F-047:ACT-FAST
猛暑となった2018年の夏も終わろうとしています。
今年はとくに「熱中症」「脱水症」の患者さんが多かったようです。2018年7月31日に総務省消防庁が発表したデータによると、熱中症の症状で2018年4月30日~同7月29日に救急搬送された人は全国で5万7534人になり、2017年5月1日~同9月30日の5万2984人をすでに上回りました。
総務省消防庁HP>救急救助>熱中症情報
http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/fieldList9_2.html
ところで、脳梗塞は夏に多いことを御存知ですか?
年間を通じては夏と冬に多く、夏は脱水、冬は体を動かさなくなることが発症に関わっているとされています。ちなみに、発症時間で最も多いのが夜間から早朝にかけてで、就寝中に水分をとらないために脱水傾向になるからとされています。
厚生労働省HP>「健康のために水を飲もう」推進運動
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html
まだまだ残暑が続きますので、ぜひ水分補給をこまめに行ってください。
残念ながら脳梗塞を発症してしまったら、治療は「時間との戦い」になります。
脳梗塞とは、脳の血管が血栓等で詰まることにより、下流の脳細胞が酸素不足と栄養不足のために傷んでいき(虚血)、やがて壊死してしまう(梗塞)病気です。
よって、治療は詰まり(血栓)を解消することを目的に行われます。2005年10月より血栓を溶かす薬(rt-PA:遺伝子組み換え組織プラスミノゲン・アクティベータ)の静脈注射治療ができるようになりました。しかし、この治療を受けるにはいくつか条件があり、発症から4.5時間以内に限られています。
日本脳卒中学会HP>脳卒中治療ガイドライン
http://www.jsts.gr.jp/jss08.html
前述のとおり、多くの脳梗塞は夜間から早朝にかけて発症します。その時間帯はほとんどの医療機関が対応できないため、また医療崩壊を食い止めるためにコンビニ受診の抑制が広く謳われているため、どうしても「しばらくしたら改善するに違いない」「夜が明けるまで様子を見よう」と考えてしまいがちです。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6040752.html
そんなときに参考になるのが「ACT-FAST」です。米国脳卒中協会では、脳卒中(血管が詰まる脳梗塞と血管が破ける脳出血などを包摂する、一つ上の抽象度の疾患概念)を疑う人を見たら、3つのテストを行うように勧めています。その頭文字をとってFASTです。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/cat_123517.html
Face(顔の麻痺):顔の片側が下がる、ゆがみがある
Arm(腕の麻痺):片腕に力が入らない
Speech(ことばの障害):ことばが出てこない、ろれつが回らない
+
Time(発症時刻)
「これらの症状(Face、Arm、Speech)のいずれかに気づいたら、発症時刻を確認して(Time)、すぐに119番に連絡する(ACT)」というのが、ACT-FASTです。
国立循環器病研究センターHP>循環器病情報サービス>脳卒中
http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/disease/stroke.html
繰り返しになりますが、脳梗塞の治療は「時間との戦い」です。
「Face(顔の麻痺)、Arm(腕の麻痺)、Speech(ことばの障害)のいずれかに気づいたら、すぐに救急車!」という大切な知識を、ぜひ身近な方々にも教えてあげてください。
…以上、医師としてACT-FASTを御紹介しました。
次回は苫米地式認定コーチとして、ACT-FASTの前に取り組むべきことについて考察します。それは「○○○○対策」です。
苫米地式認定コーチ
苫米地式認定マスターヒーラー
CoacH T(タケハラクニオ)
-追記1-
時間に関連して。
最近、あるスペイン人のツイートが話題となりました。
「俺スペイン人だから、1分2分遅れたら『さすがスペイン人』とか『ラテン系は時間守らない』と日本人によく言われますね。日本人は、自分は時間を守る1位国だと思ってるけど、日本人は○○○○時間しか守らない。」
…「○○○○時間」とはなんでしょうか?
本質を鋭くついています。答えは次回(F-048)に。
(本編の「○○○○対策」、追記の「○○○○時間」とも、それぞれカタカナ4文字です)
-追記2-
夏の健康に関連して。
2018年7月27日、東京五輪組織委員会の森喜朗会長が首相官邸を訪れ、安倍晋三首相にサマータイムの導入を要請しました。これを受け政府・与党が検討した結果、超党派の議員立法として秋の臨時国会での成立を目指し制度設計に入ったと報道されています。
一般社団法人日本睡眠学会が発行している「サマータイム -健康に与える影響-」によると、ロシアは1981年からサマータイムを実施していましたが、2011年に廃止。その理由のひとつが時間を切り替える時に心筋梗塞で救急車が出動する回数が増えたからだとされています。スウェーデンではサマータイムが始まった週の心筋梗塞発症のリスクが5%上がるというデータが出ているそうです。
来年以降の夏は、「熱中症」「脱水症」に加え、「サマータイム」への備えも必要になりそうです。前述の「サマータイム -健康に与える影響-」に詳しくまとめられていますので、ぜひ御確認ください。
日本睡眠学会HP>日本睡眠学会からの声明>サマータイム -健康に与える影響-
http://jssr.jp/data/pdf/summertime_20120315.pdf
国立循環器病研究センター 循環器情報サービスより引用