
たとえば「仁義」という言葉で説明するとわかりやすいかも知れない。やくざの仁義は同じ組織の中だけで通用するものであり、他の組織との間には仁義は存在しない。
このように、仁とは身内にだけ通用させ、それ以外の人間との関係には適用しないものなのである。実は閉塞的で、身内さえよければという考え方に至るのは必然だろう。
身内は仁によって守られているが、ともすればおしつけがましく上に立つ人間の意思しだいでいかようにもなる規範と言えよう。
さらに、儒教は仁を支える「忠」という概念がある。仁の対象である組織における上下関係を強化する論理である。
日本でこの「忠」をたくみに利用したのは、徳川家康である。忠を根本に置き、確固たる武家社会を築いたのだ。そのことは後述しよう。
儒教において、「孝」は「仁」によって支えられ、「仁」は「忠」によって支えられ、より強固な差別を生んでいったのである。
シャーマニズムでは、宗教的リーダーであるシャーマンが最も尊い存在である。この下に祖先の身分の高さに準じた父系の一族(血縁集団)がずらりと並ぶのだ。
儒教においては、親から、ひいては祖先からいただいたものはすべて、身体はもちろん、身分も大切にしなければならないという論理が、祖先崇拝によって成り立っている。その論理の行き着く先が職分論、つまり各人の身分に結びついた、それぞれの職務・役割(職分)を果たすことが正しい生き方だとする考え方である。その結果、親の職業によって子どもの職業が決まることになる。言い換えれば、人の価値は血で決まるということだ。
これは、支配者にとってはまさに都合のいい論理である。親の職業を継ぐことが是とされれば、支配者の職分をその子どもが継ぐことが当然とされ、地位、権力が安泰となることは言うまでもない。ここに身分制度が生まれるのである。
インドのカースト制度でも同様である。輪廻転生を信じているインド人は、来世で別のカーストに生まれ変わるかもしれないと本気で思っている。しかし現実には、どこの家に生まれたかでカーストは決められ、カースト間の移動は認められていない。
つまり、親がどのカーストに属するかによって、その人の一生が決まるというのがヒンドゥー教信者の宿命である。
引用終わり
儒教はその中に差別思想をふんだんに内包している
…「儒教なんか私には関係ない」と思っている人も多いはず。しかし、私たちは儒教的な洗脳をたっぷり浴びています。その代表が「道徳教育」です。
F-368:義を見て為さざるは… <vol.2;「義を見て為さざる」の問題点 -正義->
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35409039.html
「道徳」の「道」という言葉は、儒教の書である論語の中にも繰り返し出てきます。
中国語では「道」を「タオ」と読み、通常は道教の始祖である老子の言葉を指すのだそう。だから、儒教は道教の影響を受けているといえます。
「道徳」の「德」という言葉は、まさに儒教における重要な概念のことです。
つまり…
私たちは「道徳教育」という儒教(&道教)洗脳によって、「『孝』『仁』『忠』により支えられる強固な差別」を刷り込まれている
…そして、その無意識下に潜む差別が「私(私たち)は正しい」「私(私たち)は〇〇してもいい」という偏見を生みだしています。本当は「絶対に正しい」などありえないのに。
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/6194669.html
その差別を根源とする偏見こそが“無明”の証。
Q-401:ヒーリングやコーチングと意識状態の関係を教えてください <中編>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35784970.html
今回取り上げたケースでいうと、院長の無意識には、間違いなく差別がありました。その差別が「〇〇家は偉い」「〇〇家は何をしてもいい」という偏見を生みだしていました。
はっきり理解していたかどうかは別として、職員の20%(小馬鹿グループ)はそんな思い上がりに気がついていた(=スコトーマが外れていた)はずです。
F-380:学びと破門で脅しをかける <vol.4;「自分のゴールに洗脳」の先で得るもの>
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/35997725.html
「道徳教育」により、無意識に「差別」が刷り込まれている
…その事実に無自覚なまま生き続ける人は、すべて“偽善”といえます。
Q-192~:コーチングはマインドを使える人のためのものなのでしょうか?
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_410371.html
(Q-419につづく)
CoacHing4M2 EDGE
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一緒に楽しみましょう!
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/36332004.html
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Q-387~:同じ職場でお客さんに対しての話し方がおかしい人がいます。どう接すればいいでしょうか?
https://coaching4m2-edge.blog.jp/archives/cat_429772.html
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