F-089:無人運転と自動運転の違い ~シーサイドライン逆走に思う~:vol.1

 

201961日、横浜市の新交通システム「シーサイドライン」の新杉田駅(同市磯子区)で無人運転の車両が逆走し、乗客14人が重軽傷を負う事故が発生しました。

 

「バラ色ダンディ」(東京MX、同63日放送回)に出演された認知科学者 苫米地英人博士は、この事故について「無人運転と自動運転が混同されている」とコメントされていました。

 

博士のコメントを考察してみました。シリーズでお届けします。

 

 

 番組内で、博士は自動車の自動運転技術を引き合いに出されながら、AIArtificial Intelligence、人工知能)を用いた自律的判断について言及されていました。

 

 事故を起こした「シーサイドライン」のシステムは、「運行を制御する自動列車運転装置(ATOAutomatic Train Operation)が駅側と車両側で情報をやり取りし、路線データや信号情報に基づいて発進や停止、加速を行う」というものです。

自動車の渋滞解消や環境への負荷低減を目的に、1980年代から全国各地で導入が進んだ新交通システムの1つで、1989年の運行開始以来「シーサイドライン」で同様の事故はなかったそうです。

 

話が逸れますが、運行する横浜シーサイドラインの広報担当者は「逆走は今までになく、全く想定していなかった」と発言しています。

そのコメントからは「今まで問題はなかったから、これからも問題はない」という思考が読み取れます。その根底には不完全性に対する無理解と「過去→未来」という時間観があるはずです。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6194669.html

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6542317.html

 

柔らかく表現すると想像性の欠如。はっきり言うと思考停止。いずれにせよ、イマジネーションの限界が個人(組織)の限界を生みだします。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/14120540.html

 

本当はたくさんの前兆があったに違いありません。しかし、それらの情報はスコトーマに隠れてしまい、認識(あるいは理解)することができませんでした。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5721610.html

 

1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在する」というのが「ハインリッヒの法則」。その対策にはコーチングが役立ちます。自らスコトーマを外すことを可能にするマインドをつくれるからです。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/cat_124527.html

 

 

 話を戻します。

事故後の調査により進行方向を指示する車両側の回路の一部に断線があったことが明らかになりました。モーターに進行方向が伝わらず逆走したと考えられています。

 

注目すべきは、「運行を制御する自動列車運転装置(ATO)の地上側から車両側に送った指示が、モーターなどに正確に伝わったかを確認する仕組みはない」という事実。

つまり、周囲の状況はもちろんのこと、自身の状態について確認する仕組みすらなかったのです。

 

それなのに今までトラブルが起こらなかったのは、「変化のない決められたコースを、決められたとおりに走行する」というシンプルなタスクを繰り返す無人運転だからです。

 

 

 一方、自動車の自動運転は状況(変化)の即時把握と変化に対する自律的判断を求められています。搭載されたカメラやレーダーでまわりの状況を随時確認しながら、自身の状態を最適化していくことで自動運転が実現します。

その自動化のレベルは、下記のように定義されています(政府の文書より引用していますが、具体的表現はわかりやすく変更しました)。

官民ITS構想・ロードマップ2018

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20180615/siryou9.pdf

 

 

<レベル0:運転自動化なし>

 運転者が全ての動的運転タスクを実行

 

<レベル1:運転支援>

アクセル、ブレーキ、ハンドルの操作の内、1つの車両制御に関わる監視、操作を自動運転システムが行う

例:自動ブレーキによる衝突回避、走行車線をはみ出さずに走行、前の車に追従する

 

<レベル2:部分運転自動化>

アクセル、ブレーキ、ハンドルの操作の内、複数の操作を自動運転システムが行う

例:車線変更の実施、前の車に追従しながら車線をはみ出さずに走行

 

<レベル3:条件付運転自動化>

限定領域内でアクセル、ブレーキ、ハンドルの操作のすべてを自動運転システムが行う。緊急時は自動運転システムの要請によりドライバーが対応

 

<レベル4:高度運転自動化>

高速道路や日常的に使われる道路などの限定領域内において、アクセル、ブレーキ、ハンドルの操作すべてを自動運転システムが行う(ドライバーは操作に関与しない)

 

<レベル5:完全自動化>

限定領域がなく、あらゆる場面でアクセル、ブレーキ、ハンドルの操作を自動運転システムが行う(ドライバーは操作に関与しない)

 

 

 つまり、無人運転に対しての自動運転とは、「複雑(多種多様)な環境の変化に即座に対応しながら、自身をつねに最適化して走行する」という自律的なもの

 

 では、それらを人のマインドでの情報処理に置き換えると、どのようなことがわかるでしょうか?

 

F-090につづく)

 

 

苫米地式認定コーチ                        

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

-追記-

アメリカのゼネラル・モーターズ社は、ハンドルやアクセル、ブレーキペダルのない量産可能な自動運転車「クルーズAV」を2019年中に実用化すると発表しています。それは日本のメーカーの自動化レベル2の現状に対してレベル4の技術です。

いよいよ映画で描かれてきたような世界が現実化します。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6542364.html


 

自動運転レベルの定義の概要


1 自動運転レベルの定義の概要

官民ITS構想・ロードマップ2018より引用